第 5 章 1990 年代以降の変革期における公民館の状況と新たな取り組みについて
5 公民館運営形態の多様化について
(1)指定管理者制度の導入
このように1990年代以降、公民館に求められる役割が顕著に変化してゆくが、施設運営の担い手につい てもこれまで原則として地方自治体が直営で行っていたものが、委託化や指定管理者制度の導入など、新た な担い手を模索する動きとして顕在化する。
この公の施設の管理・運営の委託化は、遡れば1966(昭和41)年、第11次地方制度調査会答申(「地方 税財政に関する当面の措置についての答申」)が嚆矢となっており、その中で「地方経費の効率化」に触れ、
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地方自治体の事務事業のうち、必ずしも自らが直接実施する必要のない各種会館等の施設の運営等について は、十分な管理監督の下に、その民間、地方公社または第三セクターなどによる間接経営を積極的に推進す るとあり、これ以降急速に委託化がすすむ。その後も1970年代の二度のオイル・ショックとこれを契機と する戦後最大の地方財政危機の顕在化をきっかけとして、より一層、地方自治体の事務事業の委託化が推し 進められていく。そして、高度成長期を通して確立した様々な制度・慣行が、その後の大きく変化した社会 状況において、もはや対応し難いものとなり1980年代はその対応にも追われることになる。さらにバブル 経済崩壊後の1990年代以降わが国は長期の経済停滞に陥り、雇用状況も悪化した。政府は、こうした状況 を打開するため、規制改革を通じた民間事業拡大を経済活性化戦略の基本思想とし、公的サービスのアウト ソーシング等推進するべく内閣府に設置された経済財政諮問会議において2002(平成14)年10月、「改革 加速のための総合対応策」が策定・公表されている92。
また、時を同じくして地方分権改革推進会議においても社会資本の管理に関し、国の地方公共団体に対す る関与を積極的に見直すとして、次の地方自治法改正の際にあわせ、地方自治法第244条の2に基づく公の 施設の管理受託者の範囲を拡大し、当時、公共団体、公共的団体及び第三セクター等に限定されていた公の 施設の管理受託者の範囲を、民間事業者まで拡大するべきであるとの意見を示した93。
こうしたことを受け政府は、国・地方自治体の業務について、新たに民間企業・NPO法人等の民間事業 者にも門戸を開放し、公共施設の管理運営を認めたが、これは膨大な財政赤字を解消するため、「小さな政 府、小さな自治」づくりを進め、規制緩和と地方自治体における行財政運営の効率化・簡素化を図るため推 進する必要があった。
このようにして導入された指定管理者制度であるが、制度が改正される2003(平成15)年以前は、「管 理委託制度」と呼ばれ、1963(昭和38)年の地方自治法の改正で初めて規定されたものである。その際、
それまで使われてきた「営造物」ではなく、「公の施設」という言葉を用い、「住民の福祉を増進する目的を もってその利用に供するための施設」と定義した(第244条第1項)。そして、その設置は普通地方公共団 体の責務とし、利用にあたっては、「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではな らない」と規定されている(第244条第2項)。
この管理委託の委託先としては、公共団体、公共的団体に限定され、その権限も公の施設の管理権に限ら れ、権力的性格のある使用の許可、使用料の強制徴収など、行政処分に当たる権限行使に関する業務は委託 できないとされていた。そのため受託者の行った行為の効果は、委託した業務の範囲内で直接、委託者に生
92総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第2次答申 ―経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革―(平成14年12月12 日)」(内閣府ホームページ)www8.cao.go.jp › 総合規制改革会議 › 公表資料 平成26年11月21日閲覧
93地方分権改革推進会議「事務・事業の在り方に関する意見―自主・自立の地域社会をめざして ―(平成14年10月30日)」(内閣府 ホームページ)www.cao.go.jp › 内閣府の政策 › 地方分権改革 › 地方分権アーカイブ 平成26年11月21日閲覧
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じることとなり、こうした点が現行の指定管理者制度とは根本的に異なっている。この法改正が行われた時 期は、高度経済成長期と時期を同じくしており、地方自治体の公共施設が多数整備され始めた時期でもある。
そのためこうした制度の整備は当時の社会的要請でもあった。
その後、1991(平成3)年の法改正では、委託先に関して地方自治体が資本金、基本金等2分の1以上を
出資している法人、公共団体、公共的団体等と拡大されている。このため、地方自治体の公の施設の管理を、
公社、株式会社形態の第三セクター等に委託できるようになった。そのほか管理受託者が直接、公の施設の 利用に係る料金(利用料金)を受け取り、自らの収入として扱うことのできる「利用料金制度」も導入され、
地方自治体の会計事務の効率化を図り、受託者による経営努力をより発揮しやすくする制度も導入されてい る。このため、地方自治体は、あらかじめ公の施設の管理を委託するにあたり、使用料を徴収するか、利用 料金制度を採用するかを判断し、利用料金制度を採用する場合は、当該地方自治体がこれを条例で定めるこ ととなった。
そして、2003(平成15)年の法改正で指定管理者制度が規定されたが、指定管理者に管理を行わせるに あたって地方自治体は条例により、指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準と業務の範囲、
その他必要な事項を定めるとともに(第244条の2第4項)、指定管理者を指定する期間(同条第5項)、 対象となる公の施設、指定管理者となる団体についてあらかじめ議会の議決を経るという仕組みをとること となった(同条第6項)。なお、指定管理者の指定自体は法律上行政処分となり、民法上の契約に関する規 定が適用されない特別契約となっている。また、委託先についてはそれまで地方公共団体が資本金等を2分 の1以上出資している法人、公共団体または公共的団体等に限られていたが、この制限が撤廃され一般の民 間事業者に対しても住民の利用に供するための公の施設の管理を委託することができるようになった(第 244条の2第3項)。そして、指定管理者は、利用許可権限の行使といった包括的な管理運営権が与えられ ることとなったが、使用料の強制徴収(第231条の3)、不服申立てに対する決定(第244条の4)、行政財 産の目的外使用許可(第238条の4第4項)等、法令により地方公共団体の長のみが行うことができる権 限については、これを指定管理者に行わせることはできないとしている。さらに2003(平成15)年の法改 正後も引き続き施設の利用料金を指定管理者の収入とすることができるとし、一般的には条例で利用料金の 上限が定められるが、指定管理者はその範囲内であれば、当該地方自治体の承認を得て、料金の変更が可能 となった(第244条の2第8項、第9項)。
そして、管理運営を中長期的に安定的かつ円滑に進めるために、複数年の指定期間を設定することが可能 となり(同条第5項)、指定管理者は自主事業の実施等についても裁量権を有する。なお、維持管理・修繕 の権限・責任は、地方公共団体に属するが、そのほかの清掃、警備等の個々の業務は指定管理者が第三者へ
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委託することができる。しかし、管理に関する業務を一括して第三者に委託することはできないと解されて いる。
法改正後、この制度への移行は、施行日(2003(平成15)年6月13日公布、同年9月2日施行)から3 年以内、すなわち2006(平成18)年9月2日までに旧制度である管理委託をしている地方自治体のすべて の公の施設を指定管理者制度に移行するか、地方自治体が直接実施運営するか、事業そのものを廃止するか の選択を迫られることとなった(改正法附則第2条)。この改正法の公布直後の2003(平成15)年7月17 日には総務省自治行政局長通知(総行行第87号)において、今般の法改正は多様化する住民のニーズに「よ り効果的、効率的に対応するため、公の施設の管理に民間の能力を活用しつつ、住民サービスの向上を図る とともに、経費の節減等を図ることを目的とし」ている。このため、旧制度である管理委託を行っている公 の施設については、法律の施行後3年以内に「当該公の施設の管理に関する条例を改正する必要があり、そ の際、公の施設の管理状況全般について点検し、指定管理者制度を積極的に活用」するよう促されている。
こうした動きを受け地方自治体でも新たな動きが見られるようになる。石川県羽咋市では、2006(平成 18)年3月に改定された「羽咋市行財政改革大綱」において、多様化した住民ニーズに、より効果的・効率 的に対応するため市立公民館の管理・運営の外部委託化を目指すこととなった。その相手方として公民館は、
地域との結びつきが強いことから地域のまちづくり団体や各地区町会長連合会等を指名選定し、2009(平成
21)年度までに市内にある全11館の公民館に指定管理者制度を導入した。そして、指定期間は、3年から5
年程度としている。同市は、指定管理者制度導入のメリットとして①約2,400万円の人件費の削減が見込 まれる、② 地域住民側も行政の指示、指導に束縛されない自主的かつ柔軟な運営ができる、③行政上の事 務手続きが簡素化され柔軟な運営ができる、④地域住民のノウハウ、アイディアを活かした柔軟な施設の 運営ができることを挙げている94。
また、宮城県登米市においても2009(平成21)年12月に「公民館指定管理者制度導入の基本方針」が 示され、同基本方針に基づき2010(平成22)年4月から市内の三つの公民館に指定管理者制度が導入され た。このような取り組みの指針である同市の総合計画の基本理念は「地域の自立」であるが、指定管理者の 選定にあたっても地域の「コミュニティ運営協議会」を立ち上げ、指定期間は5年間とし、職員体制は、館 長1人・事務員2人を配置している95。このような住民参加によるまちづくり・地域づくりを意識した多 様な取り組みが全国で数多く見られるようになるが、人口は減少し、高齢化が進展している現在、地域の絆 を深め、市民自治の訓練にもなるこうした取り組みは評価に値する。
94羽咋市「市立公民館の指定管理者制度導入方針(案)について」(羽咋市ホームページ)
www.city.hakui.ishikawa.jp/sypher/...//0000000024_0000001602.pdf(平成27年8月3日閲覧)
95登米市教育研究所社会教育研究部「平成22年度指定管理の進む公民館の自立に向けた支援に関する一 考察」(登米市教育研究所ホ ームページ)www.tome-svr.jp/~wing-k/pdf/h22_syakai.pdf(平成27年8月3日閲覧)