3.2 実験結果
3.2.1 全条件の結果
被験者から得られた実験データより誤答であった試行と標準偏差(SD)を求め,反応時間 がSDの2倍以上長いもしくは短い試行を外れ値として除外した値を用いて,不一致条件と 一致条件の反応時間の差をフランカー効果として算出した.グラフの誤差線は全て標準誤差 である.この章では始めに実験全体での結果と一日目,二日目に分けた場合での結果を示す.
その後,有意差が認められた複合現実の条件内および中心AR’ - 周辺AR’条件について第 3.21節,3.22節で説明を行う.図3.24に全条件のフランカー効果の結果を示す.条件間の 違いを要因として1要因の分析を行ったところ有意差はみられなかった(F(1,9) = 1.88,p
= 0.14).しかし複合現実の条件は統制条件と比較してフランカー効果が小さい傾向がある.
そこで複合現実の条件でセッション内に学習効果がみられたか確認を行うために,実験を一 日目と二日目で分けた場合での結果を図3.25に示す.一日目と二日目のセッションの違い を日にちの要因とし,2要因の分散分析を行ったところ,交互作用が認められた(F(1,9) = 2.86, p < 0.05).また中心R - 周辺AR条件と中心AR’ - 周辺AR’条件に日にちの単純主 効果がみられた(p < 0.01,p < 0.05).
図3.24 全条件のフランカー効果
3.2 実験結果
図3.25 全条件を一日目と二日目で分けた場合でのフランカー効果
3.2 実験結果
3.2.2 複合現実の条件の結果
複合現実の条件内で一日目と二日目のセッションの違いを日にちの要因とし,複合現実 の要因と 2要因の分散分析を行ったところ交互作用が認められた(F(1,9) = 10.586, p <
0.01)(図3.26).一日目は中心R - 周辺AR条件より中心AR -周辺R条件の方がフラン カー効果が小さいが,二日目にはそれらの値は逆転して中心R -周辺AR条件の方がフラン カー効果が小さくなる結果となった.また図3.25より中心AR - 周辺R条件に関して,他 の条件は一日目より二日目の方がフランカー効果が小さいが,この条件のみ二日目の方がフ ランカー効果が大きくなった.複合現実の条件内で交互作用が認められたため,詳細なデー タとして複合現実の条件に関して一致条件と不一致条件の反応時間を図3.27に示す.一致 条件と不一致条件の違いを要因として複合現実の要因と 2要因の分散分析を行ったところ,
中心 R - 周辺AR条件において周辺刺激による妨害が生じる不一致条件で日にちの単純主 効果が認められた(p<0.01).また中心AR - 周辺R条件および中心R -周辺AR条件の一 致条件では日にちの単純主効果はみられなかった.これにより中心R-周辺AR条件におい て,一日目では目標刺激を同定する際にAR物体による妨害を受けるが,二日目にはAR物 体による妨害が減少したため,フランカー効果が小さくなったことが示唆された.AR物体 による妨害に関しては第4.1節で考察を行う.
3.2 実験結果
図3.26 複合現実の条件のフランカー効果
図3.27 複合現実の条件の反応時間
3.2 実験結果
複合現実の条件において各被験者のデータを1セットごとに散布図および回帰直線として 表したグラフを図3.28から図3.37に示す.図3.30,図3.31,図3.35の3名は実験開始時 には中心AR - 周辺R条件の方がフランカー効果が小さいが,終了時には中心R -周辺AR 条件の方が値が小さくなった.また図3.33,図3.36,図3.37の3名は終了時でも中心AR - 周辺R条件の方がフランカー効果が小さいが,実験開始時と比較すると終了時にはAR物 体による妨害を排除している傾向をみせた.また図3.32のように実験開始時から中心AR -周辺R条件の方が値が小さく,実験が進むにつれて,その差が大きくなる被験者もいた.図 3.29と図3.34の二名は条件間の変化がなかった.しかし図3.28の被験者は他の被験者と異 なる傾向として実験開始時において中心R - 周辺AR条件の方がフランカー効果が小さく,
終了時には中心AR -周辺R条件の方が値が小さくなった.
図3.28 被験者Aのデータ及び回帰直線
図3.29 被験者Bのデータ及び回帰直線
3.2 実験結果
図3.30 被験者Cのデータ及び回帰直線
図3.31 被験者Dのデータ及び回帰直線
図3.32 被験者Eのデータ及び回帰直線
図3.33 被験者Fのデータ及び回帰直線
3.2 実験結果
図3.34 被験者Gのデータ及び回帰直線
図3.35 被験者Hのデータ及び回帰直線
図3.36 被験者Iのデータ及び回帰直線
図3.37 被験者Jのデータ及び回帰直線
3.2 実験結果
3.2.3 AR 物体のみ(有彩色)条件の結果
中心AR’ - 周辺AR’条件で日にちの単純主効果がみられたため,統制条件と中心AR’
-周辺AR’条件の反応時間を比較したグラフを図3.38に示す.統制条件と比較した場合,中
心AR’ - 周辺AR’条件は一致条件と不一致条件共に一日目の反応時間が最も長くなってい
る.しかし,二日目になると反応時間が最も短くなった.中心AR’ - 周辺AR’条件に関し て一日目と二日目のセッションの違いを日にちの要因とし,一致条件と不一致条件の違いを 要因とした2要因で分散分析を行ったところ,交互作用が認められた(F(1,9) = 7.48,p
< 0.05).また一致条件と不一致条件共に日にちの単純主効果が認められた(p < 0.05,p <
0.01).
図3.38 統制条件および中心AR’ -周辺AR’条件の反応時間