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ライオン誌 2017 年 5 月号 特集記事(LCIF)

特集:LCIF

ライオンズの心を代表する LCIF──交付金事業視察リポート

2016-2017 年度 LCIF 理事長 山田實紘

「国際協会の会長はライオンズの Head

(頭)を代表するが、財団の理事長はライ オンズの Heart(心)を代表する仕事だ」

ある元国際会長が、ライオンズクラブ国 際財団(LCIF)理事長の仕事について述べ たこの言葉は、私の脳裏に深く刻まれてい ます。

LCIF 理事長が世界各地を訪問する際に は、大きく分けて二つの目的があります。

一つは、LCIF の交付金によって、あるいは グローバル・パートナーシップに基づく資 金提供によって行われているさまざま な奉仕事業を自らの目で見、事業にかかわ る人々やライオンズの話を自らの耳で聞い てその効果を確認し、それを広く PR する こと。そしてもう一つは、LCIF への寄付に 感謝を示すと共に、その寄付が適切に扱 われ、世界中で助けを必要とする人々のた めに役立っていることを伝えて、更なる協 力を呼び掛けることです。

LCIF 理事長に就任してからは国際会長の任期中以上に、世界のライオンズが取り組む 奉仕事業の中身を詳しく把握することが出来るようになりました。ライオンズクラブの 奉仕の神髄を目の当たりにし、会員の思いやりあふれる寄付を最大限活用していくのが、

LCIF理事長の務めであり、「心を代表する」という言葉はまさに言い得て妙だと感じ ます。

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オーストラリア:命を救う最先端プロジェクト

今年度 LCIF 理事長に就任して最初の訪問先 は、オーストラリア・シドニーのガーヴァン医学 研究所とシドニー子ども病院でした。この事 業は前年度、私が国際会長の時にオーストラリ アのライオンズから申請を受け、LCIF 理事会で 議論を重ねた結果、私自身のサポートがある意 味後押ししたような形で承認されました。ライ オンズの事業としてはあまり例のない最先

端医療分野への支援であり、特定の小児がん患者にのみ支援が与えられるようにも受け 取られる事業だったために、再三にわたり申請の見直しがなされた末、やっと実現にこぎ つけたのです。そうした経緯から、自分の目で現場を確認したかったというのが、真っ先 に視察に訪れた理由の一つです。

事業内容を簡単に説明しますと、まず重度小児がんの子どもたちのゲノム(遺伝情報)

を解析し、そのデータを基にその子に最適な治療方法を短期間に見極めます。そしてゲノ ム解析データと治療データを国際データベース化し、最終的には小児がんで死亡する子 どもをゼロにすることを目指します。そのために、LCIF 交付金によってシドニーで3年 間に400人の子どもたちのゲノム解析を行い、これを手始めとしてデータベースのネ ットワークを拡大していくというのがこのプロジェクトです。

ガーヴァン医学研究所を訪れ、小児がんの子どもの命を救うゲノム解析プロジェクトの現場を視察

例えば、視力保護プロジェクトで発展途上国の人々にトラコーマの手術をする、といった

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伝統的なライオンズのプロジェクトも重要ですし、今後も継続していきますが、私は新し い分野、特に子どもの未来を切り開くような取り組みに、どんどん挑戦していくべきだと 思っています。特に強調したいのは、このプロジェクトは単に LCIF の資金を投入するだ けのものではないということです。長年にわたり、シドニー子ども病院の小児がんの子ど もたちのために奉仕アクティビティを実施してきたオーストラリア・ライオンズが、その 強いつながりと信頼に基づき、国内のライオンズ全体で取り組んでいるのがこのプロジ ェクトです。このゲノム・プロジェクトによって、命が助かる子どもたちがいる。LCIF に寄せられた寄付が交付金となり、文字通り命を救っていく現場を目にすることは、私に とっても大きな励みになりました。

台湾:視力を守るネットワークの構築

LCIF への寄付で日本と肩を並べるほどの 貢献をしている 300 複合地区・台湾への訪 問では、寄付だけでなく交付金事業にも献 身的に取り組んでいることに強い印象を受 けました。

LCIF に対して多額の寄付をしているから 交付金をもらうのは当然だという考え方に は、私は賛同出来ません。しかし、寄付によ る貢献が誇りとなって LCIF への関心がよ り一層高まり、コミュニティーのために台

日本家屋を使ったチャリティーパークのオープン・セレモニー 湾のライオンズ全体で委員会を立ち上げて 資金を出し合い、リハビリテーション・センター設置の他にも大学医学部と提携してマニ ュアルを作成し、各地区でプロモーションを行っていくという説明がありました。

現在の視力ファースト交付金プログラムは、一回限りの手術や設備の寄贈といった単 発的な事業ではなく、この台湾のネットワーク構築のように長期的な状況の改善につな がる事業を承認の対象にしています。こうしたいわば「魚を与えるのではなく釣り方を教 える」というような事業は、組織作りから腰を据えて取り組まなければならないため、物 品を購入して提供するだけの事業よりも大きな苦労を伴うものです。しかしだからこそ、

ライオンズとしてのやりがいやリーダーシップを発揮する機会も大きく、地域に継続的 なインパクトを与える結果につながります。

台湾ではまた、老朽化した戦前の日本家屋をライオンズが改修し、公園に隣接したその スペースを起業家の会員に貸し出して、収益の一部を LCIF へ寄付するという、小さいけ れども創意工夫あふれる活動も視察しました。この日本家屋は戦前の趣を残す畳敷きも そのままに改修されており、地元ライオンズが「日本との友情のシンボルだ」と話してい

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