第 3 章 結果及び考察 24
3.3 今後の課題と方針
(a)τ=0.0 (b)τ=1.0×10−6 (c)τ=2.0×10−6
(d)τ=3.0×10−6 (e)τ=4.0×10−6 (f)τ=5.0×10−6
Fig. 3.9:Computational results of Case 4 (D/L=2.0, H=0.0, bc=3.0[T])
第 4 章
結言
物理的なデバイス以外での宇宙機の推進薬制御は未だ知見が少ないという現状に対して,液体酸素 が常磁性体である性質に着目し,最大加速度0.4 [G]の三角波状衝撃力の加わる直径1 [m]の球形タ ンクに入った液体酸素のスロッシングを対象として数値計算を行った.その結果として,磁場による 抑制効果について,以下の知見を得た.
• コイル中心での磁束密度が同じである場合,コイル直径をタンクと同等にするよりもコイル面 をタンクに近づけた方がスロッシングの抑制効果は高くなる傾向にある.
• コイル中心での磁束密度が1.0 [T]であればスロッシングは一定程度抑制され,コイル中心で の磁束密度を3.0 [T]にすることで十分なスロッシング抑制効果を得られた.実際には,コイ ルをタンク近傍に置くことで3.0 [T]未満でも十分であると考えられる.これは機体の重心移 動の抑制やアレッジガスの配管混入の防止に貢献できる可能性がある.
• 今後の課題としては,流体計算領域内にコイルが存在する場合での磁場の計算手法の改善・計 算の高速化・IB法の改善・任意形状壁面に対する濡れ性の導入,が挙げられる.
• 今後の研究方針として,コイルがタンクに密着している場合の抑制効果の評価・タンク内重心 移動の定量的評価及び磁場でスロッシングを抑制した場合の熱的挙動の評価が必要と考えられ る.また,コイル位置の時間変化による液体酸素のタンク内位置制御の検討や,より実機のロ ケットに近いサイズのタンク・衝撃力を解析対象にすることによる,実装における有効性の検 討も方針として挙げられる.
Appendix A
体積補正
第2章「計算手法」で,VOF法は特に激しい砕波を伴う場合に体積保存性が大幅に悪化すること に言及した.その対策として行った桜庭らの体積補正手法[16]をここに紹介する.
まず自由表面近傍に重みをもつ関数D(C)(Fig. A.1参照)を設定し,これとVOF関数Cを解析領 域全体にわたって積分する.
D(C)= 1
2[1+cos{2π(C−0.5)}] (A.1)
A(t)=
∭
D(C)dxdydz (A.2)
V(t)=
∭
C dxdydz (A.3)
ここで,A(t)は界面セルの個数を示しているので,体積誤差V(t) −Vinit を界面セルの総体積で除 することで,自由界面近傍上における1セル当たりの平均的な補正量(体積誤差率)Cerr を次のよう に計算できる.ただし,V(t)はある時刻における液相体積,Vinit は初期液相体積を示す.
Cerr = Verr(t)
A(t) = V(t) −Vinit
A(t) (A.4)
体積誤差率Cerrが負の場合は体積減少,正の場合は体積増加を示す.このCerr を用いて,
C(t) BC(t) −Cerr {
if Cerr ≥0 then 0<C <0.5に対して
if Cerr <0 then 0.5< C<1に対して (A.5) と補正する(ただし,C =0.5の場所は丁度界面なので補正は施さない).また,式(A.5)の補正を 用いるとVOF関数が1より大きい値もしくは0未満の値になることがある.この場合,1より大き い値であれば1,0未満の値であれば0として補正量の超過分をカットすることにより,体積補正を 行ったVOF関数が決定される(Fig. A.2a, A.2b参照).
Fig. A.1:The schematic of eq.(A.1)
(a)The case ofCer r ≥0(liquid volume increases) (b)The case ofCer r <0(liquid volume decreases) Fig. A.2: Schematic of how to correct VOF function
また,この手法はVOF関数が液体であれば1,気体であれば0に近づける働きを有しているため,
界面鋭敏化の効果も同時に期待できる.
なお注意点として,この手法は界面の移流を多少妨げる働きがある.そのため,本計算では1000 ステップにつき1回だけ,体積補正を適用することとした.
Appendix B
無次元化
本章では有次元支配方程式の無次元化の詳細を述べる.
以下に有次元支配方程式を示す.
連続の式
∇ ·u=0 (B.1)
Navier-Stokes方程式
∂u
∂t =− (u· ∇)u+ 1
ρ∇p+ 1
ρ∇ · (µ∇u)+geg+ 1
ρfsur f + 1
ρfmag (B.2)
fsur f = γκ∇Hαscaled(ϕ), κ= ∇ · ∇ϕ
|∇ϕ| (B.3)
fmag = ρχ
µm (b· ∇)b (B.4)
移流方程式
∂ρ
∂t +(u· ∇)ρ=0 (B.5)
磁場に対するガウスの法則
∇ ·b=0 (B.6)
物性値の定義
ρ= ρG+(ρL−ρG)Hα(ϕ) µ= µG+(µL−µG)Hα(ϕ) χ= χG+(χL− χG)Hα(ϕ)
(B.7)
Biot-Savartの法則
b= µmic
4π
∫
coil
{ adθ
a2+x2+y2−2a(xcosθ+ysinθ)+(h−z)}32 ©
«
(z−h)cosθ (z−h)sinθ a−xcosθ−ysinθ ª®
¬
(B.8) これらの方程式に対して,以下に定義する無次元変数及び無次元数により無次元化を施す.
・無次元変数
X = x
l, R= r
l, U = u
µG ρGl
, P= p
µG2 ρGl2
, τ = t
ρGl2 µG
, B = b
µmic l
ρ¯= ρL ρG
, µ¯ = µL µG
, χ¯ = χL χG
, κˆ= κl, αˆ = α
l, Φ= ϕ
l, ∇=∇l
(B.9)
・無次元数
Ga= gρG2l3
µG2 , Γ= γρGl
µG2, M= ρG2χG2i2cµm
µG2 (B.10)
現れる無次元数は重力の強さを表すガリレイ数Ga,表面張力の強さを表すラプラス数Γ,及び磁 場の強さを表す無次元数Mである.なお,icは,一巻きコイルの中心での磁束密度bc = µmic/2rよ り求めた.