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価格弾力性・輸送効率

ドキュメント内 中央大学理工学部情報工学科 (ページ 42-47)

本章では,価格弾力性および輸送効率について説明する.価格弾力性については,第 3 章で使用したデータに対して価格弾力性を導出し,データの性質を考察する.また,輸送 効率を求めることによって,運送業界の企業努力がどの程度行われているのかを推測する.

価格弾力性については文献[3]に基づいて述べる.

4.1  需要の価格弾力性 

需要の価格弾力性とは,価格が1%上昇した際に需要が何%変化するかを示す数値の絶対 値である.まず,商品の値段が1%上昇したと仮定する.商品を販売する側にとって,価格

が1%上昇した場合,収入は上昇した分だけ増加する.しかし,実際には価格が上昇すれば

需要は低下する.ここで,需要の価格弾力性について考える.弾力性がX >

1

である場合,

弾力的であるといい,価格が上昇(下降)すれば収入は減少(増加)する.逆に,X <

1

で ある場合,非弾力的であるといい,価格が上昇(下降)すれば収入は増加(減少)する.

また,X =

1

の場合,価格によらず収入は一定であることを意味する.通常,贅沢品は弾力 的であり,必需品は非弾力的であるという傾向がある.

需要の価格弾力性をXとして式で表すと,(4.1.1)式のようになる.ここで,Dは需要を,

Pは価格を表している.

P P

D X D

/ d

/

= d

(4.1.1)

D:Min(基準点のD,比較点のD)

P:Min(基準点のP,比較点のP)

これを実際に求めるには,対象となるデータを自然対数変換し,回帰分析を行えばよい.

その理由を以下に表す.

Y Y Y

Y Y Y

/ d log d

/ 1 /d log d

=

= (4.1.2)

より,

P D P

P D X D

log d

log d /

d /

d =

=

(4.1.3)

とおくことが出来る.よって,

P X

D

log

log

=α+ (4.1.4)

α:定数(切片)

と表すことができ,価格弾力性は自然対数をとった回帰式で表すことができる.また,回 帰分析は 1 次式に近似する方法であるため,非線形のデータには不適である.そこで,デ ータに対し自然対数をとることで,非線形のデータでも線形変換できる場合がある.自然 対数変換を行っているのはこの為である.

4.2  価格弾力性の導出 

第 3 章で使用した自動車貨物輸送量(営業用車),ガソリン消費量(貨物),軽油消費量

(貨物),自動車貨物走行キロ,ガソリン販売量,軽油販売量,1 世帯当り平均ガソリン購 入量,1 世帯当り平均ガソリン支出,自動車旅客輸送量(自家用車),軽自動車旅客輸送量

(自家用車),自家用車ガソリン消費量(旅客)のデータに対し,価格弾力性を導出した結

果を表4.2.1に表す.なお,価格弾力性の導出する場合,通常は絶対値をとるため符号は削

除されるが,今回は弾力性の正負を求めるため,絶対値をとっていない.また,需要の価 格弾力性は弾力性が負であることが前提であるため,弾力性が正であった場合,弾力的ま たは非弾力的であることに対する議論をすることはできない.

表4.2.1  各データに対する価格弾力性

使用する独立変数 価格弾力性X 弾力的 自動車貨物輸送量(貨物) 軽油市場価格 −0.236 × ガソリン消費量(貨物) レギュラーガソリン市場価格 −0.10 × 軽油消費量(貨物) 軽油市場価格 −1.054 ○ 自動車貨物走行キロ 軽油市場価格 −0.139 × ガソリン販売量 レギュラーガソリン市場価格 +0.128 −

軽油販売量 軽油市場価格 −0.212 ×

1世帯当り平均ガソリン購入量 レギュラーガソリン市場価格 +0.089 − 1世帯当り平均ガソリン支出 レギュラーガソリン市場価格 +0.926 − 自動車旅客輸送量(自家用車) レギュラーガソリン市場価格 −0.045 × 軽自動車旅客輸送量(自家用車) レギュラーガソリン市場価格 +0.889 − 自家用車ガソリン消費量(旅客) レギュラーガソリン市場価格 −0.157 ×

まず,軽油消費量(貨物)に注目すると,価格弾力性が−1.054であり,絶対値が僅かに 1を超えている.つまり,軽油消費量は弾力的である.このことは,僅かではあるが軽油消 費量の減少した割合が燃料価格の上昇した割合よりも上回っている,または価格が上昇し た分だけ消費量を削減できていることを意味している.つまり,軽油の消費量の削減とい う点では,運送業界による効率化の結果が出ていると考えられる.また,ガソリン販売量 および 1 世帯あたり平均ガソリン購入量に注目する.これら二つのデータの価格弾力性は 共に正の値であり,燃料価格が上昇してもデータの値は減少せず,逆に増加しているとい うことを意味している.これは,燃料価格が上昇する2004年よりも前では,ガソリン販売 量,1世帯あたり平均ガソリン購入量が共に増加していたことが影響しているためであると 考えられる.次に,1 世帯当り平均ガソリン支出に注目する.もし燃料価格が上昇しても,

従来通りガソリンを購入していれば,ガソリンの支出は燃料価格が上昇した割合と同じ割 合だけ増加すると考えられる.しかし,1世帯当り平均ガソリン支出の価格弾力性は+0.926 であり,ガソリンの支出の増加の割合が燃料価格の増加の割合よりも小さくなっている.

そして,図3.7.2の1世帯当り平均ガソリン購入量においても,2003年以前は購入量が増 加していたのに対し,2004年以降は増加せず,一定の水準を維持していることがわかる.

これらのことから,一般家庭においてガソリンの購入を控える動きがあると推測できる.

4.3  輸送効率の定義 

自動車貨物輸送量の値を自動車貨物走行キロの値で割った値を,1km 走行する際に何ト ンの貨物を輸送できるかを表す輸送効率として定義する.輸送効率をXとして式で表すと,

(4.3.1)式のようになる.ここで,T は自動車貨物輸送量を,D は自動車貨物走行キロを

表している.輸送効率の単位はトン/キロである.

D

X = T (4.3.1)

4.4  輸送効率の導出 

4.3節で述べた輸送効率を求めた結果を図4.4.1に表す.求めた輸送効率の詳細は付録に 記載する.

0.017 0.018 0.019 0.020 0.021 0.022 0.023

2001年1月 2001年4月 2001年7月 2001年10 2002年1月 2002年4月 2002年7月 2002年10 2003年1月 2003年4月 2003年7月 2003年10 2004年1月 2004年4月 2004年7月 2004年10 2005年1月 2005年4月 2005年7月 2005年10 2006年1月 2006年4月 2006年7月 2006年10

日付(年・月)

輸送効率(/キロ)

図4.4.1  輸送効率

図4.4.1を見ると,輸送効率は年々低下していることがわかる.ここで,4.2節の自動車

貨物輸送量と自動車貨物走行キロの価格弾力性の値に注目する.自動車貨物輸送量の価格 弾力性は−0.236であり,自動車貨物走行キロは−0.139である.つまり,自動車貨物輸送 量の減少量が自動車貨物走行キロの減少量を上回っており,その結果輸送効率が低下して いると考えられる.

4.5  考察 

上記の分析結果から,運送業界,一般家庭共に燃料価格の上昇に対してその影響を軽減 するよう,対策をとっていることが推測できる.しかし,運送業界では自動車貨物輸送量

の減少によって輸送効率が低下しているため,結果として運送業界の収益は悪化している と推測できる.また,一般家庭においてもガソリンの支出は依然として増加しており,現 状では燃料価格の上昇に対応し切れていないと考えられる.ガソリンが必須品として生活 に欠かせない存在となっている以上,この傾向はこれからも続くと考えられる.以上を踏 まえると,運送業界,一般家庭共に燃料価格の上昇の影響を受けることは避けられないと 考えられる.よって,価格の上昇が今後も続けば,運送業界の自助努力のみでは業績は悪 化し,一般家庭においても燃料費が家計を圧迫することは避けられないと推測できる.

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