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写像 T の構成

ドキュメント内 実数の構成に関するノート (ページ 48-51)

今度はT の方を構成しよう.今,xRcauchyをひとつ持ってくる.これは有理コーシー列の同値類として定義 したが,その代表元{xn}として,以下のようなものを構成しよう.この{xn}を用いてT(x)に相当する実数の切 断を構成するつもりである.

補題4.3.1 xRcauchyの代表元として,広義単調増加である有理コーシー列{xn},および広義単調減少である 有理コーシー列{x0n}が存在する.

(証明)命題3.4.6によれば,任意のxRcauchy に対して,それをいくらでも精度良く近似する有理数が存在す る.つまり,与えられたxn >0に対して,

r≤x< r+ 1/n (4.3.1)

となるような有理数rを見つける事ができる.そこで以下のように数列{xn},{x0n}を定めると,これらが補題の条 件を満たすコーシー列であることがすぐにわかる.この構成は出発点のxがRcutの元かRcauchyの元かだけの違い

で構成4.2.1と本質的に同じなので,詳細は省略する.

構成4.3.2 xRcauchyをとる.この実数に対して有理数の数列{xn},{x0n}と有理数の集合Aを以下のように定 める.

n= 1ではr≤x< r+ 1となるようなr∈Qを一つ選び,x1:=r, x01:=r+ 1とする(このようなrの存 在は(4.3.1)で保証されている).

n≥2では以下のように帰納法で決める.xn1, x0n1まで選んだとし,x< xn1+ 1/nとなっているか否 かを見る.

もしx< xn1+ 1/nであれば,xn :=xn1, x0n:=xn1+ 1/nと決める.

もしx xn1+ 1/n であれば,r x < r+ 1/n かつr+ 1/n x0n1 を満たすrをみつけ,

xn:=r, x0n :=r+ 1/nと決める(こんなrの存在は構成4.3.2と全く同じように証明できる).

上の{xn}を用いて有理数の集合AA:=

[ n=1

{r∈Q¯¯r≤xn}={r∈Q¯¯あるnに対してr≤xn} (4.3.2)

と定義する.

(注)上の構成法から

x1≤x2≤. . . xn≤. . .≤x≤. . .≤x0n≤x0n1≤. . .≤x02≤x01 (4.3.3) が成り立つ.そして命題4.2.2に対応して,以下がなりたつ.

命題4.3.3 構成4.3.2で作った{xn},{x0n}

それぞれが有理コーシー列であり,かつ

互いに同値である.つまり, lim

n→∞|xn−x0n|= 0がなりたつ.

別の{yn}.{y0n}を構成4.3.2で作ると,{xn}{yn} も同値である.つまり,lim

n→∞|xn−yn|= 0.

更に,このような{xn}{yn}のそれぞれから集合A, Bを構成4.3.2に従って作ると,hA, A0ihB, B0i は同じ実数を表す.

(注)Aの一意性がすっきりしないのは,同じ有理数を表す切断hA, A0iが(I型),(II型)に相当して2通りあ り得ることに相当している.

(証明)始めの3つは命題4.2.2の証明と同じなので略.問題は最後のところだ.A:={r∈Q|あるn に対し てr≤xn},B:={r∈Q|あるnに対してr≤yn}と定義しよう.このとき

a∈Aかつa6=xなるaを任意に持ってきたとき,a∈Bが成り立つ (4.3.4) 事を証明したい.もしこれが言えれば,A, Bの役割を逆にして同様の議論を行う事で,AとBの集合としての差 は高々xだけである,といえる.

すると,xが無理数の場合は有理数の集合A, Bに差は生じず,A=Bとなる.つまりこれらの定義する実数も 等しい:hA, A0i=hB, B0i.一方xが有理数の場合はA6=Bかもしれないが,これはhA, A0i,hB, B0iが同一の有 理数xに相当する(II型)(III型)の切断である事を意味し,やはり同じ実数(有理数)を表す事が結論できる.

では(4.3.4)を証明しよう.まず,a∈Aとは,あるNが存在してa≤xN となっていることを意味する.一方こ

xnxn xを満たしている.従ってa≤xではあるが,今はa6=xと仮定しているので,a <xである.

さて,数列ynyn x< yn+ 1/n となるように作ってある.ここでnを充分に大きくとって,

x−a 2 > 1

n (4.3.5)

となるようにしよう(このようなnの存在は有理数の稠密性から).すると,

yn>x 1

n >xx−a

2 = a+x

2 >a+a

2 =a (4.3.6)

がなりたつ.つまり,a∈Bであることが示せた.

この{xn}を用いて以下のように切断hA, A0iと写像Tを決める.

定義4.3.4 xRcauchyに対して,構成4.3.2に従って有理数の集合Aを定義し,このAによって有理数の切断 hA, A0iを作る.このときxから「有理数の切断hA, A0iの表す実数(Rcutの元とみる)」への写像をTと定義する.

では,このように定義したT の性質をいくつか述べよう.Sのときと同じくTが全射になっている事を示すのは ちょっと大変なので,後回しにする.

命題4.3.5 上で定義したTは,x,yRcauchyに対して,

x<y = T(x)< T(y) (4.3.7)

を満たす.これから特に,Tが単射であることが結論できる.

(証明)T(x), T(y)を表す切断をhA, A0i,hB, B0iとする.以前に示した命題を使うこともできるが,ある程度基 本に戻って見直しておこう.x<yとは² >0とN >0があって,n > Nではxn+² < ynとなること,だった.

これはx,yのすべての代表元についてなりたつので,特に上で構成した{xn}{yn}についても成り立つ.

さて,{xn},{yn}はともに有理コーシー列なので,上の² >0に対してN0 >0が存在して,

m, n > N では |xn−xm|< ²

3 かつ |yn−ym|< ²

3 (4.3.8)

がなりたつ.従ってm, n, l >max{N, N0}では

ym−xl= (ym−yn) + (yn−xn) + (xn−xl)>−²

3+²−² 3 = ²

3 (4.3.9)

がなりたつ.これはつまり,m, l >max{N, N0}ではxlはどんなymよりも少なくとも²/3だけ小さいことを意味 する.つまり,r∈A,すなわちr≤xlとなるrは,r≤xl< ym−²/3を満たしている.一方,Bの元はr0 ≤ym

となるようなものである.これから,B\Aは少なくとも長さが²/3の有理数の区間を含んでいる事がわかる.

以上から,A⊂BかつB\Aがゼロでない長さをもっていることがわかった.これは定義2.2.1によると,T(x) T(y)かつT(x)6=T(y)を意味する.つまり,T(x)< T(y)である.

命題4.3.6 xQcauchyの時,T(x)Qcutである.つまり,T は有理数に対応する[{an}]を有理数に対応する 切断hA, A0iに移す.

(証明)具体的にやってみればよい.構成4.3.2による{xn}としては,xn ≡x(すべての項がx)というもの がとれる.定義4.3.4に従ってAを作ると,A={r∈Q|r≤x}となる.このようなAから作った有理数の切断 hA, A0iは(I型)であり,有理数を表す.

命題4.3.7 写像Sは四則演算と可換である.例えば加法なら,T(x+y) =T(x) +T(y)である.

(証明)加法だけやる(減法乗法除法も全く同じ).

x,yから構成4.3.2に従って数列{xn},{yn}を作り,集合A, Bも定義する.写像Tの定義から,T(x) =hA, A0iT(y) =hB, B0iであり,またRcutにおける加法の定義からT(x) +T(y) =h(A+B),(A+B)0iである.これが T(x+y)に等しい事を証明したい.

そのための正当な方法はz :=x+yから構成4.3.2に従って数列{zn}を作る事だろうから,これを見越して zn:=x2n+y2nと定義してやろう.{xn},{yn}

x2n x< x2n+ 1

2n, y2ny< y2n+ 1

2n (4.3.10)

を満たしているので,この両辺をたしてzn:=x2n+y2nを用いると znx+y< zn+1

n (4.3.11)

がなりたっている.また,その構成法から{xn},{yn}はともに広義単調増加なので,{zn}も広義単調増加である.

以上から{zn}x+yに対して構成4.3.2を適用して作った数列とみなせる.そこで{zn}の定めるC:={r∈Q|あ るnに対してr≤zn}を作ると,T(x+y)hC, C0iにひとしいことになる.

ところが,すぐ後でしめすようにC=A+Bである.よってT(x+y) =hC, C0i=h(A+B),(A+B)0iが成り 立ち,h(A+B),(A+B)0i=hA, A0i+hB, B0i=T(x) +T(y)と併せると命題が証明される.

最後にC=A+Bであることを示しておこう.C⊂A+BC⊃A+Bの両方向を示す.まず,r∈Cという ことはあるnに対してr≤zn =xn+ynということだ.このとき,r=r1+r2かつr1≤xn, r2≤ynと分解でき て,このときはr1∈Aかつr2∈Bが成り立つ.つまり,C⊂A+Bである.

逆にr∈A+Bならばr1 ∈Ar2∈Bを用いてr=r1+r2と書けているが,A, Bの定義からn1, n2が存在 してr1 ≤xn1, r2 ≤yn2が成り立っている.xn, ynが広義単調増加だったので,n1n2のどちらよりも大きなn ではr1 ≤xnr2 ≤ynの両方がなりたつ.従って両辺を足して,r=r1+r2≤xn+yn =zn が成り立つので,

A+B⊂Cである

ドキュメント内 実数の構成に関するノート (ページ 48-51)

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