バングラデシュ政府は大気汚染の主要因である交通やレンガ産業に対し、規制や新 技術への移転等、様々な対策を行ってきた。交通では自動車の排気ガス規制をはじめ、
渋滞の緩和、Compressed Natural Gas (CNG)車の導入等により大気汚染物質の排出量の 減少が確認されるなど成果がみられている。レンガ産業では、環境負荷の大きい FCK 型の操業禁止等により、環境負荷の少ない技術が徐々に普及しはじめているものの、技 術移転に要する莫大な費用は移転速度を遅延させ、他方で同産業における需要が拡大 していることから、結果として排出量が増加傾向にある。大ダッカ圏における2013年 のレンガ焼成窯の総排出量は、PM10では53,333t、PM2.5では17,557t、SOxでは59,221 tと試算されている4。
Begumら(2018)による排出源調査によると、レンガ工場が集中するダッカ市では、
2001~2002年、PM2.5及びブラックカーボンに最も寄与しているのは自動車由来だった
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が、2010~2015 年では、最も寄与しているのはレンガ産業由来となり、環境汚染の主 も大きな要因となっている(図 21と図 22参照)。
図 21 ダッカ市内のPM2.5汚染源の推移27
図 22 ダッカ市内のブラックカーボン汚染源の推移24
図 23は2002年~2008年のデータだが、ダッカ市内の微粒子状物質(PM2.5)の濃度 は、旧式の工場が稼働する期間に顕著に高くなっており、この期間において、バングラ デシュの日環境基準65㎍/㎥/日を2倍近く超過している。
レンガ焼成窯より排出されるPM10やPM2.5は、ダッカ市内の早期死亡者数750人/年、
全早期死亡者数の20%に関係していると報告されている28。
27 Begum and Hopke, Ambient Air Quality in Dhaka Bangladesh over Two Decades: Impacts of Policy on Air Quality, Aerosol and Air Quality Research, 18: 1910-1920, 2018.
28 WB, Introducing Energy-efficient Clean Technologies in the Brick Sector of Bangladesh, June 2011.
2001~2002年(総量22.1㎍/
㎥)
2010~2015年(総量30.6㎍/
㎥)
2001~2002年(総量7.90㎍/
㎥)
2010~2015年(総量6.93㎍/
㎥)
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図 23 ダッカ市における微粒子状物質(PM2.5)の月平均濃度29
また、レンガ製造業は、人々の健康、農業生産に被害をもたらすだけではなく、地球 温暖化の原因にもなっている。2011年にレンガ産業全体で使用された石炭は350万t だったが、2017年には568万tに、2011年のGHG排出量は980万tだったが、2017
年には1,567万tに増加した4,5。
バングラデシュ環境局による各レンガ焼成技術のPM 排出濃度とCO2排出量の比較 を表 26に示す。最も使用しているZigZag型はレンガ10万個あたり16-18tの石炭消
費で38-43tCO2のGHG排出量、600-900 mg/cm3のPM排出量である。ZigZag型は、煙
が大気へ排出される前に地下の貯水槽で洗浄され、煙中の汚染物質が貯水層に取り込 まれる仕組みになっているが、実際には水を定期的に変える業者は少なく、効果が薄ま っているのが現状である。次に多く使用されている旧式の FCK 型はレンガ 10 万個あ
たり20-22tの石炭消費で47-52tCO2のGHG排出量、レンガ10万個製造時の微粒子排
出量は1,000 mg/m3を超える。一方、近代的なHHK型の焼成窯はレンガ10万個あたり
12-14tの石炭消費であり、ZigZag型の約1.5倍、FCK型の約2倍のエネルギー効率を
示し、PM排出量はZigZag型の概ね1/30、FCK型の1/50以下であるが、マーケットの 占有率は年々減少している。急激に増加している先進型のTunnel型は、石炭消費量は
ZigZag型やFCK型とあまり変わらないが、PM排出量はZigZag型の概ね1/40、FCK型
の1/60である。
29 Guttikunda, S., Impact Analysis of Brick kilns on the Air Quality in Dhaka, Bangladesh, SIM-Air Working Paper Series: 21-2009
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表 26 バングラデシュの各レンガ焼成窯の汚染状況4,30
汚染レベル
レンガ10万 個生産時の
PM排出量
レンガ10万個 当たりのCO2
排出量
レンガ10万 個製造当たり の石炭消費量
マーケット 占有率
(mg/m3) (tCO2) (t) (%)
FCK型 high >1,000 47-52 20-22 31.16%
Zigzag型 medium 600–900 38-43 16–18 55.76%
Improved
Zigzag型 medium low 65 33 14 <0.66%
HHK型 low 20.3 28-33 12–14 4.81%
Tunnel型 low 16 50 18-22 7.62%