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光導波路の設計とシミュレーション

第 3 章 感光性ポリシランを用いた光導波路の作製と評価

3.2 光導波路の設計とシミュレーション

3.2.1 アンテナ結合型 Y 分岐

光スイッチは素子として考えた時、小さい方が好ましいが分岐部分における光の損失は 分岐角度が大きくなるにつれて増える。そこで、導波路の分岐部分にはアンテナ結合型 Y 分岐を用いる。アンテナ結合型Y 分岐を用いることにより低損失で分岐角度を大きくする ことができる[11]。

アンテナ結合型 Y 分岐ではいったんクラッドへ放射した光をある角度で置かれたア ンテナ状の導波路で受け、再び導波させるものである。

図3-2 従来型Y分岐構造

z=0 (2T’secθ–T)cotθ 2T

2T’

n1

n2

n2

n2

θ

θ z

x

n1

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図3-3 アンテナ結合型Y分岐構造

次に、過去に行われた両導波路の分岐損失についての計算結果を載せる。

3.2.2 アンテナ結合型 Y 分岐の BPM 法による損失評価

ビーム伝搬法(Beam Propagation Method:BPM)によって得られる正規化された

界E(x,z)に対し、x = 0に関して対称であるようなTE0モードの正規化された固有関数

φ0の2つの導波路への電力透過率η’は、

     

2

0 , 0 exp 0 2sin

2

'

E x zφ xxc jk n θ x dx

η

となる。ここに、xcは分岐後の導波路の中心の座標であり、exp(j k0 n2 sinθ x)はE(x,z)

とφ0(x–xc)の位相面の傾きを補正する項である。η’は積分がzに依存しなくなった所で

評価し、–10log η’で分岐損失を定義する。BPMによる光伝搬のシミュレーション結果 から、分岐損失を計算できる[12]。

図3-4は分岐損失と分岐角の関係である。図3-4から従来型Y分岐の分岐角度2θが 小さくなる(ゼロに近づく)ほど損失も小さくなっているのに対して、アンテナ結合型 Y分岐では分岐角度が2θ=3°の時一番損失が小さく、分岐角度が2θ=3°より小さくなる

(ゼロに近づく)と再び損失が増加していることがわかる。

従来型Y分岐の分岐角度2θ=1°と同等の損失でアンテナ結合型Y分岐の分岐角度は 2θ=3°なので導波路のサイズを小さくできる。この結果より、導波路作製において分岐

角度2θ=3°のアンテナ結合型Y分岐を用いた。

2T n1

n2

θ

n2 θ

2T’

x

z n1

n2

z=0 2T’cosecθ

(3.1)

35

図3-4 導波路のコア幅2T = 10μmの場合の分岐角度2θと分岐損失の関係

3.2.3 曲がり導波路概要

図3-5 曲がり導波路で構成されたMZ型導波路の光スイッチの概略図

La=25mm

位 相 制 御 部 Ls=3mm

導 波 路 間 隔 W=310μm 2θ=3°

Lf Le

Ld

Lc=381.95μm Lb

Lm

熱が干渉しない程度離さな ければならない

導波路のサイズはプロセスや実験が容易な25mm以下を 目安に設計

0 2 4 6 8 10 12 14 16

0 2 4 6 8 10 12

2θ (degrees)

junction loss (dB)

従来型Y分岐

アンテナ結合型 Y分岐

アンテナ結合型Y分岐

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3.2.2 節の分岐によるシミュレーションでは全て直線で構成された導波路についての

損失について述べたが、図3-5のように分岐後―位相制御部間の導波路に曲率半径を指 定した曲がり導波路構造を取り入れる事で、位相制御部との交点における損失を尐なく することができる。

図3-5のMZ型導波路では、Ldは直線、Le、Lfは同じ曲率半径の曲線となっている。

光の伝搬特性に対して大きな影響を及ぼすのは、一般に伝搬定数よりも電磁界分布の 変形である。電磁界分布は図3-6のように屈折率分布がy軸に沿って傾くと、全体が屈 折率の大きいほうに引き寄せられるようにyの正方向にずれる。したがって、直線導波 路から曲がり導波路に光が入射すると、図 3-6(a)に示すようにモード電磁界分布の 中心が一致しないので損失が起きる。これを低減するには、図 3-6(b)のように電磁 界分布の中心が一致するように導波路の中心軸をずらして設計する必要がある。曲率が 逆向きの導波路同士を接続する場合も、同様の工夫が必要である。

曲がり導波路の軸ずれはBPMでシミュレーションすることで求められる。シミュレ ーションにより曲がり導波路に入射した光の界分布がグラフ化されるので、その界分布 の中心が導波路の中心座標からどれくらいずれているかをグラフから読み取るという ものである。シミュレーションの詳細については過去にOBの福田俊介氏が行ったもの を付録に載せる。以下、軸ずれの値のことをオフセット値と呼ぶことにする。

(a)導波路の中心を合わせた場合 等価的な

軸ずれ

放射

y

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(b)界分布の中心を合わせた場合

図3-6 直線導波路から曲がり導波路への接続部の電磁界分布

3.2.4 曲がり導波路設計

曲がり導波路の設計のために、図 3-5 における Lm(分岐点から分岐点までの長さ)

が計算されている[12]。これを表3-1に示す。

表3-1 分岐点から対称な分岐点までの長さ

MZ型導波路 分岐角度 2θ[°]

曲率半径

(cm)

Lmの長さ

(mm)

アンテナ結合型

Y分岐 3°

7 14.67

12 17.30

17 19.19

20 20.07

従来型Y分岐 1° 17 22.04

図3-5の直線導波路部Ld の長さ、曲がり導波路部Le、Lfの曲率半径を変化してい て、Le、Lfは互いに曲率が逆向きであり曲率半径は等しくなっている。Le、Lfの接続 部のオフセット値は、直線導波路と曲がり導波路の接続部のオフセット値を2倍にした 値である。MZ 型導波路のサイズはプロセスや実験が容易な 25mm 以下を目安に設計 をしてある。分岐部分にはアンテナ結合型Y分岐で分岐角度を2θ=3°、位相シフタ部の 導波路長を Ls=3mm、位相シフタ部の導波路間隔を導波路の中心を基準として

y

38 W=310μm、とし一定の値としてある。

曲率半径は、従来型のY分岐導波路のサイズとほぼ一緒となるR=7cmを最小値とし、

より低損失にするために、曲率半径を5cmおきに大きくしたR=12cm、R=17cmのMZ 型導波路、図3-5の曲がり導波路部Leを省いた曲率半径R=20cmのMZ型導波路とな っている。また、作製上限界に近いサイズの導波路として、従来型 Y 分岐で分岐角度

2θ=1°、曲率半径R=17cmのMZ型導波路も設計されている。

表3-2に、BPMを用いて得られたそれぞれのオフセット値、損失を示す。作製上限界 に近いサイズの導波路として、従来型Y分岐で分岐角度2θ=1°、曲率半径 R=17cmの MZ型導波路についても、載せてある。

表3-2 設計したMZ型導波路(1)~(7)のそれぞれの全体の損失

MZ型導波路 分 岐 角 度 2θ

曲 率 半 径

(cm)

オフセット

(μm) 損失(dB)

(1)

従来型Y分岐 3° 0 0 4.593 (7) 1° 17 0.15 0.1542 (2)

アンテナ結合型Y分岐 3°

0 0 3.397

(3) 7 0.4 0.2041

(4) 12 0.22 0.1941

(5) 17 0.15 0.175

(6) 20 0.1 0.1561

応用を考えた際、損失は1dB 以下となることが望ましい。表3-2 から、アンテナ結 合型Y分岐を用いた曲がり導波路を採用することで、3°という広い分岐角で曲率半径 を7cmとしても、その損失は1dB以下となることが分かっている。よって、表3-2に おける(3)~(7)の導波路と、Tiヒータ、Al電極のパターンをフォトマスクにのせること にしている。(フォトマスクの作製は業者に委託)

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