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全 体 考 察

ドキュメント内 方   法 (ページ 92-104)

実験1では,誤信念課題とふり遊び課題に相関は見ら れなかったが,誤信念課題と役割遊び課題,ふり遊び課 題と役割遊び課題に相関が見られた。よって「心の理論」

と役割遊びは関連することが示され,また,ふり遊びと 役割遊びも関連したものであることが示された。また,

実験2では,役割遊び訓練群においてのみ誤信念課題の プレテストとポストテストの得点に差が見られた。つま り,ふり遊び訓練では,誤信念課題の得点を向上させる ことはできなかったが,役割遊び訓練においては,誤信 念課題の得点を向上させることができた。

Leslie(1987)によると,子どもは,ふりの中で現実 の世界を見失わずに,ある事物に与えるアイデンティ ティーと,その物の現実のアイデンティティーを区別し,

事物をそのものとして表象したり,他のものとして表象 することが可能であり,そのふりは「心の理論」の現れ と考え,ふりと「心の理論」の関連を主張していた。し かし,本研究の結果は,Leslie(1987)を支持するもの ではなかった。

では,ふり遊びと「心の理論」の関係をどのようなも のとして捉えていくべきであろうか。Perner(1991)は,

子どもはふり遊びを表象的に理解しているのではなく,

仮説的な 〜であるかのような(as if 〜) のように振 舞うことであり,ふりはこの仮説的置換えにすぎず, ふ りをするという心的状態を理解しているのではないと主 張していた。また,Harris(1993)は,2歳児でもふり の行動における表象的意味の理解は可能だが,初期のふ り遊びにおいては,行動をとる相手の想像過程を考える 必要はなく,相手と同じふりの実態を想像できればよい とし,ふりにおける表象的理解が直接「心の理論」につ ながることを否定していた。またHarris(1993)では,

ふりにおいて子どもは,外的事象に関する知識(スクリ プト)を活用することで,その行為に足りない要素を想 像し,構成し処理をしているという。このようにふり遊 びにおいて,子どもは想像された状況を構成的に理解し ているのであって遊び相手の心的状態を読み取っている のではないと主張する。また,Lillard(1993)は,ふり を「如き行為(acting as if)」としてのみ解釈し,心の状 態としては解釈していないと主張した。

ではふり遊びは心の理解には関連しないと結論づけて よいのだろうか。Lillard(2001)では,初期のふり遊び は「心の理論」と直接的な関連はないとしながらも,ふ りの経験や社会的相互作用や社会的認知能力の発達が絡 みながら,「心の理論」と役割遊びの出現に影響を与え ると主張していた。Leslie(1987)のように,ふりが直 接「心の理論」につながると考えることは難しいが,ふ

り遊びにおける物の見立てや現実とふりの区別やといっ たものが初期の他者の心を理解する能力と関連している 可能性も考えられる。つまりそれは他者の誤信念を理解 できるほどの表象能力ではなく,他者の心を理解するた めのもっと初期の能力の表れかもしれない。しかし,本 研究ではふり遊びと初期の心の理解に関する能力との関 連は明らかにすることはできていないためさらなる研究 が必要である。

次に役割遊びについて見ていく。Harris(2000)では,

役割遊びは,子どもに他の人の視点からの世界を想像す る機会を提供するとし,「心の理論」と役割遊びの関連 を主張した。また,Lillard(2001)も,役割遊びと「心 の理論」の関連を主張し,役割遊びにおいて,他者を演 じることや,他者が役割を演じているのを見ることや,

役割遊びが行われる前や途中の役割決めや場面設定など の話し合いが「心の理論」に重要であると考える。本研 究では,役割遊びと「心の理論」の関連が見られ,役割 遊びから「心の理論」への影響も示唆された。これは,

Harris(2000)やLillard(2001)の主張と一致するもの である。

では,役割遊びはふり遊びとどのように異なり,どの ような点が「心の理論」と関連するのであろうか。実験 1でふり遊びと役割遊びの相関が見られたが,これはふ り遊びが役割遊びを可能にするものであるためと考えら れる。ふり遊びと役割遊びでは,他者の想像の世界を共 有すること,自分の経験したことを想起すること,その 事象に関するスクリプトを使ったり,自分の経験したこ とを想起することが共通している。しかし,ふり遊びと は異なり,役割遊びでは,自分とは異なる他者の視点に 立ち,そこで他者の感情を考えたり,他者の行動を考え ることが必要であり,これらの点が「心の理論」と関連 しているのではないかと考えられる。また実験2の役割 遊び訓練では,他者の視点に立たたなくても自分の視点 のままでも自然に役割を演じられるような課題もあった が,結果は誤信念課題の得点を向上させるものであった。

そのため役割遊びでは,自分の視点のままで役割をこな せるような場面でも,他者の視点に立ち,そこで感情や 行動を考えているということが考えられる。ただし,本 研究では,実験者との1対1で役割遊びを行ったため,

Lillard(2001)が主張するような,役を演じる他者を見 ることや,話し合いと「心の理論」の関連について検討 することができなかった。

ふり遊び,役割遊びにおけるモジュール説,理論説,

シミュレーション説の妥当性を考えると,ふり遊びと「心 の理論」との直接な関連が見られず,役割遊びとのみ関 連が見られたため,シミュレーション説の妥当性が証明 された。しかし,ふり遊びと役割遊びに関連が見られた ことからも,モジュール説や理論説を完全に排除するの

ではなく,ふり遊びが役割遊びを可能にすることにより 間接的に「心の理論」と関連している可能性があるよう に,モジュール説や理論説がふり遊びを介して役割遊び を間接的に支えている可能性があると考えられる。しか し今回の研究では明らかにすることはできなかった。

今後の課題としては,子どもの「心の理論」よりも初 期の心の理解の能力とふり遊びの関連を明らかにするこ と,ふり遊びと役割遊びがどのように関連しているのか を明らかにし,さらにそれぞれがどのようにモジュール 説,理論説,シミュレーション説と関連しているのかを 明らかにすることが必要である。また,本研究では役割 遊びから「心の理論」へ影響は示唆されたが,「心の理論」

から役割遊びへの影響は明らかにできていない。この向 きの因果関係が見られるのか,さらなる研究が必要であ る。さらに本研究では,実験場面で役割遊びと「心の理 論」の関連を明らかにしたが,家庭や幼稚園,保育所と いった実際の子どもの自然な遊びの場面で役割遊びがど のように心の理解と関連するのかを明らかにすることが 必要である。

文   献

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Forty-six children from 3 to 6 years of age participated in two false belief tasks, role play, and pretend play in Experiment 1. The results revealed a significant correlation between false belief and role play behavior, but not between false belief and pretend play. In Experiment 2, 38 children from 3 to 5 years of age were assigned to a role play training group, pretend play training group, or a control group. After five training sessions, the role play training group, but not the pretend play training group or the control group, increased their scores on the false belief task. Based on the results of Experiments 1 and 2, it is concluded that role play, but not pretend play, is a precursor of the acquisition of theory of mind.

【Key Words】 Theory of mind, Role play, Pretend play, Preschoolers

2010. 3. 24 受稿,2011. 7. 19 受理 岡大学教育学部研究報告 (人文・社会科学篇) 第 43 号,

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付記

本研究の実験にご協力いただきました幼稚園の園児の 皆様と先生方に深く感謝したします。

ドキュメント内 方   法 (ページ 92-104)

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