Ⅲ‑203.5.2 植生
3.8 事例調査とりまとめ 3.8.1 事例調査とりまとめ
全国各地の各種の対策事例をとりまとめ、その成果と課題を表 3.8‑1に示した。
表 3.8‑1 全国の事例とりまとめと課題等(1)
No. 対策 使用場所 効果・成果 問題点・課題
1
防護柵 島根県
福岡県 岡山県 佐賀県 …など
イノシシはいずれの防護柵も突破する能力を持 つものの、電気柵、ワイヤーメッシュ柵およびト タン柵が、金網フェンス、ネット柵および有刺鉄 線柵に比べて侵入防止効果が高い。
防護柵の弱点(強度、高さ)を補うには、2種類の防護 柵を組み合わせる方法が有効と考えられた。
侵入路にグレーチング設置したところ、設置穴の深さを 十分にとれば通行障害の効果が期待できた。防護柵の効果 を長期間維持するため、防護柵の適正な設置・管理の重要 性を普及するための研修会等を開催する必要がある。
2
電気柵 島根県
栃木県 山梨県 滋賀県 …など
飼育イノシシでの試験によって、一度電気 ショックを受けると学習して、柵に接近しなくな る傾向を確認できた。電気柵と畦波板を組み合わ せた島根畜試方式を農地に設置して野生のイノシ シに対する効果を観察したところ、農地周辺には 痕跡を確認したものの農地への侵入は防止でき た。これらのことから、電気柵は高い侵入防止効 果を持つと言える。
電気柵は鼻鏡に触れないと効果がなく、目立つ電線の方 がより有効と考えられた。充分な電圧のないものが侵入を 受けており、設置後の点検や維持管理が不可欠である。
また、電気柵設置には多大な経費がかかり、中山間地域 では普及させることが困難である。
様々なメーカーがいろいろな製品を販売しているが、粗 悪品も多いため、注意が必要である。
頑丈なものを使うのがよい。
3 忌避剤 (布タイプ)
大阪府 熊本県 宮崎県 福岡県 長崎県 福井県 石川県 徳島県 …など
イノシシはご存知の通り鼻が体の最先端に突出 している。それは鼻=嗅覚により食料を見つけた り、危険を察知するためだと考えられる。匂いに とても敏感なのである。その敏感な嗅覚にダイレ クトに危険を訴え、農作物への手出しを出来なく するというのが最もユニークな特徴だ。
※人間には3cmぐらいまで顔を近づけないと分 からない匂いである。もちろん保存中に匂いが気 になることはない。
また、イノシシは実は非常に神経質で、「普段 より見慣れないものなどを見かけると、それをで きるだけ避けようとする習性」があるといわれて いる。吊るすことで、色と風による揺れで視覚的 にも警戒を促す。
本来は1メートルから1.5メートル間隔で配置するも のだが、ケチって間を開けすぎるとそこからイノシシに突 入されてしまう。
忌避剤の効果は天候などにも左右されるが、天気がいい 地方では割と長持ちするのではと考えている。しかし、1 年を通して天候のあまり優れない地域では、通常より早く 劣化してしまうおそれがある。
経年変化による劣化を防ぐという意味では、対策期間を 過ぎたらまた袋などに保管しておくのが一番いいのかもし れない。
忌避剤の効果は短期的であることに注意して使用する必 要がある。
4 忌避剤
(液状タイプ)
長野県 愛知県 山梨県 青森県 …など
忌避剤の液状タイプで一般的なウルフピーは、
多くの害獣の天敵であるオオカミの尿で、作物や 民家へ動物を近づけなくする効果がある。
設置に関わるコストや費用、手間が少ないのが 特徴で、女性や高齢者にも簡単に利用できる。ま た、必要な場所に必要なだけ使用するので、無駄 な手間とコストをかけずにすむ。
ウルフピーは、天敵を嫌がる動物の習性を利用して、対 象となる動物を近づけにくくするものだが、自然の動物の 本能を利用した商品のため、効果は動物個体差がある。
忌避剤の効果は短期的であることに注意して使用する必 要がある。
5
防護ネット 兵庫県 山梨県 愛媛県 愛知県 高知県 島根県 …など
動物の跳躍能力以上の高さまで、物理的な障壁 を設けることにより野生動物の通行を妨げること ができる。
また、イノシシは、助走なしに高さ1mの柵を 飛び越えるほどのジャンプ力があるが、イノシシ は網が蹄に絡むのをとても嫌うため、柵の手前に 網を斜めに垂らすと、侵入防止効果が高まる。
通電部のない柵だから「管理不要」と勘違いされること が多い。柵の下に隙間をつくったり、網目を広げての侵入 が必ず発生し、柵両側(山側・里側)の草刈りを怠ると、
草に隠れてどこから侵入しているのか確認できなくなる。
このため、柵周辺の草刈りを実施し、侵入箇所を把握でき るようにしておく必要がある。
ネットは安価で入手しやすく扱いやすいが、被害の状況 に応じて、他の資材と組み合わせたり、周辺の雑草管理を 徹底するなどの工夫が必要である。
6
イノシシ線香
―
『イノシシ撃退用線香イノダー』は、一見蚊 取り線香のようだが、唐辛子を練り込んだイノシ シ撃退用の線香。嗅覚のいいイノシシは、唐辛子 の辛味成分のニオイを嫌い、近づかない。
※平成21年現在、試作品の段階のため、サンプルなどで データをとり、翌春以降に商品化して販売をする予定。
7
箱檻 栃木県
広島県 …など
イノシシの修正を利用した須永さん考案の箱檻 を導入した自治体などから、「数頭同時に捕獲で きた」という声が続々届いている。
昨年4月から16台の箱檻を入れた広島県蒲刈町 では、11月までに前年度の10倍に当たる190頭を 捕獲。確実に数が減っている。
設置後は、底のメッシュが隠れるよう、土を5cmほど 入れる。木板や鉄板など足がすべる所には、イノシシは入 らない。
また、藁や木の葉があると、イノシシは逆に下に何か危 険な仕掛けがあると思うようで、土が見えるほうが安心す る。
ツキノワグマやタヌキなどの混獲には最新注意を払う。
効果がない場合は、誘引の餌に他の動物が寄り付く可能 性があるため、それらを回避する必要がある。
Ⅲ‑32
表 3.8‑2 全国の事例とりまとめと課題等(2)
No. 対策 使用場所 効果・成果 問題点・課題
8 くくりわな
栃木県 広島県 …など
狩猟期以外には、各地で成果をあげている。
くくりわなは、イノシシの通り道に設置する。イノシシ は、通り道の環境の変化に非常に敏感なので、設置には細 心の注意が必要である。また、わなを仕掛けること自体は 難しくはないが、イノシシに警戒されないように設置する のは経験が必要。犬をわな設置場所周辺で用いると、餌で わなに誘引されていた個体を追い散らすこともあるので、
わな設置場所周辺で、犬を使った銃器による捕獲を行う場 合は、注意が必要である。
また、他の動物がかかる場合も多く、ツキノワグマの生息 地などでは、わなの大きさなどにも注意が必要である。
9
ろうそくの炎 京都府 高さ18cmの空き瓶に八分目くらいまで水を 入れ(少ないと酸欠で消えてしまう)、球形のろ うそくを浮かべて点火。これを竹林の中に数m間 隔で並べてみたところ、被害が激減した。
光のないはずのところで炎がチラチラ揺れて、
イノシシを怖がらせるのだろう。
毎日並べるのが大変。
風が強いときには使えない。
10
風鈴の音 和歌山県 イノシシの足跡がある場所や被害があった場所 に、図のように風鈴をつるしておくだけ。風鈴の 音を嫌がってか、イノシシが寄ってこなくなる。
11
蚊取り線香 クレオソート
広島県 一斗缶を横にして、中に蚊取り線香を置く。缶 を横にしているため雨が降っても火が消える心配 がない。夜9時過ぎに線香に火をつければ朝まで もつ。
蚊取り線香だけでは飽きられてしまうため、と きどきクレオソートも組み合わせて目先を変える とよい。この合わせ技で3年間イノシシが入って いない。
蚊取り線香に火をつけるのを一回でも怠ると、好機を逃 さずイノシシが押し入った。
毎日火をつけるのは、習慣になるまで忘れることがあり そうだ。
12
爆音器 広島県 圃場の周囲に張ったテグスにイノシシがふれる と、テグスに結んだアクリル板がはずれてスイッ チが入り、加熱した電熱線によって爆竹の導火線 に点火する仕組み。
5年ほど前から試しているが、それ以後、イノ シシの被害は抑えられているという。
定期的に爆発音を発するカーバイトやプロパンガスを 使った爆発音では、イノシシはすぐに慣れてしまう。
13
ドラム缶 山口県 田んぼや畑の周りに横倒しにしたドラム缶を並 べる。まんまるいドラム缶の側面にイノシシの爪 は引っかからないため乗り越えてくることはでき ない。
ドラム缶はしっかりと固定していないと、大雨などで簡 単に流され、手に負えなくなってしまう。
14
嫌な臭い 高知県 髪の毛を油いためして、古いストッキングに入 れて畑に吊るしておく。これの発する嫌な臭いは 強烈で、イノシシも寄ってこなくなる。効果は抜 群らしい。
時間の経過とともに臭いは薄くなり効果は薄れる。
15
人糞 福岡県 牛糞、きのこ菌床の廃材を混ぜ、約一割の人糞 を加えます。未熟なうちに山と畑の境目に、5〜
10mおきに二掴みずつ置いていきます。それだ けでイノシシは寄ってこなくなる。
イノシシが多いところでは、にんにく入り木酢 を吊るすとか、人間の髪の毛を吊るすとか、もっ と臭いの強い豚糞を混ぜるとか、色々な方法と組 み合わせると良い。
臭いが薄くなると効き目がなくなるので、だいたい年三 回くらい追加する必要がある。
16
新聞紙に木酢 長野県 新聞紙1ページ分を、半分か四つ折りにして、
木酢を油差しなどでシュッシュと2回ほど吹きつ けたものを、実が熟す前の実の付け根のところに はさむ。
木酢かそれとも新聞のインクの臭いが効いたの か、イノシシは寄り付かなくなった。
時間の経過とともに臭いは薄くなり効果は薄れる。
17
タイヤ 鹿児島県 イノシシの通る道に杭を立てて、その杭のてっ ぺんにタイヤを引っ掛けておきます。タイヤが地 面から10cmほど離れていれば良い。
そうすると、丸いものが恐いのか、それともタ イヤにあたるのが恐いのか、イノシシが来なくな るそうだ。
時間の経過とともにイノシシがなれてくるため効果は薄れ る。
18
タイヤ柵 兵庫県 古いタイヤを立てて埋め、柵のように田んぼや 畑のまわりをぐるっと囲む。丸い穴が並んで見え ているのが罠だと思って怖いのか、タイヤ柵のあ る畑や田んぼにはシカやイノシシが入らなくなっ た。
タイヤは少ないと効果がないため、たくさん用いると良 い。
19
シシ垣 関東以西
長野、香 川、大分な
ど
かつて公共事業として、土壁、石垣、木柵などと手前 に溝を掘り、を広い範囲に配置した。高さは、イノシシ やシカ、クマなどが乗り越えられない高さとして、柵が 1.5m〜2m、溝が1m以上と高いところでは溝から4mを 請いえていた。
広い範囲で設置できれば効果は高い。ただし、その範囲は広大 になるため、住民との合意が必要となる。
また、どこにどのように設置が必要か、人と野生動物の共存の視 点からの十分な検討が必要である。