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85 明らかとなった.

第 3 節 今後の課題

本論文の第 1 章では,体力と身体活動量,MetS 危険因子,学業成績,メンタルヘルスと の関連性を検討するとともに,部活動の所属別による体力を検討することによって,体力が 低い青少年の身体的・精神的・社会的特徴を多面的に検討した.

第 1 章第 1 節から第 5 節の限界については各節の「本研究の限界」ですでに記した通り である.それらを整理すると,第 1 章に共通する限界は,第一に研究デザインがすべて横断 的研究であることである.今後の課題は,縦断的研究によって体力低下が青少年の身体的・

精神的・社会的特徴にどのような影響を及ぼすのかといった因果関係を明らかにしていく ことである.第 1 章に共通する第二の限界は,対象者の年齢段階や調査地域が限定的である ことに加え,サンプル数が 300 人から 2000 人とばらつきがあることである.これらのこと から,第 1 章の各節で検討した体力と身体的・精神的・社会的特徴との関連性の結果は,す べての青少年に対して一般化することができない.今後の課題は,幅広い年齢段階を対象と することや対象者数を増やすといった大規模かつ全国的な調査を行うことである.

そのほかに,各節における個別の課題として,「第 1 章第 2 節 体力と MetS 危険因子と の関連性」では,早朝空腹をコントロールしたうえで血液サンプルの採取をすることである.

また,すでに国外では,BMI または体脂肪率と体力を組み合わせて MetS のリスクを検討し ていること(Eisenmann,2005,2007a,2007b; Suriano,2010)から,形態,身体組成の要 因を考慮して体力と MetS のリスクスコアを検討する必要がある.「第 1 章第 3 節 体力と 学業成績との関連性」では社会経済的要因(Kim,2003)を考慮して検討を行うこと,「第 1 章第 4 節 体力と形態,生活習慣,メンタルヘルスとの関連性」ではメンタルヘルスの評価 が質問紙法を中心とする主観的な評価方法であるため,メンタルヘルスに関連があるとさ れる唾液中のアミラーゼやコルチゾールといったより客観的な評価方法(田中,2011a)を 用いて検討することが今後の課題である.「第 1 章第 5 節 部活動の所属別による体力につ いて」では,運動時間は質問紙によって評価したため客観性の点で限界がある.また,部活 動については所属別を調査しているのみであり,実際の活動内容や実施頻度については調 査できていない.今後の課題は,運動時間については加速度計法などの客観的な手法を用い て評価することに加え,部活動の活動内容や実施頻度等の詳細を調査した上で検討するこ とである.

次に,第 2 章の今後の課題について記す.第 2 章では,自分の体力に応じてゆっくり行う スロージョギングの教材を用いた授業を実践し,持久走に対する態度変化を検討するとと もに,その態度変化を体力の高い者と低い者に分類して比較検討を行った.

第 2 章に共通する第一の限界として,本論文では学習指導要領(文部科学省,online i,

j,k)に示されている「動きを持続する能力」(有酸素性体力)に関連する体力要素につい て持久走を教材とした検討を行ったが,他の体力要素については検討ができていないこと である.また,学習指導要領(文部科学省,online i,j,k)には「体つくり運動」以外の

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運動領域においても,学習した結果として,より一層の体力の向上を図る必要性が示されて いる.このことから,学習指導要領(文部科学省,online i,j,k)に示される「体の柔ら かさ」,「巧みな動き」,「力強い動き」を高めるための運動についても実践的に検討すること に加え,「体つくり運動」以外の運動領域においても体力の低い青少年が結果として各種の 体力要素を総合的に高め,運動を肯定的に捉えられるような授業実践について検討するこ とが今後の課題である.第 2 章に共通する第二の限界は,本授業実践と比較する対照授業を 設定できていないことである.今後の課題は,対照群を設定した研究デザインを用いて検討 することである.第 2 章に共通する第三の限界は,対象とした学校やサンプル数が限定的で あることである.「第 2 章第 1 節 小学生を対象とした持久走の検討」では複数の学年を対 象としたがサンプル数が少ないこと,「第 2 章第 2 節 中学生を対象とした持久走の検討」

と「第 2 章第 3 節 高校生を対象とした持久走の検討」では,対象が 1 校の単一学年である ことである.これらのサンプル数や学校・学年の要因が持久走に対する態度変化に影響して いる可能性がある.今後の課題は,複数の学校や学年を対象とし,対象者のサンプル数を増 やして検討することである.

次に本論文全体の今後の課題について記す.青少年の体力づくりのためには,体力の意義 やその必要性が青少年やその保護者,地域社会全体に理解される必要がある.そのためには,

体力が低い青少年の身体的・精神的・社会的特徴を多面的に検討し,その因果関係について のエビデンスを蓄積していくことが今後の課題である.

一方,文部科学省(online w,x)の報告によると,体育の授業を除いた一週間の運動時 間が 60 分未満の小学 5 年生,中学 2 年生の割合は男子でそれぞれ 9.1%,9.7%,女子でそれ ぞれ 21.0%,29.9%と示されている.そのうち,一週間の運動時間が 0 分である割合は小学 生で約 50%,中学生で約 80%と示されている.このことを踏まえると,青少年における体育・

保健体育の授業の役割は定期的な身体活動量確保の観点からも極めて重要である.また,平 成 26 年度全国体力・運動能力,運動習慣等調査結果報告書(文部科学省,online y)では,

運動(体を動かす遊びを含む)やスポーツをすることが「ややきらい・きらい」と回答した 中学生は「好き・やや好き」と回答した中学生に比べ体力が低いことが示されており,「や やきらい・きらい」となったきっかけとして「小学校の授業でうまくできなかったから」,

「中学校の授業でうまくできなかったから」を理由として多く挙げている.これらのことか ら,体育・保健体育の授業を核としながら青少年が運動や体を動かすことに対し肯定的な態 度となるような授業を実践し,体育・保健体育の授業で学んだことをその他の学校教育活動 や家庭,地域社会で活用できる青少年を育成していくための教育実践学的研究を進めてい くことが今後の課題である.

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