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法政研究 第15巻 2・

304号

(2011年)

七 等 官 権 判 司 事   掌 判 司 事 二同 餘シ 四 司 准 之 次 に︑ 第 二 の論 点 移に ろ う

︒ こ こ で注 目 す る の は︑ 民 部 官 職 制 にお い て聴 訟 司 の所 轄 事 項 が

﹁府 藩 県 二於 テ土 地 人 民 之 儀 二付 裁 判 難シ キ 訴 訟

﹂ と さ れ て い る点 であ る︒ す で に見 た よ う に︑ 明 治 二 年 四 月 の民 部 官 設 置 当 初 は

︑ 府﹁ 県

﹂ の難 決 事 件 を 所 管 す る と さ れ て い た

︒ と こ ろ が 同 年 六 月 の民 部 官 職 制 は 府﹁ 藩 県

﹂ の難 決 事 件 を 聴 断 す る と 定 め た

︒ 本 稿 で は

︑ こ の よ う な 字 句 変 化 の意 味 を 次 の よ う に 考 え おて き た い︒ 聴 訟 司 の設 置 は

︑ 同 年 六 月 一七 日 に聴 許 さ れ た 版 籍 奉 還

︵封 建 制 度 の形 式 的 廃 棄

︶ 連に 動 し て い た の で は な いか

︒ つま り

︑ 聴 訟 司 の設 置 版は 籍 奉 還 に先 取 り 的 に対 応 し︑ 従 来 府 県 に し か 及 ん で い な か たっ 維 新 政 府 裁の 判 権 を 藩 を も 含 め た 日本 全 国 に拡 大 す る と うい 意 図 のも と 遂に 行 さ れ た の では な い だ ろ う か

︒ さ ら に︑ こ のよ う な裁 判 権 の地 理 的 範 囲 の拡 大 だ け なで く

︑ 事 件 管 轄 の問 題 が 改 め て整 理 さ れ た こ と にも 注 意 す る 必 要 が あ る︒ こ こ で は 民 部 官 職 制 と 同 日 に制 定 さ れ た 諸 法 令 を 取 り 上 げ よ う

① 府 県 裁 判 ハ旧 二働 り其 難 事 ハ民 部 官 二稟 候 セ シ ム

︵民 部 官

︻五

〇 四︼

② 府 藩 県 支 配 中 ヨリ 民 部 官 二出 訴 ノ者 ハ訴 状 二府 藩 県 ノ印 ヲ押 捺 セ シ ム

︵民 部 官 五︻

〇 六

③ 府 藩 県 所 轄 外 跨二 訴ル 訟 ハ添 翰 シ テ民 部 官 二出 訴 セ シ ム

︵民 部 官 五︻

〇 七

‑36‑―

こ の う ち

① は︑ 府 県 が 所 轄 す る 山﹁ 林 田 畑 質 地 貸 金 銀 出 入 等

﹂ の事 件 に つい て︑

﹁永 世 ノ御 制 法 御 確 定

﹂ ま で旧 法 依に る と い う 原 則 を 示 す と と も に︑ 法旧 の改 正 が 必 要 な場 合 ま た は難 決 事 件 は

︵府 県 か

︶ら 民 部 官 伺に い出 る こと を 指 示 し た

︒ 次 に② は︑ 府 藩 県 支 配 の者 が 民 部 官 へ出 訴 す る場 合 に は そ の府 藩 県 印 章 の押 捺 を 義 務 づ け る と うい 手 続 規 定 を 定 め た

︒ さ ら に③ は

︑ 他 の府 藩 県 に ま た が る 公 事 出 入

︵府 藩 県 交 渉 事 件

︶ は府 藩 県 の添 翰 を 付 し て民 部 官 差に し 出 す こと を 命 じ る も の であ たっ

︒ これ ら の規 定 は︑ 従 前 の会 計 官 のも と で の処 理 手 続 を 踏 ま え た う え で︑ 会 計 官 に代 わ り新 た に民 部 官 が そ れ ら の事 件 処 理 を 担 う こと を 明 確 に宣 言 す る も の で あ たっ と いえ よ う

︒ 一︱

五   民 部 省 の聴 訟 機 関 明

治 二 年

︵一 八 六 八

︶ 六 月 一七 日 の版 籍 奉 還 に よ り 各 藩 に知 藩 事 が 置 か れ

︑ 同 年 七 月 八 職日 員 令 の 制 定 に よ り 太 政 官 制 は 二 官 六 省 制 改に め ら れ た︒ これ にと も な い民 部 官 と 会 計 官 は 廃 止 さ れ

︑ 新 た に 民 部 省 と 大 蔵 省 が 設 置 さ れ た

︒ そ の結 果

︑ 中 央 政 府 の聴 訟 事 務 処 理 体 制 は ど のよ う に変 化 し た のか

︒ そ れ が 本 節 の検 討 課 題 であ る

︒ な お

︑ 前 節 で述 べ た よ う に︑ 会 計 官 は︱

︱ 民 部 官 設 置 後 も

︱ 一貫 し て租 税 に 関 す る 訴 願 を 処 理 し

明治初年 における聴訟事務―民部官・民部省を中心 に一

‑37‑

法政研究第15巻

20304号

(2011年)

て い た と 思 わ れ る︒ そ れ ゆ え

︑ 新 た に設 置 さ れ た大 蔵 省 も 同 様 の事 項 を 所 管 し て いた 可 能 性 が あ る が

︑ 残 念 な が ら︑ 現 時 点 で は そ れ を 裏 付 け る 史 料 を 見 出 し て いな い︒ 今 後 課の 題 と し た い︒ 一︵

︶ 民 部 省 聴 訟 掛 あ 職 員 令 に よ れ ば

︑ 民 部 省 の管 轄 事 項 は

﹁総 判 戸 籍

︒ 租 税

︒ 駅 逓

︒ 鉱 山

︒ 済 貧

︒ 養 老 等 事

﹂ と さ れ

︱ 民 部 官 の場 合 と同 様 聴に 訟 事 務 は 明 記 さ れ て い な い︱

︑ 地 理

・土 木

・駅 逓 の三 司 が 設 置 さ れ た

︒ 聴 訟 事 務 が 民 部 省 所 管 であ る こと を 明 確 示に し た のは

︑ 明 治 二 年

︵一 八 六 九

︶ 七 月 二 七 日民 部 省 規 則 あで たっ

︒ そ 第の 六 項 は 次 のよ う に 規 定 す る︒ 一府 藩 県 二於 テ断 難シ キ 訟 ハ審 二其 事 実 ヲ純 シ能 ク 其 情 状 ヲ吐 露 セ シ メ宅 モ奎 蔽 冤 柾 ナ キ 様 公 平 二裁 断 ス可 キ 事 な お︑ 民 部 省 規 則 は 府 藩 県 難 決 事 件 を 所 管 す る こと だ け を 規 定 し て い る が

︑ 実 際 府は 藩 県 交 渉 事 件 な ど も 含 ん で い た と 考 え て よ いだ ろ う

︒ そ れ で は︑ 民 部 省 は ど のよ う な 組 織 体 制 聴で 訟 事 件 を 処 理 し た の だ ろ う か

︒ こ の点 に つい て︑

﹃太 政 類 典

﹄ は次 の よ う に述 べ て い る︒ 七 月 八 日民 部 官 ヲ廃 民シ 部 省 ヲ建 ツ ル ニ当 テ ハ別 二司 ヲ設 ケ ス然 ト モ其 事 務 ハ七 月 廿 七 日定 ム ル

‑38‑

所 ノ民 部 省 規 則 第 六 項 二之 ヲ掲 記 ス是 二至 リ テ復 夕聴 訟 掛 ヲ設 ク つま り

︑ 民 部 省 規 則 の制 定 と と も に聴 訟 掛 が 設 置 さ れ た と いう の であ る︒ こ の聴 訟 掛 にお け る 実 務 状 況 を 具 体 的 に知 る こ と が でき る史 料 は

︑ 管 見 の限 り で︑ わ ず か に明 治 二 年 七 月 二七 日

﹁白 洲 聴 訟 定 則 議 案

﹂ が あ る 程 度 であ る

︒ 以 下

︑ そ の全 文 を 引 用 す る︒ 白 洲 聴 訟 定 則 議 案 一 大 録 少 録 之 内 壱 人 ツ 月ヽ 当 番 受 持 之 事 但 当 番 之 身 者 新 訴 受 不 申 候 事 一毎 日吟 味 凡 十 回 ヲ限 と す へし 但 論 集 掛 二 人 呼 出 し 受 持 之 事 一白 洲 聴 訟 之 定 額 相 定 置 候 而 其 掛 よ り達 掛 り へ申 入 れ 達 掛 よ り定 額 を 照 し 処 置 可 致 事 但 駈 込 訴 類 者 定 額 之 外 た る へき 事 附 駈 込 訴 た り と も 事 之 緩 急 二従 ひ呼 出 し 之 差 日 ハ事 宜 二よ る へき 事 一訴 答 人 呼 出 候 節 者 右 一件 書 類 呼 出 之 営 日之 前 日掛 り 之 大 録 よ り少 録 江 相 渡 可 申 事 附 民 部 少 丞 初 席 も 右 二準 し 一件 書 類 少 丞 江 可 相 渡 事 一聴 訟 掛 り 之 者 病 気 不 参 之 節 営 日呼 出 之 書 類 取 下 ケ居 候 ハ ヽ無 失 念 司 中 相 掛 り之 者 江 差 出 候 儀 肝

明治初年 における聴訟事務―民部官・民部省を中心 に一

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法政研究第15巻

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(2011年)

要 之 事 一大 録 少 録 総 而 御 用 談 向 発 意 之 方 よ り出 向 相 談 い た し 互 二往 来 い た し 候 事 七 月 念 七 案 こ の史 料 を 読 む 前 提 と し て︑ 当 時 の民 部 省 の職 階 を 確 認 す る 必 要 が あ る だ ろ う

︒ 当 時

︑ 民 部 省 本 局 は

︽卿

︱ 大 輔

︱ 少 輔

︱ 大 丞

︱ 権 大 丞

︱ 少 丞

︱ 権 少 丞

︱ 大 録

︱ 少 録

︾ に よ てっ 組 織 さ れ

︑ 司 は

︽正

︱ 権 正

︱ 大 佑

︱ 権 大 佑

︱ 少 佑

︾ と いう 構 成 を と てっ い た︒ ま た︑ 司 属に さ な い掛 は

︽大 佑

︱ 少 佑

︾ に よ っ て組 織 さ れ て い た︒ 明 治 二年 八 月 二

〇 日以 降 に つい て い え ば

︑ 民 部 省 本 局 の大 丞

︵正 五 位

︶ 以 上 勅は 任 官

︑ 権 大 丞

︵従 五 位

︶ か ら 少 丞

︵正 六 位

︶︑ 権 少 丞

︵従 六 位

︶ ま で は奏 任 官

︑ そ し て大 録

︵正 七 位

︶ 以 下 は判 任 官 であ たっ

︒ 他 方

︑ 司 の場 合

︑ 正

︵正 六 位

︶ と 権 正

︵従 六 位

︶ が 奏 任 官

︑ 大 佑

︵正 七 位

︶ 以 下 が 判 任 官 あで たっ

︒ 本 局 の大 録

・少 録 と 掛 を 組 織 す る 大 佑

・少 佑 と は職 階 上 同 格 であ たっ

︒ 次 に︑ 史 料 白﹁ 洲 聴 訟 定 則 議 案

﹂ の内 容 を 確 認 し よ う

︒ 聴 訟 事 務 に つい て は︑ 大 録 と 少 録 が 二 人 一 組 月で 当 番 に な り︑ 事 件 処 理 を 担 当 す る︒ た だ し

︑ 月 当 番 は新 事 件 を 受 任 す る こと は でき な い

︵第 一 条

︶︒   一日 に行 う べき 吟 味 の件 数 は 一〇 口 を 限 り と す る

︵第 二 条

︶︒ 白 洲 聴で 訟 事 務 を 処 理 す る 件 数 は あ ら か じ め

﹁其 掛

︵聴 訟 掛 か

︶ で

﹁定 額

﹂ を 定 め

﹁達 掛

﹂ に伝 達 す る

︒ 達 掛 は そ の定 額 に従 てっ 処 置 す る︒ た だ し

︑ 駈 込 訴 の類 定は 額 に含 め な い 第︵ 三 条

︶︒ 訴 答 人 を 呼 び 出 す 節 は︑ 呼 出 日 の前 日 に

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