■措置から契約へ,介護が変わる
1) 法第19条 介護給付を受けようとする被保険者は,要介護者に該当すること及びその該当する要介護状態区分について,
市町村の認定(以下「要介護認定」という。)を受けなければならない。
2) 居宅介護支援とは,在宅の要介護者がサービスを適切に利用できるよう,本人などの依頼を受けて介護支援の居宅サー ビス計画を作成するとともに,そのサービス提供が確保されるよう,サービス提供事業者との連絡調整や便宜の提供を 行うことである。
3) 「全国介護保険担当者会議資料」(平成10年4月21日,厚生省介護保険制度実施推進本部)より。
長崎短期大学専攻科福祉専攻教授
(前 三鷹市市民部保険年金課長) 高
たか
橋
はし
信
のぶ
幸
ゆき
要介護度のランク付けは,85項目を「直接生活 介護」「間接生活介護」「問題行動関連介護」等の 5種類の介助及び行為に分け,それに要する介護 の時間量を推計することにより行われる4)。
96・97年の2年間に行われた介護認定モデル事 業で常に問題となってきたのが,第一次判定と第 二次判定のズレである。さきの厚生省資料によれ ば,97年度モデル事業における全国の第二次判定 対象者40,801人のうち,第二次判定で変更され なかった件数は30,703件(75.3%),変更された件 数が9,459件(23.2%),再調査が639件(1.6%)
であった。第一次判定の結果が第二次判定におい てあまりに無原則に変更されるのは考えものでは あるが,第二次判定は,第一次判定の結果のほか に「介護サービス調査票」の特記事項と,かかり つけ医意見書を新たな材料とするのであるから,
ある程度の幅で第一次判定と異なるのは当然のこ とである。もし第二次判定が100%第一次判定と 同じでなければならないとしたら,審査会委員に よる第二次判定などは不必要ということになる。
7月に開催された医療保険福祉審議会によれば,
第二次判定においてもし第一次判定の結果を変更 するときには,かかりつけ医意見書や特記事項の 内容を「介護サービス調査票」の内容と突き合わ せ,「介護サービス調査票」を修正して再度コン ピュータ判定にまわすこととなったので,今後は 恣意的な変更はやりにくくなる等,こうした問題 はより合理的に解決されてゆくであろう。
正確で公正な要介護認定が求められるという面 で最も課題となるのは,訪問調査に関わる調査員,
意見書を書く医師,そして審査に当たる委員の資 質であろう。各々の専門性に立脚しつつも,要介 護高齢者への人権感覚と,研ぎ澄まされたプロの 眼が不可欠である。それらの資質を基礎として,
要介護高齢者の状態像への共通認識を作り出す研 修が欠かせない。
1.介護保険には,三種類の給付とひとつの事業 がある
介護保険において給付の対象となる保険事故と は,要介護状態5)若しくは要支援状態6)となるこ とであるが,第2号被保険者にあってはその原因 が15の特定疾病7)に起因することが要件となって いる。第1号被保険者の場合には,そうした限定 はない。
介護保険による給付は,次の三つに分けられ る。
介護給付 要介護者への給付
居宅サービス 訪問介護(ホームヘルプ)・訪 問入浴介護・訪問看護・訪問リ ハビリテーション・居宅療養管 理指導・通所介護(デイサービ ス)・通所リハビリテーショ ン・短期入所生活介護(ショー トステイ)・短期入所療養介護
(ショートステイ)・痴呆対応 型共同生活介護(痴呆性グルー プホーム)・特定施設入所者生 活介護(有料老人ホーム等)・
福祉用具貸与 福祉用具購入
住宅改修
介護サービス計画
施設サービス 介護老人福祉施設(特別養護老 人ホーム)・介護老人保健施設
(老人保健施設)・介護療養型 医療施設(療養型病床群等)
予防給付 要支援者への給付
居宅サービス 痴呆対応型共同生活介護を除い て,介護給付と同じ
福祉用具購入 住宅改修
介護サービス計画
介護保険サービスと介護支援専門員 4
4) 「要介護認定基準の設定方法について(案)」平成10年6月29日,医療保険福祉審議会資料。
5) 身体上又は精神上の障害があるために,入浴,排泄,食事などの日常生活における基本的な動作の全部又は一部につい て,3カ月から6カ月程の期間にわたり継続して常時介護を要すると見込まれる状態(法第7条第1項)。
6) 介護が必要な状態となるおそれがある状態。
7) 本誌前号の「介護保険のしくみと課題・上」脚注22を参照。
施設サービス なし
市町村特別給付 要介護者・要支援者を対象に,
上記以外の独自のサービスメニ ューを市町村条例によって加え ることができる。
市町村はこれら三つの保険給付のほかに,次のよ うな保健福祉事業を行うことができる。
①介護者の支援のために必要な事業
②要介護状態の予防のために必要な事業
③保険サービス事業の直営など,保険給付のため に必要な事業
④保険サービス利用のための,費用の貸付け等の 事業
2.介護支援専門員が,かなめになる
これまでの措置サービスの提供においては,ケ ースワーカーが重要なキーパスン的役割を果たし てきたが,それに替って介護保険において かな め となるのが介護支援専門員(ケアマネジャー)
である。
介護支援専門員は,要介護者が自立した日常生 活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び 技術を有するもの8)であり,居宅介護支援サービ ス及び施設サービスの指定業者には必ず配置され なければならない専門職である。その主要な業務 としては,市町村からの委託を受けて行う訪問調 査,及び被保険者から受ける相談業務と介護支援 計画(ケアプラン)の作成がある。
介護支援専門員の資格を得るための講習会への 参加資格を得る試験は,この9月に各都道府県ご とに一斉に行われる。国家資格の18種9)を始めか なり多くの職種の,実務経験5年以上10)の人に受 験資格が認められているが,実際にこの仕事に従 事するに当たっては単にペーパー試験に合格した ということではなく,介護の理念とその底に流れ る人権尊重の感性を豊かに保持する専門職であっ てほしい。介護支援専門員が,ただ単に措置制度
のケースワーカーと置き替わっただけで,サービ スのコーディネイトを専門家的に取り仕切るのみ では,介護保険の理念は絵に描いた餅になってし まう。介護支援専門員は豊かな人権感覚をベース として持ち,要介護高齢者の自立支援を,本人の 自己選択・自己決定権を尊重する中で推し進め る,そうした専門職であらねばならない。
1.都道府県知事の指定を受ける
指定居宅サービス事業者や指定居宅介護支援事 業者の指定は,サービスの種類ごと,事業所ごと に都道府県知事が行う11)。その要件は,①法人で あること,②人員配置基準を満たしていること,
③設備基準・運営基準を満たしていることである が,病院・診療所・薬局が行う居宅療養管理指 導・訪問看護・訪問リハビリテーション・通所リ ハビリテーション・短期入所療養介護では,法人 であることを要しない。
病院・診療所・薬局にあっては,健康保険法の 規定による保険医療機関や保険薬局の指定があっ たときには,病院・診療所では居宅療養管理指導 等について,薬局では居宅療養管理指導について,
介護保険法上の指定があったものとみなされる。
また,介護保険施設の指定は,介護老人福祉施 設にあっては老人福祉法に規定する特別養護老人 ホームの申請により都道府県知事が行う。介護老 人保健施設の場合は,介護保険法第94条により都 道府県知事の許可を受ける。指定介護療養型医療 施設の指定は,療養型病床群・老人性痴呆疾患療 養病棟等を持っている病院や介護力強化病院から の申請により行われる。
このように指定事業者の指定権限は専ら都道府 県知事にのみあり,保険者である市町村は,事業 者が指定取り消し事由に該当するときに都道府県 知事に通知することができるのみである。サービ
サービス提供事業者 5
8) 法第79条第2項第2号
9) 医師,歯科医師,薬剤師,保健婦,助産婦,看護婦,理学療法士,作業療法士,社会福祉士,介護福祉士,視能訓練士,
歯科衛生士など。
10) 老人福祉施設や介護老人保健施設等の従事者であって,社会福祉主事の任用資格を有しない者等は,介護等の業務に従 事した期間が10年以上あることが必要。
11) 法第41条,第70条,第79条など。
ス提供事業者は市町村の行政区域を越えて広域的 に事業展開する場合が多々考えられ,市町村ごと の事業者指定は確かに合理的ではない。しかし保 険者としての市町村に,事業者の指定や指導につ いて何の権限もないというのは,どうしたもので あろうか。サービス提供事業者の実態について最 も早く情報を把握したり,評判や苦情に接するこ とができるのは市町村である。事業者の指定と指 定の取り消しについては,市町村の意見をもっと 聴く仕組みが望まれる。
2.指定事業者でなくても,保険サービスを提供 できる
法人格を持っていないために指定事業者として
の指定を受けられないNPO12)なども,前項の②③ の基準を満たしていれば,「基準該当居宅サービ ス」として特例居宅介護サービス費の対象となる。
居宅介護支援についても同様である。
ただし特例サービス費は償還払いが原則であ り,利用者はいったん費用の全額を事業者に支払 い,その領収書を保険者に提出して審査を受けた うえで利用者負担額を除いた額が戻ってくる。こ うした面倒な手続きでは,基準該当サービス事業 者は指定事業者との競争に耐えられるわけがな い。利用券によるバウチャー方式等の導入を考え るべきであろう。
(以下次号に続く)
次号掲載する項目 介護保険の負担構造と保険料 介護保健事業計画と住民参加 これからの課題
8 7 6
12) non-profit-organization。一般的には「法人格を有し,公共サービスを行う民間非営利組織」(imidas 98年版)とされて いるが,福祉分野ではこれまで,法人格を持たない市民参加型の事業として理解されてきた傾向がある。代表的なもの は,食事サービスやホームヘルプサービスを行うワーカーズコレクティブがある。今年に入ってNPO法(市民活動促進 法)が成立し,NPOが法人格を取ることができるようになってきたが,全てのNPOが法人格を取得するとは限らない。