第 3 章 品質予測の実際
3.3 プロジェクトの品質予測
3.3.5 事例:EVM を活用したプロジェクト品質予測
(1) 目的と狙い
プロジェクトの品質予測を目的に、プロジェクトのスケジュール効率とコス ト効率の実績からプロジェクトの状態を予測する。
(2) 考え方
スケジュール効率(SPI)とコスト効率(CPI)の直交座標から、プロジェクトの 現在の状況と、そのトレンドからプロジェクトの今後の状態予測を行う(図表 3.3-6)。
11/21
11/14 10/31 11/7 10/17
0.90 1.00 1.10SPI
0.85 1.00 1.15 CPI
スケジュール遅れ が発生する!?
どちらも効率が よく、問題なし スケジュールの効率
はよいが、コストの 効率が悪い
どちらも効率が悪い、
ピンチ領域 コストの効率はよい
が、スケジュールの 効率が悪い
●
● ●
●
●
●
●● 11/28 12/5 12/12
図表 3.3 ‑6 プロジェクト品質予測モデルの考え方
80 第3章 品質予測の実際
SPI と CPI の状態 プロジェクトの状態
SPI も CPI も 1.0 以 上 の場合
・計画よりも生産性が高く、問題ないため現状を維持
・ ただし、計画よりもあまりに効率良い場合は、計画自体に問題がないか、
または品質に問題ないかを確認する必要がある SPI は 1.0 以上である
が CPI は 1.0 以下の場 合
・ スケジュールには余裕があるため、スピードを落としてでもコスト抑制が 必要
・ 深夜残業や休日出勤等で対応している等、計画に無理がないかを確認する 必要がある
CPI は 1.0 以上である が SPI は 1.0 以下の場 合
・ コストには余裕があるため、コストを追加投入してでもスピードアップが 必要
・ ただし、コスト計上が正しく行われていない可能性もあり、確認する必要 がある
SPI も CPI も 1.0 以 下 の場合
・ スケジュール及びコストとも問題であり、原因と対策が明確な場合は、ス コープの変更を含めて、計画の見直しを検討する
* SPI や CPI が 1.0 以下の場合は、原因分析を実施し基本的にはプロジェクト管理の中で解消させる。
なお対応策は効率指標(CR=SPI × CPI)も考慮して検討するとよい。
(3) 方法(項目、手法 [ 把握、予測 ])
プロジェクトの SPI と CPI 実績を定点観測し予測する。
以下に SPI や CPI が悪化した場合の対処事例及び、パートナーのコスト実績 の把握方法を示す。
(a) コスト効率が悪化してしまった場合
一般的には、コスト効率は悪化すると、ほとんど挽回できないため、悪化さ せないように最優先で監視する。
悪化してしまった場合は、以下の対応を検討する。
・プロジェクトのコントロールによる挽回
悪化原因を分析し、プロジェクトの進め方による挽回を検討する。
・コンティンジェンシー予備費の切り崩し
完了時総コスト予測(EAC)がコンティンジェンシー予備費(あらかじめプ ロジェクトのコストに織り込み済みの費用)で対応できるかどうかを検討 する。
・マネジメント予備費の投入
コンティンジェンシー予備費で対応できない場合は、マネジメント予備費
(プロジェクトのコスト外の費用)の使用について検討する。
図表 3.3‑ 7 SPI と CPI から見たプロジェクトの状態
3.3 プロジェクトの品質予測 81
(b) スケジュール効率が悪化してしまった場合
まずはクリティカルパスに影響がないかを点検する。
クリティカルパスに影響がある場合は、クラッシングやファストトラッキン グ等を行い、所要期間を短縮する。このとき、生産性低下やリスク増大になる ことが多いため、注意する必要がある。
(c) パートナーのコスト実績の把握方法
コストに関してはパートナーからの報告が拒絶されることがあり、プロジェ クトの進捗に伴うコスト(AC)の把握が困難となる。しかし、AC を把握するこ とでパートナーの生産効率が把握できるため、パートナー先のパワー不足やプ ロジェクトの体制強化等の対策を前もってに行うことができる。よって、パー トナーに PV と EV のみを報告してもらい、AC は以下のいずれかで代替しプロ ジェクトの品質を予測する。
AC 代替方法
EVM
計算結果 説 明
AC = PV CPI = SPI コスト責任はパートナー先だが、進捗遅れにより当社にコスト悪化のリ スクが発生する為、遅れ状況を加味する運用
AC = EV CPI = 1 コスト責任は全てパートナー先にあるとして、進捗にかかわらず、コス トは一定とする運用
(4) 効果
以下に、EVM 適用の効果例を示す。
・早い段階で計画漏れを検知
プロジェクトの初期段階で、SPI と CPI が良すぎる傾向にあることに気 付いた。原因を分析してみた結果、WBS の洗い出しが不足していたこと が判明した。これにより、早い段階での WBS 見直しを行うことができた。
・計画の定量化への意識改善
EVM を導入し定量的な管理を行うためには「計画をきちんと立て、計画 をもとにマネジメントしていかなければならない」という意識が、プロジ ェクトメンバに浸透してきた。
・予測による損失増大の防止
設計の途中段階において、大幅な納期遅延とコスト超過が発生すること が予測結果として出た。これをトリガに分析した結果、お客様からの要求
図表 3.3 ‑8 AC 代替のプロジェクト予測方法
82 第3章 品質予測の実際
により仕様がいつまでも確定しないことが原因であることが判った。早速 対応を取り、お客様に対して、EVM のデータを元に論理的に説明するこ とで、仕様の限定と早期確定を説得した結果、損失の拡大を防止できた。
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3.3.6 事例:プロセスパフォーマンスベースラインを活用した