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光学系の調整

ドキュメント内 もつれあい光子対生成源の改善 (ページ 33-60)

4-1 方針

ここではセットアップを組む際に実際に行った調整の大まかな流れを説明する。3-5でも述べたよう に、改善後のセットアップでは、ポンプレーザーの光軸がその後の調整の基準となる。そのため、まず は3つのファイバー結合器の調整を行った。3-5節でも述べたように、改善後のセットアップでは、

2枚のミラーを用いて光軸の調整を行うことが出来ない。よってファイバー結合器の調整の精度は、今 後の調整の難易度を大きく左右させる。具体的には4-4節で説明する。

次にモードマッチングを行った。モードマッチングとはポンプレーザーを入射させるファイバー結合 器がつくるビームの最小のビーム径とその位置、最終的に検出器に接続する2つのファイバー結合器か ら入射させる、波長が 810nm のビームの最小のビーム径とその位置が PPKTP の位置で一致するよう にすることである。これを行うことで、最終的に検出させるもつれあい光子対の強度が大きくなるとい うシミュレーション結果がある[3]。この調整を行っていないと、PPKTP で発生した2つの光子を、2 つの検出器にうまく入射させることが出来ず、もつれあい光子対の強度を上げることが出来ない。

モードマッチングが完了したら、次は光学素子の調整を行う。基本的にはポンプレーザーの光軸を 絶対的な基準にし、ポンプレーザーに近い側の光学素子から調整をすすめていく。サニャック干渉計を 調整する段階では、特に DPBS の調整を注意深く行った。イメージとしては、サニャック干渉計におけ る透過側と反射側の光軸のなす角が直角で、かつそれらが作る三角形が、除振台に対して平行になるよ うにする。ある程度のズレはファイバー結合器を固定している台をマイクロメーターで並行移動させる ことによって補うことができるが、ズレが大きいと、光子対の強度を上げることができないばかりか、

位相の不一致が生じ、もつれあい光子対の状態が崩れてしまう。つまり、測定基底を変えると強度が変 化してしまうのである。

サニャック干渉計の調整を終えたら、この時点で同時計測を行い、光子対強度を確認する。同時計 測を確認できない場合は、もう一度光学素子の調整からやり直さなければならない。うまく光子対を捕 まえることが出来たら、測定基底を決めるための光学素子の調整を行い、どれほどもつれあい光子対の 状態が実現できているかは、異なる複数の測定基底のビジビリティ(明瞭度)

𝑉𝐻𝑉=𝑁𝐻𝑉+ 𝑁𝑉𝐻− 𝑁𝐻𝐻− 𝑁𝑉𝑉

𝑁𝐻𝑉+ 𝑁𝑉𝐻+ 𝑁𝐻𝐻+ 𝑁𝑉𝑉 (72)

𝑉𝑃𝑀=𝑁𝑃𝑀+ 𝑁𝑀𝑃− 𝑁𝑃𝑃− 𝑁𝑀𝑀 𝑁𝑃𝑀+ 𝑁𝑀𝑃+ 𝑁𝑃𝑃+ 𝑁𝑀𝑀

(73)

を見ることで評価することが出来る。ここで N は単位時間当たりの光子のカウント数を表しており、下 添え字は2つの検出器で、どの偏光状態の光子を測定するかを表す。理想的には測定基底を変えてもビ ジビリティは1で一定であるが、うまくもつれあい状態が作れていないと、1より小さくなってくる。

測定基底によって相関が大きく変化する場合には、もう一度光学素子の調整(あるいはファイバー結合 器の調整)を行わなければならない。

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4-2 ガウシアンビーム伝播

この節では、まずガウシアンビームがどのような形で表されるか、およびビームモードの伝搬を、どの ように理論的に追っていくかを説明する。電場の伝搬を記述するうえで、分極の非線形項を考慮しなけ れば、(37)の右辺は 0 になり

∆E −εμ∂2

∂t2E = 0 (74)

となる。さらに電場の時間依存性が、eiωtの部分に限る場合、(74)は

∆E + k2(r)E = 0 (75)

と、ヘルムホルツ方程式に帰着する。ここで、rは電場の伝搬方向 z 軸に垂直な方向の距離であり、

k2(r) =ε(r)μω2の関係式を用いた。少し回りくどいが、今後の説明のために、媒質が次のような屈折

率分布を持つものと仮定する。

𝐧𝟐(𝐫) = 𝐧𝟎𝟐(𝟏 − 𝐠𝟐𝐫𝟐) , g𝟐𝒓𝟐≪ 𝟏 (75)

ここで、n0はz軸上での屈折率、g は物質によって決まる定数である。g=0 の場合には、一様媒質を表 す。今はビームのモードについて考えているので、ほとんど平面波とみなせる波で、かつ近軸光線(光 軸(z軸)の近傍にエネルギーが集中している)という仮定では、r の関数で E 表現することが出来る ので、強度分布が球対称であるとして、波の式を次の形で置く

𝐄 = 𝐞𝐱𝐩 [−𝐢 (𝐏(𝐳) + 𝐤 𝐫𝟐

𝟐𝐪(𝐳)+ 𝐤 𝐳)] (76)

ここで i は虚数単位、P(z)は位相を表す複素関数、q(z)は複素曲率半径である。(76)を(75)の式に代入 して式変形をしていく。波数ベクトルの方向をz軸とした円筒座標系ではラプラシアンが

∆= 𝛛𝟐

𝛛𝐫𝟐+𝟏 𝐫

𝛛

𝛛𝐫+ 𝛛𝟐

𝛛𝐳𝟐 (𝟕𝟕)

となることに注意して、(39)の近似式を用いると、最終的に

(𝟏 𝐪)

𝟐

+ 𝛛

𝛛𝐳(𝟏

𝐪) + 𝐠𝟐= 𝟎 (78)

𝛛

𝛛𝐳𝐏 = 𝐢

𝐪 (79)

- 34 -

という2つの方程式に帰着する。(78)、(79)から電場の振幅の形を決定していく。上述したように、一 様媒質の場合には g=0 となるので、この条件の下で(78)、(79)を解いていくと、最終的な電場の振幅の 式は

𝐄(𝐱, 𝐲, 𝐳) = 𝐄𝟎 𝛚𝟎

𝛚(𝐳) 𝐞𝐱𝐩 [−𝐢(𝐤𝐳 − 𝛈(𝐳)) − 𝐫𝟐( 𝟏

𝛚𝟐(𝐳)+ 𝐢𝐤

𝟐𝐑(𝐳))] (80)

となる。この解が基本ガウシアンビームである。ここで(80)のそれぞれの文字は以下の通りである。

ω(z) = ω0√1 + (𝑧 𝑧𝑅

)

2

(81)

𝐑(𝐳) = 𝐳 (𝟏 + (𝒛𝑹 𝒛)

𝟐

) (82)

𝛈(𝐳) = 𝐭𝐚𝐧−𝟏[𝐳 𝐳𝐑

] (83)

𝟏

𝒒(𝒛)= 𝟏

𝐑(𝐳)− 𝐢 𝛌

𝐧𝛑𝛚𝟐(𝐳) (84)

𝐳𝐑=𝐧𝛑𝛚𝟎𝟐

𝛌 (85)

η(z)

Z

r ω

0

z=0

等位相面

Figure 20:ビームモード伝搬の様子(1)

ビームはある位置z(ここでは原点としている)でビーム半径が最小になり、z=0 の点では、等位相面はz軸に垂直な平面とな るため、曲率半径は R(0)=∞ となる。

- 35 -

ω(z)は位置zでのビーム半径、R(z)は位置zでの曲率半径、η(z)は原点(最小のビーム半径の位置)か らみた、zの位置でのビームの包絡線とz軸とのなす角、q(z)は複素曲率半径、ω0は最小のビ

ーム半径(ビームウエストと呼ばれる)、nは屈折率、λはビームの波長、zRは Rayleigh Range(レイ リ―レンジ)を表す。以上に定義した物理的な状況を、Figure20、21 に示す。記号や図形が煩雑になる のを防ぐために2つの Figure に分けているが、どちらも同じものを表す。(80)を”基本”と呼ぶ理由は、

ヘルムホルツ方程式(75)を満たす解の中で、強度分布がガウス分布になっているもの((76)に示すよう な)に限定したからである。

次にビームをガウシアンビームと仮定した場合、理論的にはどのようにモード伝搬を記述するのかを説 明する。任意の屈折率分布の空間中を伝搬する光線は、光線方程式

𝐝 𝐝𝐬 (𝐧𝐝𝒓⃑

𝐝𝐬) = 𝛁⃑⃑ 𝐧 (86)

を満たす。ここで𝒓⃑ は座標、sは光線の軌跡に沿った距離、nは屈折率である。光線方程式(86)はフェ ルマーの原理から導かれた1つの結論である。近軸光線の場合にはsをzに置き換えても差し支えない ので、(86)は

𝐝 𝐝𝐳 (𝐧𝐝𝒓⃑

𝐝𝐳) = 𝛁⃑⃑ 𝐧 (87)

とできる。今、空間中の屈折率分布が(75)の形で表されるものを想定しているので(75)を(87)に代入し、

計算を進めると

Z

ω

0

√2𝜔 0

2z

R

Figure 21:ビームモード伝搬の様子(2)

Rayleigh(レイリ―)長は(81)から分かるように、ビーム半径が最初の位置から、√2𝜔0となるまでの距離を表す。

- 36 - Table2:代表的な光線行列

𝐝𝟐𝐫

𝐝𝐳𝟐+ 𝐠𝟐𝐫 = 𝟎 (88)

となる。これは単振動の方程式を表している。z=0 での位置と傾きがそれぞれ r0、r0’という境界条件の 下で(88)を解くと

(𝒓(𝒛)

𝒓(𝒛)) = ( 𝒄𝒐𝒔[𝒈𝒛] 𝒔𝒊𝒏[𝒈𝒛]

𝒈

−𝒈 𝒔𝒊𝒏[𝒈𝒛] 𝒄𝒐𝒔[𝒈𝒛]

) (𝒓𝟎

𝒓𝟎) (89)

となる。(89)中の行列は、慣例的に

(𝑨 𝑩

𝑪 𝑫) ≡ ( 𝒄𝒐𝒔[𝒈𝒛] 𝒔𝒊𝒏[𝒈𝒛]

𝒈

−𝒈 𝒔𝒊𝒏[𝒈𝒛] 𝒄𝒐𝒔[𝒈𝒛]

) (90)

距離dの自由空間の伝搬 (1 𝑑

0 1)

薄肉レンズ(焦点距離f)

f>0 は収束性、f<0 は発散性 (

1 0

−1 𝑓 1)

誘電体媒質界面屈折率 n1、n2 (

1 0

0 𝑛1 𝑛2

) z1 d z2

n1 n2

- 37 -

で表され、光線行列と呼ばれる。(90)は屈折率の空間分布が(75)で表されるような状況において、光線 方程式を求めたが、光学素子の作用を表す光線行列も同様の手順で導くことができる。代表的な光学素 子の光線行列を Table2 に示す。

ここまでの議論で(89)の関係式を用いてビーム伝搬を記述することはもちろん可能であるが、実験で 得られる物理量との対応を考えると、(89)は扱いにくい。なぜなら光軸からの距離 r0がどこからどこま での距離なのか、曖昧だからである。そこで、ビーム伝搬を記述するパラメーターを r、r’に代替するパ ラメーターでもって記述することを考える。ヘルムホルツ方程式の帰結である(78)において

𝟏 𝐪=𝟏

𝐮 𝐝𝐮

𝐝𝐳 (91)

として、新しい関数 u(z)を定義し、計算を進めると

𝐝𝟐𝐮

𝐝𝐳𝟐+ 𝐠𝟐𝐮 = 𝟎 (92)

q

0

X

0

X

1

X

2

X

3

q

2

q

0

M

1

M

2

M

3

M

4

M

5

Figure 22:PBS によるビームウエストの移動

M

0

q

1

- 38 -

となる。(92)も(88)と同様、単振動の方程式であり、同じ係数を持つことから光軸からの距離 r(z)の代 わりにビーム伝搬を記述するパラメーターとして、u(z)を用いることができる。q(0)=q0という境界条 件のもとで、(89)の r を u に置き換えたものを(91)に代入すると、q(z)は

𝐪(𝐳) =

𝐪𝟎 𝐜𝐨𝐬[𝐠𝐳] +𝐬𝐢𝐧[𝐠𝐳]

𝐠

−𝐠𝐪𝟎 𝐬𝐢𝐧[𝐠𝐳] + 𝐜𝐨𝐬[𝐠𝐳]=𝑨𝒒𝟎+ 𝑩

𝑪𝒒𝟎+ 𝑫 (93)

となる。どのように理論的にビーム伝搬を記述し、光学設計を行うかという説明の結論として、(84)、

(93)を用いて行う、と言える。簡単な例として Figure22 に示すような問題設定を考える。光路上に何も 置いていない場合の最小のビーム半径ω0と、その位置 x0は測定したとする。光路上に Figure22 に示し てあるような位置に、x2の長さの PBS を設置したとすると、ビームウェストの位置はどちらにどれほど 移動するかを、理論的に導くことを考える。今回の問題設定の場合は求めたいものは、Figure22 中の x3および q2の位置でのビーム半径である。

まず、Figure22 の上の状況において、出射されたレーザーは x0の距離だけ自由空間を伝搬し、その 位置で最小のビーム半径となる。自由空間を距離 x0だけ伝搬することに対応する光線行列 M0は Table2 より

𝐌𝟎= (𝟏 𝒙𝟎

𝟎 𝟏) (94)

であるから、A=1、B=x0、C=0、D=1 となる。よって q1、q0の関係は

𝐪𝟏=𝑨𝒒𝟎+ 𝑩

𝑪𝒒𝟎+ 𝑫= 𝐪𝟎+ 𝐱𝟎 (95)

となる。ウェストポイントでは、曲率半径は∞となることに注意すると、(84)を用いて

𝐪𝟏=𝐢𝛑𝛚𝟎𝟐

𝛌 (96)

(95)、(96)からビームの出射口の位置でのビームパラメーターq0を求めると

𝐪𝟎=𝐢𝛑𝛚𝟎𝟐

𝛌 − 𝐱𝟎 (97)

次に、Figure22 の下の状況においては q0から q2までに5つの光線行列が作用することが分かる。M1、 M2、M3、M4、M5はそれぞれ、出射校から PBS 入射までの自由空間、空気中と PBS の境界面、PBS 内

- 39 -

の自由空間、PBS と空気の境界面、PBS 透過後からウェストポイントまでの自由空間、となる。ここで ω0は Figure22 の上の状況での最小のビーム半径であり、空気中の屈折率は1とした。作用する順番に 注意すると、Figure22 の下の状況における全体の光線行列は Table2 より

(𝑨 𝑩

𝑪 𝑫) = 𝐌𝟓𝐌𝟒𝐌𝟑𝐌𝟐𝐌𝟏= (𝟏 𝒙𝟑

𝟎 𝟏) (𝟏 𝟎

𝟎 𝒏) (𝟏 𝒙𝟐

𝟎 𝟏) (

𝟏 𝟎

𝟎 𝟏

𝒏

) (𝟏 𝒙𝟏

𝟎 𝟏) = (𝟏 𝒙𝟏+𝒙𝟐 𝒏 + 𝒙𝟑

𝟎 𝟏

) (98)

となるので、(84)を用いると、q0、q2を結びつける方程式は

𝐪𝟐=𝐀𝐪𝟎+ 𝑩′

Cq0+ 𝑫′= 𝐪𝟎+ 𝒙𝟏+𝒙𝟐

𝒏 + 𝒙𝟑=𝐢𝛑𝛚𝟎𝟐

𝛌 + 𝒙𝟏+𝒙𝟐

𝒏 + 𝒙𝟑− 𝐱𝟎 (99)

となり、q2を求めることができた。(99)の q2もまた(84)を満たし、かつ曲率半径は無限大であるから、

q2は純虚数である。このことを考慮すると、(99)より

𝛚𝟎= 𝛚𝟎 , 𝐱𝟑= 𝐱𝟎− 𝐱𝟏−𝐱𝟐

𝐧 (100)

ここで、ω’0は Figure22 の下の状況での最小のビーム半径である。ここでは実際に現実的な値を代入し、

PBS によってウェストポイントがどれほどシフトするのかを計算してみる。実験室で用いている PBS の素材は BK7であり、室温で、波長 405nm の光に対する屈折率は 1.53 である。x0= 10𝑐𝑚, 𝑥1=

5𝑐𝑚, 𝑥2= 1𝑐𝑚として x3を計算してみると x3 = 4.34cm となる。レーザーの出射口からビームウェストま

での距離 d は d=5+1+4.34=10.34cm であるから PBS を置く前と後では約 3.4mm だけレーザーから遠 い側にシフトすることが分かる。

4-3 ビーム形状の測定法

ビーム径の測定にはナイフエッジ法を用いた。ナイフエッジ法とは Figure23 に示すように、金属板 を固定している台についているマイクロメーターを回すことで、金属板を x 方向に少しずつ移動させ、

レーザーを遮りながら、金属板に当たらなかった部分の光の強度を、後ろに置いているパワーメーター で測定する。その強度の変化からビーム半径を測定する方法のことである。ある位置zでのレーザーの x 方向の強度は、(80)の2乗に比例するので

𝐈(𝐱, 𝐳) ∝ (𝑬𝟎𝛚𝟎 𝛚(𝐳))

𝟐

𝐞𝐱𝐩 [−𝟐(𝐱 − 𝐱𝟎)𝟐

𝛚𝟐(𝐳) ] (101)

とおく。ここで x0は中心からのズレを表す。ここで変数rをxに置き換えた。パワーメーターで測定さ れる強度は、全強度から遮った部分の強度を引いた値になって

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