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: 全社横断的CBM専門組織におけるその他の事例

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第5章では、日・韓企業における全社横断的CBM専門組織の現状といくつかのベスト・プラクティス を考察したが、本章ではその他のベスト・プラクティスとして、デンマークのヘルスケア業界のリー ディング企業であるノボノルディスク(Novo Nordisk)を取り上げる。なぜなら、全社横断的CBM専門組 織の戦略上の優位性や効率性などをより明らかにするためである。しかし、ノボノルディスクが属す るヘルスケア業界は本論文で取り上げた事例対象の企業が属する業界の特徴と動向などとは若干異な るものの、ノボノルディスクを日・韓企業の全社横断的CBM専門組織の事例対象に付け加えて考察する もう1つの理由として、今後ブランド先進企業が目指すべき戦略的CBMのあり方を見い出すことができ るからである。

売上高の世界ランキングでは、2008年にノボノルディスクはデンマークではトップの21位(ちなみに、

日本トップの武田は17位)であった。日本法人は1980年にノボノルディスク・ファームが設立された。

同社のCBMは海外事業を拡張するために用いられ、明確に積極的な戦略を貫いてきた。以下では、Hatch and Schultz(2008)を参考に、ノボノルディスクのグローバルな全社横断的CBM専門組織のベスト・プ ラクティスについて検討する101)

ノボノルディスクは、糖尿病、成長ホルモン、血友病に特化した世界的なヘルスケアのリーディン グ企業である102)。ノボノルディスクは、本拠地をデンマークにおき、ヨーロッパと中国ではトップ・

ランクの地位を保持しているグローバル企業でもある。ノボノルディスクの企業理念は、人々の生活 の質の向上を願い、優れた医薬品と質の高い情報の提供を通じ、社会に貢献することである。ノボノ ルディスクの明確なビジョンは、以下の6つが挙げられる。第1に、世界的な糖尿病ケアのリーディン グ カンパニーになることである。第2に、他分野においては、差別化のできる領域で製品とサービス を提供することである。第3に、競合他社に伍して業績を達成することである。第4に、ノボ ノルディ スク社における仕事は、単なる「仕事」ではないことである。第5に、私たちの価値観は、私たちのす べての行動に表れることである。第6に、「成せばなる」ことを私たちの歴史は、物語っていることで ある。

糖尿病領域における 指導的立場

患者

バイオファーマ シューティカルズの拡張

財務の健全性

企業の成長、社会経済、医療経済

社会的責任の遂行 従業員、患者さん、地域社会

環境に対する健全性 環境、動物の使用、生命倫理

図 5 ノボノルディスクのトリプル・ボトムラインに基づいた経営の原則

出所:http://www.novonordisk.co.jp/documents/article_page/document/CO_top.aspより筆者作成。

また、ノボ ノルディスクは、財務業績だけでなく、社会貢献や環境分野に対する責任を同時に果た しながら企業活動を実施するという「トリプル・ボトムライン」103)の考え方に基づいた経営を行って いる企業でもある(図5参照)。それゆえ、ノボ ノルディスクは、財務の健全性、環境への健全性、そ して社会的責任の遂行、この3つのボトムラインのバランスを大切にしながら、さまざまな活動に取り 組んでいる。2006年には、糖尿病に関する知識を広め、治療を向上させるために、糖尿病を変えると 銘打ったキャンペーンを行っている。ノボノルディスクは、自社のエグゼクティブ・マネジメント・

チームを中心にCBM専門組織としては、コーポレート・コミュニケーション機能の独立組織として、コー ポレート・ブランディングと呼ばれる部門を新たに設けた。その組織の主要な責任は、表6のように示 すことができる。

ノボノルディスクのCBMの専門組織は、自社の多くのPBを支援するための傘の役割としてCBを戦略的 に活用している。同社のトップ・マネジメントのリーダーシップの下で、ブランド・ハウスと呼ばれ る一種の家の形で自社ブランドを概念化している。このブランド・ハウスは、4つの柱によって象徴的 な意味において支えられている(図6参照)。また、CBMの専門組織は、ノボノルディスクのマネジメン トのやり方に基づいている。その土台になっているのは、CSRの理念になっているトリプル・ボトムラ

インターナル・

ブランディング

自社独自のCBの構築、ブランド・アカデミーの設立、社内のグローバルな 公表といったノボノルディスクの強いブランド中心の文化への推進 エクスターナル・

ブランディング

パートナー、スポンサーシップ、刊行物、広告、イベントなどを通した自 社ブランドの関与への推進

ブランド・

デザイン

組織内部・外部のステークホルダーに対してCBが発信するあらゆるタッチ ポイントで、「ブランドの価値観」が表現されたもの(可視化)への後押し ブランド追跡 グローバル規模での主要なステークホルダーへのブランドの関連性・浸透

とCRへの持続的な追跡の確保

表 6 ノボノルディスクのコーポレート・ブランディング組織の主要な責任

出所:Hatch, M.J. and Schultz, M.(2008), Taking Brand Initiative : How Companies Can Align Strategy, Culture, and Identity Through Corporate Branding, Jossey-Bass, p.212より筆者作成。

図 6 ノボノルディスクのブランド・ハウス

ノボノルディスクは糖尿病に対する闘いをリー ドしている。糖尿病を変えるのがわが社の願いで あり、ビジネスである。

従業員価値 人々のための科学 人々のためのケア 健康なコミュニティ

ノボノルディスクのマネジメントのやり方は、トリプル・ボトムラインによって左右される

出所:Hatch and Schultz., op. cit., 2008, p.213より筆者作成。

インである。その土台の上に、家の中心部分には戦略の柱として従業員価値、人々のための科学、人々 のためのケア、健康なコミュニティの4つが添えられている。屋根の部分には、ノボノルディスクが糖 尿病との闘いと糖尿病の絶滅が同社の強い願いであり、ビジネスであると訴えている。

とりわけ、ノボノルディスクの副社長であるErsbllは、ブランド・ハウスをスタートさせ、「糖尿病 を 変 え る 」 と い う ビ ジ ョ ン を 遂 行 す る た め に 、 CBM の た め の グ ロ ー バ ル な 部 門 横 断 的 チ ー ム (cross-functional team ; CFT)を発足させている(図7参照)。トップ・マネジメントとの共同作業の 支援を確保するために、CEOと国際マーケティング担当の副社長は、ノボノルディスクの運営委員会に 直属するCFTを強力に支援している。とりわけ、新しいブランディングCFTの活動は重要である。なぜ なら、その部門はCBMと最も緊密なパートナーであるからである。このCFTは、CBが組織の全体の効率 性を高めることを可能にするリレーションシップを構築し始めている。

さらに、ノボノルディスクでは、国際マーケティングとの連携に加えて、CBMは、同社の企業文化を 理解し、働きかける際に欠かせない2つの機能、すなわち、コーポレート・コミュニケーションと組織 内部の従業員とのリレーションシップから恩恵を受けている。サイエンス・コミュニケーションと製 品サプライヤーのような機能は、製薬業界内におけるステークホルダーによって持続するイメージを 構築するのに重要な役割を果たしている。企業責任マネジメントの機能は、自社のブランディングを 行うに当たってCFTの重要な役割を果たしている。なぜなら、長期にわたって、ノボノルディスクは、

トリプル・ボトムラインの報告の初期採用者として世界的に著名な企業であり、糖尿病に対する闘い をリードする役割を加えたCSRを推進してきたからである。また、企業の責任マネジメント部門もCFT のCBMを支援している。ブランド・ハウスの活動における4つの市場をアプローチする部門は、CFTの一 環として最初展開している。CBM部門を支援する販売部門は、販売員と顧客のCBの関連変化の効果を理 解し、管理している。

図 7 ノボノルディスクのグローバルな部門横断的CBMの専門組織

CBMを中心として組織化された グローバル・コア・チーム

トップ・マネジメン トの運営委員会

レファレンス・

グループ

国際マーケティング

企業の健康プログラム

企業責任マネジメント

企業の従業員と組織

SC

製品サプライヤー NNの関連会社

NNヨーロッパ、北英国 NN中国

NNドイツ

NNI

CC

注:CC(Corporate Communication)、NN(Novo Nordisk)、NNI(Novo Nordisk India)、SC(Science Communication)

出所:Hatch and Schultz., op. cit., 2008, p.214より筆者作成。

このような活動の成果は、2006年には米国で糖尿病の市場リーダーになったことで現れている。具 体的には、2002年から2006年にかけて売上高は北米では30%が増加し、糖尿病を変えるというビジョン を発表した2006年だけでも売上高は26%増加した。2007年には、ノボノルディスクのトップ・マネジメ ントは、コーポレート・ブランディングと責任の部門を設置して、社会的責任、ステークホルダーと の関係、広報業務、PR、CBMの分野のコア能力を構築することに決定している。コーポレート・ブラン ディングと責任の部門は、糖尿病を変えるという持続可能で責任あるビジネスとして、ノボノルディ スクの現在と未来のグローバル・リーダーシップを確保するために連動している。

以上、ノボノルディスクの事例の考察を通して導き出されたインプリケーションは、以下のように 整理することができる。第1に、今日において企業価値を向上させるためのCBMを実行するに当たって、

企業にとって重要な成長軸となるのはトリプル・ボトムラインの考え方、すなわち、企業の経済的価 値だけではなく、組織的価値、社会的(環境的)価値を重視すると同時に、それらの価値を同時並行的 に生み出せるような戦略的思考に基づいたCBMなのである。この戦略的思考は、今後企業が目指すべき 戦略的かつ全社的なCBMのあり方であると言える。なぜなら、組織内部・外部のステークホルダーのPB とCBの価値に対する意識の変化が最も大きな要因として挙げられる。第2に、トップ・マネジメント主 導型のCBM専門組織への推進である。上述したように、ノボノルディスクのCEOと国際マーケティング 担当の副社長は、「糖尿病を変える」というビジョンを遂行するために、自社の運営委員会に直属する CBMのためのグローバルなCFTを強力に支援しているため、5章で既述したCBを構築し実行する際に生じ うるさまざまな障害要因を克服することができたと考えられる。第3に、グローバルな視点やレベルに 基づいた全社横断的CBM専門組織体制づくりである。すなわち、本社内における組織との連携プレーだ けではなく、国内の関連会社、各国の子会社などと全社横断的にCBMを推進しなければならない。なぜ なら、自社独自のCBとPBが目指すべき基本理念・ビジョン・価値観をグローバル・レベルで明確に伝 えると同時に、それらの一貫性を保持することができるからである。

既述したブランド先進企業のBM専門組織の進化プロセスにおけるPBMとCBM間の関係を、多様な視点 から比較すると、表6のように、分類することができる。

従来のBMの組織形態 現代型BMの組織形態 BMの主な

戦略ポイント PBM CBMを中心とした全社横断的なBM

代表的な先進企業 P&G、花王など ソニー、サムソンなど

マネジメント上 の責任の主体と その取り組み

の形態

ミドル・マネジャーを中心とした ブランド・マネジャー制度

トップ・マネジャー(CEO)またはトッ プ・マネジメント(CBO)を中心とした全 社横断的CBM専門組織(一般的には、マー

ケティング、コーポレート・コミュニ ケーション、人的資源戦略、デザイン開

発などに関わる部署などを含む) 職能上の責任と

専門部門のルーツ マーケティング部門 ほとんどまたはすべての部門 表 7 BM専門組織の進化プロセスにおけるPBMとCBM間の比較

ドキュメント内 Microsoft Word - 697_徐誠敏_本文.doc (ページ 33-39)

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