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冷媒処理に関する適格性要件の検討

ドキュメント内 CHAPTER 1 (ページ 38-63)

本方法論では、JCM プロジェクトにて更新/新規導入する冷凍機の廃棄時の冷媒の大気 放出を回避するべく、『適切な回収・破壊計画が策定されている』こととする。なお、回収・破 壊計画の詳細は、冷凍機を更新/新規導入するユーザーが廃棄時に責任を持って処理・処 分する旨が記載されていることとする。

4.4 対象GHG及びその排出源

紡績工場の冷凍機に係る更新/新規導入において、検討しなければならないGHGを下表 にまとめる。

4-9 対象GHG及びその排出源

シナリオ 発生源 GHGs 算定対

象有無 理由

リファレンス リファレンス冷凍機 の消費電力量

CO2 リファレンスシナリオで導入が想定される冷 凍機のCOPを基にGHG排出量を算定する必 要がある。

また、当該項目には冷却塔やポンプといっ た冷凍機以外の設備の消費電力量が考えら れる。しかしながら、以下の理由から本方法論 では、簡素化のために算定対象としない。

・ 冷凍機本体の効率とは無関係なシステ ムであり、冷凍機を変えても同じシステ ムを使用することが考えられる

・ システムを数台の冷凍機で共有した場 合や工場のレイアウト等に影響を受け ることを考えるとモニタリングやデフ ォルト値の設定が難しい

プロジェクト プロジェクト冷凍機 の消費電力量

CO2 プロジェクトにて導入する冷凍機の消費電 力量を基に排出量を算定する必要がある。

出典:調査団作成

12 冷凍機製造業者の多くが採用している冷媒HFC134aの地球温暖化係数は、1,430と高い。

なお、冷凍機メーカーおよび紡績工場での聞き取りによれば、冷凍機を交換する際には、

事故で冷媒が大気放出されてしまっているケースが多く、冷媒が残存している場合でも、他 の冷凍機で冷媒を利用できることを考え、ユーザーは冷媒を抽出し保管することが多い。よ って本方法論では旧式冷凍機の処理に係るフロン発生は対象外とする。

ただし、プロジェクトで導入する冷凍機については、適格性要件5で述べた通り、冷媒の 最終処理時に、適切な処理を行う計画を準備することで、高いGWPを持つ冷媒が大気放 出されないことを担保する。現在、日本の環境省の支援によって、ボゴール市近郊のセメン ト工場において冷媒の焼却処理を行うことができるようになっている。

4.5 算定のための情報・データ

本方法論における算定のための情報・データは、冷凍機の消費電力量である。下表に、

当該項目に係る概要を整理する。

4-10 算定のための情報・データ

発生源 GHGs 算定対

象有無 理由

プロジェクト 冷凍機 CO2 プロジェクト冷凍機の消費電力量を計測する ことで、プロジェクト排出量とリファレンス排出 量を計算する。

出典:調査団作成

4.6 デフォルト値及び事前設定値の設定

JCM制度において、デフォルト値を活用してモニタリング対象を活動量のみに限定するこ とにより、方法論の適用可能性を高めることと共に、デフォルト値の保守性を担保して条件 設定を適正に行う必要がある。また、事業者による数値設定に係る負担を排除する点も期 待される。

当該プロジェクトに対するMRV方法論では、リファレンス排出量およびプロジェクト排出 量の算定に係り、以下のデフォルト値を設定することを考えている。

a) グリッド排出係数(EF) [tCO2/MWh]

ホスト国インドネシアでは、同 国内に存在するグリッドの排出係 数 を 国 家 気 候 変 動 協 議 会

(DNPI)がウェブサイトにて公表 している。対象プロジェクト2件と もジャワ島に位置することから、

使 用 する グ リ ッド 排 出係 数は 、

JAMALIグリ ッド の 数 値となる 。

DNPIに よ り 公 表 さ れ て い る JAMALIグリッドの数値は右表の 通りである。

4-11 8地域グリッド排出係数 [tCO2/MWh]

地域 Ex-ante Ex-post

ジャワ-マドゥラ-バリ 2010 0.741 0.730 スマトラ 2010 0.748 0.749 西カリマンタン 2010 0.748 0.733 南/中央カリマンタン 2010 1.003 0.960 東カリマンタン 2010 0.820 0.861 コタモバグ、ミナハサ 2010 0.601 0.605 南/西スラウェシ 2010 --- 0.625

バダン 2010 0.568 0.549

出典:国家気候変動協議会(DNPI)

注:各地域の数値は最新の排出係数のみを掲載。

以上より、JAMALIグリッドとして最新の情報である2010年のデータを本調査におけるグ リッド排出係数として採用する。但し、今後、新たにグリッド排出係数の更新等が行われた際 は、最新数値に従うこととする。

b) 成績係数(リファレンス)(COPRE) [---]

成績係数は、カタログ値で確認できるものの、実際の運転ではメーカーごとの誤差(トレラ ンス)の考え方13や設置条件(冷水温度や冷却水温度等)の違い等により、カタログ値とは 異なる値を示す。ただし、制度としての適用可能性を確保するために、JIS条件下におけるリ ファレンスの成績係数(COPRE_JIS)を一定の値として設定した上で、プロジェクトの温度条件 による補正を乗じてプロジェクト条件下におけるリファレンスの成績係数(COPRE)を算出する。

同値は後述4.8にて述べる。

COPREの温度条件による 補正式は右の通りである。

COPRE = COPRE_JIS x 33.0 / ( Tcooling-out – Tchilled-out + 3.0)

COPRE_JIS : JIS条件下におけるリファレンスCOP

Tcooling-out : 冷却水出口温度 [] Tchilled-out : 冷水出口温度 []

c) 成績係数(プロジェクト)(COPPJ) [---]

プロジェクト時の成績係数には、新規、更新等のために導入する、適格性要件を満たす ような冷凍機の成績係数(COPPJ)を採用する。

同成績係数について、次のデータを確認し、上記のうちより保守的なデータ(より成績係 数が低いもの)を、実際の導入先の設置・運転条件と併せ適用する。

① 見積作成時に冷凍機メーカー(または代理店)が導入先に提供する詳細運転データ

② 出荷時の工場での性能試験データ

13 本邦メーカーについて、カタログに工場試験レベルの精確なデータを掲載していることが多い一方で、海外メーカーに ついて、トレランスの範囲内における好結果の数値を掲載しているケースが見られる。

4.7 リファレンス排出量の算定根拠

4.7.1 インドネシアにおける冷凍機市場

本調査に係る方法論のリファレンスシナリオは、「本プロジェクトが実施されない 場合、インドネシアにおいて市場占有率の高い冷凍機が導入される」としている。

冷凍機業界では、世界市場において高いシェアを占めているA社、B社、C社等がイ ンドネシアにおいても同様の市場占有率を有していると、世界的に冷凍機市場の調査 を行っているBSRIA社のレポートが報告している。

4-12 インドネシアにおける冷凍機市場の情報(調査報告書)

情報源 市場占有状況の情報

BSRIA Chillers , Indonesia

冷凍能力100USRt以上の冷凍機シェアは1位A社、2位B社、3位C社。B社は シェアを落としている。上位3社が市場を支配している。

出典:Report on Chillers Indonesia, BSRIA

注: 2011年の情報。ターボ冷凍機だけでなく様々なタイプの冷凍機を含めた状況。

なお、インドネシアでは、上表よりも詳細な統計資料が存在しないため、正確な状 況はつかめないものの、冷凍機の製造販売に携わる各社の認識も、これら主要企業が 高いシェアを持っているというものである。

4-13 インドネシアにおける冷凍機市場の情報(聞取調査)

情報源 市場占有状況の情報

PT. Ebara A社、C社、B社の上位3社で80%のシェア。

PT. Bayutama C社35%、A社30%、B社25%の上位3社で90%のシェア。

PT. York A社35%、C社30%、D社20%(スクリュー式冷凍機中心)の上位3社で85%。

出典:調査団による聞取結果(2013年)

4.7.2 リファレンスシナリオの設定

本方法論におけるプロジェクトシナリオ、リファレンスシナリオ、BAUおよびプ ロジェクトによる排出削減量の考え方を図4-3にまとめた。

出典:調査団作成

4-3 プロジェクトシナリオ、リファレンスシナリオ、BAUの概念図

まず、本方法論におけるBAU(Business-as-usual)とリファレンスシナリオを検討 するに当たり、インドネシアにおいて高い市場占有率を持つA社およびB社のCOP情 報を収集した。なお、C社ではモントリオール議定書にて規制されている冷媒を使用 していることから、本方法論におけるリファレンス冷凍機の候補対象から除外してい る。

A社について、インドネシアにて販売されている機種の実際のCOP(客先への仕様 表データ)が1点のみ入手できた。そのため、日本で販売されている機種のカタログ データも収集した。B社については、インドネシアで販売されている機種のCOP(客 先への仕様表データ)を5点入手できたため、それらデータを使用すると共に、日本 で販売されている機種のカタログデータも参考までに併せて収集した。結果は図4-4 の通りである。

出典:調査団作成

注:各社製品カタログ他を基に作成。一部のCOPJIS条件に合わせるため補正を行った。

4-4 リファレンス冷凍機候補のCOP分布

これらリファレンス冷凍機候補中、表6で示した通り、インドネシアにおいて、A社の冷凍機 が最も普及している。これは、冷凍機ユーザーへの聞き取り調査からでも確認され、A社が 近年順調に業績を伸ばしていることからも確認できた。一方、B社は、冷凍機製造業者とし て大手ではあるものの、複数の冷凍機販売会社・代理店、及びユーザーが定期点検や故 障対応の遅さを指摘しており、ユーザーからは更新時にB社を検討の対象外としているとの 意見も聞かれた。BSRIAのレポートでも近年B社がシェアを失っていることが指摘されてい る。

以上より、インドネシア市場において、本方法論におけるBAUやリファレンスシナリオを考 える際には、A社が最も主要な冷凍機製造業者であり、次にB社が主要な製造業者と考える ことが適切である。

ここでBAUについて、既存の冷凍機の更新を考える場合は、工場や商業施設等に おいて、既存冷凍機がそのまま利用され続けることである14。一例として、インドネ シアにおける紡績工場にて冷凍機の更新状況を検討した場合、十分な更新資金を有し

14 既存冷凍機のCOPは、冷凍機の整備状況や製造年等により異なるが、概ね5.0程度と推測される。

4.8 5 5.2 5.4 5.6 5.8 6 6.2

0 500 1000 1500

COP

冷凍能力(USRt)

A社(日本市場モデル)

A(インドネシア市場モデル) B(日本市場モデル)

B社(インドネシア市場モデル)

ドキュメント内 CHAPTER 1 (ページ 38-63)

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