図 1
演奏者に影響を及ぼす影響諸源3. 仮 説
演奏者自身のライフヒストリーが、演奏者の「オリ ジナル音楽資源に忠実に演奏しようとするか否か」
という意識に影響を与える、と仮説を立てた。具体 的には、楽器歴などの音楽に関する基礎的条件ご との違いによって、被調査者の演奏に対する意識 や行動が変化することを探っていった。これらの相 関関係を見ていくことで、実際に演奏する際に、影 響諸源の何に影響を受けるのかを考察した。
4 .
調 査 方 法3. 「仮説」で示した内容を明らかにするために、
グループインタビュー調査を実施した。雪だるま式 サンプリングを用い、7バンド、計 25名に対して実 際に調査を行った。また、補足的にフォローアップ インタビューで個人へも調査を行うことや、参与観 察で実際のライプ演奏の様子を調査することで、精 緻化をはかった。
5 調 査 結 果
今回の調査から、以下の点が明らかになった。
①オリジナル音楽資源を曲の演奏という形で再現 する場合において、全ての被調査者が楽譜より も音源を重視していたが、2 つのケースにわかれ た。1 つは、「初めに楽譜で構成を捉えてから音 源を聞き込んでいく」ケースで、ピアノ経験者が
多くみられた。もう 1つは、「最初に音源を聞き込 んで、分からないところのみ楽譜を参照する」ケ ースであった。
②「オリジナル音楽資源に忠実か否か」という点で も、2 つのケースにわかれた。 1 つは、「忠実にし ようとするができない」のケースで、担当楽器経 験歴が5年以内で、ノンコピー(自分たちで作詞 作曲した曲を演奏する)バンドを経験したことが ない、あるいは経験したいと考えていない者(以 下、「ノンコピーバンド志向無し」とする)であった。
こちらのケースでは、担当楽器経験歴の浅さも 加わって、鑑賞者は意識されず、影響源とはな らないことが分かった。もう 1 つは、「そもそも忠 実にしようとしない」というケースで、こちらは担 当楽器経験歴には関係なく、ノンコピーバンドを 経験したことがある、あるいは経験したいと考え ている者(以下、「ノンコピーバンド志向有り」と する)であった。こちらのケースではほとんどの 者が鑑賞者を意識していた。
6. まとめと考察
今回の調査では、軽音楽サークルにおいては、
音源が重視されているが、あくまでも雰囲気や流れ、
ニュアンスを掴むためにのみ使用され、バンド練習 を通して曲をアレンジし、オリジナル音楽資源とは また違うものを作り上げていくことがわかった。その 際、演奏者に影響を与えている要因は、主に 2 つ あげられた。 1 つ目は、コピーする際、ピアノ経験者 ほど楽譜を見た上で音源を聞き込むのに対し、そう でない者は、音源を聞き込み、それだけでは分か らない部分を楽譜によって補足するという傾向の差 があった。2つ目は、ノンコピーバンド志向有りの者 ほど、鑑賞者の反応を意識し、また、被調査者自 身が鑑賞者の立場のときに重視するか否かにかか わらず、演奏者であるときには総じて歌詞を重視す る傾向にあった。
本調査では、次のようなことがいえる。ノンコピー バンド志向無しには担当楽器経験歴5年 以 内 の 者 しかいないのに比べ、ノンコピーバンド志向有りに は 担 当 楽 器 経 験 歴 が 5 年以内の者と 5 年 以 上 の 者 が混在している。このことより、担当楽器経験歴が 長くなるに従って、他者を意識し、その反応を想定 して振る舞うようになる、つまり熟練するに従ってノ ンコピーバンド志向になるという結果が得られる。し
かし、ノンコピーバンド志向有りの者にも無しの者 にも、ともに担当楽器歴 5 年以内の者が存在して いたが、この志向の差に何が影閻しているのかは 見て取ることができない。
今回の調査においては、個人のバックグラウンド やライフヒストリーからの影響がほとんど現れなかっ たため、仮説は強く支持されなかったといえる。し かし、個人に対するインタビューをより詳細に行うこ とによって、別の視座が生まれる可能性はある。例 えば、今回はアマチュアを調査対象としたが、軽音 楽サークルには、音楽を専門的に学んでいる人や、
本格的にノンコピーバンドとして活動している人な どがいる。また、軽音楽以外の音楽のジャン]レも存 在している。そのような演奏者にも調査を行い、比 較することによって、音楽におけるコミュニケーショ ンの実態がより明確になるだろう。
今回の調査において演奏に影響をあたえるいく つかのものを知ることができた。しかし、自分以外 の「仲間」や「鑑賞者」といった、予想された他者の 期待をどう取り入れるか、また、他者の期待のなか で相互行為、つまり演奏していくことに対する意識 についての質問が欠けていた。
以上のような上述した反省を活かし、間題点を克 服することで、コミュニケーション論や音楽学、およ びその交わる学際領域において研究を進めていく ための一助となりえるのではないかと考える。
文 献
[l ] 大串健吾.小特集,音によるコミュニケーショ ン:その進化と個体発達:音楽とコミュニケー ション.日本音響学会誌. 1996, vol . 52, no.
7, p. 558‑ 562.
[2] 土屋賢二.猫とロボットとモーツァルト哲学論 集 勁 草 書 房 , 1998, 240p.
[3] 高山忠雄.安梅勅江.グループインタビュー 法の理論と実際:質的研究による情報把握の 方 法 川 島 書 店 , 1998, l90p.
[4] K ・F・パンチ.社会調査入門.川合隆男訳 慶應義塾大学出版会, 2005, 447p.
[5] 船津衛.コミュニケーション・入門:心の中から インターネットまで有斐閣, 1996, 227 p, ,
(有斐閣アルマ).
[6] 佐 野 清 彦 音 の 文 化 誌 : 東 西 比 較 文 化 考 増 補,雄山閣, 1998, 262p.
コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 相 手 に 着 目 し た 異 種 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル 統 合 イ ン タ フ ェ ー ス *
阿 部 裕 介 ( 学 籍 番 号 200621304) 研 究 指 導 員 : 井 上 智 雄 副 研 究 指 導 員 : 辻 慶 太
1
は じ め にP C を 利 用 し た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル は 数 多 く 存 在 す る 。 例 え ば 、 電 子 メ ー ル や チ ャ ッ ト、 IM( I nst ant Mes s enger ) 、 電 子 掲 示 板 な ど が あ り 、 ま た 、 プ ロ グ や 日 記 サ イ ト の よ う に 、 返 事 は 求 め ず 一 方 的 に 情 報 を 伝 え る よ う な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン も 、 新 た な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 手 段 と し て 一 般 の 人 々 に 浸 透 し て き て い る 。 こ の よ う な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル の 選 択 肢 の 増 加 は 、 人 々 に 選 択 の 自 由 と 豊 か さ を も た ら す 一 方で、これまで以上に知識を要求する。つまり、
適 切 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル を 選 ぶ た め の 知 識 と 、 使 い こ な す た め の 知 識 の 両 方 が 求 め ら れる。その負担を軽減するために、本研究では、
各 種 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル に 共 通 し た 機 能 を 統 合 し 、 ひ と つ の イ ン タ フ ェ ー ス か ら 利 用 可 能にすることを提案する。
2
関連動向
コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル の 仕 様 や イ ン タ フ ェ ー ス を 統 合 す る 動 き は 、 既 に い く つ か 存 在 し て い る 。 例 え ば 、 通 信 基 盤 を 相 互 接 続 す る こ と で種類の違う I M同 士 で も 通 信 で き る よ う に し たSI MPL E[ l ]や 、 文 書 に メ タ デ ー タ を 付 け る こ と で プ ロ グ ラ ム が 自 動 的 に 文 章 概 要 を 収 集 し 表 示 で き る よ う に し たRSS[ 2]、また様々なコミュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル の 特 徴 を 併 せ 持 つ 新 た な ツ ー ル を 開 発 す る 動 き も あ る[3]。
し か し こ れ ら の 問 題 点 と し て 、 同 じ 種 類 の ツ ー ル 同 士 、 あ る い は 制 作 元 が 同 じ ツ ー ル 同 士 で し か 統 合 さ れ て い な か っ た り 、 新 た な ツ ー ル を
*" D evel opment of Communi cat or ‑ CeQt r i c Vi sual ,,' 廷" ' Interf ace I nt egrat i ng Mul t i pl e Communi cat i on Tool s"
by Yuusuke A B E
作 り 出 す こ と で 、 更 な る ツ ー ル の 乱 立 を 招 く こ と が あ げ ら れ る 。 そ の た め 、 依 然 統 合 は 進 ん で
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ヽなし。3. 提 案 シ ス テ ム 3. 1 概 要
コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 行 う 際 に 常 に 重 要 な こ とは、「誰」とどんな「内容」のコミュニケーシ ョ ン を 行 っ た か で あ る 。 こ の 2つ の 項 目 は ど の ツ ー ル で 行 っ た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に も 共 通 に 存在する要素となる。そこで本研究では、「誰」
を表す識別子の統一化と、「内容」を表示するイ ンタフェースの統合を目指した。
本 研 究 で は 、 統 合 の 対 象 と し て 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 履 歴 に 着 目 し た 。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル が 蓄 積 す る 履 歴 は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル ご と に 独 自 の 形 式 で 保 管 さ れ て い る 。 こ れ ら を 、 統 一 化 し た 識 別 子 で 判 別 し 、 統 合 的 な インタフェースで表示するシステムを開発した。
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図1. システムの構成図
本 シ ス テ ム は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 履 歴 を 収 集するためのクロ・ーラと、履歴を保存するため の デ ー タ ベ ー ス 、 そ し て 履 歴 を 閲 覧 す る た め の
ビ ュ ー ア か ら な る ( 図 I.)。
ク ロ ー ラ は 、 ク ロ ー リ ン グ エ ン ジ ン と 各 種 プ ラ グ イ ン で 構 成 さ れ 、 プ ラ グ イ ン を 追 加 す る こ と で 様 々 な ツ ー ル に 柔 軟 に 対 応 す る 。 ク ロ ー リ ン グ エ ン ジ ン は 、 ウ イ ザ ー ド 形 式 で プ ラ グ イ ン ご と の 画 面 を 順 に 表 示 し 、 そ こ で 集 め ら れ た 履 歴 を デ ー タ ベ ー ス に 登 録 す る 。 本 研 究 で は プ ラ グインとして、 Wi n d o ws L i v e Mes s eng er [ 4]の会 話履歴の他、 mi xi [ 5]で 書 か れ た 日 記 と 、 ブ ロ グ などのR S Sを 著 者 か ら 閲 覧 者 全 員 に 発 せ ら れ た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 履 歴 と み な し て 収 集 す る プ ログラムを開発した。
デ ー タ ベ ー ス に は SQL i t e[ 6]を用いた。そのた め 、 本 シ ス テ ム で 収 集 し た 履 歴 情 報 は 全 て 、 単 ーのファイルに保存される特徴を持つ。
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図2. ビューア:コミュニケーション履歴
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図3. ビューア:プロフィール
ビ ュ ー ア は 、 デ ー タ ベ ー ス に 保 存 さ れ た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 履 歴 を 管 理 、 閲 覧 す る た め の 様 々 な 機 能 を 実 装 し て い る 。 履 歴 は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 相 手 ご と に 分 類 し て 表 示 す る ( 囮 2. )。 ま た 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 履 歴 は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 行 っ た 相 手 の 情 報 を 多 く 含 ん で い
る。そこで本システムに、知人とのコミュニケ ーション履歴を分析する機能や、知人に関する 知識を記録する機能を付け加えることで、知人 に関する情報を総合的に管理できるシステムへ
と発展させた(図3.)。
3 . 3
開 発開発には反復型開発の手法を取り入れ、シス テム利用者に対するインタビュー調査を頻繁に 行い、その都度意見を反映しながら開発した。
利用者からは、履歴情報の閲覧.管理を便利に するための多くの意見を得ることができた。
4
まとめ
本研究で開発したシステムにより、従来なら ばコミュニケーション履歴を閲覧する際に、コ ミュニケーション時に利用していたツールを起 動し、ツールごとの識別子と、ツール固有のイ ンタフェースを用いていたのに対し、本システ ムを用いることで、ツールの違いを意識するこ となく、ひとつのインタフェースから履歴を閲 覧することが可能となっただけでなく、コミュ ニケーション相手に関する様々な情報の管理が 可能となった。
今後の課題は、対応するコミュニケーション ツールを増やすことと、より広範囲の知人情報 を扱えるようにすることである。また、提案シ ステムのより詳細なアンケート調査と、具体的 な評価実験も行いたい。
文 献
[ l ] " S l MP L E Wor ki ng Gr oup, " S I MPL E WG" " , ht t p: //www. i et f . org/ht ml . chart ers/si mpl e‑ chart er. ht ml
(参照 2008‑ 01‑ 07) [ 2] " RS S Advi s or y Boar d" ,
ht t p: / / www. rssboard. org/ (参照 2008‑ 01‑ 07) [ 3] 永田周一,安村通晃. "Enzi n: 情 報 の 公 開 範 囲 を
手軽に変更できるコミュニケーションツール" . WI S S 2005. ソフトウェア科学会. 2005, pp. Ill ‑ 116 [4] " W i ndows Li ve メッセンジャー",
ht t p: //messenger. I i ve. j p/, (参照 2008‑ 01‑ 07) [ 5] " mi xi " , http: //mi xi . j p/, ( 参照 2008‑ 01‑ 07) [ 6] " SQLi t e ho me page", ht t p: //www. sql i t e. org/.
(参照 2008‑ 01‑ 07)