―児童英検参加者の分析を通して―
5.4 全体の考察
最も難易度の高いテストGOLD を受験した児童の み動機づけと不安が英語の熟達度に関係しており,
BRONZE とSILVER ではそのような関係は認められ
なかった。ゆえに,小学生の英語学習において情意 要因が英語の熟達度に影響を与えるということは本 研究からだけでは結論づけることはできない。
ではなぜ,このように受験するテストの難易度に より情意要因と英語の熟達度の関係に違いが現れた の で あ ろ う か 。 ま ず 第1に 推測で き る こ と は, BRONZE の正答率の平均が86.70とかなり高く,テ ストが易しすぎため(バトラー・武内, 2005-6),動 機づけや不安などの情意要因が正答率に影響を与え なかったのではないかと考えられる。一方,SILVER
(80.19)の正答率の平均はGOLD(82.18)より低い が,文字に関する出題内容に関してSILVER ではア ルファベットと音声の結び付き・簡単な単語の認識 程度であったのに対し,GOLD では基本的な語句や 短い文の認識なども行うなどかなり高度な問題が出 題されている。文字に関する出題の有無や問題形式 が今回の結果に影響したとも考えられる。
第2に,表1で明らかなように,GOLD を受験し た児童のほとんどが5年生であることから,これら の結果が受験したテストの難易度によるものなのか それとも学年の違いによるものなのかは明らかでは ない。つまり,テストの難易度とは関係なく,学年 が上がるほど情意要因が熟達度に影響を与えるとも 推測できる。
また,最も難易度の高いGOLD においてのみ動機 づけや不安の情意要因と熟達度が相関を示していた ことから,学習歴が長くなるほど情意要因が英語の
熟達度に影響を与える傾向があるとも解釈できる。
ゆえに,児童の英語学習が進めば進むほど,教師側 は児童の英語学習に対する意欲を高めることができ るように配慮し,将来英語がどのような場面でなぜ 必要かなどを説明すると同時に,不安をなるべく感 じないような授業の工夫をしていく必要があると思 われる。
最後に本研究の限界と今後の課題について言及す る。第1に,どの下位尺度も正答率との関係におい て統計上有意な関係は認められなかった。このため,
本研究から情意要因と熟達度の関係においてはっき りした関係があるとは言えない。しかし,これは人 数が少ないためであり,調査対象者を増やすならば,
統計上有意になるとも考えられる。ゆえに,今後は より多くの児童を対象にした研究が必要である。第 2に,本研究ではあくまでも情意要因と英語の熟達 度の相関関係を調べた研究であり,因果関係ではな い。ゆえに,その結果の解釈には十分な注意が必要 である。第3に,本研究ではすでに児童英検を実施 している小学校において研究を行った。児童が各自 受験したいグレードのテストを受験したため,その 人数にばらつきがあり,学年差や男女差の違いを正 確に調べるだけの十分な人数が確保できなかった。
以上のような限界はあるが,本研究は日本の小学 生の情意要因と英語の熟達度を調べた先駆的な研究 であり,小学校英語教育に有益な示唆を与えるもの と思われる。最も難易度の高いGOLD を受験した児 童において情意要因と英語の熟達度が関係していた ことから,学習歴が長くなるほど情意要因が英語の 熟達度に影響を与える傾向があるとも考えられる。
ゆえに,教師側は児童の英語学習が進めば進むほど,
より一層彼らの学習意欲を高め,不安をあまり感じ ないような授業の工夫をしていく必要があるであろ う。
小学校英語教育に関する研究,特に,評価に関す る研究は始まったばかりである。今後は,情意要因 だけでなく社会的文化的要因などさまざまな角度よ り小学生の英語の熟達度を調べていく必要があると 思われる。
6 本研究の限界と今後の課題
謝 辞
最後に本研究の機会を与えてくださった(財)日 本英語検定協会の皆様,選考委員の先生方,とりわ け貴重なご助言・ご指導をいただいた大友賢二先生 に心より感謝を申し上げます。また,小学校を探し
紹介してくださった児童英検担当の染谷有美様及び 児童英検の資料を提供してくださり貴重な助言をく ださった調査研究課の前田かおり様に心よりお礼を 申し上げます。最後に本研究に参加してくださった 先生方と生徒の皆様に心から感謝いたします。
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参考文献(*は引用文献)
内的動機づけ
1. 英語えいごの授業じゅぎょうはとてもたのしいです。
3. 英語
えいご
の授業
じゅぎょう
のある日
ひ
は楽
たの
しみです。
6. 習ならった英語えいごをもっと使つかってみたいです。
8. もっと英語
えいご
の授業
じゅぎょう
があったほうがいいです。
外国に対する興味 2. いろいろな外国
がいこく
にいってみたいです。
4. がいこく外国のお友達ともだちをたくさん作つくりたいです。
12.英語
えいご
が上手
じょうず
になって外国
がいこく
の人
ひと
と話
はな
してみたいです。
15.外国
がいこく
に住
す
んでみたいです。
17.がいこく外国のことをもっと知しりたいです。
道具的動機づけ
7. ちゅうがっこう中学校に入はいって英語えいごの勉強べんきょうで困こまらないように勉強べんきょうします。
11.大人
おとな
になったら自分
じぶん
にとって必要
ひつよう
になると思
おも
うので,英語
えいご
を勉強
べんきょう
します。
14.しょうらい将来なりたい仕事しごとのために英語えいごを勉強べんきょうします。
19.高校
こうこう
や大学
だいがく
に入
はい
るために必要
ひつよう
なので英語
えいご
を勉強
べんきょう
します。
親の励まし 9. おうちの人
ひと
は英語
えいご
がとても大切
たいせつ
だと思
おも
っています。
13.おうちの人ひとは私わたしが英語えいごができるようになることを望のぞんでいます。
18.おうちの人
ひと
は英語
えいご
を一生懸命
いっしょうけんめい
勉強
べんきょう
しなさいといいます。
不安 5. 英語
えいご
の授業
じゅぎょう
でみんなよりできないと心配
しんぱい
です。
10.英語
えいご
の授業
じゅぎょう
中
ちゅう
はなんとなくいつも心配
しんぱい
です。
16.英語えいごの授業じゅぎょうで答こたえたり,はっぴょう発表するときどきどきします。
資料:Motivation and Attitudes toward Learning English Scale for Children (MALESC)
ALT 主導で行われる英語活動を観察し,
ALT が問いを発する場面の変化について 検討した。9月から3月に実施された,小学校4年 生の授業を対象に分析を行った。カテゴリー分析か らは,ALT の個々の子供への働きかけが減少するこ と,学級担任への問いが増加することが見られた。
また,子供の不適切な応答や無反応な状態に対して,
ALT は子供に他の可能性を提案していた。さらに,
事例分析から,ALT の変化として,子供の発話を活 発化させ,クラス全体を巻き込んだ授業へと移行す ること,1つの問いの機能を複雑化させること,子 供観の変化が見られた。授業実践を通して,ALT の 発話には「教師」らしさが現れるようになったと言 えよう。
小学校の英語活動では学級担任とALT のティー ム・ティーチング(以下,TT とする)が望ましいと されている。しかし,さまざまな人がALT となって おり,ALT と学級担任によるTT の難しさや日本の 子供の能力差に感じるALT の戸惑いのため,研修の 重要性が指摘されている(松川, 2004)。実際,ALT を対象とした研修が実施され,学びの場が設けられ ている。教師の学びの場としては,このような学校 外に設けられた場だけでなく,自己の実践,同僚と の 交 流 が 指 摘 さ れ て お り (Bransford, Brown, &
Cocking, 2000),ALT も研修だけではなく他の機会 を生かしながら学んでいると考えられる。多くの場 合,ALT が1つの学校で行う授業回数は限られてい
ることを考えると,他の教師との恒常的な交流より もむしろ自分自身の授業実践を通して学ぶことが中 心になる。そこで,本研究では特にALT が授業の中 で変化する様子を明らかにする。
教師は発達していく存在である。新任教師が直面 する課題としては,教師としての社会化や授業技術 の熟達化が挙げられる(浅田, 1999)。中堅教師にな ると自分なりの特性を示すことや若手教師への助言 が求められる(吉田, 1999)。このように,経験や年 齢に応じてさまざまな課題に直面する。そして,教 師は自己の経験を通して学んだり,課題に向き合い ながら,子供観や授業観を変えていくのである(稲 垣・寺崎・松平,1988)。ALT は学級担任になるこ とはないなど通常の教師と異なる点も多く,教師と しての社会化という側面で違いはあるものの,授業 技術や子供との接し方に関して成長していく必要が あるという点では同様である。そのため,ALT なり の専門性の向上について検討する。
教師の専門性を問う際には,子供の発達支援者と いう側面と教科指導者としての意味が挙げられる
(西, 1999)。ALT の大きな特徴としては,英語の授 業のためだけに教室を訪れるということが挙げられ,
子供とのかかわりは限定的である。この点を踏まえ,
特に,教科指導者としての側面について検討する。
英語の指導に関しては,これまでにもカリキュラム についての検討がなされ(例えば,松川, 1997),授 業試案(例えば,京都市教育委員会, 2001)や教材 例が示されている。そこで,本研究では,授業内容 ではなく授業運営に絞って検討する。教師はさまざ まな技術を駆使して授業を進める。例えば,熟練教 師は,学ぶ側の視点に立って授業を考えること,子