1) 罠
① 捕獲檻 a) 事例
設置状況
餌によりイノシシをおびき寄せるため、捕獲できなかった個体などにより被害を助長する ことがあるので、耕作地のすぐ脇には設置しない。その一方で、加害個体は被害発生場所近 辺(1 平方キロ程度の範囲)に滞在している可能性が高いので、被害発生場所から遠すぎな い場所に設置する。
はこわなは、恒常的に管理が必要なので、農道や林道、作業道から離れた場所に設置しな い。スギ林やヒノキ林などの少し暗い場所に設置することもある。イノシシは警戒心が強い 動物なので、わなの下面(底面)の金網などが見えないよう土を入れて隠すなど工夫する。
成果
2002 年の秋、山の 3 カ所に箱檻を仕掛けたところ、2003 年の春にかけて 20 頭のイノシシ を捕獲した。
出典:月間現代農業 http://www.ruralnet.or.jp/gn/200309/kant.htm
捕獲檻で捕獲されたイノシシ わなの底面の金網などが見えると、イノシシは
警戒し、中に入ることを躊躇する場合がある。
わなの底面の金網などを土で覆うと、イノシシ は安心し、中に入る場合が多い。
設置箇所 : 栃木県足利市
■設置時期 : 2003 年 9 月
b) 捕獲檻の課題
課題
大型捕獲檻ははじめから天井がないものがあるのでツキノワグマなどが自由に出入りでき る。これにより捕獲の餌に使ったヌカや家畜飼料、コメなどへのツキノワグマの馴化を促し た可能性が危惧される。
また、閉鎖的なイノシシ用小型捕獲檻もヌカなどを餌に使うが、ツキノワグマはイノシシ 程警戒心が強くなく、全体的に餌資源が減少する夏期には腐敗醗酵した米ぬかなどにも強く 誘引されてしまう。また、このように定期的に給餌されるような安定的な餌資源に対しては、
ある意味で強い占有傾向を見せる場合もあり、捕獲目的がたとえイノシシであっても、先に それらの誘因物を発見、順化してしまい、結果的にイノシシとツキノワグマの混在するとこ ろでは 錯誤捕獲 が頻発する。また、タヌキが米ぬかを求めてイノシシ用の捕獲檻に入っ てしまうこともある。
イノシシ問題が激化し箱罠普及率が高まったと仮定されるなら、この罠にかかるクマの絶 対数は増えて当然である。また、イノシシ罠は構造が弱いものもあるため、タヌキならまだ しも、クマがかかれば破壊、人身事故の危険性も増加する可能性を考慮すべきである。
イノシシ用の捕獲檻に錯誤捕獲されたタヌキとツキノワグマの子供
出典:タヌキの写真:イノシシ情報 2008 http://www.geocities.jp/tatorutan/i̲jyouhou/ij̲2008.html ツキノワグマの写真:http://ecology.sblo.jp/article/3848481.html
Ⅱ‑76
② くくりわな a) 事例
設置状況
くくりわなは、イノシシの通り道に設置する。イノシシは、通り道の環境の変化に非常に 敏感なので、設置には細心の注意が必要である。一般的に足くくりわなは、わなを作動させ るために地面にワイヤーの内径よりも小さい穴を掘り設置する。整地する際、わなを設置し たことが分からないように視覚的、嗅覚的な偽装をすることが重要である。設置作業には手 袋をして、人の臭いや気配が残らないように、わなには素手でさわらない人もいる。
銃器によりイノシシを捕獲する場合は、犬にイノシシを追わせ、ハンターが射止めること が多い。犬をわな設置場所周辺で用いると、餌でわなに誘引されていた個体を追い散らすこ ともあるので、わな設置場所周辺で、犬を使った銃器による捕獲を行う場合は、注意が必要 である。
成果
小豆島町室生の国道436号近くの山林で、仕掛けたくくりわなに体長1・1メートル、
体重50キロのメスのイノシシ1頭がかかった。
くくりわなに掛かったイノシシとくくりわなの図
出典:イノシシの写真(参考):イノシシ情報 2008
http://www.geocities.jp/tatorutan/i̲jyouhou/ij̲2008.html くくりわなの図:中京銃砲火薬店
http://www.chukyo-gun.co.jp/cgi-bin/chukyo-gun/sitemaker.cgi?mode=p age&page=page2&category=1
設置箇所 : 和歌山県和歌山市小豆島
■設置時期 : 2009 年 11 月
b) くくりわなの課題
課題
くくりわなの短所としては、イノシシ以外の野生動物を錯誤捕獲してしまう可能性がある。
特に、西中国山地においては、ツキノワグマを錯誤捕獲してしまう問題が大きくとりあげら れている。ツキノワグマは、くくりわなにかかると無理に引っ張り、脚がなくなってしまう 事例が後を絶たない。
また、イノシシ用のくくりわなに掛かっていたクマに男性が近付いたところ、クマはわな を壊して襲いかかり、顔や頭などを引っかかれたり、かみつかれたりして重傷を負ったとい う事件も過去に起こっている。
滋賀県では、ツキノワグマを希少種として取り扱っており、その生息地域(湖北地域・湖西 地域・大津市葛川地区・志賀町)では、錯誤捕獲の可能性があることから、使用しないのが好 ましいとされている。
イノシシ用のくくりわなに掛かったアカキツネ
出典:イノシシ情報 2008 http://www.geocities.jp/tatorutan/i̲jyouhou/ij̲2008.html
くくり罠にかかった足首を自分で食いちぎって生き延びてきた熊の足
出典:宮崎学のツキノワグマ事件簿 http://tukinowaguma.net/archives/77