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事例研究:パーソナル・コンピューター(PC)産業

ドキュメント内 産業統合化の要因分析と (ページ 47-50)

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は、PC 産業で起こった企業の範囲を変える主要な M&A もしくは事業分離・事業売却を検討 し、そのディールがバリューチェーンのどこで、どのような優位性の構築を意図して行わ れたのかを詳しく検証し、コモディティ化が進んだ状況での有効な事業範囲の決定を考察 する。

(1) 70~80 年代の PC 産業

70 年代~80 年代の PC 産業の動きは、先行研究である Christensen, Fine を参照してい ただきたい(文末の補足)。彼らは、差別化ポテンシャルの高い環境における PC 産業の動 きをバリュー・ネットワークの観点(価値連鎖をモジュールの観点から)から分析してい る。

(2) 90~00 年代の PC 産業

一方、90 年代以降の PC 産業は、1993 年の低価格のコンパック PC の登場により価格競争 が勃発し、すでにモジュール化された部品をアクティビティ・ベース(この場合は製造能 力)で統合化しようとする試みが、台湾メーカーを中心に行われるようになる。これらの EMS やファウンドリと呼ばれるメーカーは、組立からアフターサービスまでを行う企業群

(多くの日本メーカーや、アメリカ・中国の BTO)に安く製品を供給することで規模の経済 を享受し、コスト優位を構築した。さらに、それらの買い手側にとっても、価格競争に打 ち勝つためのコスト優位を与える結果となった。この産業バリューチェーンの構造変化が、

産業のコモディティ化をさらに進展させることになる。これらの動きは、主にバリューチ ェーンのハードウェアの部分で中心に起こった動きである。

一方、ソフトウェアの部分では、インターネットの登場により、Google などの検索ポー タル、ブラウザの重要性が増すことによるいわゆるブラウザ戦争が勃発する。これらの企 業は、製品原価率が低い領域で事業を行うため、利益率(ROIC)が非常に高い値で維持され ている。

49 (3) PC 産業のコモディティ化と成長戦略

図 8-1 PC 関連産業の M&A 件数と事業売却件数

(alacra store M&A Timeline より筆者作成)

図 8-2 PC 関連産業の市場規模(単位:million $)

(COMPUSTAT により筆者作成)

本論文におけるコモディティ化15とは、産業バリューチェーンのターゲットセグメントに 供給される製品が、価格でしか差別化できない状態を指す。

産業がコモディティ化を起こすと、産業バリューチェーン全体でコスト優位に競争優位 を求める動きが起きる。一方で、Christensen らが指摘するオーバー・シューティングが是

15 ここでは、コモディティ化の原因を低価格化の圧力と説明しているが、一般的な見解は「過度のモジュ ール化」と、そのモジュールの低コストを利用した「産業のアウトプットの同質化」である。

0 20 40 60 80 100 120 140

2010 2008 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980

Acquisitions Stakes Divestitures

0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

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正され、適切な差別化をすることによる競争優位を得る動きも起こると考えられる(これ はすでに 4 章、図 4-12 で説明された)。

一般的にコモディティ産業では、内部成長ではなく、外部成長(M&A 等)により事業を拡 大する傾向が強いと考えられる。なぜなら、コモディティ産業では、それぞれの企業が差 別化ポテンシャルを損ない、コスト優位にその競争優位の源泉を求めるため、規模の拡大 を志向する可能性が高くなる。さらに、その競争優位を構築するスピードも重大な問題と なる。コモディティ産業は、製品ライフサイクル仮説に従うと、成熟期を経て衰退期に陥 る可能性が高く、衰退期に移行するにつれ、撤退障壁も高くなる。撤退障壁を恐れる事業 は安値で取引されている場合が多いため、内部成長よりも外部成長のほうが、コストが安 くなると考えられる。さらに、統合によるシナジーの予見可能性が、従来の産業が経験し たケースから、高まっていると考えられ、産業内企業の M&A による統合へのインセンティ ブが高まるとも考えられる。

これらの要因から、コモディティ産業では、競争優位の分布が変化すると、M&A や事業売 却が起こっている可能性が高い(もしくはその効果が大きい)と考えられる。

図 8-1 は 1980 年から 2010 年までの PC 関連産業の M&A と事業売却、株式買付の件数を表 したものである。図から 90 年代の後半から 2001 年の IT バブル崩壊まで 1 つの M&A ブーム があり、その後、リーマン・ショックまでの間に第二の M&A ブームが起きている。しかし、

全体の傾向としては M&A による再編は急速に増加してきており、前述した 1993 年の Compaq の低価格 PC の投入後は増加傾向にあるといえる。

同様に図 8-2 は PC 関連産業の市場規模を表したものであるが、市場規模も M&A の件数と 同様に増加傾向にある。

コモディティ化による PC の低価格化は多くの需要を喚起し、多くの消費者・企業が PC を利用する機会を与えたともいえる。

(4) PC 産業の産業バリューチェーンの導出

本節では、PC 産業の産業バリューチェーンを特定する作業を行う。

産業バリューチェーンの特定は以下の手順で行う。

① 顧客の価値とターゲットセグメントの特定

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