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■ 何をグローバル化していくべきか

際学会をつくってプラットフォームにして、協力して動いてくれるアライアンスパートナーとフィン ランドとかオックスフォードでやったことがあります。オープンソサエティでサイエンスなので、グ ローバルにつながれるゲートになるわけです。

 国内学会と国際学会がもっとダイレクトに結びつくと、こういうことができるようになる。その中 でコアになる能力は、おそらくアライアンスマネジメント(協力体制を構築する調整力)です。アラ イアンスマネージャーという人材は非常に重要です。NPO であれ成長性の高いスタートアップであ れ、アカデミアを評価して、国際文脈に翻訳してつなげるようなアライアンスマネージャーをきちん と育てることが重要だと思います。たとえば日本の産学官連携の場合ですと、私はいま特許庁の審議 委員の仕事をしていますが、いわゆるコーディネーターといわれる人材が国際競争力の観点からみる と足りていない。なので、うまくいかなかったコーディネーションの案件が相当数あるだろうと見積 もっています。そういうグローバルな知見を備えたコーディネーターを養成していかないと、リスク が高いと思っています。

牧 アメリカではソーシャルアントレプレナーシップみたいなものが、この5年間でますます大きく なっていて、関心を持つ学生はどんどん増えています。そういう学生にどういうカリキュラムを提供 していくかというのが、大学の中でも課題になっています。スタンフォード大学デザインスクール の看板授業に ME310 という 20 年ぐらい続いている授業があって、彼らの授業はいまや、発展途上 国を含む世界の 10 カ所強の大学とパートナーを結んで行われています。いまアメリカの教育は「大 学卒業までに発展途上国の学生と一緒にグループワークをやったことのない人材は、教育が不十分 だ」と思われるぐらいになっているわけです。そういうプラットフォームの中に山田先生がいまおっ しゃったような話を乗せていくと、もしかしたら実現できそうだなと感じました。

琴坂 いまのお二人のお話をつなげると、やはりわれわれ研究者や大学がグローバル化すべきですね。

われわれが仲介者になり、われわれがデザインを提案する立場になれると多分、うまく回るという話 ですね。

新藤 産業界のことをいう前に、まず大学が変わらなければというご指摘ですね。ご質問いただいた のは、地域ごとに散在するニーズに対してどう応えていくのかという内容でしたが、これについては またそれぞれで議論が必要なのかなと思います。

質問者 ありがとうございました。

先生方にひと言ずつお願いできればと思います。

田路 やはり、人が動かなければいけないと思います。一番グローバル化してほしいのは人ですね。

ケンブリッジの例をみていると、ほんとうにグローバルになるときにはアメリカの VP を雇うとか、

創業者の一人がアメリカに1年行ってみるというようなことをしています。ヨーテボリもそういう意 味では 70%ぐらいでしょうか。ヨーテボリに一番ないものは、資金――ベンチャーキャピタル(VC)

だと思います。

 実際、起業する人はものすごく増えていてアメリカの VC の Y コンビネータの3カ月の起業支援 プログラムを受けようと、全世界から IT の起業家の卵が殺到しています。しかしカリフォルニアに いても、VC からお金をもらうのはものすごく難しい。100 票ぐらいのサンプルを調査したら、日本 の方が案外ベンチャーキャピタルからお金をもらえるということがわかりました。追加投資はもらえ ます。しかし、立ち上げ資金はむずかしい。アメリカはどうかというと、立ち上げ時にかなりの確率 でビジネスエンジェル(個人投資家)は出すんです。でも VC は日本より少なくて厳しい、ものすご い競争になっている。アメリカの中にいてもそうだということです。

 じゃあ海外のアントレプレナーがどうアクセスするかというと、すごくハードルが高い。ですから 結果として、やっぱり知識ベース型ではなく知識集約型なことを地道にやることが大切だということ です。一番大事なものはお金ではなく、支援する人だと思います。経営だったり技術だったり、ビジ ネスをわかっている地元の人がボードに入るとか、メンターに入ることが一番重要です。もしも、も のすごく光り輝くものがあれば、お金はロンドンやアメリカのベンチャーキャピタルが出してくれる。

これから人はもっと動き、日本人も活発に動くだろうと思っています。

山田 牧先生と初めてお会いしたのですが、私が十数年研究してきたケーススタディーのキーとなる のは「創業者のキャリアの出口が、ベンチャーの出口の意思決定を左右する決定的な要因である」と いうことです。それが私の本の結論なのですが、それを物差しとして評価するだけの知見の背後には、

我々が世界貿易の相互依存のバランスに埋め込まれているという前提が見失われがちになるというこ とがあるのですね。グローバライゼーションというか、国際貿易が止まったら数日で日本のすべての エネルギーは止まるという日本のコンテクストが軽視されていることに、私は危機感を持っています。

 さきほどから新藤先生の質問に答える形でお話してきましたが、アカデミアの世界がグローバライ ズドな潮流に十分対応できるような仕事をもっとしなければいけない――というとまた発言したくな るのですが、そんなに事態は単純化して解決できないでしょう。事実、すべての国立大学を民営化し ようとする宙ぶらりんな制度ができて、いま一つうまく機能していないという状況があります。大反 対せざるを得ないような弊害もあれば、評価する部分も当然ありますが、これからさらにグローバラ イゼーションしたときに、言語とか制度をつかさどる知の拠点の大学がちゃんと機能できるのか。複 数のセクターの協力体制(アライアンス)を運営する人のキャリアの出口であるとか、サイエンスと か MBA(経営管理大学院)、さらに経営者や企業家に対する社会の不信を回復させるような、期待

に応える仕事をすることが求められていると考えています。

琴坂 さきほどコンテクストが先にくるのか、商品が先にくるのかという話をしました。私は関西か ら来ているので、コンテクストを生かすということを関西の例で言うと、京都の西陣織というような イメージでしょうか。まず、僕らが働いている地域のコンテクストを知る。地域独自の伝統的な技術 が生かせる場を見つけられるように、実務家やわれわれのような学者がグローバル化する。その良さ を理解してくれる人を世界中から集めてくる。そのコーディネーターとしての学者であり、実務家な んだろうと思います。また「打ち上げロケットのバルブで世界最高の会社をつくる」というなら、人 もお金も知見もすべて持ってきて、打ち上げロケットのバルブに関してはこの地域が世界最高だとい うふうにやらないと生きていけないし、そうやるべきだと思います。

牧 アメリカに住んでいるからそういう見方になるのかもしれませんが、「競争が必要なものはすべ てグローバル化せざるを得ない」ということは、すでに明らかだと思います。大学発ベンチャーのコ ンテクストとして最後に残った領域が、国の研究費とグラントだと思います。それすらグローバル化 しつつあるという気がします。

 アメリカでは NIH のグラントに、外国の人も申請できるようになってきています。そうしなけ ればレベルが上がらないので。個人的にはいまスタンフォード大学にいますが、日本の科研費――

NISTEP から助成金を受けています。そういうクロスアポイントメントが普通になっていくので、多 分グラントですらグローバル化することになるでしょう。

福嶋 何をグローバル化すべきかというのはほんとうに難しい話で、端的に言うと 「人である」 と田 路先生がおっしゃっていましたが、人のみならず人脈自体もグローバル化が必要なのだと思います。

日本の大学のアカデミック・スピンオフを、私は「大学に埋もれた未利用の資源や技術を利用する手 段」ととらえていまして、いま日本の大学はその技術をどう使うか、どう生かしていくか、どう消費 していくかという部分が弱い。その技術の可能性を目利きのような人が引き出してあげる。そういう ことがとても大切だと思います。山田先生も 「目利きの人は少ない」 というお話をされていましたが、

研究者は学会などで世界を飛び回っていますので、目利きの人に任せるだけでなく、学生や企業の人 も含めてグローバルに人脈を生かしていくという発想、そういうメンタルな部分も重要ではないかと 思います。

新藤 先生方のご意見をまとめさせていただくと、そもそもグローバル化すべきかという質問に対し ては「おそらくそれは前提だろう」 ということでした。ただ地域によっては、マグネットとして引き 付ける地域とそうでない地域がある。マグネットになれていない地域がどう活路を見いだすかという 点が、一つのポイントになると思います。

 二つ目としては、コンテクストとして何が重要なのか。コンテクストに合っている・合っていない という議論に関しては、3つの重要な要素が出てきました。一つは大学をどうしていくのか。二つ目 は産業界、特に大企業のあり方をどうしていくのか。残る一つはベンチャーキャピタルその他をどう