Ms. Chizuko Sumita 2001 年 9 月、「タイ国の事をもっと日本の人たちに知ってもらいたい、タイの人達に身近な日本の事をもっと知ってもらいたい。」という今は 亡き母の意志を継ぎ、日本の大手外資系企業から転身、バンコク市プラカノンに、スミタ・カルチャー・センターを設立。タイ国と日本の文化 を学ぶ場としての学校、翻訳・通訳業、企業トレーニングのプログラムの開発・提案とトレーニングを行っている。スミタ・カルチャー・セン ター主宰。通算 30 年を越すタイ国、及び諸外国での滞在経験から、文化の相互理解の必要性を説く
「クロス・カルチャーとは「“ 相互理解 ” とそれによって得られる “ 相乗効果 ”。まず、お互いが違うということを認識し、理解することが大切」
文 杉山佳久 Text by Yoshihisa Sugiyama 通訳 住田千鶴子 Interpreter : Chizuko Sumita 写真 ムック Photograph by mook
撮影協力 インペリアル・クイーンズ・
パーク・ホテル
﹁異文化相互理解の大切さ﹂
対談 VS
︱︱お忙しいところ︑ムーブBIZインタビューにお時間を頂きありがとうございます︒さっそくですが︑﹁クロス・カルチャー﹂という言葉に馴染みが薄いのですがご説明頂けますか?Hドクター・ホームズ︵以下H︶ それには︑まず︑根底の考え方を説明する必要があります︒
すべての国のすべての人は︑仕事を通して良い結果を出したいと思っています︒それは︑欧米諸国でもアジアでも︑もちろん日本でも同じです︒
しかし︑
30〜 まっていました︒ しがお互いの不信感につながってし 結果が出ないといわれる︒その繰り返 の管理方法は受け入れられないまま︑ です︒現地側から見ると︑自分たち していた結果が得られなかったわけ 現地スタッフの成果があがらず︑期待 理解できなかったためです︒その結果︑ 方法や業務方式がある︑ということが も歴史があり︑その国ならではの管理 国に適用しようとしました︒タイ国に 成功した管理方法や業務方式をタイ してきた欧米や日本の企業は︑自国で 40年前にタイ国に進出
そして︑これがお互いの頭痛の種 になり︑双方に欲求不満が溜まっていったわけです︒
そのギャップをどのように解決しようと考えたのですか?H さきほどのように︑お互いのやり方だけに固執していては︑ギャップは広がるばかりです︒ そこで︑両方のカルチャーの違いを双方に説明すれば︑双方のカルチャーを相互理解した関係を構築することができる︑と考えました︒それができるとお互いを尊敬︑尊重できるようになり︑その結果︑高いレベルでの信頼関係︑相乗効果や満足感が得られることになります︒つまり︑お互いのカルチャーがクロスするわけです︒住田氏︵以下S︶ 一言でいうとクロス・カルチャーとは﹁相互理解﹂とそれによって得られる﹁相乗効果﹂だと思います︒それには︑まず︑お互いが違う︑ということを認識し理解することが大切です︒海外で暮し︑働くということは︑今までの自分のカルチャーとは異なる地に入ることです︒例えばその違いを受け入れることで同じひとつの経験が︑良くも悪くもなるわけです︒異文化を受け 入れるにはお互いに学びあい︑尊重しあうことが必要です︒そうすれば︑ネガティブな感情や経験がポジティブに変わります︒|このクロス・カルチャーの考え方でトレーニング・プログラムを開発されていますが︑どのくらいの歴史があるのですか?H 私は︑1960年代にアジア諸国で働くアメリカ人に対して︑現地の人たちと働くということはどのようなことか︑ということを教えていました︒そして︑
トレーニングを受けてもらいます︒ タイ人が半分︑つまり︑双方一緒に 受けるのは︑欧米人が半分︑そして ントを始めました︒トレーニングを 欧米人とタイ人に対するコンサルタ 70年代に入って︑
今までに︑
レーニングを行い︑日本人を含む 30年以上にわたってト
70
カ国を越す人々が受講しています︒その中で︑日本人の数は少ないですね︒日本人は同じアジア人ですから︑タイ人と容姿が似ていることもあり︑お互いに容易に理解しあえると感じているようですね︒S 確かに日本人はアジア人です︒特にタイ国は仏教の国ですからなじ
みやすい︒しかし︑本当のところ︑異文化がベースにあるために生じる問題も多くあります︒
例えば︑仕事のやり方︑ひとつ取っても違います︒上司の日本人が忙しく仕事をしていると︑タイの人は︑その時に報告すべきことを﹁遠慮﹂して報告しない︒フィード・バックが得られないわけです︒その結果︑会社の損失につながることも起きてしまうわけです︒日本ならこのような状況での遠慮は遠慮とは考えません︒︱︱
カルチャーとは︑価値観ということでもあるのでしょうかH そうですね︒もちろん︑価値観もそのひとつです︒どこの国でもそうだとは思いますが︑ホスト国の価値観を理解しようとすることで︑現地スタッフとの協力関係が持たれる場合があります︒タイのにとっての重要な価値観を知りたいと思うこと︑そして︑理解に努めることで︑より一層の協調性が生まれる場合があります︒S 日本人は︑﹁責任感﹂﹁時間﹂人前で恥をかかせないための﹁根回し﹂などを大切に思っていますよね︒タイの人は︑﹁尊敬の念﹂﹁思いやり﹂﹁協調性﹂などがそれにあたるのではないでしょうか︒ですから︑それを理解していないとお互いの思いが届か ルチャー・センターは︑タイの人達に身近な日本の事を知ってもらいたい︑そして︑タイ国の事をもっと日本の人たちに知ってもらいたい︑特にビジネスに携わる人達へのトレーニングを考えていた時にホームズさんと出会ったのです︒ このプログラムは︑タイ国で仕事をする日本人への大きな助けになり︑そしてタイ人にとっても日本人のビジネスのやり方について理解を深めることができる︑と感じました︒そして︑はじめに言いましたとおり︑相互理解が良い相乗効果をもたらし︑大きな意味でタイ国のビジネスにとって︑いい結果をもたらすことができれば︑少しでもタイ国に対する貢献になるのでは︑という思いもあります︒︱︱トレーニングの結果を定量的に測定することはとても難しいと思うのですがH そうですね︒このトレーニングはソフト・スキルを学ぶコースです︒直接的なプロフィット︵利益︶︑すなわちハード・リゾルトを計算することは難しいと思われますが︑こう考えてはどうでしょう︒ つまり︑ソフト・スキルを得ることでハード・リゾルトを得るという考え方です︒
ある会社で︑スタッフがなかな ないことになります︒︱︱では︑トレーニング・プログラムの話をお聞かせ下さい︒H はい︒現在は︑タイ人と外国人向けのクロス・カルチャー・トレーニングを2日間のコースで行っています︒お互いのカルチャーを理解することの大切さやその違いを認識すること︑参加者をチームに分けてのディスカッションやロールプレイなどもプログラムに入っています︒S 今回︑ドクターから日本人マーケットへのクロス・カルチャー・トレーニングのお話を頂いた時に︑日本人の視点でプログラムを再構築する必要があると感じました︒そこで現在︑1日のコースを企画中です︒︱︱
ところで︑なぜ︑日本人に対してのトレーニングを︑とお考えになったのですか?H タイには︑多くの日本人の方々が働いています︒そして︑おそらく何らかの問題を抱え︑結果を出せないでいる人もいるはずです︒基本的に日本人は学びたがり屋だと思っています︒ですから︑クロス・カルチャー・トレーニングで学んだスキルを仕事に生かすことで︑今まで以上の成果を出せると感じたからです︒もっともパートナーとしての住田さんの熱意もあったのですが︒S 私が主宰しているスミタ・カ と宣言したのです︒私はその時の感動をいまだ忘れていません︒︱︱なるほど︒クロスカルチャートレーニングは相当エモーショナル︵感動的︶な感じですねS 実際に自分の体を動かし︑他の参加者と心の感動を共有することで︑次の日から職場の仲間どうしで歩み寄ることができ︑その距離が縮まり︑チームを体感でき︑モチベーションがあがるようです︒日本人向けトレーニングもそのエッセンスを凝縮したものになります︒H 実際︑﹁ワーキング・ウィッズ・ザ・タイズ﹂という英文の本を﹁タイ人と働く﹂と題して日本文の本も出していますが︑知識を得る手段として本は有効ですが︑体感できるトレーニングの効果を得られるものではありません︒︱︱最後にタイで働く日本人へのメッセージをお願いしますH お互いのカルチャーを理解することで︑よりよい結果をもたらすことができます︒その一助として︑我々がお役に立てれば光栄です︒S 違いを認識していない日本人の方々が無駄に時間を費やしているように見受けられます︒まずは︑ベースを見極めることが次の大きなステップの第一歩になると考えます︒|
本日はありがとうございました かオープンに意見を言わない状況があったとします︒マネジャーは︑問題点の把握が遅れ︑多かれ少なかれ会社に損失をもたらす結果になっています︒しかし︑ソフト・スキルの向上に努めたマネジャーはスタッフからの信頼を得ることができ︑問題点の報告を受け︑問題の発生を未然に防ぐことができます︒この種の問題はすべての会社で起こっていると考えられます︒︱︱多くのトレーニングをされていますが︑受講者からの声をお聞かせ願えますか?H あるアメリカ人のマネジャーの話です︒その人は︑押し付けが多く︑失礼な態度を取る高齢のマネジャーでした︒タイのスタッフに嫌われていて︑尊敬の念を持たれていませんでした︒その会社のスタッフ
カルチャーのコースを受けました︒ アメリカ人︑半分がタイ人︶が︑クロス・ 30人︵半分が トレーニングが終わるとそのマネジャーが立ち上がって︑話出しました︒彼はタイ人のスタッフに対して﹁私は今までとても無知だった︒タイの素晴らしいカルチャーのひとつ︑ナムチャイ︵同情︑情け︶を教えてくれてありがとう﹂と言ったのです︒そして︑﹁今日から私は変わります︒そして︑自分の部門のアメリカ人にもこの考え方を教えます︒﹂