1.北東 アジア経済圏における人材育成の意義
ところで、 ここで敢えて北東 アジア経済圏における人材育成問題を取 り上 げるのは何故か。 それは三 つの理 由か らである。 一つは 「北東 アジア経済圏」 は新潟県集積 にとって戦略的な意義 を持 っているか らだ。二つ には人材育成論 は現代企業経営 における戦略課題 に他な らないか らである。 三つには上記二 つの相互連関性である。
前者 の 「北東 ア ジア経済圏」 の戦略的な意義 とは何か。 それ は、「北東 ア ジア経済圏」が、一方 では 新潟県集積がその中で有力な製造業拠点をなす地方経済圏 としての 「環 日本海経済圏」 を構成要素 とす るとともに、他方では 「東 アジア経済圏十 さらには 「汎アジア経済圏」 との間で ビジネス経済圏 として の重層的連関性 を有 しているが故 に、新潟県産業集積を してアジア経済圏に対す る 「同心 円的アプロー チ」 (注1) の起点た らしめるか らに他 な らない。集積地域 ・企業の発展視座 として 「経済圏」 が戦略 的意義を有す るア ジア共生時代 (注2) にあ っては、 この ことは新潟県集積 にとって も死活的な重要性 を有 していると考えるべ きであろう。
後者 の人材育成の重要性 についてはどうか。知的資産が既 に企業資産 の重要な構成要素 とな りつつあ り、従 って知的蓄積 に対す る投資が企業価値の決定要素 とな りつつある現代企業経営 においては、人材 育成 とりわけ知 的人材育成 は今や企業経営戦略上 の最優先課題 の一つ とされているが (注3)、 その こ
とは、新潟県集積が新製造業基盤を形成す る上で、人材 ことに知的人材 の確保 ・育成が不可欠 とな りつ つあるとい うことを示唆 している。従 って、北東アジアにおける人材育成 と くに知的人材育成 は新潟県 集積 にとって も今や不可欠な課題 なのである。
最後 に、上記二つの理 由が相互連関性 を有 しているということも見逃せない。 ビジネス経済圏は、そ もそ も企業の ビジネス ・プロセス ・ネ ッ トワー ク (BusinessProcessNetwork;BPN)の重層化か ら な るが ([補論 Ⅲ]参照)、今 日ではこのBPNが高度化 し知 的BPN‑ と発展 しつつ あるとい う点が重要 である (注4)。云 うまで もな く、 こう した知的BPNへの移行 は企業経営 における知的価値の重要性増 大 と表裏の関係 をな しているのである。
以上三点 においてわれわれは、北東ア ジア経済圏における人材育成の意義を見 出す ことができるので ある。
2.北東 アジア ビジネス経済圏における人材育成 システム
そ こで次 に、北東 アジア ビジネス経済圏 との関連で人材育成問題 をやや具体的に考えてみよう。
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(1)北東 ア ジア ビジネスス クール構想
北東 ア ジア経済 圏 ([補論 Ⅰ]参照) と りわ けその実体 をなす ビジネ ス経済 圏 は 日本企業 の中国 ・韓 国進 出を基軸 とす る ビジネス ・ネ ッ トワー クによ って担 われてい る ([補論 Ⅰ]参照)。従 って、北東 ア ジアにおいて は、 ビジネス ・ネ ッ トワー ク展 開のためのイ ンフラ整備 と りわ け ソフ ト・イ ンフラの整備 が求 め られて い る。 ソフ ト・イ ンフラは二つ の分野 か らな る。一 つ は、情報 ・通信及 び金融 ・為替 ・通 貨 な どネ ッ トワー クに係 わ る分野 であ り、 いま一 つ は、人材 と くに知 的人材 の育成及 び知 的所有権保護 な どの知 的分野 で あ る。現在、前者 のネ ッ トワー ク ・イ ンフラ整備 が 日中韓協力 の下 で北東 ア ジアか ら さ らに束 ア ジアにか けて進展 して いるが、今後 は知 的分野 におけるイ ンフラ整備 が課題 とな る もの と想 定 され る。
その場合、人材育成論 が否応 な く登場 して くることにな るが、前述 したよ うに、人材養成 ・育成 には、
短期 的側面 ‑す なわ ち即戦力 の確保 とい う側面 一 と、 中長期 的側面 ‑す なわ ち高等教育 を通 じての育成 とい う側面 一 とい う二 つ の側面 が あ る。 だが、北東 ア ジアにおける ビジネス経済 圏を共生経済 圏 に繋 げ てい くのであれば、 中長期 的観点 に立 った本格 的な人材育成すなわ ち後者 の高等教育 を通 じての人材育 成及 びそのた めの システ ムづ くりが と りわ け重要 とな る。 その ため には、 「地 域統合大 学」 と しての
「北東 ア ジア ビジネ スス クール」 (仮称) す なわ ち 「北東 ア ジアMBA」(注5) が必 要 とされ るので あ る。
(2) 「ハ ブ ・ス クール」 の必要性 と役割
ただ しビジネ ス経済 圏が ビジネスネ ッ トワー クを基軸 と して形成 されてお り、人材育成 もまた ビジネ ス ・ネ ッ トワー クと表裏 の関係 にある以上、育成方法 もや は りネ ッ トワー ク型 とな る もの と想定 され るノム 他方、 ネ ッ トワー ク型人材育成 においては知 的ハ ブ機能 が求 め られているが、 その場合 のハ ブ機能 とは、
いわゆ るハ ブ機能 であ ると同時 に産学官協力 ネ ッ トワー クにおけるノル ド機能 の役割 を も併せ持 ってい る。 しか もこの ノル ド機能 は単 に知 的ネ ッ トワーキ ングのためにだ けではな く、経済 圏 にお ける分権 シ ステムの形成 を保証 す るため に も必 要 とされて い るので あ る。 そ う した意 味 で のハ ブ機能 を担 うのが
「‑ ブ ・ス クール」で あ る。従 って、 北東 ア ジア ビジネ スス クール構想 は、 ハ ブ ・ス クール間の コラボ レー シ ョンとい う性格 を も併 せ持つ ことにな るであろ う。
ただ しこの場合 の 「‑ ブ機能」 は、 コア コ ンピタ ンス型ハ ブ機能す なわ ち特定分野 における優位性 を 備 えた機能 の発揮 を求 め られ ることにな るであろ う。例 え ば 日本 の大学 に とっての 「特定分野 における 優位性」 とは、北東 ア ジア共生経済 圏に お ける 日本 の産業 ・企業 の新 たな競争優位性す なわ ち新高付加 価値化路線 の下 での新製造業 問題せ りわ け社会 的 ・文化 的 ・知 的ニーズ ([補論Ⅲ]参照) の充足 問題
と決 して無縁 で はないであろ う。
日中韓 を中心 とす る北東 ア ジアにお けるFTA構想 (注6)は、 北東 ア ジア ビジネ ス経済 圏形成 を加 速 させ る もの とみ られ るが、 その一環 と してのネ ッ トワー ク型人材育成 におけ る 「ハ ブ ・ス クール」 の 役割 もまた重要 なので あ る。
3. 新潟版 「地域MBA」の課題
(1) 「新 ものづ くり拠点」 と しての新潟県 の役割
北東 ア ジア ビジネス経済 圏形成 において、新潟爪の ものづ くり拠 点 は引 き続 き重要 な役割 を果 たす こ とが期待 されて いる。 だがその場合、前述 したよ うに新潟県 もまた 「新 ものづ くり拠点」 と しての役割
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が求め られているのである。 その背後 には、新高付加価値化論の下での製造業が 「新製造業」への変容 を余儀な くされているという事情が横たわ っているか らだ ([補論 Ⅲ]参照)。
それだけではない。今 日における競争力優位性が技術 ・知識の集積力 に拠 る以上 (注7)、新潟県の 産業 ・企業の場合 にも、人材 とりわけ知的人材の育成抜 きには、「新 ものづ くり拠点」 としての役割を 今後 も担い続 けてい くことは困難 となるであろう (注8)。
( 2 )
̀̀新 ものづ くり''における知的拠点 としての 「地域MBA」
ところで、新製造業への移行が技術 ・知識競争優位性 とも関わ っている以上 (注9)、 "ものづ くり拠 点"論 は知的人材育成拠点論 に繋が ってい くのは不可避である。 つま り、北東アジア ビジネス経済圏に おいて新潟県が拠点的役割を今後 も維持 しかつそれを発展 させてい くためには、新製造業 における拠点 性 とともに新たに人材育成 における拠点性を確保 しなければな らないということになる。 とくに北東ア ジアにおける
FTA
問題 の進展 は人材育成 における拠点性確保 を急務 とす るであろう。「地域MBA」
と は、その場合の知的人材育成拠点に他な らないのである。新潟県 における 「地域
MBA」
の必要性の根拠 は以上の諸点 にある。 ただ し、「地域MBA」
は北東 ア ジア ビジネススクール構想の一環 としての 「‑ブ ・スクール」機能を不可欠 としている。 この場合のハ ブ機能 とは、新潟県 における地域特性 を考慮 した特定分野 における優位性発揮 に他 な らない。 それは「新 ものづ くり拠点」とい う新潟県の地域的競争優位性の発揮 と表裏の関係をな している、 ということ は云 うまで もないであろう。
( 3 )
新潟版 「地域MBA」
の課題新潟県 における地域
MBA
構想 もまた、上記の北東 アジア ビジネススクール構想の一環 として位置づけられては じめてその意義を有す るものと考え られる。つま り、それ もまた‑ ブ ・スクールの一つであ るべきだ、 ということである。そうした観点に立 って、新潟版 「地域
MBA」
の課題を考えるとすれば、以下の諸点 に留意 しておかなければな らないであろう。
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(イ)新潟県集積なかんず く中越集積の産業 ・企業の人材育成ニーズへの対応
a.新潟 ・中越集積が中小企業を基盤 とす る製造業集積であるという地域特性を考慮す ること。
b.しか も既存の製造業集積が新製造業集積への転換を求め られているということを認識 して お くこと。
(ロ)中国 ・アジア ビジネスにおけるボーダ レス経営論の重視
a.中国 ・アジア ビジネスにおけるボーダ レス経営論を重視す ること。
b.とくに 「ブラン ド戦略」 に関わる専門教育 を行 うこと。
C.上記a・bに関 しては、専門職大学院による高度教育体系 によって臨む こと。
(‑)技術 ・経営融合教育 の必要性
・経営学の専門大学院 としての
MBA
という性格だけではな く、MOT
という性格を も併せ持つ 必要があること (注10)。(ニ) ボーダ レス教育の強化 ・充実
a.とくに北東アジア ・東 アジアにおける共生論を視野 に入れた 「共生教育」を重視す ること。
b.ボーダ レス経営に求め られ る知的プロフェッショナル養成のためには、 中国 ・アジア留学 生 に対す る高度専門教育 を整備 ・強化す ること。
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