5.6 周波数・位相急変試験
5.6.2 位相変化を伴う電圧低下耐量試験
4章では系統電圧の瞬時電圧低下が発生した場合を想定し,本研究システム の持つ系統電圧低下に対する耐量に関して論述した。しかしながら,系統連系規 定に基づいて,パワーコンディショナシステムは系統の電圧低下だけでなく,位 相変化を伴った場合に関しても運転継続可能なシステムである事が求められる。
従って,本節では位相急変が発生した場合に関して評価を行う。しかし,位相急 変には進み方向の変化と遅れ方向の変化が考えられる。アクティブ型のパワー デカップリング回路の動作を考えた際,進み方向の位相変化と遅れ方向の位相 変化の違いによって動作モードの違いが異なるため,これら両方の位相変化に 対する評価が必要となる。試験条件は,出力電力200W動作時に,図 5-23に示 す系統電圧の変化を与えた場合の各動作波形を観測する。具体的には,進み方向
に41°の位相急変が発生し500ms後に遅れ方向に41°の位相急変が発生する事
で,元の位相に戻った場合の評価(図 5-23a)。同様に,遅れ方向に41°の位相 急変が発生し500ms後に進み方向に41°の位相急変が発生することで,元の位 相に戻った場合の評価図 5-23bを行う。
(a) 進み方向の位相変化
1 0 .8 1 1 T i m e (s) 1 1 .2 1 1 .4
0
-1
-2 1
2va c
10.86 10.88 T ime (s)10.9 10.92 10.94
0
-1
-2 1 2vac
11.36 11.38 T ime (s)11.4 11.42 11.44
0
-1
-2 1 2vac
位相急変(進み)41° 位相急変(遅れ)41°
200
0
-200
200
0
-200
200
0
-200
20ms 20ms
500ms
- 92 -
図 5-24に(a)出力電流 iac,(b)パワーデカップリングキャパシタ電圧vac,(c)入
力電流波形 idc の観測結果をまとめる。(a)出力電流 iacに着目すると,位相急変 の発生後に進み位相遅れ位相それぞれの変化に応じて出力電流リプルが増加し ている。これは。電流制御の制御器としてPR補償器を用いているため,系統周 波数成分である50Hz以外の制御性が乏しく,外乱に対する応答が悪いためであ ると推察される。従って,系統事故を想定した場合にはより広域な周波数帯域の 制御応答性が求められると言える。入力電流波形idcは進み位相の変化に対して は脈動が増加し(図 5-24b1),遅れ方向の変化に対しては減少している(図
5-24b2)。入力電流の脈動の変化は,先述した出力電流の変化に伴うものである
と考えられるため,電力脈動の低減機能については変わらずに機能していると 言える。パワーデカップリングキャパシタ電圧 vxは進み位相の変化に対しては 減少し(図 5-24c1),遅れ方向の変化には増加する(図 5-24c2)。この電圧変動 の要因は系統電圧の低下試験の場合と同様に,過剰な電圧の増加は,スイッチン グデバイスやキャパシタに使用する耐圧増加に繋がるため好ましくない。また デカップリングキャパシタ電圧の過剰な減少により系統電圧の最大値を下回っ た場合に,インバータの出力電流制御に支障が生じる。したがって,デカップリ ングキャパシタ電圧の変動要因の明確化を図る。位相変動が発生した場合の問 題として懸念される点に関してもPLL(位相同期回路)で求まった位相が,系統 電圧の位相と異なって同期ズレを起こすことである。そこで,図 5-25に系統電
(b) 遅れ方向の位相変化 図 5-23 系統電圧の位相急変
20ms
1 0 .8 1 1 T i m e (s) 1 1 .2 1 1 .4
0
-1
-2 1
2va c
位相急変(遅れ)41°
10.86 10.88 T ime (s)10.9 10.92 10.94
0
-1
-2 1 2vac
11.36 11.38 T ime (s)11.4 11.42 11.44
0
-1
-2 1 2vac
位相急変(進み)41°
200
0
-200
200
0
-200
200
0
-200
20ms
- 93 - 圧波形とPLLによる最大値検出波形を示す。
(a1) 出力電流iac (進み位相) (a2) 出力電流iac(遅れ位相)
(b1) 入力電流idc(進み位相) (b2) 入力電流idc(遅れ位相)
(c1) PDキャパシタ電圧vx(進み位
相)
(c2) PDキャパシタ電圧vx(遅れ位
相)
図 5-24 位相変化時の各動作波形(左:進み位相 右:遅れ位相)
(a) 最大値検出結果(進み位相) (b) 最大値検出結果(遅れ位相) 図 5-25 系統位相急変発生時のPLL動作(a:進み位相 b:遅れ位相)
11 11.2 11.4
Time (s) 0
-0.5
-1 0.5 1iaciac_ast
10
-10 0
100ms
Current [A]
Actual output current Command output current
10.8 11 11.2 11.4
Time (s) 0
-0.5
-1 0.5 1iaciac_ast
10
-10 0
Current [A]
100ms Actual output current Command output current
6
-2 0
10.8 11 11.2 11.4
Time (s) 0
-2 2 4 6Idc
Current [A]
100ms
10.8 11 11.2 11.4
Time (s) 0
-2 2 4 6Idc
6
-2
Current [A] 0
100ms
10.8 11 11.2 11.4
Time (s) 2
2.2 2.4 2.6 2.8 3
300Vx
200
Voltage [V]
100ms
10.8 11 11.2 11.4
Time (s) 1.8
2 2.2 2.4 2.6 2.8 3 3.2
320Vx
180
Voltage [V]
100ms
10.8 10.82 10.84 10.86 10.88 10.9 10.92 10.94 10.96 10.98 11
Time (s) 0
-1
-2 1
2Uvac
200
-200 0
Voltage [V]
Maximum value detection
40ms
10.8 10.82 10.84 10.86 10.88 10.9 10.92 10.94 10.96 10.98 11
Time (s) 0
-1
-2 1
2vacU
200
-200 0
Voltage [V]
Maximum value detection
40ms
- 94 -
その結果,位相変化の発生に伴って系統電圧の最大値は変化していないにも かかわらず,PLLによる最大値の検出結果は変動している。最大値検出の変動は 1周期分で収まるものではあるが,最大値電圧の検出結果から発生しうる電力脈 動成分の推定を行っているため,最大値の検出結果の変動は影響を与えること が懸念される。
図 5-26に実際に発生している電力脈動成分と,推定された電力脈動成分をそれ ぞれ示す。両波形を比較し,時間軸で線対象となっている場合に正しく電力脈動 成分の推定が行われている状態であると言えるが,系統電圧の位相急変に伴っ て,推定される電力脈動成分と実際の電力脈動成分が異なっている。進み方向の 位相変化に対しては,実際の電力脈動成分の方が推定した電力脈動成分より大 きくなっているため,充電電流制御の指令値が不足し,デカップリングキャパシ タ電圧の値が減少している。一方,遅れ方向の位相変化に対しては推定した電力 脈動成分の方が実際の電力脈動成分より大きくなっているため,充電電流の指 令値が過剰となり,デカップリングキャパシタ電圧が増加する。以上より,位相 急変時のパワーデカップリングキャパシタ電圧の変動は PLLの最大値検出の差 異によるものであると言えるが,PLL動作を改善する事は困難である。従って,
デカップリングキャパシタ電圧の変動によってキャパシタ素子耐圧超過もしく は系統電圧の最大値を下回る事を防ぐため,それぞれ閾値を設けて,パワーデカ ップリング動作を停止する機構を設けるとよい。
(a) 電力脈動成分(進み位相) (b) 電力脈動成分(遅れ位相)
図 5-26 実際の電力脈動成分と推定された電力脈動
(a:進み位相 b:遅れ位相)
10.8 10.82 10.84 10.86 10.88 10.9 10.92 10.94 10.96 10.98 11
Time (s) 0
-0.5
-1 0.5 1prippac2-0.2
40ms 1000
-1000 0
Power [W]
Actual power pulsation Estimated power ripple
Grid phase fluctuation
10.8 10.82 10.84 10.86 10.88 10.9 10.92 10.94 10.96 10.98 11
Time (s) 0
-0.5
-1 0.5 1prippac2-0.2
40ms 1000
-1000 0
Power [W]
Actual power pulsation Estimated power ripple
Grid phase fluctuation
- 95 -