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『分かり易い法令整備基準』の「醇化対象用語」に     反映された訓読漢字語の分析

ドキュメント内 朝鮮語の近代化と日本語語彙 (ページ 78-105)

 韓国法制処が策定した『分かり易い法令整備基準』(第 5 版、2012年)に は「Ⅱ 整備用語」として3,926項目の「醇化対象用語」が取り上げられて いるが、その大多数が日本語を原語とする借用語である。さらに、その多 くが日本語の音読漢字語からの字音語である。上記3,926項目のなかには、

「間歇、間歇的」、「禁獵、禁獵區」のように 1 つの項目に複数の類例がまと めて採録されているケースが散見され、これらを分けて計算すれば、4,000 項目を少し上回る程度(4,013項目?)となる。日本語の訓読漢字語からの 字音語は、筆者が調査したところでは490項目程度で、全体の約13%を占め ている。この調査は、訓読漢字語からの字音語と音読漢字語からの字音語 が複合した混種語も含めたものである。なお、この『分かり易い法令整備 基準』の「醇化対象用語」はいわゆる法律用語に限られるものではなく、

韓国の法令中に用いられている語のすべてを対象として、さまざまな語句 が採録されたものである。以下、「醇化対象用語」として取り上げられた訓 読漢字語を抽出しながら、若干の考察を行う。

⑴  1 字漢字に 하다하다(‑hada)用言化接尾辞を後接して形成された語  朝鮮語において、 1 字漢字に用言化接尾辞 하다(‑hada)が後接して造 語された動詞・形容詞は、開化期には漢文読み下しの影響のもとに数多く 出現していたが、言文一致文体への移行とともに、その多くは影をひそめ てきた。その一方、日本の法令文が朝鮮語に訳されて使用される過程にお いて、日本語の スル動詞や、 1 字漢字を訓読して送り仮名を付した用言が 朝鮮語に対して語彙干渉を起し、 1 語漢字に用言化接尾辞 하다(‑hada)

が結合した朝鮮語語彙を定着させる要因の一つとして作用してきた。

 『分かり易い法令整備基準』の「Ⅱ 整備用語」で取り上げられた3,926 項目の「醇化対象用語」の中には、47語の 1 字漢字からなる 하다用言が醇 化対象用語として取り上げられている。このうち、下に示したように26語 には、形態・意味的に対応する日本語の訓読漢字語がみられ、20語には形 態・意味的に対応する日本語の音読漢字語がみられる。また「減하다」は 両者に関わり、いずれにも分類しがたい語である。なお、『分かり易い法令 整備基準』の「醇化対象用語」欄に活用形で示されている語は、下の語彙 リストには活用形のまま示した。

[日本語の訓読漢字語に対応する語があるもの]

加하다《加える》、輕하다《軽い》、經하다《経る》、告하다《つげる》、求 하다《求める》、闕하다《欠く》、基하다《基づく》、企하다《企てる》、旣 히《既に》、得하다《得る》、犯하다《犯す》、甚히《甚だしく》、依하다《依 る》、因하여《因って》、臨하여《臨んで》、占하다《占める》、정하는《定 める》、除하다《除く》、足하다《足る》、重하다《重い》、綴하다《綴じる》、

取하다《取る》、畢하다《おえる》、限하다《限る》、行하다《行う》、許하

다《許す》(以上、26語)

[日本語の音読漢字語に対応する語があるもの]

供하다《供する》、科하다《科す》、課하다《課す》、關하여《関して》、對 하여《対して》、命하다《命ずる》、反하다《反する》、發하다《発する》、

補하다《補する》、付하다《付す》、附하다《附す》、生하다《生じる》、屬 한《属する》、乘하다《乗ずる》、要하다《要する》、應하다《応じる》、際 하여《際して》、準하다《準ずる》、處하다《処す》、害하다《害する》(以 上、20語)

[いずれにも分類しがたい語]

減하다《減らす / 減ずる》(以上、 1 語)

 上記47語の 하다(‑hada)用言のうち、「醇化用語」欄にも「醇化対象 用語」と同一の語形が記され、したがって法令用語としては完全には排斥 すべき語とみなされていないのは、下記の19語である。これらの語は他の 語に置き換えた場合、法令文の本来の意味を正確に反映しがたい場合があ ると判断されたものである。たとえば、「科하다《科す》」の場合、「罰金 刑」の場合は「罰金刑에  處하다」《罰金刑に処す》のように「處하다」《処 す》に置き換えるとしつつも、「罰金」の場合は「罰金을  課하다」《罰金を 科す》のように醇化対象語彙をそのまま用いるとしているのが、その例で ある。

加하다《加える》、科하다《科す》、關하여《関して》、對하여《対し て》、命하다《命ずる》、犯하다《犯す》、補하다《補する》、屬한《属 する》、甚히《甚だしく》、應하다《応じる》、依하다《依る》、因하여

《因って》、臨하여《臨んで》、定하는《定める》、重하다《重い》、準하 다《準ずる》、綴하다《綴じる》、處하다《処す》、畢하다《おえる》(以

上、19語)

 一方、「醇化用語」欄には「醇化対象用語」の語形が記されておらず、し たがって法令用語としては排斥すべき語とされているのは、以下の28  語で ある。

減하다《減らす / 減ずる》、輕하다《軽い》、經하다《経る》、告하다

《つげる》、供하다《供する》、課하다《課す》、求하다《求める》、闕하 다《欠く》、基하다《基づく》、企하다《企てる》、旣히《既に》、得하 다《得る》、反하다《反する》、發하다《発する》、付하다《付す》、附 하다《附す》、生하다《生じる》、乘하다《乗ずる》、要하다《要する》、

占하다《占める》、除하다《除く》、際하여《際して》、足하다《足る》、

取하다《取る》、限하다《限る》、害하다《害する》、行하다《行う》、

許하다《許す》(以上、28語)

 『分かり易い法令整備基準』の「Ⅱ 整備用語」の一覧表には、これら47 語が以下のように記述されている。なお、下表の「対応する日本語」欄は 筆者が書き加えたものである。また、漢字音で発音される部分は便宜上、

原典の朝鮮文字表記を漢字で転写して示した。さらに、朝鮮語の意味が把 握できるように、参考まで《 》内に日本語訳を付した。ゴチックは筆者 によるもので、分析対象となる部分を示した。

表 6  「整備対象用語」とされた「 1 字漢字+ 하다하다(‑hada)」用言の項目一覧

(1)

整備対象用語 対応する日本語 醇化用語

加하다 くわえる 加하다《加える》,(變更을)하다《(変更を)す る》;(危害을)주다《(危害を)与える》;(危 害를)입히다《(危害を)与える》;(行爲를) 하다《(行為を)なす》

整備対象用語 対応する日本語 醇化用語 加한(行爲를 

加한)

くわえた(行為 をくわえた〜)

加하다,(變更을)하다《(変更を)する》,(危 害를)주다《(危害を)与える》,(危害를)입 히다《(危害を)与える》,(行爲를)하다《(行 為を)なす》

減하다 へらす 빼다《取り除く》;덜다《減らす》;낮추다《低 める》;줄이다《減らす》

經하다 へる 거치다《経る》

輕하다 かるい 가볍다《軽い》;弱하다《弱い》

告하다 つげる 알리다《知らせる》

供하다 供する 提供하다《提供する》;쓰이다《用いられる》; 주다《与える》;使用되다《使用される》[ʻ供 하다ʼ という単語は使用せず文脈に沿うように 醇化する]

過怠料에 處한 다

過怠料に処す 過怠料를  賦課한다《過怠料を賦課する》

旣히 すでに 이미《すでに》

課하다 課する (租稅・過怠料를)賦課하다《(租税・過怠料 を)賦課する》

科하다(罰金을  科하다하다)

科す(罰金を科 す)

〜에게는  刑罰을  科하다《〜には刑罰を科す》;

〜에게는  罰金을  科하다《〜には罰金を科す》;

〜은  〇〇원의  罰金刑에  處하다《〜は〇〇ウ ォンの罰金刑に処す》

闕하다 かく 빠지다《抜ける》,비다《空く》,(要件을)充足 하지 못하다《(要件を)充足しない》

求하다 もとめる 要求하다《要求する》

關하여 関して 에《に》;에게《に》;은《は》;는《は》;하기  위하여《するために》[できるだけ他の語に置 き換え ʻ關하여ʼ を濫用しない]

企하다 くわだてる 圖謀하다《図る》;꾀하다《企む》;일으키다

《起こす》;〜에 따르다《〜に依る》;〜를 바탕 으로 하다《〜を基にする》

基하다 もとづく 〜에 따르다《〜に依る》;〜를 바탕으로 하다

《〜を基にする》

整備対象用語 対応する日本語 醇化用語

基한 もとづいた〜 그러한《そのような》;根據한《基づいた》;바 탕으로 한《基とした》

緊急을 要할 때 緊急を要する時 緊急히  措置해야 할 때, 緊急한  境遇《緊急に 措置しなければならない時、緊急の場合》

對하여 対して 에게《に》, 對하여《対して》

對하여 対して 에《に》;에게《に》;은《は》;는《は》;하기  위하여《〜するために》[できるだけ他の語に 置き換え ʻ對하여ʼ を濫用しない]

對하여는 対しては 에게는《には》, 對하여는《対しては》

對하여는(例:

情報에 對하여하여 는

는이를)

対しては(例:

情報に対して は, これを)

〜은《〜は》,〜는(情報는)《〜は(情報は)》

得하다 える 받다《受け取る》,얻다《得る》

命令(指示)를  發하다하다

命令(指示)を 発する

命令을 하다《命令をする》,指示를 하다《指示 をする》

命하다(例: 營 業의  停止를 命 하다

하다)

命ずる(例:営 業の停止を命ず る)

處分을 하다《処分をする》, 命하다《命ずる》

反하다 反する 어긋나다《食い違う》,다르다《異なる》

發하다 発する 내다《出す》,보내다《送る》, 始作하다《始ま る》,(命을)내리다《(命を)下す》, 發送하다

《発送する》, 發表하다《発表する》

犯하다 おかす 犯하다《犯す》,저지르다《働く》,짓다《(罪を)

なす》

補하다 補する 任命하다《任命する》, 補하다《補する》

附하다 附す 붙이다《くっつける》, 添附하다《添付する》

付하다 つける / 付す (회의에,심판에)부치다《(会議に、審判に)

付す》

法이 定하는하는 法がさだめる〜 法에서  定하는《法で定める》

甚히 はなはだしく 매우《とても》、몹시《とても》、甚하게《はな はだしく》

法律이 定하는하는 法律がさだめる

法律에서  定하는《法律で定める》

ドキュメント内 朝鮮語の近代化と日本語語彙 (ページ 78-105)