6. 競争環境下での最適 CBM
6.3. 市場取引モデル
6.3.2. 供給曲線の決定
本各発電会社の供給曲線の作成方法について述べる。各発電会社では、そのときの発電機の 定期検査状況を考慮して供給曲線を作成する。( 発電機の故障状態は考慮しない) 本研究に おける市場モデルは各発電会社の発電量を決定することが目的であるため、供給曲線は燃料費 曲線を出力で微分して得られる増分燃料費曲線、即ち原価とした。なお、ここで各発電会社が原 価のまま入札するとしたのは、本研究における市場モデルはあくまで各発電会社の発電分担量を 決定するのが目的であるため、原価にどのように利益を上乗せするかといった戦略については本 研究の対象とするところではないためである。
ここでは、時点tにおける取引を例にとって説明する。
各発電会社の供給曲線であるが、燃料費曲線を微分した増分燃料費曲線を供給曲線とした。
増分燃料費曲線とは、あと 1[kW]出力を増加させるためにどれだけの燃料費が余分にかかるか
cx2
bx a
P= + + (27)
ここで、P[千円]は燃料費、x[MW]は発電機出力、a,b,c[千円/MW・h]は係数である。この a,b,c の値であるが、一般に表 22のような値になることが知られている。
表 22 燃料費二次近似曲線の係数の値
種別 定格出力[MW] a b c
250クラス 316 4.6 0.00105 500クラス 200 5.0 0.00005 700クラス 260 5.0 0.00038 200クラス 66 2.2 0.00250 700クラス 117 2.4 0.00040 200クラス 40 2.0 0.00020 700クラス 182 1.3 0.00016 1000クラス 550 0.4 0.00070
原子力 - - - -
水力 - - - -
石油火力 LNG火力 石炭火力
ここで、式(27)を発電機出力xで微分して得られる式 (28)が増分燃料費曲線になる。
cx b
P′= +2 (28)
ここで、モデル系統(電気学会西30機系統)の各発電会社の増分燃料費曲線の例を図 85に示 す。
1 2 3 4 5 6 7
価格[円/kWh]
発電会社A 発電会社B 発電会社C
本研究では、図 85 に示す増分燃料費曲線がそのまま各発電会社の供給曲線になるとした。
次に、各社の供給曲線を足し挙げて、発電会社全体の供給曲線を作成する。この例を図 86 に 示す。
0 1 2 3 4 5 6 7
0 40000 80000 120000
供給量[MW]
価格[円/kWh]
供給曲線
図 86 供給曲線
各発電会社とも、原則として燃料費の安い順に発電機を起動していくため、低い価格では燃料 費の安い発電機の出力分しか入札せず、価格が上昇するほど燃料費の高い発電機も入札する ようになり、供給量が上昇する。
なお、この供給曲線であるが、発電機の定期検査状態によって変動する。仮に時点tにおいて、
各発電所の発電機の稼動状態が表 23 のとおりになったとする。このときの供給曲線の変動の例 を図 87に示す。
表 23 時点tにおける各発電会社の発電機稼働状況
発電会社A 発電会社B 発電会社C
発電機の状態 全ての水力発電所が定
期検査中で運転不能 全ての発電所が正常 全ての発電所が正常
通常時供給力[MW] 38900 49800 26300
0 1 2 3 4 5 6 7
0 20000 40000 60000
供給量[MW]
価格[円/kWh]
全発電機が正常な場合 運転費の安い発電機(水力機) が全て運転不能である場合
図 87 発電会社Aの供給曲線の変化
図 87 において、運転費の安い発電機(水力など)が定期検査で停止している場合、供給曲線 が全体に左に移動している。このような場合、同じシステム価格で供給できる発電量が減少するた め、発電会社Aは電力取引の際に不利となる。なお、予備力に相当する部分の発電機出力は市 場で入札しないことにした。これは、予備力分まで全て市場で売ってしまう結果、予備力が極端に 少なくなり供給信頼度が著しく低下する発電会社が現れるのを防ぐためである。
さて、ここで時点tにおける各エリアの電力需要量が表 24の通りであり、かつ発電会社Aの水 力機が全て定期検査で運転不能であったとする。
表 24 時点tにおける電力需要量
発電会社A 発電会社B 発電会社C 合計
電力需要量[MW] 28900 34500 13100 76500 独占供給分[MW] 14450 17250 6550 38250
0 1 2 3 4 5 6 7
0 10000 20000 30000 40000
供給量[MW]
価格[円/kWh]
発電会社A 発電会社B 発電会社C
図 88 時点tにおける各発電会社の供給曲線
図 88 は、図 85 の各発電会社の増分燃料費曲線を、独占供給の分と定期検査で停止してい る発電機の分だけ左にシフトしたものである。ここで、図 88より時点tにおける供給曲線を作成す る。これを図 89に示す。
0 1 2 3 4 5 6 7
0 20000 40000 60000 80000
供給量[MW]
価格[円/kWh]
供給曲線