第 2 章 コンクリートのひび割れの閉口に伴う補修材・光硬化型 FRP
2.3 閉口ひび割れ追従性試験の提案
2.4.2 代表的な条件でのバックリング現象
今回実施した試験の代表例として,表-2.4の試験番号No.1に示す,光硬化型FRPシートの厚
さ1.5mm,ひび割れ幅1mmの結果を取り上げる。試験後のシートを写真-2.6に示す。写真から
も明らかなように,ひび割れの閉口時には,FRP シートがコンクリートからはく離し,ひび割れ 箇所を中心に凸型に浮いており,バックリング現象が確認された。このとき,ひび割れ周辺の50mm 程度までは,供試体のコンクリート母材が引張破壊しており,コンクリートがはく離したFRPシ ート側に付着していた。さらにその外側30mm程度までは,FRPシートとコンクリートの界面で はく離が生じていた。
閉口ひび割れ追従性試験における,計測ステップと荷重および変位計の計測結果を図-2.4に,
ひび割れ閉口変位と荷重の関係を図-2.5に示す。荷重の初期段階(時間ステップが0~90程度)
では,荷重増加に対しFRPシートの付着力によりひび割れ閉口変位(図中の赤線)が小さい値で 推移しているが,荷重が 10.6kN(ひび割れ閉口変位が 0.18mm)に達した瞬間にバックリング現 象が発生し,ひび割れ閉口変位やバックリング変位が大きく増加し,荷重が低下した。模擬ひび
割れ幅は1.0mmで設定したが,供試体作製精度や模擬ひび割れ面の凹凸の噛み合わせのため,バ
ックリング時のひび割れ閉口変位は実際には1.8mmまで計測された。FRPシートのバックリング 時のシートの膨れは 7mm程度であった。バックリング後,荷重は 4kN前後で留まっており,時 間ステップ105程度で除荷すると,荷重はゼロになり,ひび割れ閉口変位もゼロ付近まで戻った。
除荷後のひび割れ閉口変位の戻りは,FRP シートが凸型に曲がった状態から平坦に戻ったためで ある。
表-2.4 試験の種類 試験番号 FRPシート
厚さ ひび割れ幅 備考
No.1 1.5mm 1mm 代表 パターン No.2 1.5mm 5mm
No.3 1.5mm 3mm No.4 1.5mm 0.6mm No.5 1.0mm 1mm No.6 2.0mm 1mm
No.7 4.5mm 1mm 1.5mm×3枚 No.8 1.5mm 1mm 非接 触部10mm No.9 1.5mm 1mm 非接 触部80mm No.10 1.5mm 1mm ひび 割れ充填
0 2 4 6 8 10 12
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
荷重(KN)
ひび割れ閉口変位(mm) 標準パターン
図-2.5 ひび割れ閉口変位と荷重の関係
載荷 徐荷
バックリング
0 2 4 6 8 10 12 14
0 2 4 6 8 10 12 14
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120
荷重(kN)
変位(mm)
時間ステップ ひび割れ閉口変位 バックリング変位 荷重
図-2.4 時間ステップによる変位,荷重
載荷
バックリング
徐荷
写真-2.6 FRP シートのバックリング 載荷方向
シート変位方向
載荷方向
FRPシート
模擬ひび割れ
FRPシート
貼付範囲 バックリング範囲
模擬ひび割れ
この結果から,ひび割れを跨いで貼付されたFRPシートに,ひび割れの閉口変位によりバック リング現象が生じることを確認できた。バックリング後の供試体写真と,FRP シート,コンクリ ートそれぞれの状況写真を写真-2.7に示す。バックリング後のFRPシートは,ひび割れ周辺部 ではコンクリート母材で破壊し,その外側はシートとコンクリートとの界面で破壊し,さらにそ の外側で付着している状態であった。このバックリング現象は,ひび割れ近傍のコンクリート母 材の破壊を伴うため,FRP シートの付着力を高めることによるバックリング現象の抑制は困難で あることがわかる。
写真-2.7 母材破壊の状況
FRPシート背面
コンクリート表面 供試体表面
界面破壊 母材破壊 界面破壊
母材破壊
界面破壊 界面破壊
供試体断面
界面破壊 母材破壊 界面破壊 界面破壊 母材破壊 界面破壊