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① 体重増加について

機構は、本剤による体重増加について説明するよう申請者に求めた。

81)MedDRA SMQ「動脈の塞栓および血栓(狭域)」、「血管タイプ不明あるいは混合型の塞栓および血栓(狭域)」及び「静脈の

塞栓および血栓(狭域)」に含まれる事象

申請者は、P06124 試験及び

P06125

試験の併合成績における体重の変化について、本剤投与開 始前を基点とした体重変化量の推移は表

43

のとおりであり、投与期間の長期化に伴って体重変化 量が増加したことを説明した。

43 P06124試験及びP06125試験における本剤投与開始前を基点とした体重変化量の推移

評価時期a) プラセボ/本剤集団b) 本剤/本剤集団c) 評価例数 変化量d) 評価例数 変化量e)

8週/10週時 28 0.86 ± 2.62 137 1.09 ± 3.40

16週/18週時 23 1.27 ± 3.45 118 1.79 ± 4.93

24週/30週時 21 1.50 ± 4.23 95 2.23 ± 6.60

40週/46週時 18 2.15 ± 5.42 77 2.99 ± 7.16

52週/58週時 15 0.87 ± 6.74 70 2.54 ± 7.42

平均値 ± 標準偏差(kg)

a) 本剤投与開始からの期間(プラセボ/本剤集団/本剤/本剤集団)

b) P06124試験でプラセボ群に割り付けられ、P06125試験では本剤を投与された集団

c) P06124試験で本剤10 mg/日群又は本剤20 mg/日群に割り付けられ、P06125試験で

引き続き本剤を投与された集団

d) P06125試験のベースラインからの変化量

e) P06124試験のベースラインからの変化量

また申請者は、P06124試験及び

P06125

試験の最終評価時におけるベースラインからの体重変 化区分別の被験者の割合(表

44)を提示し、7%以上体重が増加した被験者の割合は、P06124

試 験において用量の増加に伴って増加する傾向が認められたこと、本剤の長期投与により増加する 傾向が認められたことを説明した。さらに申請者は、P06124試験及び

P06125

試験における体重 増加関連の有害事象82の発現割合は、P06124試験のプラセボ群で

0.6%(1/174

例)、本剤

10 mg/

日群で

2.9%(5/175

例)、本剤

20 mg/日群で 2.8%(5/181

例)、P06125試験で

16.9%(34/201

例)

に認められたことを説明した。

44 P06124試験及びP06125試験の最終評価時におけるベースラインからの体重変化区分別の被験者の割合

P06124試験a) P06125試験b)

本剤10~20 mg/日 プラセボ群 本剤10 mg/日群 本剤20 mg/日群

評価例数 171 172 178 188

+7%以上 0 8 (4.7) 13 (7.3) 48 (25.5)

+0%以上、+7%未満 47 (27.5) 92 (53.5) 93 (52.2) 76 (40.4)

-7%以上、+0%未満 108 (63.2) 66 (38.4) 66 (37.1) 44 (23.4)

-7%未満 16 (9.4) 6 (3.5) 6 (3.4) 20 (10.6)

該当例数(割合(%))

a) 投与期間6週間 b) 投与期間52週間

その上で申請者は、本剤の体重増加に対する影響について他の抗精神病薬と比較したメタアナ リシスにおいて、本剤は

ziprasidone、lurasidone、アリピプラゾール、amisulpride

とともに体重増 加に対する影響が小さい薬剤であるとされていること(Leucht S, et al. Lancet, 382: 951-962, 2013)

から、本剤による体重増加のリスクは他の非定型抗精神病薬を上回るものではないと考えるもの の、臨床試験成績を踏まえ、本剤による体重増加について添付文書において注意喚起を行うこと を説明した。

② 耐糖能異常について

機構は、本剤による耐糖能異常について説明するよう申請者に求めた。

申請者は、P06124試験及び

P06125

試験における空腹時血糖及び

HbA1c(JDS

値)のベースラ インからの変化量の平均値について、いずれの投与群でも大きな変動を認めなかったことを説明

82)MedDRA PTで肥満、過体重、体重変動、体重増加に該当する事象

した。また申請者は、空腹時血糖及び

HbA1c

が基準値を超えた被験者の割合は表

45

のとおりで あり、本剤の長期投与により空腹時血糖及び

HbA1c

が基準値を超えた被験者の割合は増加する傾 向が認められたことを説明した。

45 P06124試験及びP06125試験における空腹時血糖及びHbA1cが基準値を超えた被験者の割合

P06124試験 P06125試験

本剤10~20 mg/日 プラセボ群 本剤10 mg/日群 本剤20 mg/日群

空腹時血糖 15/123 (12.2) 15/138 (10.9) 16/137 (11.7) 38/163 (23.3)

HbA1c 5/154 (3.2) 0/157 (0) 4/154 (2.6) 9/171 (5.3)

試験期間中に基準値の上限を上回った被験者数 / P06124試験のベースラインにおいて正常値 であった被験者数(割合%)

空腹時血糖の基準値(mg/dL): 日本70~109、韓国70~110、台湾74~109

HbA1cの基準値(%): 日本4.3~5.8(JDS値)、韓国4.7~6.4、台湾4.3~6.1

次に申請者は、

P06124

試験及び

P06125

試験における耐糖能異常関連の有害事象83の発現状況 は表

46

のとおりであり、P06124 試験のプラセボ群と本剤群における発現割合に大きな差異は認 められなかったこと、いずれも軽度又は中等度の事象であったことを説明した。また申請者は、

P06125

試験では糖尿病が

6

例で認められているものの、いずれも治験薬との因果関係は否定され

ていることを説明した。さらに申請者は、海外長期投与試験61における耐糖能異常関連の有害事 象の発現割合は、本剤

10~20 mg/日群で 2.7%(57/2134

例)、オランザピン

5~20 mg/日群で 5.1%

(31/613 例)であり、オランザピンを上回るリスクは示唆されなかったことを説明した。なお申 請者は、海外製造販売後安全性情報において報告された耐糖能異常関連の有害事象は

103

件(73.8 件/10万人年)であり、糖尿病性高浸透圧性昏睡、ケトアシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシス 等の重大な事象についても報告されていたことを説明した。

46 P06124試験及びP06125試験における耐糖能異常関連の有害事象の発現状況

P06124試験 P06125試験

本剤10~20 mg/日 プラセボ群 本剤10 mg/日群 本剤20 mg/日群

評価例数 174 175 181 201

耐糖能異常関連の有害事象 4 (2.3) 6 (3.4) 4 (2.2) 13 (6.5) 血中インスリン増加 4 (2.3) 2 (1.1) 2 (1.1) 5 (2.5) 血中ブドウ糖増加 2 (1.1) 1 (0.6) 2 (1.1) 2 (1.0) 血中インスリン減少 0 1 (0.6) 1 (0.6) 0

高インスリン血症 0 2 (1.1) 0 0

糖尿病 0 1 (0.6) 0 6 (3.0)

2型糖尿病 0 0 0 1 (0.5)

グリコヘモグロビン増加 0 0 0 1 (0.5) 発現例数(発現割合%)

また申請者は、体重増加と耐糖能異常の関連性について、P06124試験では体重増加を示した被 験者が少なかったため検討が困難であったことを説明した上で、P06125試験では、体重増加(ベ ースラインから

7%以上の増加)

ありの集団において耐糖能異常関連の有害事象は

9.3%

(7/75例)、 体重増加なしの集団において

4.8%(6/126

例)で認められており、体重増加が認められた被験者 で耐糖能異常に関連する有害事象の発現割合が高くなる可能性が示唆されたことを説明した。

その上で申請者は、本剤と他の非定型抗精神病薬における耐糖能異常に関連するリスクについ

83)MedDRA PTで以下に該当する事象

糖尿病、コントロール不良の糖尿病、耐糖能障害、高血糖、代謝症候群、空腹時血中ブドウ糖不良、高インスリン血症、1 糖尿病、2 型糖尿病、血中ブドウ糖異常、血中ブドウ糖増加、血中インスリン減少、血中インスリン増加、グリコヘモグロ ビン増加、血中ブドウ糖変動、糖尿病を合併する妊娠、高浸透圧をともなう糖尿病、糖尿病性昏睡、糖尿病性高血糖昏睡、

妊娠糖尿病、妊娠時の耐糖能障害、尿中ブドウ糖陽性、糖尿、妊娠糖尿、高血糖性高浸透圧性非ケトン性症候群、インスリ ン抵抗性、インスリン抵抗性糖尿病、インスリン必要2 型糖尿病、ケトアシドーシス、代謝症候群、新生児糖尿病、尿中ケ トン体陽性

て、本剤投与時における血糖値の増加はパリペリドン等と大きく異ならず、耐糖能異常のリスク はリスペリドンと類似していること(De Hert M et al, CNS drugs, 26: 733-759, 2012、Stoner SC et al,

Clinical Therapeutics, 34: 1023-1040, 2012)を説明した。

以上を踏まえ申請者は、本剤による耐糖能異常については、リスペリドン等の非定型抗精神病 薬と同様に添付文書において注意喚起を行うが、警告欄における注意喚起までは不要と考えるこ とを説明した。

③ 脂質代謝異常について

機構は、本剤による脂質代謝への影響について説明するよう申請者に求めた。

申請者は、

P06124

試験及び

P06125

試験における脂質代謝異常関連の有害事象84の発現状況は 表

47

のとおりであり、本剤投与時に発現割合が高い傾向が認められたものの、用量増加に伴いリ スクが高くなる傾向は認められなかったこと、いずれも軽度又は中等度の事象であったことを説 明した。また申請者は、海外長期投与試験61における脂質代謝異常関連の有害事象の発現割合は、

本剤

10~20 mg/日群で 2.4%(51/2134

例)、オランザピン

5~20 mg/日群で 4.9%(30/613

例)であ り、オランザピンを上回るリスクは示唆されなかったことを説明した。さらに申請者は、海外製 造販売後安全性情報において報告された脂質代謝異常関連の有害事象は

22

件(15.8件/10万人年、

うち重篤

6

件)であり、安全性上の大きな問題は認められていないと考えることを説明した。

47 P06124試験及びP06125試験における脂質代謝異常関連の有害事象の発現状況

P06124試験 P06125試験

本剤10~20 mg/日 プラセボ群 本剤10 mg/日群 本剤20 mg/日群

評価例数 174 175 181 201

脂質代謝異常関連の有害事象 4 (2.3) 10 (5.7) 5 (2.8) 20 (10.0) 主な事象

高脂血症 2 (1.1) 2 (1.1) 1 (0.6) 8 (4.0) 血中トリグリセリド増加 0 1 (0.6) 2 (1.1) 3 (1.5) 高トリグリセリド血症 1 (0.6) 2 (1.1) 1 (0.6) 1 (0.5)

脂肪肝 0 2 (1.1) 0 3 (1.5)

脂質異常症 0 1 (0.6) 0 3 (1.5) 発現例数(発現割合(%)

機構は、本剤の投与により体重増加のリスクが示唆されていること、体重増加が認められた患 者で耐糖能関連の有害事象の発現リスクが高くなる可能性を否定できないことを踏まえると、本 剤投与時には体重の変化を観察するとともに、体重増加が認められた場合には糖代謝パラメータ 等を確認することが適切と考える。なお機構は、本剤による体重増加について、添付文書におい て適切に注意喚起を行った上で、製造販売後調査において引き続き情報収集する必要があると考 える。

また機構は、本剤投与時は血糖値及び

HbA1c

の上昇並びに耐糖能異常関連の有害事象の発現が 認められていることを踏まえると、リスペリドン等の抗精神病薬と同様に添付文書において十分 な注意喚起を行う必要があると考えるが、本剤による耐糖能異常のリスクはリスペリドン等と同 程度との報告があることを考慮すると、現時点で糖尿病患者に対する本剤の投与を禁忌とする必 要はないものと考える。なお機構は、耐糖能異常関連の有害事象の発現状況及びリスク因子につ

84)MedDRA HLT「トリグリセリド検査」、「コレステロール検査」、「リポ蛋白および脂質検査 NEC」、「トリグリセリド上昇」

「高脂血症NEC」、「脂質代謝障害および脂質沈着症NEC」、「コレステロール上昇」及び「トリグリセリド上昇を伴うコレス テロール上昇」並びにPTで高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂質異常症、高脂血症、血中コレステロール 増加、血中トリグリセリド増加、低比重リポ蛋白増加に該当する事象