本論 文 におい て は、開発 対象 とその手 段 の 明確 化 、作 業 の独 立性 の保 証 、 コ ミュニ ケ ーシ ョンの 円滑 化 、 作 業遂行 に必 要 な知 識 の獲 得 、計算機 環 境 の携 帯性 の向上 、で特徴 づ け られ る計 算機 環境 の 「快適 性 」 を追 求 して きた。 しか し、定義 され たモデ ル や開発 されたプ ロ トタイプ 環境 の有 用性 を評 価す るに は、評価 の た めの手段 ・尺度 が必 要 であ る。 これ らを発 見 ・整備 してい く手段 と してプ ロ トコル解 析 が有 用 であ る と思 わ れ る。プ ロ トコル解析 実験 の 目的 を次 の三 つ に設 定す る。
分 散 に依 存 す る問題 とその評価 尺度 の発 見
快適 性 を特 徴 づ け る別 の特 性 の発 見=携 帯性 、明確 性 、独 立性 、円滑 性、増 幅性 を含 め 、快 適性 の要 因 を 再吟 味 す る
独立 性 や 円滑性 な どの 評価 尺度 の 開発=上 記 各特 性 に対 す る代 替 メ トリクス を発見 す る 4.5.1分 散 に依 存 す る問題 とその 評価 尺 度 の発 見
「分 散 」 プ ロ ジ ェ ク トは 、 北 陸 先 端 大 、 九 州 大 、 東 工 大 間 の 共 同 プ ロ ジ ェ ク トで あ る[2]。 「分 散 」 プ ロ ジ ェ ク トの 目 的 は 、研 究 室 に お け る基 礎 的 な研 究 成 果 を ネ ッ ト ワ ー ク上 で 評 価 す る 場 を設 け る こ とで あ る 。 北 陸 先 端 大 で は 、 「自在 」 プ ロ ジ ェ ク トの フ ィー ル ド テ ス ト環 境 と して して 位 置 づ け 、分 散 に 依 存 す る 問 題 と そ の対 応 策 に つ い て 基 本 的 な知 見 を得 る 立 場 で 参 加 して い る 。 分 散 プ ロ ジ ェ ク トで は 、以 下 の よ うな 共 同 実 験 を実 施 し て き た 。
・ 遠 隔 プ レゼ ン テ ー シ ョ ン 、遠 隔 形 式 仕 様 レ ビ ュ ー 、遠 隔 共 同 プ ログ ラ ミ ン グ な ど をInternet、ATM な ど の ネ ッ ト ワ ー ク設 備 上 で 、 既 存 の マ ル チ キ ャ ス ト ・ツ ー ル を利 用 して 実 施 して き た 。 実 験 の 目的 は 、既 存 の マ ル チ キ ャ ス ト ・ツ ー ル や ネ ッ トワ ー ク設 備 に 関 す る 問 題 点 を発 見 す る こ と に あ っ た 。 す で に第 一 期 の 一 連 の 実 験 を 終 え 、 ネ ッ トワ ー ク層 に お け る 遅 延 の 問 題 、人 間 系 に お け る コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン ・プ ロ ト コル の 問 題 等 、今 後 の 研 究 ・技 術 開 発 に 有 用 な 知 見 が 得 られ た 。
4.5.2快 適 性 を 特 徴 づ け る特 性 と そ の 評 価 尺 度 の 発 見
ネ ッ トワ ー ク を介 した 共 同 作 業 の 阻害 要 因 を把 握 す る た め のプ ロ トコ ル解 析 実験 も実 施 して きた[38],[39],[40), [41】。 現 在 、 一 度 の 投 げ か け る話 題 の 量(複 雑 さ)と 会 話 に お け る話 題 の 完 遂 度 との 関 係 に つ い て 基 本 的 な成 果 が 得 られ つ つ あ る 。
4.63章 の ま と め
決 定事 項 の管理 とその生 成 ・変更 の 支援 をモデ ル化 の中心 と して 、下 記 の よ うな機能 階層 か らな る共 同 作 業 の参照 モ デ ルCSCSDモ デ ル を提 案 し、 さ らに、現 在 進行 中 の 「自在 」プ ロ トタ イプ を紹 介 した。
ユ ー ザ イ ン タ フ ェ ー ス(最 上 層)3ユ ー ザ イ ン タ フ ェ ー ス に は 、 下 層 の 各 シ ス テ ム(分 散 サ ー バ 、 グ ル ー プ ウ ェ ア ・ベ ー ス 、プ ロ セ ス ・サ ー バ)の 状 態 が 表 示 さ れ る と共 に 、Ellisが 指 摘 した 各 種i青報 、 構 造 的 コ ン テ キ ス ト、 社 会 コ ン テ キ ス ト、組 織 コ ン テ キ ス トが 必 要 に応 じて 表 示 さ れ 操 作 さ れ る 。 共 同 作 業 の 参 加 者 間 に 「一 体 感 」 を形 成 す る こ と を補 助 す る 目的 を 持 つ 。
ツ ー ル キ ッ ト層(第2層):作 業 の 自動 化 の 度 合 を 高 め るCASEtoolや 、「か み くだ く過 程 を支 援 す る グ ル ー プ ウ ェ ア を置 く。 こ れ ら は チ ー ム 構 成 員 の 分 散 度 や 作 業 の 規 模 等 の パ ラ メ ー タ に 応 じて 配 置 さ れ る 。 ツ ー ル 統 合 機 構 に よ り作 業 の 連 続 性 を保 証 す る 。 ま た 、 ア クテ ィブ ・チ ャ ネ ル の よ うな 新 し い ア プ リ ケ ー シ ョ ン も こ の層 に お く。
分 散 サ ー バ と グ ル ープ ウ ェア ・ベ ー ス(第3層):分 散 サ ー バ 、 グ ル ー プ ウ ェ ア ・ベ ー ス を置 く。 分 散 サ ー バ は さ ら に プ ロ セ ス ・サ ー バ と分 散 作 業 空 間 か らな る。 プ ロ セ ス ・サ ー バ は 、 タス ク とそ の 実 行 順 序 、 消 費 可 能 資 源 等 を定 義 す る 。分 散 作 業 空 間 は 、 作 業 分 担 と責 任 の 範 囲 を 明確 に し共 有 情報 の 管 理 を行 な う。 グ ル ー プ ウ ェ ア ・ベ ー ス は 、 会 話 に よ る 決 定 事 項 と そ の 間 の 因 果 関 係 を保 持 す る 。
中 間 生 成 物 間 の 依 存 関 係 の 管 理(第4層)3中 間 生 成 物 間 の 依 存 関 係 を 管 理 す る 。 上 層 の 分 散 サ ー バ を構 築 す る 際 、作 業 の ガ イ ド ラ イ ンや 各 自の 作 業 に関 す る制 約 を定 義 し 、 ま た グ ル ー プ ウ ェ ア ・ベ ー ス に対 して は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン記 録 に あ た っ て 、 会 話 内 容 が どの 中 間生 成 物 や そ の 依 存 関 係 に 関 与 す るの か を定 義 す る 土 台 を与 え る 。
CSCSDサ ー バ(最 下 層):規 模 へ の 対 応 、 非 均 一 性 へ の 対 応 、計 算 機 環 境 へ の 対 応 な ど を 支 援 す る 。
5ま とめ と今 後 の課 題
本論 文 で は 、 ソフ トウ ェア ・エ ンジニ ア リング活 動 を対 象 と して 、計 算機 ネ ットワー クを介 した共 同作 業支援 の ため のモデ ル を定 義 し、環境 を構 築 す る にあ た って の基本 方針 と原理 を述べ た 。我 々の 目標 は 、明 解 性 、独 立性 、円滑性 、携 帯性 、増 幅性 の五 つ の特性 で特徴 づ け られ る、環境 の快 適 性 の向上 で あ る。そ の
実現 の ため に解 決 され るべ き課題 は以下 の通 りで あ る。
・ 規 模 に応 じた ソ フ ト ウ ェ ア ・ア ー キ テ ク チ ャ ・ク ラ ス の 整 備
・ リ ポ ジ ト リ管 理 技 術(特 に 決 定 事 項 の 管 理 技 術)と グ ル ー プ ウ ェ ア の 融 合
・ 調 整 支 援 を 目的 と した プ ロ セ ス ・モ デ ル の 開 発
・ 予 測 不 可 能 性 、非 再 現 性 、不 完 全 性 な ど の 人 間 要 因 の 考 慮
次 に 、決 定 事 項 の 管 理 に基 づ く共 同作 業 の モ デ ル 、CSCSDモ デ ル を提 案 した 。CSCSDモ デ ル は6層 の 階 層 構 造 か ら成 る 。 そ れ ら は 、 ユ ー ザ イ ン タ フ ェ ー ス 層 、 ッ ー ル キ ッ ト層 、分 散 サ ー バ とグ ル ー プ ウ ェ ア ・ ベ ー ス 、 タ ス ク定 義 層 、 中 間 生 成 物 問 の 依 存 関 係 の 管 理 、CSCSDサ ー バ で あ る 。
現在 、「自在 」プ ロ トタ イプ につい て は分 散 サ ーバ お よび グ ループ ウ ェアベ ー ス につ い て初期 の研 究 開 発 が終 了 した段 階 であ る。新 しい計 算 機 環 境 と開発 ス タイル に対 応 で きる ソ フ トウ ェア 開発 環境 の実 現 と い う目標 に対 して 、今 後 の進 展 させ るべ き課 題 は以 下 の通 りであ る。
5.1一 貫 性 管 理 層 を 追 加 し たCSCSDモ デ ル に よ る 調 整 支 援
前 章 まで に、 ネ ッ トワー クを介 した 共同作 業 を支援 す るため の情報 リポ ジ トリの構 成 法 につ い て考 察 を 重 ねて きた。 と ころで 、情 報 リポ ジ トリに記 録 され る中 間生成 物 と決 定 事項 お よび それ らの状 態 は矛 盾 に 満 ち た もので あ り、矛 盾 の存 在 を前 提 と した上 で の共 同作 業推 進 の支 援機 構 が ミラ ノ工 科大 学 との 共 同研 究 と して 開始 された とこ ろで あ る。図18に 示 す ように 、CSCSDモ デ ル の1青報 リポ ジ ト リ層 とツ ール層 の 間 に、情報 リポ ジ トリ内容 問お よび現 実 世界 との矛 盾 を検 出 し可 能 な ら解 消 す る層 を設 け る。 これ に よ り、
一 貫性 管 理 に浪 費 され作 業 者 の負担 を低 減す るこ とが糊 待 され る。
Userinterface forworksandcontextunderstanding CASEtoolsforproductionandcommunication
Inconsistencymanagementofthestates ofartifactobject二sanddecisions
Processserver (fordefining
orderof execution
Dist二ribution server(for controlling sharedartifacts
Grouwarebase (forrecording
reasoningof decisions Definitionoftasksandconstraints
Managementofcoarse‑graineddependency relationsipsamongartifacts
CSCSDserverlinkedtofunct二ionalservices fordist二ributedcomputingsyst二ems
図18:一 貫 性 管 理 層 を追 加 したCSCSDモ デ ル
す で に述 べ た よ うに 、協調 的 ソフ トウェアプ ロセス の実行 を制御 す る一つ の確 実 な方 法 は 中間生 成物 や 製 品の状 態 を観 測 す る こ とにあ る。一 貫性 管 理層 に置か れ る コーデ ィネー タオブ ジ ェ ク トは 、
・ 振 舞 い に関す る制 約 の下 に互 い に相互 作用 しなが ら、時 間軸 にそ って状 態 を変化 させ て い く並 行動 作 実 体 群
の状 態 を監視 す る。
コーデ ィネー タオブ ジェ ク トは 、状 態 を監 視 す る こ とに よ り、
・ い くつか の オブ ジェ ク トにわ た る状 態 間 の一貫性(外 部制 約)を 維持 す る こ とを試 み 、また 、あ る オブ ジ ェ ク トの 内部状 態 問 の一貫 性(内 部 制 約)を 維 持 す る こ とを試 み る。
・ 実 体 の動 作履 歴 や 関連 と制約 を利用 して異常 状 態発 生 の犯 人(ま た は故 障 オブ ジ ェ ク ト)の検 出 を試 み る。
コー デ ィネー タオブ ジェ ク トは以下 の デ ー タベ ース を利 用 す る。
・ 粗 粒度 レベ ルの依 存 関係
・ 実 体 の状 態遷 移 の履 歴 と実事 象 の履歴 われ われ の モデ リ ング にお いて は 、
1.実 体 は、設計 に関す る 中間生成 物 や成 果物 オブ ジ ェ ク ト、お よび会話 を通 じて なされ る決 定事 項 で あ り、双 方 と も進捗 状 況 を表現 す る状 態遷 移 図 を内蔵 した 自律 オブ ジ ェ ク トと して形 式化 す る予 定 であ る。許容 され る遷 移や 禁止 され る遷 移 お よび例外 処理 を表 現す るため の時 間 に関 す る制 約 が 、状 態 遷 移 図 のそれ ぞ れの遷 移 に割 り当て られ る(内 部制 約)。
2.入 出力依 存 関係 グ ラ フは 、外 部制 約 を表 現 す る ため に使 われ る
3.中 間成果 物 オブ ジ ェ ク トの活 動履 歴 は 、実 際 に発生 した事象/遷 移 の系 列 を版 管理 機構 で管 理 す る コーデ ィネー タオブ ジ ェ ク トの 主要 な機 能 は以 下 の通 りで あ る。
・ グ ループ ロー ルバ ッ ク:故 障 オブ ジェ ク トが検 出 され た時 、それ によ る悪 い副 作用 を可 能 なか ぎ り消 去 す る。例 え ば 、「中間生 成物 の集 合 に属す る任 意 のAとBに 対 して 、 も しBがAか ら派生 す る時 、 Bの 状 態が'完 了"で あ るな らば 、Aの 状 態 も"完 了"で なけ れ ばな らな い」 とい う粗 粒度 レベ ルの依 存 関係 上 で定義 され た制約 に基づ い て 、関連 す る 中間生成 物 の状 態 をすべ て ロー ルバ ック させ る。
・deviati・n[7]:いくつ かの オブ ジ ェ ク トは、実事 象 の発生 を待 つ こ とな くそ の事象 の発 生 を仮定 して遷 移 を進 め る こ とが で きる。実事 象 の発 生後 、 も し矛 盾が 発生 した場合 は、そ れ に関連 す る推移 系列 を 検 出 し解消 す る。
5.2オ ブ ジ ェ ク ト管 理 シ ス テ ム の 構 成 法 図18の 各 層 にお い て 、
・ 中間成 果物 また は製 品 間の 入 出力依 存 関係(グ ラフ構造)
・ 中間成 果物 のチ ー ム構成 員へ の割 り当 て の関係(集 合)と それ らを管 理す る オブ ジ ェ ク ト群
・ 上記 集 合 を ノー ド とす る実行 順序 関係(グ ラフ構 造)
・ 決定 事項 を文 書 化 した もの の 間の依存 関係(階 層 グ ラフ構造)
・ パ ラメー タに応 じて カス タマ イズ され る一 群 の同 じ型 の ツー ル群(集 合)
● 上記 各種 構造 間 の対応 関係
・ 中 間成果 物 や決定 事 項 に貼 り付 け られ る状 態遷 移 図
・ そ れ らの状態 遷 移図 の状 態 をモ ニ タ し制御 す る オブ ジェ ク ト群
等 の要 素 が艀 在 す る。 それ らを単一 の ス キーマ を持 つ単 一 の オブ ジェ ク ト管 理 シス テ ムで 管理 す るの は容 易 で は ない。特 に一部 の 変更 に伴 ない あ ち こち手 直 しす る必 要 が生 じる場 合 が 予想 され る。複 数 の ス キー マ の提 供 とその管理 を容 易 にす る ような 、メ タレベ ル アー キテ クチ ャに基 づ くオブ ジェ ク ト管理機 構 が必要 で あ る[15],[16]。
5.3分 散 に 依 存 す る 問 題 の よ り 精 密 な 把 握
群 舞 と栞 を中心 とす る 自在 プ ロ トタイプ の第1版 を早期 に完 成 し、「作 業 の独 立性 の保 持 」、「コ ミュニ ケ ー シ ョンの円滑化 」 に対 す る効果 を評 価 す るた めの フ ィール ドテ ス トお よびプ ロ トコル解 析 を実 施す る。
例 えば 、
・ 栞 に関 して は、「伝 達 ・整 合」、「決 定 」、「創 造Jの 各 討 議 の型毎 にプ ロ トコル解析 実 験 を実 施 し、現 在 の グ ループ ウェ アス キーマ の有 用性 と改 良 され るべ き問題 点 を把握 ・評価 す る必 要 が あ る