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今後の研究課題

ドキュメント内 Microsoft Word - 子宮頸がんドラフト doc (ページ 49-127)

1)ガイドライン作成における課題

子宮頸がん検診においては HPV ワクチンの導入により、検診のあり方がが今後大きく変化する可 能性がある。しかし、ワクチンの主たる接種対象が青少年に限定されていることからしばらくの間は がん検診とワクチンによる予防対策が共存することが予想される。近い将来の状況も視野に入れ、子 宮頸がん検診における検診の対象年齢や検診間隔の再検討が求められている。近年、USPTSFでは対 象年齢の検討のためにモデル解析を導入している166。また、英国NICEでは経済評価研究を推奨の判 断基準としている114。本ガイドラインにおいても、今後は各種がん検診の評価についても再検討し、

モデル解析や経済評価研究などをガイドライン作成に組み入れていく必要がある

HPV 検査については単独法でスクリーニングを行い細胞診でトリアージする方法が検討されてい

る。子宮頸がんそのもの発見する細胞診とは異なり、HPV検査はハイリスク群を集約するという点で 異なっている。各種がん検診でも、同様にハイリスク群を集約する2段階のスクリーニングが検討さ れている。しかし、ハイリスク集約型検診については、間接的証拠を利用も含めた評価方法を検討し てかなくてはならない。

有効性評価に関する子宮頸がん検診特有の問題としては、エンドポイントをどこに定めるかという 問題がある。子宮頸がん検診においては子宮頸がん死亡と浸潤がん罹患をエンドポイントした評価研 究についてはすでに国際的なコンセンサスが得られているが、エンドポイントをさらにCIN3あるい はCIN2まで拡大するかことについては慎重に吟味すべきである。子宮頸がんの罹患率やHPV感染か ら子宮頸がん発症にいたる長い経過を考慮し、IARC ハンドブックでは新技術の短期的な評価には CIN3 以上の病変を対象とした代替指標の利用を容認している。その後に公開された European

Commission による精度管理ガイドラインでも同様に方針をとっている。一方、HPV 検査を用いた子

宮頸がん検診に関する無作為化比較対照試験では、CIN2以上の病変とする代替指標による評価が行わ れている。本ガイドラインの作成においても、HPV感染からCIN を経て浸潤がんが発症する自然史 が解明されつつある子宮頸がん検診については代替指標による評価方法を確立すると同時に、各種が ん検診の評価に応用できるハイリスク集約型検診の評価方法を今後の検討課題とする。

2)子宮頸がん検診における課題

今後、わが国の子宮頸がん検診において取り組むべき課題を表24 に示した。今後取り組むべき課 題は、すでに評価の確立した細胞診と、今後さらなる研究が求められている HPV 検査を用いた検診 方法では異なっている。細胞診については最終的な成果を得るための精度管理と受診率対策が課題で あり、HPV 検査を用いた検診では子宮頸がん死亡・浸潤がん罹患をエンドポイントした研究が期待さ れている。

従来法の細胞診を用いた子宮頸がん検診は、観察的研究のみの評価ではあるが、その有効性は確立 している。わが国においてはその実施にあたって精度管理上の問題がたびたび指摘されてきたが、日 本臨床細胞学会等の学会や都道府県の医師会や生活習慣病指導管理協議会での取り組みがなされてき

た。しかしこれらの取り組みは熱意のある検診従事者のレベルアップにはつながっても、全体のボト ムアップには必ずしもつながってこなかった。今後は「子宮頸がん検診のための事業評価のためのチ ェックリスト」96に記載された各項目の充足度を増すことにより、精度管理の向上が期待される。ま た従来のクラス分類から国際標準であるベセスダシステムに変更されることにより、課題であった判 定のバラツキの縮小や適正・不適正標本の基準が統一され、臨床医と細胞検査側との間の連携が円滑 化することが期待されている。また、健康増進法に基づくがん検診の受診率は他の先進国に比べてき わめて低い状況にあり、かつ受診者は高齢者に固定化している。胃がん・大腸がんとは罹患年齢のパタ ーンが異なるにも係わらず均等な受診勧奨を行ってきたことも問題の一因である。諸外国では検診対 象者の年齢上限が設けられており、わが国でも今後年齢の設定の検討が必要である。受診率の向上対 策としては、市町村においては対象者名簿の把握に基づく個人を対象とした受診勧奨が欠かせないも のの、子宮頸がん罹患が20~40歳代に多いという点からは、実施主体を市町村に限定せず、健保組合 への検診の義務化等の抜本的な枠組みの改革が必要である。また妊娠時に医療機関で行われる妊産婦 健康審査(妊婦健診)の際に子宮頚部の擦過細胞診が広く行われているものの、これを正しく集計す る仕組みが確立されていない。市町村が契約する医療機関の枠が健康増進法に基づくがん検診と妊婦 健診で異なるため、子宮頸がん検診の分は概ね自費診療として行われている。この費用をどこが負担 するのか、数をどうやって把握するのか、枠組みの設計が必要である。

一方、液状検体法やHPV検査に関しては、いまだ子宮頸がん死亡・浸潤がん罹患エンドポイントと した研究は報告されておらず、十分な証拠が存在するとは言い難い。

液状検体法に関しては、従来法との精度比較を目的とした無作為化比較対照試験が複数行われ、従 来法に比べて液状検体法の方が感度が若干高いあるいは同等という報告が見られている。英国のよう に従来法による不適正検体割合が多い国のガイドラインでは、液状検体法を従来法に比して高く評価 している。家庭医(General Practitioner:GP)が細胞を採取する英国と、婦人科医が細胞を採取するわが 国では状況が異なるものの、そもそもわが国での不適正検体の割合に関する報告はほとんどないこと から、従来法を液状検体法に換える意義については判断材料にかける状況にある。今後、ベセスダシ ステムがわが国で普及するに伴い、まず不適正検体の割合に関する大規模な調査を行うべきである。

この際検診に従事するのが必ずしも専門医に限定されていない現状を鑑み、調査は専門医療機関に限 定しないことが望ましい。また、従来法と液状検体法との精度比較の研究もわが国独自の成績が必要 である。無作為化比較対照試験の実行が困難な場合は、地域がん登録による追跡研究が想定されるが、

上皮内がんの登録が行われているのは、地域がん登録でも一部のものに限定されていることに注意が 必要である。これらの成績が得られた上で、費用効果分析を行い、液状検体法を導入するか否かの議 論が行われることが望ましい。

HPV検査に関しては、すでに細胞診を用いた子宮頸がん検診が普及した欧米先進国において、主に 精密検査としてのコルポスコープ診の実施数を減らすことと検診受診間隔の更なる延長を目的として 研究が行われている。英国NHSのSentinel Implementation Projectはその代表例である94)。今回、HPV 検査の精度研究として採用した無作為化比較対照試験は本来精度を最終的な評価指標としたものだけ ではなく、中間結果として報告したものも含まれている。多くの大規模無作為化比較対照試験はベー スライン調査あるいは1ラウンド後の結果を把握した時点で追跡を終了し、CIN2以上の相対感度を指

標として評価を行っているのに反し、フィンランドにおける無作為化比較対照試験は研究計画の当初 から長期の追跡を予定し、追跡期間内における中間結果を適宜報告している(表25)。この研究は組織 型検診の枠組の中で行われているが、浸潤がんをエンドポイントし、2015年まで追跡予定となってい る167)。また、英国のARSTIC studyでも介入群については少なくとも6年間の追跡が予定されている

168)。わが国でも島根県出雲市などで一般住民を対象に細胞診との併用検診としてHPV検査を組み入 れる試みが始まっている169) 170)。こうした試みは通常の行政サービスの範疇で行われる場合であって も、研究としての枠組みを明確にした上で検査精度のみならず子宮頸がんの罹患率・死亡率減少効果 に関する評価も行うべきである。さらに、そこから得られた結果は、わが国女性の子宮頸がんによる 死亡率を確実に減少させるための最適な検診方法の確立のための基礎データとして有効活用されるこ とが期待される。

わが国の子宮頸がん検診の直近の課題は、受診率の低迷と2年毎に延長された受診間隔の妥当性の 検証にあり、欧米先進国とは全く状況が異なる。一部の地域では対策型検診に HPV 検査を組み入れ る試みが始まっているが、あくまで研究としての側面を有するべきであり、その実施にあたっては、

有効性を検証できる枠組みを設けておく必要がある。

有効性評価のための枠組みとしては、もちろん無作為化比較対照試験が望ましい。わが国では長ら く検診の有効性評価のための無作為化比較対照試験が行われてこなかったが、現在、戦略的アウトカ ム研究「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験」が進行中であり、胸部 CT を用いた肺がん検診についても比較試験の研究計画が検討されている。実施のハードルは高いも のの、研究計画の検討は必要であろう。

また次善の策としての観察的研究を行う場合、エンドポイントとしては長期的には子宮頸がん死亡 が必須であるが、短期的には浸潤がん罹患も容認される。したがって、研究対象地域での浸潤がん罹 患を把握するシステムが不可欠である。症例対照研究あるいはコホート研究の実施にあたっては、受 診者個々の状況(年齢・受診歴・リスク要因)の把握が必要であるため、これに加えて検診対象者名 簿・受診者名簿・問診票をそれぞれ保管することが必要である。従来型の細胞診検査の評価に用いら れたような時系列・地域相関研究の場合は、これらの個々の名簿は必要としないものの、エビデンス レベルとして低く扱われることを承知しなければならない。すでに対策型検診に HPV 検査を導入し ている地域においては、これらの点を考慮し早急に研究としての枠組みを整え、検診を引き続き実施 しながらデータを蓄積していくことが期待される。

一方HPV検査の実施を想定した実践的な問題として、HPV検査をスクリーニングの第一段階にす るのか、細胞診要精検者へのトリアージとして用いるのか、という問題と、対象年齢をどうするのか、

という問題がある。わが国での子宮頸がん検診は、2003年から開始年齢を20歳に引き下げ検診間隔 を2年毎に延長させたが、検診間隔の延長については検診受診の機会が減少するとの観点から批判が あり、一部の市町村では逐年検診が未だに行われている。HPV検査を検診に導入することで検診間隔 の延長を図ることが可能であったとしても、同様の事態が生じる可能性がある。国内の検診従事者が 納得する十分な証拠を得た上で、関連学会全体のコンセンサスを得ておく必要があるとともに、政策 への導入を検討する際も、検診間隔の延長のみならず、受診者数の増加の具体的な方策も併せて検討 されるべきである。

ドキュメント内 Microsoft Word - 子宮頸がんドラフト doc (ページ 49-127)

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