モTIME
4.3 使用したアトマイザーの原子化効率測定
4.3.1
Na蒸気セルによる絶対原子密度校正
アトマイザーの原子化効率は分析感度を左右する重要なファクターであるが, その絶対 効率を測定した例は多くない. 本節では, Na蒸気セルを用いると信頼性の高い絶対原子密 度が得られることを利用し, 今回使用したアトマイザーで生成されるNa原子密度の校正 を行ない, それから原子化効率を推定した.
図4-18に実験装置図を示す. この実験は, アトマイザーを原子密度がわかった蒸気セル で置き換え, 両者のLIF強度を同一光学系で比較することによって, アトマイザーで生成 される原子数を決定しようとするものである. そのため励起源及び観測系は図4-7と同様
103
Z
102と
五ωc as 101
砧z
ーJ 。He < 1 Torr
ロHe 350 Torr
100
ヤづづ/
.A He 1 atm10-11 ., I I I I ! , ,,1 倫
107 10& 109 1010 1011
Na Density V cm 3]
330 350 370 390
Na Cell Temperature悶
図4-19:蒸気セル温度・絶対密度に対するLIF強度特性
である. アトマイザーの代わりに恒温槽に入ったNa蒸気セルを配置し, 蒸気セルの温度
をコントロールしながら蛍光を観測した. 蒸気セノレはノfイレックスガラス製で直径20mmゅ のガラス管の両端にBrewster窓を取り付けたものを使用し, Heを緩衝ガスとして内部に Naを封じきった. アトマイザーは大気圧He-MIPなので, そのクエンチングなどの影響を 調べるためHeガス内圧が 350,760Torr及び1Torr以下の 3本を用意した. Naセルからの 蛍光は図4-7と全く同様の光学系を使用して取得した.
測定結果を図4-19に示す. 前述の3穫の蒸気セルについて, 蒸気セル温度に対する光電
子増倍管(PMT)から得られた蛍光信号強度の変化をプロットした. セルの温度と原子数 絶対密度の関係を求めるには, 次のようなNa蒸気圧の式を用いた50)
lnp(αi1n) = -2.498451n T - 13255.7
/T
+ 26.1342+(7.05625 x
10-3 )T
- (4.85436 X10-6)T2
(4-17)108
ln p(αtm) = -2.006521n T - 13099.1jT + 24.3539 +(1.15167 x 10-3)T -(2.12972 x 10-7 )T2
+(6.945 x 104jT) exp( -13600jT) (4-18 )
ここで 式(4-17 )はT三370.98Kで固体の場合, 式(4-18) はIT>370.98Kで液体の場合で ある. 絶対密度 107 rv 1011個jcm3の間で, 各セルからの蛍光信号は密度に比例している.
また 検知下限は107個jcm3で-かなり大き いが, これはセル迷光対策をほとんど施さ な かっ たためである. 充分に迷光対策を施したセルでは103個jcm3程度まで比較的容易に検知下 限を下げることができる75)
Heガスによる 蛍光のクエンチングはHe内圧760Torrおよび1Torr以下のセルのオフ セットから 50%が得られた. また校正値は蛍光 1mV につき1.68 X 107個jcm3と見積もら れ 大気圧He中 でのクエンチング を考慮すると3.36 X 107個jcm3の値が得られる.
4.3.2
原子化効率の算出と絶対検知下限
次に図4-8のLIF信号を用い てアトマイザー中の原子密度の計算を行な った. 測定条件は 試料濃度が10ngjcm3, He流量が1980mfjmin( 流速108cmjs) で, 飽和を避ける ためPMT の前に透過率10%のNDフィルターを挿入している. プラズマ内ではその断面で一様に原 子化が起こっているとすると, プラズ、マ中に導入され て原子化した原子総数Nは次の式で 与え られる.
N=ηsυS (4-19 )
ここでηは1mV当たりの原子密度 , sはプラズマ断面積, υはNa試料のプラズ、マ通過速 度, sはLIF信号のmV単位での時間積分 値 である.
図4-8(a)の包絡線を蛍光信号と考えると波高値は700mV で半値全幅t= 40ms であるの
時間よりυ=110cm/sが推定できるが, これは He流速とも一致する. プラズ、マは放電管 内に一様に拡がっているとし, プラズ、マ断面積を計算するとs= 0.32 27rcm2となり, その 結果N = 3.33 X 1011となる. 用いた試料の体積は10μなのでこの中に含まれるNa原子数 N。は2.62 X 1012となるため, 原子化効率AをN/Noで-定義すると12.7%という高い効率が 得られる. プラズマに導入されたものが全て原子化されLIFを発するわけでは無いことか ら考えると, 抵抗加熱フィラメント法によるMIPへの試料導入効率は少なくともこれより は大きい. この点からも抵抗加熱フィラメント法が優れた試料導入法であることが裏付け られた. 実際にはマイクロ波放電は60Hzで点滅しているため. 導入された原子は全てプラ ズ、マに触れて解離するわけではない. 図4-8(めから得られたLIFの半値全幅は約2.7ms,
プラズマ点灯の周期が16.7msであるためそのデューティー比は16.2%となり, 原子化効率 は2%程度に修正される.
次にこのアトマイザーで得られるLIF光子数を見積もってみよう. 今十分強い励起を行 ないS�lとすると, その時光電面での毎秒得られる光子数は式(4-11)で与えられる. 一 方. 上述の原子化効率を使うと注入した試料に対してプラズマ中に生成された原子密度の 最大値が図4-20のように計算される. ここで注入量は10〆とした. プラズマが60Hzで点 滅し, 試料は40msの間に観測部分を通過することを考慮して, 光電面において得られる 全LIF光子数を計算して図4-20を得た. この計算によれば, 1fg/cm3においてすら2 X 106 個ものLIF光子を検知でき, ショット雑音はあまり問題にならないことがわかる. この点 は次章のパルス励起の場合と根本的に異なっている. Naに固有の不純物混入を考えないこ とにすると, SN比を決める雑音としては迷光とプラズマ背景光が残る.
図4-19の実験でもそうであったように, 迷光について特別の処置をしない場合, 検知で きるNa原子数は経験的に107個/cm3程度になるのが普通で, これから得られる検知下限 は0.5pgjcm3ということになる. しかし, この下限は適当な迷光対策を施すことで更に下
110
得
り
れ る 全 蛍 光 光 子 数
1011t= l iliiiiii i iliillii .,.llIiii ." 'lliIi i l lllITTT 'I..)'"IIH I'yll哩1010
1010 109
109 108
108 107
107 106
[個] 106
105
プ
フ
ズ
マ
中
生 成 さ れ る 最 大 原 子 数 105 LL.LU凶llt』11MIll 1 1 11lull l l l l HIll l l i lt1111 1 11』HIll 1 11 llull1044 1個/cm3]
匂/lm3 10cm.... 100 pgj A3 10cm � 100 ng/ ) m3c Na試料濃度
図4-20:試料濃度に対する生成原子数及びLIF光子数
げることができるであろう.
以上のことから, 使用したアトマイザーのは10%以上の高い原子化効率を持っており,
LIF光子数は1fgjcm3オーダーでもショット雑音限界より高い. したがって, 不純物混入が ない場合, 迷光と背景雑音を減らすことができれば検知下限はそれに応じてpgjcm3よりは るかに低いレベルまで下げうる可能性があることがわかった.
4.4
まとめ
本章では, 抵抗加熱フィラメント法とHeアトマイザーにより生成されたNa原子をcw 色素レーザーで励起して, LIF法による原子検知実験を行なうとともに, その検知下限に ついて考察した. 得られた結果をまとめると以下の通りである.
1)フィラメントをフラッシュさせると, MIPキャビティーの下流まで伸びたLIF光が 観測された.