第4章 実⾏結果
4.2 伝達関数モデルと電源特性モデルの予測結果
4.1 節で作成した GA による学習データに、図 3.1 で⽰した⼿順を繰り返して追加デ ータを作成し、収集した約7万データの学習データで伝達関数モデルと電源特性モデル の設計を⾏う。伝達関数モデル及び電源特性モデルを設計する際のハイパーパラメータ 設定は表 4.2 と同様にするが、電源特性モデルのみノード数を 2 倍にする。これは、電 源特性モデルの⼊⼒は同じ学習データで学習させた伝達関数モデルの出⼒値であるた め、ノード数を多くすることで学習データの依存性を⼤きくしている。これらの設定と 学習データで学習を⾏った際の誤差関数の推移を図 4.3 ~4.4 に⽰す。
34
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220
0.2 0.4 0.6
0.1 0.3 0.5 0.7
epoch
loss
training_loss validation_loss
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220
0.2 0.4
0.1 0.3 0.5
0.15 0.25 0.35 0.45 0.55
epoch
loss
training_loss validation_loss
図 4.3 訓練データ及びバリデーションデータの誤差関数の推移(伝達関数モデル)
図 4.4 訓練データ及びバリデーションデータの誤差関数の推移(電源特性モデル)
35
どちらのモデルにおいても訓練データとバリデーションデータの誤差関数が epoch の進みに伴って同じスケールで減少しているため、学習は正確に⾏えている。学習済み のモデルにテストデータを⼊⼒し、⼊⼒と出⼒の誤差率から予測精度を確認するが、伝 達関数モデルでは出⼒された予測伝達関数をシミュレーションにかけて電源特性を導 出し、⼊⼒した電源特性と⽐較した誤差率の計算も⾏う。以下にパラメータ毎に計算し たテストデータの平均誤差率を⽰す。
表 4.5 テストデータに対する予測伝達関数の誤差率(伝達関数モデル)
表 4.6 テストデータに対するシミュレーション結果の電源特性の誤差率(伝達関数モデル)
評価項⽬ 誤差率 [%]
直流ゲインK
3.71
極
𝑝
122.3
極
𝑝
222.4
ゼロ点
𝑧
56.31
ゼロ点
𝑧
i11.2
総平均誤差率
13.2
電源の状態変化 評価項⽬ 誤差率[%]
負荷抵抗値の下降 出⼒電圧変動のピーク率
2.44
出⼒電圧変動のオーバーシュート率
14.6
出⼒電圧の変動整定時間
3.31
出⼒電流の変動スルーレート
1.32
負荷抵抗値の上昇 出⼒電圧変動のピーク率
2.50
出⼒電圧変動のアンダーシュート率
11.0
出⼒電圧の変動整定時間
3.93
出⼒電流の変動スルーレート
1.20
⼊⼒電圧値の上昇 出⼒電圧変動のピーク率
3.50
出⼒電圧の変動整定時間
6.97
⼊⼒電圧値の下降 出⼒電圧変動のピーク率
3.46
出⼒電圧の変動整定時間
6.24
総平均誤差率
5.04
36
表 4.7 テストデータに対する予測電源特性の誤差率(電源特性モデル)
これらの結果より、伝達関数モデルでは伝達関数の誤差率の平均が 13.2 %だが、電 源特性の誤差率の平均は 5.04 %と⾼精度な予測ができていることが確認できる。また、
電源特性モデルも平均誤差率が 2.36 %なので予測精度が⾼いと判断できる。次に設計 した 2 つのモデルを接続して、テストデータの電源特性から伝達関数の予測と予測誤差 率の導出を⾏い、実際にシミュレーションをして導出した誤差率と⽐較して予測誤差率 の信頼性を確認する。なお、⽐較する誤差率は全ての電源特性の平均誤差率とし、⽐較
⽅法のイメージを図 4.4 に⽰す。⽐較結果として、データ毎の平均誤差率を予測誤差率 と実際の誤差率に分けてプロットした分布図を図 4.5 に⽰す。
電源の状態変化 評価項⽬ 誤差率[%]
負荷抵抗値の下降 出⼒電圧変動のピーク率
0.64
出⼒電圧変動のオーバーシュート率
3.24
出⼒電圧の変動整定時間
1.97
出⼒電流の変動スルーレート
0.43
負荷抵抗値の上昇 出⼒電圧変動のピーク率
0.59
出⼒電圧変動のアンダーシュート率
3.03
出⼒電圧の変動整定時間
2.56
出⼒電流の変動スルーレート
0.39
⼊⼒電圧値の上昇 出⼒電圧変動のピーク率
0.83
出⼒電圧の変動整定時間
7.35
⼊⼒電圧値の下降 出⼒電圧変動のピーク率
0.88
出⼒電圧の変動整定時間
6.43
総平均誤差率
2.36
37
!!!!!!!!!"#$% &&'() *+,-./0 &&'1) !!!!!!!!!23*+,4!
555"#$%
!"#$%&'()*+,-./
6789:6;<
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3345627289:;<!= >22334?6272@ABC<!=
DE%FG*HIJ
図 4.5 予測誤差率の評価⽅法
38
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 20 40 60
10 30 50 70
図 4.6 予測誤差率と実際の誤差率の分布
図 4.6 の結果より、予測誤差率と実際の誤差率の分布の傾向が⼀致していることが確 認できる。これにより、電源特性モデルがシミュレーションの代⽤となり、テストデー タにおいては予測誤差率が予測精度の基準として信頼できる値だと確認できた。
39
4.3 ⾼速設計システムの実⾏結果
4.1 節で幅広い学習データの作成に成功し、4.2 節では作成した学習データで⾼精度 な伝達関数モデル及び電源特性モデルの設計が⾏えたため、これらのモデルでシステム を構築し、⼈間による設計とシステムによる設計の⽐較を⾏う。以下の表 4.8 に設計す る電源特性の仕様を⽰す。また、設計するフィルタは学習データ制限を満たさなければ ならないとする。
表 4.8 設計する電源特性の仕様
設計の評価は設計時間と、⽬標値に対する設計値の誤差率で⾏うものとし、設計時間 は設計開始から最終的な設計値をシミュレーションによって導出するまでの時間とす る。
⼈間による設計では電源回路の開ループ特性から位相余裕とクロスオーバー周波数 を確保しつつ低周波域のゲインが⾼くなるように極とゼロ点を選出し、電源特性を確認 しながらシミュレーションとパラメータの調整を繰り返すことで⽬標値を満たすフィ ルタを作成した。システムによる設計では構築したシステムに表 4.9 に⽰すパラメータ を⼊⼒し、得られた伝達関数の中で最も予測誤差率が低いものを採⽤した。
電源の状態変化 評価項⽬ ⽬標値
負荷抵抗値の下降 出⼒電圧変動のピーク率 [%]
-4.0 ~ -2.0
出⼒電圧変動のオーバーシュート率 [%]
1.0
出⼒電圧の変動整定時間 [μs]
30
出⼒電流の変動スルーレート [A/μs]
30
負荷抵抗値の上昇 出⼒電圧変動のピーク率 [%]
2.0 ~ 4.0
出⼒電圧変動のアンダーシュート率 [%]
-1.0
出⼒電圧の変動整定時間 [s]
30
出⼒電流の変動スルーレート [A/μs]
30
⼊⼒電圧値の上昇 出⼒電圧変動のピーク率 [%]
0.5
出⼒電圧の変動整定時間 [μs]
5.0 ~ 10
⼊⼒電圧値の下降 出⼒電圧変動のピーク率 [%]
-0.5
出⼒電圧の変動整定時間 [μs]
5.0 ~ 10
40
表 4.9 システムに⼊⼒するパラメータ
⼆通りの設計⽅法を実⾏した結果、⼈間による設計では設計時間が 19 分 33 秒、設 計値及び⽬標値に対する誤差率は表 4.10 の結果となり、平均誤差率は 10.4%であった。
また、システムによる設計では設計時間が 1 分 54 秒、設計値及び⽬標値に対する誤差 率は表 4.11 の結果となり、平均誤差率は 8.10%であった。⼈間によって設計されたフ ィルタの伝達関数とシステムによって設計されたフィルタの伝達関数を以下に⽰し、フ ィルタを実装した際の電源回路の開ループボード線図を図 4.7~4.8 に⽰す。また、その 際の出⼒電圧特性及び⽐較結果を図 4.9~4.13 に⽰す。
⼈間によって設計されたフィルタ伝達関数
C = 6.000 𝑠
i+ 1.539×10
„𝑠 + 9.054×10
5…𝑠
i+ 2.166×10
†𝑠 + 4.387×10
‡4.1
システムによって設計されたフィルタ伝達関数C = 4.897 𝑠
i+ 1.245×10
„𝑠 + 7.802×10
5…𝑠
i+ 4.390×10
†𝑠 + 3.323×10
ˆ4.2
電源の状態変化 評価項⽬ ⼊⼒値
負荷抵抗値の下降 出⼒電圧変動のピーク率 [%]
-2.0 -4.0 -0.1
出⼒電圧変動のオーバーシュート率 [%]
1.0
出⼒電圧の変動整定時間 [μs]
30
出⼒電流の変動スルーレート [A/μs]
30
負荷抵抗値の上昇 出⼒電圧変動のピーク率 [%]
2.0 4.0 0.1
出⼒電圧変動のアンダーシュート率 [%]
-1.0
出⼒電圧の変動整定時間 [s]
30
出⼒電流の変動スルーレート [A/μs]
30
⼊⼒電圧値の上昇 出⼒電圧変動のピーク率 [%]
0.5
出⼒電圧の変動整定時間 [μs]
5.0 10 1.0
⼊⼒電圧値の下降 出⼒電圧変動のピーク率 [%]
-0.5
出⼒電圧の変動整定時間 [μs]
5.0 10 1.0
41
表 4.10 ⼈間によるフィルタ設計の設計値及び⽬標値に対する誤差率
表 4.11 システムによるフィルタ設計の設計値及び⽬標値に対する誤差率
電源の状態変化 評価項⽬ ⽬標値 設計値 誤差率[%]
負荷抵抗値の 下降
出⼒電圧変動のピーク率 [%] -4.0 ~ -2.0
-2.48 0
出⼒電圧変動のオーバーシュート率 [%] 1.0
0.91 9.00
出⼒電圧の変動整定時間 [μs] 30
28.7 4.33
出⼒電流の変動スルーレート [A/μs] 30
38.8 29.3
負荷抵抗値の 上昇
出⼒電圧変動のピーク率 [%] 2.0 ~ 4.0
2.60 0
出⼒電圧変動のアンダーシュート率 [%] -1.0
-0.98 2.00
出⼒電圧の変動整定時間 [s] 30
24.2 19.3
出⼒電流の変動スルーレート [A/μs] 30
-40.0 33.3
⼊⼒電圧値の 上昇
出⼒電圧変動のピーク率 [%] 0.5
0.43 14.0
出⼒電圧の変動整定時間 [μs] 5.0 ~ 10
5.20 0
⼊⼒電圧値の 下降
出⼒電圧変動のピーク率 [%] -0.5
-0.43 14.0
出⼒電圧の変動整定時間 [μs] 5.0 ~ 10
5.50 0
電源の状態変化 評価項⽬ ⽬標値 設計値 誤差率[%]
負荷抵抗値の 下降
出⼒電圧変動のピーク率 [%] -4.0 ~ -2.0
-2.95 0
出⼒電圧変動のオーバーシュート率 [%] 1.0
0.98 2.00
出⼒電圧の変動整定時間 [μs] 30
24.8 17.3
出⼒電流の変動スルーレート [A/μs] 30
36.7 22.3
負荷抵抗値の 上昇
出⼒電圧変動のピーク率 [%] 2.0 ~ 4.0
3.02 0
出⼒電圧変動のアンダーシュート率 [%] -1.0
-1.13 13.0
出⼒電圧の変動整定時間 [s] 30
27.6 8.00
出⼒電流の変動スルーレート [A/μs] 30
-38.0 26.7
⼊⼒電圧値の 上昇
出⼒電圧変動のピーク率 [%] 0.5
0.50 0
出⼒電圧の変動整定時間 [μs] 5.0 ~ 10
5.32 0
⼊⼒電圧値の 下降
出⼒電圧変動のピーク率 [%] -0.5
-0.54 8.00
出⼒電圧の変動整定時間 [μs] 5.0 ~ 10
5.95 0
42
10−2 10−1 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 1010
0
−100 100
−50 50
10−2 10−1 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 1010
0
−100
−150
−50
10−2 10−1 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 1010 0
−100
−50 50
10−2 10−1 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 1010 0
−100
−150
−50
図 4.7 ⼈間によるフィルタ設計の電源回路の開ループボード線図
図 4.8 システムによるフィルタ設計の電源回路の開ループボード線図
43
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5
0 1
0.2 0.4 0.6 0.8 1.2 1.4
Time[ms]
Vout[V]
0.1 0.105 0.11 0.115 0.12 0.125 0.13
1
0.96 0.98
0.97 0.99 1.01
0.965 0.975 0.985 0.995 1.005
Time[ms]
Vout[V]
図 4.9 出⼒電圧の時間特性の⽐較
図 4.10 図 4.9 中の負荷変動時の出⼒電圧特性
44
0.3 0.301 0.302 0.303 0.304 0.305 0.306 0.307 0.308 0.309 0.31 1
1.002 1.004
1.001 1.003 1.005
0.9995 1.0005 1.0015 1.0025 1.0035 1.0045 1.0055
Time[ms]
Vout[V]
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5
0 1 000
−400
−200 200 400 600 800 1 200
Time[ms]
Iout[A]
図 4.11 図 4.9 中の⼊⼒電圧変動時の出⼒電圧特性
図 4.12 出⼒電流の時間特性の⽐較
45
0.1 0.105 0.11 0.115
0 100
−20 20 40 60 80 120 140 160
Time[ms]
Iout[A]
図 4.13 図 4.12 中の負荷変動時の出⼒電流特性
電源特性おいて、スルーレートを除いた全てのパラメータは値が⼩さいほどフィルタ の性能が⾼いため、表 4.10 と表 4.11 の結果より⼈間による設計のほうが設計されたフ ィルタの性能は⾼かった。しかし、⽬標値に対する設計値の誤差率及び設計時間はシス テムによる設計のほうが良い結果となったため、システムの使⽤によって設計の簡易化 と⾼速化は可能であることが確認できた。また、システムから出⼒された予測誤差率が 低い 10 データのデータ番号及び予測誤差率を、実際の誤差率が低い 10 データのデー タ番号及び誤差率と⽐較した結果を表 4.12 に⽰す。ここで実際の誤差率と予測誤差率 はデータごとの電源特性全ての誤差率の平均値とする。
表 4.12 予測誤差率と実際の誤差率の低いデータのデータ番号及び誤差率の⽐較 データ番号
(実際の誤差率)
123 122 116 117 110 111 104 124 118 103
実際の誤差率[%]
14.6 14.8 14.9 15.0 15.6 16.2 16.2 16.3 16.7 17.3
データ番号
(予測誤差率)
116 122 109 115 110 103 123 121 117 104
予測誤差率[%]