福利厚生:法人会員数の堅調な増加により7億円増収。人手不足や国策の動きがBtoB事業領域で追い風
福利厚生の売上は8,121百万円と9.3%増収、法人会員数の堅調な増加により、業績を牽引した。CRMでは新規会員の獲得 の遅れが続き22.8%減収となった。パーソナル及びCRMを含めた営業利益は、オペレーションのデジタル化促進や業務効 率化により、3,069百万円と前年比36.4%増(819百万円増)と増益、営業利益率は前年比7.7pt上昇となった。
市場環境として追風の状況に変化はない。足許は中小企業や非正規雇用労働者への導入も進んでいる。人手不足を背景に 大手企業から中堅・中小企業にまで福利厚生カバー範囲が広がる動きが期待される。FY03/19中にサービスを開始する企 業も多く、期中での業績積み上がりに期待したい。
下期においては引き続き追風による「福利厚生+パーソナル+CRM」の会員増が期待されよう。課題のインセンティブ については付与済みポイントの消化が進む想定、ヘルスケア事業も期待したい。なおBTMは既にいくつか取引を開始し ており想定通りの進捗、接待ソリューションは提案営業を11月より開始した。
福利厚生事業+パーソナル+CRM
出所:会社資料よりSR作成
パーソナル:新規有望協業先開始の遅れ響き新規顧客獲得に遅れ。利用促進策実施により既存会員退会は想定より抑制 パーソナルは、期初の会員数が前年比で減少(2017年4月191万人、2018年4月154万人)したこともあり、前年比では18.8%
減収(358百万円減)、計画に対しても0.4億円未達となった。既存協業先向けの減少はまだ下げ止まっていないが、リテ ンション改善に向けた利用促進など会員定着に取り組んでおり、退会は想定より抑制された。
一方、大阪北部地震の影響による遅れや会員の開拓方法を模索中の協業先もあり、新規協業先の立ち上がりに時間を要し ている。期初計画でも全体では会員数の減少傾向は見込んでおり、想定線ではあるものの個人会員の減少が続いて減収と なった模様。経費管理の徹底とともに、2019年3月期に向けて新たな協業先とのサービス開始にも期待したい。
NTTドコモ(東証9437)向けサービス「dエンジョイパス(月額500円、初回31日間無料)」:既に大手通信キャリア向けはソフトバンクグループに
「とく放題」を2015年2月より提供しているが、2017年3月期以降、通信業界における販売規制等の影響から会員獲得が伸び悩んでいた(大手代理店 協業先も同様)。NTTドコモ向けサービスが加わったことで、会員数は再び増加基調が見込まれる
なお、dエンジョイパスは既存のドコモユーザー、なかでもシニア世代を主要な対象にしている。ドコモの携帯電話契約数はLTEサービスが45,659千、
FOMA契約が29,455千の計75,114千契約(FY03/18Q1実績)、スマートフォン・タブレット利用数は同36,529千契約と、その分母は大きい。より同社 サービスとの親和性を高めるためのシステム構築を行っていたために当初計画(6月開始)より遅れたが、ターゲットを絞った効果的なマーケティン グやキャンペーンを打つことが可能になった(同社はプラットフォームを提供し、販促活動は協業先自身が行うという形を採る)
5.49 5.75 5.825.986.47
5.71 6.026.226.867.347.74 7.80 7.60 7.54 7.45 7.57 9.00
16.3%
15.9%
6.0%4.0%11.2%
-4.5%
-7.0%
8.9%
14.0%
18.0%
12.8%
6.3%
-1.8%-3.3%-2.0%0.4%
20.8%
-10%
0%
10%
20%
30%
40%
0 2 4 6 8 10
Apr. 2011 Apr. 2012 Apr. 2013 Apr. 2014 Apr. 2015 Apr. 2016 Apr. 2017 Apr. 2018 Apr. 2019 Est.
会員数(百万人) 会員数前年同月比(右軸)
(mn)
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000
FY03/16Q1 Q3 Q1
FY03/17 Q3 Q1
FY03/18 Q3 Q1 FY03/19 Q3 福利厚生売上 パーソナル売上 CRM売上 営業利益 営業利益率(右軸)
(JPYmn)
ベネフィット・ワン|2412
LAST UPDATE: 2019.01.31 Research Coverage Report by Shared Research Inc. | www.sharedresearch.jp
R
Coverageパーソナル事業
出所:会社資料よりSR作成
インセンティブ
インセンティブは大手顧客先のユーザがQ1にポイントを集中して使用する傾向にあることから季節性を有する。しかし ながら、上期業績は14.0%減収(306百万円減)、16.1%減益(65百万円減)となった。収益への影響が大きい既存顧客 において例年春に実施しているキャンペーン時期が秋にずれたことにより、ポイント付与・交換が想定を下回ったためと のこと。下期に付与時期がずれたことにより、売上が全体的に先送り傾向となる可能性があるとみられる。業績の安定化 策として、既存大手1社への依存度を低下させるべく、予算規模の大きい業界へ標的をシフトして顧客を拡大すべく営業 活動に取り組んでいる。足許の営業は好調で数千万から数億円規模の新規大手顧客も獲得できており、前年を上回ってい る。FY03/20以降の業績への寄与が期待できるとしている。このように新規顧客の獲得は順調に進んだとみられる点には 注目したい。
同事業の売上は付与されたポイントをユーザが交換することで計上される。そのため、ポイントを使ってもらえるような商品面での工夫や、交換さ れた際の収益性のコントロールも重要な要素となる。
インセンティブ事業
出所:会社資料よりSR作成
ヘルスケア
ヘルスケアは事業環境は良好で順調に取引先が増加し、健診サービス・保健指導の拡大により、12.9%増収(449百万円 増)と業績を牽引した。オペレーションの改善が進み、セグメント営業利益率も0.3pt改善した。計画比では、保健指導 多様化に伴う検討長期化等に伴い初回面談時期に遅れが生じたもののほぼ計画線での着地となった。下期については、健 康経営に対する意識の高まりにより市場環境は良好に推移しており、全体的に新規獲得も順調、保健指導の実施件数増加 等、既存クライアントから売上増を図っている。また、10月より明治安田システム・テクノロジー社の保健指導事業譲 渡により、指導員人員強化が拡充され、今後の業績への貢献が期待される。
0.380.54 0.580.69 0.780.891.031.22 1.47
1.88 2.27 2.23
1.911.75 1.54 1.48
2.19 217%
170%
53%
28% 34% 29%
32% 37% 43%54% 54%
19%
-16% -22% -19% -15%
42%
-50%
0%
50%
100%
150%
200%
250%
0 1 2 3
Apr. 2011 Apr. 2012 Apr. 2013 Apr. 2014 Apr. 2015 Apr. 2016 Apr. 2017 Apr. 2018 Apr. 2019 Est.
会員数(百万人) 会員数前年同月比(右軸)
(mn)
-20%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0 200 400 600 800 1,000 1,200
FY03/15Q1 Q1
FY03/16 Q1
FY03/17 Q1
FY03/18 Q1 FY03/19
売上 YoY(右軸)
(JPYmn)
678 451556
757 1,114
708796 1,118
1,301
885 909 1,1331,162
718
120 50 62 101
185 88 111171278
127 143197 226 113 17.7%
11.1%
11.2%
13.3%
16.6%
12.4%13.9%15.3%
21.4%
14.4%15.7%17.4%19.4% 15.7%
0%
4%
8%
12%
16%
20%
24%
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
FY03/16Q1 Q3 Q1
FY03/17 Q3 Q1
FY03/18 Q3 Q1 FY03/19 Q3 売上 営業利益 営業利益率(右軸)
(JPYmn)
1.5 2.7 4.0 3.34.9 3.8
5.94.8 6.96.0
9.4 7.3
9.8 6.8 0.20.4 0.4 0.5
0.81.1 1.1 1.5
1.2 1.6 1.5
2.1 1.8
2.22.4 3.4
2.42.6 2.1
0 3 6 9 12
0 1 2 3 4
FY03/101H 1H FY03/11 1H
FY03/12 1H FY03/13 1H
FY03/14 1H FY03/15 1H
FY03/16 1H FY03/17 1H
FY03/18 1H FY03/19 付与ポイント累計額(右軸) ポイント付与額
(JPYbn)
ベネフィット・ワン|2412
LAST UPDATE: 2019.01.31 Research Coverage Report by Shared Research Inc. | www.sharedresearch.jp
R
Coverage ヘルスケア事業出所:会社資料よりSR作成
海外事業
売上は163百万円と前年比77.7%増(71百万円増)、営業損失は136百万円(26百万円良化)と増収増益。計画に対して はタイでは新規取引見込先で導入意思決定が遅れて期ずれが生じたため、若干の未達となった。国別では、シンガポール とインドネシアは順調に伸びており、顧客基盤の拡大が進んでいる模様。欧州は既に大きな競合がいることもあり、苦戦 しているとみられる。下期からは管掌役員をシンガポール駐在へ配置転換し、ハブ拠点として全体をマネジメントする体 制に変更している。またアメリカでも初めて年間ポイント予算1億円超の新規顧客を獲得し、顧客開拓が進んでいる。海 外事業は基本的にストックビジネスであり、在庫を持たず投資額も大きくないため地道に案件を積み重ねることで黒字化 も視野に入ってきているとみられる。
海外事業
出所:会社資料よりSR作成
今後の成長戦略 4つのトピックス
新サービス:ベネフィット・ステーションNEXT
2018年11月より新サービスベネフィット・ステーションNEXTの提案営業を開始した。福利厚生事業の既存のベネフィッ ト・ステーションに従業員の健康促進を図る健康ポイントを付帯してワンパッケージで提供する。企業の働き方改革・健 康経営をサポートするHR Techサービスである。価格は従来390~400円から新料金550円、新規顧客に対しては、ベネ フィット・ステーションNEXTをメインとした販売となる。他社HR Tech商材と比べて高付加価値ながらも安価となって おり、中小企業を含めてシェアの拡大を狙っていく模様だ。既存顧客に対しては期中での変更は難しいとみており、2019 年4月からの導入を目指して営業を強化する。戦略としては、新価格に加えてアップセルとなるヘルスケアやインセン ティブの両方の獲得を狙っていくとのこと。まずは商品を統合し、2019年に組織統合、2020年にシステム統合を目指し ている。
新組織、新サービス:購買・精算代行事業部、接待ステーション
2018年10月に、ベネフィットワンソリューションズとBTM事業部を一本化し、BPO需要に対応するための購買・精算代 行事業部を発足した。精算代行サービスを集約し一体化したソリューションとして提供することで高いシナジーの発揮が 期待される。また、11月には会食で利用する店舗の予約から精算業務までを一気通貫でサポートする接待ステーション
1,320 1,280 1,520 1,590 1,760
2,260 1,750
1,440
2,530
3,150
5,120
6,340
270 380 210 230 260 400
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000
FY03/14 FY03/15 FY03/16 FY03/17 FY03/18 FY03/19 Est.
保健指導売上高 健診売上高 その他売上高 (JPYmn)
757 701 1,069
1,730
1,260956 1,257
1,506 1,172
2,302 1,919
1,746 1,364
2,559
66 38 22 106 127 120 163 181 8 130 -4.2%
-5.4%
-2.7%
3.8%
3.0% 2.3%
8.4%
8.4%
-0.9%
5.2%
8.5% 10.4%
0.6%
5.1%
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
FY03/16Q1 Q3 Q1
FY03/17 Q3 Q1
FY03/18 Q3 Q1 FY03/19 Q3 売上 営業利益 営業利益率(右軸)
(JPYmn)
45 157
40 42 43 49 46 62 80 84
-46 -34
-71 -74 -82 -80 -84 -74 -70 -66 -100
-50
0 50 100 150 200
FY03/17Q1 Q3 Q1
FY03/18 Q3 Q1
FY03/19 Q3
売上 営業利益
(JPYmn)
ベネフィット・ワン|2412
LAST UPDATE: 2019.01.31 Research Coverage Report by Shared Research Inc. | www.sharedresearch.jp
R
Coverageの提供を開始した。企業の精算業務の効率化を推進するほか、「経費の見える化」によるガバナンス強化につながるとい う大きなメリットがある。既に大手企業での導入も決定しており、これをきっかけに他企業でも導入が続くと同社では期 待している。また、交通費等含めた小口精算マーケットは非常に大きいとみており、マーケットを創造していきたいとし ている。
将来的には、支店小口精算の一本化・オンライン化を検討しているとのこと。支店小口精算の現状は各支店に請求書を送 り精算となっているが、各支店の請求データを同社が集約して一括して支払うことで支払総額の見える化と会計処理の効 率化を図るというもの。まずは電気やガス等の公共料金、物流、通信料金等で、多店舗展開している官公庁や企業を対象 に、今後、本格的な営業の推進を予定している。
最終的には、集中購買による業務効率化を目指している。同社がオンライン上で一本化したBtoBモールを作り、すべて のBtoB商取引が発注から決済までワンストップで可能になるというもの。将来的には中小企業を束ねた集中購買で、大 手企業並みの購買レートでの購入が可能というスケールメリットも活かしたいとしている。クライアント・サプライヤー 双方にとっての時間と費用の無駄を削減することをコンセプトとしている。
新運用スキーム:決済手数料の収益化
同社が提供するカフェテリアプランポイント利用や宿泊補助で企業ごとのルールに基づき決済代行を行っており、サプラ イヤーから決済手数料をもらうことにより収益につなげていきたいとしている。従業員にはポイント利用先の拡大による 利便性・満足度向上、サプライヤーには決済手数料の引き下げと優良顧客へのアプローチが可能に、企業には事務代行費 用の引き下げやペーパーレス化・業務効率化が進む等、各々にメリットのある内容となっている。2019年から手数料を 取る交渉を行っている。
将来的には、企業間決済をベネフィット・コイン(仮)で行い、BtoB商取引の見える化を図りたいとしている。現在の ベネポ(ポイント)を電子マネーに移行することでそのままペイメント事業への参入を構想している模様だ。
働き方改革:サテライトオフィス開設拡大
同社では「NeoWorks」と題した独自の働き方改革のもと、すべての業務を棚卸・因数分解し、定型業務についてはマニュ アル化・オンライン化を進めることで、社員ではなく個人、オフィスではなく自宅、時間管理ではなく成果物管理と、全 く新しい概念での労働環境の提供を進めている。なお、これら取り組みの一環として、地方型サテライトオフィスの積極 的開設を計画している。まずは松山オペレーションセンターが所在する四国を中心に、年間5ヶ所ペースで10~20人規模 のオフィス開設を進めていく模様だ。地方では事務職が少なく高い人材定着率が期待できるため、確実な人材が安く確保 でき、専門性の高い教育研修投資が可能となっている。同社としては地域と連携し雇用形態や働く場所にとらわれない多 様な人材活用を促進する働き方改革、地方としては雇用創出を通じた人材発掘やI/Uターン促進で地域経済活性化に寄与 する等地方創生に、更には同社自体の生産性の向上にもつながっているとしている。