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不良在庫特許を処理、アソシエイトの意識を変革

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産学官連携ジャーナル  Vol.7  No.5  2011

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 関西 TLO の収益構造を改善するために、特許出願内容を再評価した上 で、不良在庫の特許資産全てを処分することを決定した。すなわち関西 TLO が出願人となっている不良在庫特許資産を発明者あるいは発明者の 所属する大学に譲渡することとした。さらに、関西 TLO が出願人となる 特許出願は一切禁止し、提携大学の発明を評価からマーケティング(営業)

まで一貫して行うスタイルに切り替えた。

 発明者や発明者の所属する大学に譲渡するといっても、発明者である大 学の先生に不良在庫特許資産を返却することは決して楽な仕事ではなかっ た。アソシエイト1人あたり、100 件から 150 件を割り振り、1人1人 の発明者の先生に、関西 TLO の現状、経営改革の方針を説明し、不良在 庫特許資産を返却していった。あるアソシエイトは、2時間以上立たされ たまま説教され、あるアソシエイトは「おまえらが特許出願せぇといった ものを返すのか!」と罵声を浴びた。それでも私たちは、関西 TLO の再 生を信じて、来る日も来る日も返却する作業を続けた。その結果、関西 TLO 出願の不良在庫特許はほぼゼロとなり、関西 TLO の収益構造は大幅 に改善した。もっともつらく苦しい時期だった。

◆アソシエイトの意識を変える

 徹底したコスト管理とともに行ったことは、アソシエイトの意識改革で ある。当時の関西 TLO は、技術移転実績が芳しくなかった。日本では技 術移転なんて根付かない、どうせ大学の特許なんか基礎研究的過ぎて企業 は見向きもしない、といった言い訳や負け犬根性が社内に漂っていた。当 時の営業スタイルは「待ちの営業」で、発明内容を企業にメールで送るだ けで、積極的に営業はなされていなかった。ライセンス契約を締結した場 合でも、ライセンス条件が企業側に有利すぎるものや、ほぼゼロに近いラ イセンス金額で締結しているものがほとんどであった。

 最大の問題は、アソシエイトの営業に対する姿勢である。TLO のアソ シエイトは、発明の基本内容を理解し、マーケティング先をターゲティン グした上で、企業に積極的に紹介し、売るのが仕事であるにもかかわらず、

当時のアソシエイトは、「発明や技術の評論家」であった。発明の善し悪 しを自身の知識や経験のみで勝手に評価し、ろくに営業もせずに売れるか 売れないかを判断し、真の企業ニーズもほとんど把握していなかった。

 まず、負け犬根性を打破するために、私たちは「関西 TLO は、必ず復 活する。東大 TLO にできて、関西 TLO ができないわけはない。知的財産 マーケティング(営業)で、必ず日本一になる」と社内で言い続けた。同 時に関西 TLO が成功しているイメージを常に想像させた。アソシエイト も最初は、この取締役は頭がおかしいんとちゃうかと思ったらしいが、半 年や1年も経つと、ほとんどのアソシエイトが関西 TLO の復活を信じる ようになった。

 さらに、TLO の事業は、「ビジネス=商売である」という意識付けを徹 底させた。これまでなされていた安易な安売りを一切禁じた。大学の発明 を基に真剣に事業化に取り組んでくれる企業に、適正な価格でライセンス することを徹底させた。また、「アソシエイトは、売ってなんぼ」である ことを意識させ、発明や技術の評論家的な発言は、厳しく禁じた。アソシ

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エイトは評論家ではなく営業パーソンであることを徹底的に植え付けたの である。特許出願可否を決定する会議では、あなた自身は売る気があるの か、どの企業のどの役員が興味を持っていると言ったのか、もし自分の金 なら特許出願するか、などかなり厳しく議論した。現場にこそニーズがあ ることを理解させ、常に大学の先生を訪問して御用聞きを行うことや、企 業を訪問して、企業のお困りごとや研究開発の動向を聞いてくることを徹 底させた。頭で考えるよりも、足で稼ぐことを重要視し、事務所で座って 仕事をしているところを見付けると叱責(しっせき)した。当初はかなり 違和感を持っていたアソシエイトも、当人や関西 TLO 全体のライセンス 実績が向上するにつれ、納得して動くようになった。今では、そのアソシ エイトも新人アソシエイトに同じように指導してくれている。

◆自前のアソシエイトを採用する

 前号にも記載したが、当時の関西 TLO は自社で営業を行っておらず、

営業の全てを外部アソシエイトと呼ばれる企業 OB の非常勤社員約 20 名 にアウトソーシングをしていた。常勤社員は、外部アソシエイトの管理を するだけで、営業の実務には関わっていなかった。外部アソシエイトは、

非常勤であり、原則1年契約であるため、1、2年、長くても3年程度で 辞めることが多く、また、個人の経験やノウハウに依存しているため、関 西 TLO に営業ノウハウや企業ネットワークが継続的に蓄積されていない 状況であった。ある企業 OB の外部アソシエイトは、営業を行わず、出身 企業にだけ発明を紹介し、その感触が悪ければマーケティングを断念して いた。また、ある外部アソシエイトは、営業活動自体に、モチベーション の高さが感じられず、企業側からの苦情が多く寄せられていた。

 関西 TLO におけるアソシエイトの在り方について、東京大学 TLO の山 本貴史社長に相談したところ、「研究開発、法律知識、営業など、アソシ エイトに必要なスキル全てを兼ね備えた人材は極めて少ない。若手を自社 で正社員として採用し、長期的に育成するしかない」とのアドバイスを受 け、外部アソシエイトを廃止し、若手正社員の採用に踏み切ることにした。

財務基盤がぜい弱な関西 TLO にとっては、かなり厳しい決断であったが、

これ以上、営業を外部アソシエイトにアウトソーシングしていても、関西 TLO の将来はないと判断し、新しく若手正社員の採用を行うこととした。

私たちの目指した新生関西 TLO の姿は、「知的財産マーケティング(営業)

をコアとした大学共同経営型 TLO」である。この方針に基づき、新生関 西 TLO に求められる人物像はおのずと定まった。

 私たちの求めた人物像は、「すぐ動ける!元気!体育会!ストレス耐 性!」の4拍子そろった若手社員で、文系・理系問わないものだった。採 用選考には、毎回予想よりもかなり多くの応募があり、現在まで9名の新 人アソシエイトを採用することができた。これにより、常勤社員の平均年 齢は 67 歳から 34 歳に大幅に下がり、正社員の数は2名から 14 名に大 幅に増加した。これらの新人アソシエイトが、今では中核アソシエイトと なり、現在の関西 TLO を牽引してくれている。

 人事制度や人材育成、新しい営業手法の導入などの改革は、次号でご説 明する。

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