6. 数値解析による木造住宅の耐震性能
6.5 数値解析結果による住宅の挙動 6.5.1 固 る住宅の挙動
6.5 数値解析結果による住宅の挙動
図 6.5.2 固定荷重による軸力分布図
Nmin=-11.9kN
圧縮
引張
(N)
図 6.5.3 固定荷重による曲げモーメント分布図 Mmin=-0.6kN・m
(N・m) Mmax=0.8kN・m
6.5.2 地震荷重による住宅の挙動
(1)x方向の地震荷重による住宅の挙動
図 6.5.4 は地震荷重Pを左側面の軸組の柱と梁接合部に載荷したときの住宅の変形図で ある.1階は中央部の軸組が全て開口になっているため他の軸組と比べてA点の変位が最 も大きい.2階はB点の変位が最も大きい.B点の軸組は耐力壁もなく,面積率で地震荷 重を設定しているために他の軸組より荷重が大きいのが要因である.C点も耐力壁がない た変位が大きい.内壁を配置してある一番奥の軸組はほとんど変形してないことから耐力 壁が水平抵抗力として十分に機能していることが分かる.図 6.5.5 は変形形状を上から見 た図である.地震荷重が軸組と平行に載荷されているにも関わらず,住宅がまるで反時計 回りに回転するような変形をしている.これが前述した偏心である.偏心は耐力壁の配置 のバランスによって生じる.2階の軸組において,一番奥の軸組の水平剛性が他の軸組に 比べて高いために,そこを支点として反時計回りに回転しているのである.図 6.5.6 はx 方向の地震荷重による軸力分布図である.図 6.5.2 と比較すると,軸力が内壁や筋かいに も働いていることが分かる.内壁はたすき掛け,筋かいはVの字で2本の斜材で1組とし て構成されており,一方には圧縮力が,もう一方には引張力が働いている.y方向の内壁 や筋かいで軸力が生じているのは,偏心によるものであると考えられる.柱の軸力分布も 固定荷重のみが働いているときとは,全く別物になっている.これらから,水平剛性を高 めるに 量を増やすとともに,偏心が生じないように耐力壁を配置しなければな らないことが分かる.なお,ここでは軸力分布図を住宅の挙動を調べることを目的として 用いるので,詳細な値は無視する.
は耐力壁の
uxmax
A C
B
地震荷重
x
y A
B
C
図 6.5.5 x方向の地震荷重による偏心
圧縮
引張
(N)
( ま
け 位していない.点Cの変位が最も卓越している.図
6.5.8 がy方向の地震荷重による住宅の変形形状を上から見た図である.一見すると,点A,
数値解析結果から住宅の挙動を把握したことで,木造軸組工法住宅が鉛直荷重を柱と梁で,水 荷重を耐力壁で負担する架構をしていることが確認できた.耐力壁もむやみに量を増やすだけ なく,バランスよく配置することで剛心と重心の距離,つまり偏心距離がなくなるので水平剛 を確保できる.
2)y方向の地震荷重による住宅の挙動
図 6.5.7 はy方向の地震荷重による変形形状である.x方向に比べて変形量が少ない,つ り水平剛性がx方向に比べて高いのである.特に2階の軸組は両方とも内壁,筋かいが設 られているため点A,Bはほとんど変
Bが変位しているように見えるが,実際変位しているのは1階の柱と梁の接合部である.点 Cのある軸組の水平剛性が低いためにそこで時計まわりの偏心が生じている.図 6.5.9 はy 方向の地震荷重による軸力分布図である.2階の軸組では,両方とも同じ軸力分布である.
これは耐力壁がバランスよく配置されているからである.軸力に偏りがないということは,
荷重が同じように伝わっていることを意味するので偏心が生じないのである.
平 で 性
B A
C
図 6.5.7 y方向の地震荷重による変形形状
A B
C
図 6.5.8 y方向の地震荷重による偏心
地震荷重
圧縮
(N)
引張
図 6.5.9 y方向の地震荷重による軸力分布図
6.6
地震荷重は慣性力Fを便宜上Pに見立てて載荷したことは第4章で述べた.地震荷重P=αWに いて,今Wは1階,2階でそれぞれ定義されている.荷重−変位曲線より得られる降伏耐力Py, 局耐力Puを地震荷重の定義式に はめると,各階方向別にαの値が求められる.αは慣性の 則においては加速度であるが,単位を持たない倍率として考える.荷重−変位曲線は,初めは 性であるが,各部で塑性化するために系の剛性が低下し,塑性の挙動を示す.終局耐力Puは部 変形角の考えに基づいて算出した.部材の変形角度が 1/20radに達したとき,住宅が大変形を こすと仮定し,そのときの地震荷重Pを終局耐力Puとした.柱の部材長 1.8mに 1/20radを掛け と,9cmとなるので,柱と梁の接合部が 9cm変位したときの荷重である.Pyは荷重−変位曲線 接線をひいて算出した.各階方向別に荷重−変位関係を導出し終局耐力を求めるとすると,当 水平剛性の高い軸組ほど終局耐力Puが大きくなる.これは水平剛性が高い軸組においてはαの が大きくなると言い換えることができる.つまりαが軸組の強さを表す指標となるのである.
6.6.1〜図 6.6.4 は各階方向別の荷重−変位曲線であり,これらの図をもとにPy,Puを算出し
.
荷重−変位曲線
つ
終 あて
法 弾 材 起 る に 然 値 図 た
0 100 200 300 400 500 600 700
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0
δ(cm)
P(kN)
図 6.6.1 1階x方向における荷重−変位曲線 Pu=523kN
Py=135kN
0 100 200 300 400 500 600 700
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0
δ(cm)
P(kN)
図 6.6.2 2階x方向における荷重−変位曲 Pu=82kN
Py=68kN
(1)1階x方向
降伏耐力 Py=135kN
図 6.6.3 1階y方向における荷重−変位曲線 0
100 200 300 400 500 600 700
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0
δ(cm)
P(kN)
Pu=477kN
Py=175kN
図 6.6.4 2階y方向における荷重−変位曲線 0
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00 11.00 12.00 δ(cm)
Py=430kN
Pu=1700kN
kN)P(
96 . 88 22 . 5
135 W
Py
y = = =
α
終局耐力 Pu=523kN
88.95 88
. 5
523 W
Pu
u = = =
α
(2)2階x方向
降伏耐力 Py=68kN
23.13 94
. 2
68 W Py
y = = =
α
終局耐力 Pu=82kN
90 . 94 27 . 2
82 W Pu
u
(3)1階y方向 降伏耐力 P
=
=
α =
y=175kN
.76 88
. 5
175 29 W
Py
y
終局耐力 P
=
= α =
u=477kN
12 . 88 81 . 5
477 W
Pu
u
(4)2階y方向
=
= α =
降伏耐力 Py=430kN
26 . 94 146 . 2
430 W
Py
y = = =
α
終局耐力 Pu=1700kN
578.23 94
. 2 1700 W
Pu
u = = =
α
表 6.6.1 に降伏時の倍率と終局時の倍率を示す.降伏時の倍率では2階y方向以外は似たよう 値をとっている.終局 も2階y方向だけが大きい倍率になっている.これは,2階 y方向は軸組のバランスがよく,内壁と筋かい,つまり耐力壁の水平抵抗力が十分発揮されて るからだと考えられる.終局時にはx方向で 1 階,2階の倍率に差が出ている.1階x方向に 軸組が3組あり,耐力壁がある程度配置されているのに対し,2階x方向には内壁がひとつし
考えられる.
表 6.6.1 降伏時と終局時の倍率
降伏時の倍率αy 終局時の倍率αu
な 時の倍率で
の い は
か設けられていないため水平剛性が塑性域で発揮されていないのが原因だと
1階x方向 22.96 88.95
2階x方向 23.13 27.90
1階y方向 29.76 81.12
2階y方向 146.26 578.23
7.耐震精密診断と数値解析結果の比較
造住宅の耐震精密診断によって得られたB×C×D×Eの値と,数値解析によって得られたαyとαu 値の関係を図 7.1,7.2 に示した.まず2階y方向の数値解析による結果があまりにも大きい は,耐力壁のバランスのとれた配置によるもの られる.耐震精密診断によるB×C(偏 )の項目では,評点が 1.0 で,これは2階のy方向の壁に対する重心と剛心がつりあっている とを意味している.数値解析において終局耐力を求めるために,何度も地震荷重を定義し直し のは2階のy方向だけである.2階x方向のαyとαuに大差が生じていないのはx方向の水平剛 があまりにも小さ 因ではないかと考えられる.耐震精密診断では安全であるという結 であったが,水平抵抗力の評点を建物全体,つまり1階と2階をあわせて算出したために安全 あるという診断結果が得られたのである.耐震診断と数値解析の結果の相互関係に着目して,
7.1 と図 7.2 における近似直線を考える.耐震診断における建物の強さを表す評点のB×C×
×Eの値が大きくなれ ある.これはα=P/Wの関
より,Wは定数なのでPの値が大きいほどαの値が大きくなるからである.図 7.2 はB×C×
×Eの値が大きくなると,αuの値も大きくなっている.結論として,壁量等の簡単な方法で計 されている既往の耐震診断は,木造住宅の降伏ではなく終局状態の耐力を指標として作成され いる.
木 の
の だと考え
心 こ た
性 いのが原
果 で 図
D ば,数値解析によるαの値も大きくなるはずで
係 D 算 て
140
0 20 60
.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 B×C×D×E(偏心×水平抵抗力)
αu( 40
80
終局時の倍率)
100
120 1階x
0.00 0 方向 2階x方向 1階y方向 2階y方向
578kN
図 7.2 終局時の倍率αuとB×C×
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0
0.00 0. 3.50 4.00
B×C×D×E(偏心×水平抵抗力)
αy(降伏時の倍率)
50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00
1階x方向 2階x方向 1階y方向 2階y方向
146kN
図 7.1 降伏時の倍率αyとB×C×D×E
8. まとめ
本研究では,「木造住宅の耐震精密診断」に従い,対象とする木造住宅の耐荷力を調べた.耐 精密診断においては地盤に関する項目と,老朽度に関する項目は耐荷力に影響しないため無視
とする木造住宅を柱・梁・耐力壁で構成される3次元フレームモデルを作成 を行い,各階方向別の降伏耐力,終局耐力を求めた.耐力壁 耐力の期待できる部材を用いた内壁や外壁,あるいは,筋かいの組み合 とである.耐震診断手法によって得られた耐荷力と数値解析によって得 耐震診断手法の精度がどの程度であるのか調べた.以下に研 究を進めていくなかで重要であると判断した事項についてまとめる.
(1) 木造軸組工法住宅における荷重分布
って住宅のモデルに固定荷重,地震荷重を載荷し,解析結果の変形形状,軸 ト分布図から荷重がどの部分で負担されているかを把握した.木造 においては自重による固定荷重を主に柱で,地震荷重を主に耐力壁で負担して 固定荷重により曲げモーメントが働き,地震荷重によって軸力が働く.耐震診 しているため,地震荷重を主に負担する耐力壁が耐震診断で果たす
(2)
偏心と
(3) 耐震精密診断と数値解析結果の関係
耐震精密診断における耐荷力の評点を横軸に,数値解析から得られる耐力をもとに導いた 倍率αを縦軸にとったグラフを描いた.相互に関係があるならば,耐荷力の評点が大きくな
れば,数値解析によるαの 係を満たしているのは終局時
の倍率αuである.これは,木造住宅の耐震精密診断は住宅の終局状態の耐力を指標として作
成されていること .
耐震性能を高めるには ランスよ することが最 的であるといえる.「木
住宅の耐震精密診断」 簡単な方 算できるが, 指標として作成
れているので,信頼できる耐震診断法であるといえる.
震
した.一方で,対象
し,有限要素法に基づいて数値解析 とは,構造用合板という
わせで構成された壁のこ
られた降伏,終局耐力を比較して,
数値解析によ
力分布図,曲げモーメン 軸組工法住宅
いる.梁には
断は,地震荷重を対象と 役割は大きい.
木造住宅の耐震精密診断の構成
木造住宅の耐震精密診断は地盤条件と老朽度からなる住宅の状況を診断する項目,
水平抵抗力からなる住宅の耐荷力を診断する項目で構成されている.偏心距離とは,重心と 剛心の距離であり偏心距離が大きいほど地震荷重が作用したときの変形が大きい.偏心と水 平抵抗力の項目に深く関わってくるのが耐力壁である.耐力壁の量が多いほど水平剛性は高 まるが,バランスを考えて配置しなければ重心と剛心がずれてしまい偏心が生じる原因とな る.偏心が生じると,建物が回転するような力が働く.
値も大きくなるはずである.この関 を意味する
耐力壁をバ く配置 も効果
造 は壁量等の 法で計 終局時の耐力を
さ