不 信委 任
第二部 中国の CSR
ここまで、中国 のCSR を探求するた めに必要 な分析フレー ムワーク の構築作 業の一環とし て、CSR を資本主義の 多様性や 経営学におけ る制度論 といった 新 制度派経済学 の観点 か ら捉えること で、その 本質が企業と 国家 ・市 民社会との 関係性にある こと、そ して、両者の 間には信 頼やコミュニ ケーショ ンといった 間主観的なプ ロセスが 作用している ことを論 じてきた。ま た、信頼 やコミュニ ケ ー シ ョ ン の 両 概 念 は 互 い に 不 可 分 の 関 係 に あ る だ け で な く 、 企 業 が 取 組 む CSR にとって必要 不可 欠な存在であ り、信頼 はコミュニケ ーション の進展によ って形成され 、高次の 信頼へと移行 していく という 発展型 モデル と して 理解で きることや信 頼が喪失 した場合の影 響の大き さ、さらには 、ストッ ク型とフロ ー型とい う 2 つの信頼 の存在と両信 頼への配 慮の必要性な ども明ら かにした。
したがって 、中国 の CSRを分析する際 には 、信頼とコ ミュニケ ー ションを軸と した分析フレ ームワー クを用いるこ とで、そ の課題や可能 性などを 導出するこ とが可能にな る。総合 的な 考察につ いては後 の 第三部で行 うが、ま ずは、中国 の CSR を国 際 比 較の 手法 を 用 いな が らそ の 展開 状 況 や特 徴 点な ど を明 確 化し ていく必要が あるだろ う。
そこでこの第 二部では 、中国の CSR の形成 と展開を仔細 に検討し ていくが 、 まずは本章で 、中国 に おいて CSR が政 治的 に要請される 要因の一 つとなってい ると考えられ る社会的 ・経済的な背 景事情に ついて論じて いきたい 。そうする ことで、欧米 や日本と は異なる背景 事情を理 解することで 、CSRに 対する国家
(中国党・政 府)の考 え方の基本的 構造が明 らかになる と 考えられ る。
第 8章 中国 の CSRに 対す る 国 家 的要請 の 背景 - 人口動態変 化 分 析-
第 1 節 問題 意 識
世界第 2位の 経済大国 に成長した中 国は、2012年に第 5 世代と 呼 ばれる習近 平国家副主席 へと政権 交代がなされ た。それ まで の胡錦濤 国家主席 ・温家宝首 相に よ る 胡・ 温 政 権が 掲げ た 「 和諧 社 会 の建 設6」と い う政 策 課題 は 、確 か に 、
6 「 調 和 の と れ た 社 会 の 実 現 を 目 指 す 」 と い う 意 味 で あ る 。
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中国社会が抱 える社会 矛盾に対する 若干の抵 抗力にはなっ たであろ うが、政権 終盤となった 段階 でも 、当時の温家 宝首相が 自ら 、官僚の 腐敗、分 配の不公平 など、多 くの問 題が 存 在 してい ること を 認め た(産経 新聞:2011)ように、 社 会矛盾は未だ 厳然とし て存在して お り、その 抜本的な解決 には程遠 いのが実際 である。この 様な状況 下でも中国社 会が崩壊 するまでは至 っていな いことの大 きな理由は、 鄧小平の 改革開放から 現在まで 続く経済成長 によって 、人民の生 活水準が向上 している からであり、 換言すれ ば、経済成長 が鈍化あ るいは悪化 した時こそ、 中国の不 安定化が引き 起こされ ることになる 。すなわ ち、中国の CSR の今後を見通 すた めには、今後の 中国経 済の見通しを 把握する ことも必要 なのである。
では、いか なる手が かりを持って すれば、 中国経済の今 後をより 正確に把握 することが可 能となる のか。周知のと お り、中国は 13 億人を 超え る人口を抱え る人口大国で あり、そ れはすなわち 、人口問 題が経済問題 と極めて 密接な関係 を持つという ことであ る。そこで 本 章では、 現時点におい て公式デ ータとして は最新版とな る、2011 年4 月に中国 政府によ って公表され た「 第 6 回人口セン ス7」のデータを もとに 、人口動態変化 と経済 構造との関連 性を視野 に入れ、習 近平体制下の 中国経済 の見通しを 考 察してい く。
第 2 節 人口 セ ンサ ス にみ られ る 人口 動態 変 化の ポイ ン ト
国連が発表 した「世 界人口推 計 2010年改 訂版」による と、世界 の人口は 2011 年 10 月に 70 億人に達 したものと見 込まれる 。この世界人 口の 約 2 割を占めて いるのが中国 であり、 巨大人口は、 中国を支 える資源であ ると同時 に、食糧や エネルギーの 不足を引 き起こす足枷 となる要 因でもある。
中国国家統 計局は 、2011年 4 月 28日 、2010年 11月に実施した「 第 6 回人口 センサス」の 主要デー タを公表した 。本 節で は、今回公表 されたデ ータを もと に、過去 5 回の人口セ ンサスデータ と適宜比 較することに よって、 人口動態変 化のポイント について 述べていく。
7 中 国 は 、 1953、1964、 1982、 1990、 2000 年 の 過 去 5 回 、 人 口 セ ン サ ス を 実 施 し て い る 。 今 回 は 、 2010 年 11 月 1 日 午 前 零 時 を 基 準 日 時 と し て 、 家 庭 人 数 ・ 居 住 環 境 な ど の 動 向 調 査 が 行 わ れ た 。一 部 で は 、中 国 の 人 口 は 13 億 7 千 万 人 と 報 道 さ れ た が 、そ れ は 大 陸 人 口( 31 省・市・自 治 区 及 び 現 役 軍 人 人 口 )に 台 湾( 約 2、300 万 人 )と 香 港 ・ マ カ オ ( 約 765 万 人 ) を 加 え た も の で あ る 。 本 章 で は 、 大 陸 人 口 を も と に 述 べ る こ と と す る 。
- 164 - 第2 節(1)少子 高齢 化の加速
中国の人口は、1953年の第 1 回人口 センサス 実施時の 約 6 億人から 、90 年代半 ばには倍増と なる12億人を超え 、今回 の調 査では約13億4千万人となった(【 図
表 47】参照)。前 回の 人口センサス(2000年実施)から の 10 年 間で、総人口 は
7 千万人あまり 純増( 出生が約 1 億 3 千万人 、死亡が 約 6 千万人) した。
【図 表 47: 中 国の 総 人口 数の 推 移】
0 2 4 6 8 10 12 14 16
1953 1964 1982 1990 2000 2010
総人口数(億人)
出所:「2010年第六次 全国人口普査 主要数居 広報」を もと に筆者作 成
人口増加の 速度は、2001~2010 年では年 平均 0.5%と、1991~2000 年までの
年 1%か ら半 減 し て い る 。 人口 増 加 が 年 々 緩 や か にな っ て き て い る 現 在 のトレ
ンドが今後も 続けば 、2025 年から 2030年の間には、中国の人 口 は 14 億人台で ピークアウト し、人口 減少期に入る と考えら れる が、 人口 減少に先 駆けて、経 済活動の担い 手である 生産年齢(15~64 歳)人口が、2015年までに は減少し始 める見通しと なってい る 。2011年に策定 され た第 12次 5 か年 計画(2011~2015 年)において 、これま での安価で大 量の労働 力を投入する 発展パタ ーン から、
技術力や生産 性の向上 を伴った「発展方 式の 転換」に 力点が置 かれ た背景には、
こうした人口 動態変化 も一要因とし て作用し たとみられる 。
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年齢層別の 人口構成 の推移(【図表 48】参 照)をみれば 、若年層 (0~14 歳)
の割合が、減 少の一途 であり、少子 化が著し いことがわか る。若年 層の割合が
16.6%にまで減少した 一方で、65 歳以上 は 9%へと増加し た。これ を 60 歳以上
で み れ ば 、13.3%と な り 、 早 晩 、 高 齢 者 層 と 若 年 層 と の 比 率 が 逆 転 す る の は 必 至な状況であ る。さら に、中国人の 定年は、 一般に、男 性 60歳、 女性 55 歳と もいわれるが、社会科 学院の調査結 果によれ ば、退職平均年 齢は 53歳となって おり、実際の 生産年齢 人口は統計上 の数値よ りも少ないと 考えられ る。
【図 表 48: 中 国の 年 齢層 別の 人 口構 成】
0%
20%
40%
60%
80%
100%
1953 1964 1982 1990 2000 2010
年齢層別の人口構成
65
歳以上
15-64