(註)藤 原 義 一 『日本 住 宅 史 』(弘文 堂 書 房 、1943年 、13、五 箇 山相 倉)よ り作 成 。 土 台 以 外 の 部 材 名 称 、寸 法 は筆 者 追加 記 入 。
[写真2‑9]土 台 の 上 に 立 つ ネ ブ キ
(註)合 掌造 り民家 園 内復 元住 居(岐 阜 県 白川村)
一 見、 ネ ブ キ にみ え る これ らの建 物 は、 ネ ブ キ とい う形 式 に お い て は古 い 架 構 方 式 を示 して い る が 、 土 台 部 分 で は か な り新 しい 架構 方 式 を採 用 して い る の で あ る 。 そ れ は 土 台 を4周 に ま わす とい う手 法 で あ る 。 い ま まで に再 三述 べ て き た よ うに 、 ネ ブ キ の サ ス 尻 は も と も と地 中 に差 し込 ま れ た掘 立 て式 で あ った 。 これ が 第1段 階 で あ る。次 の 第2段 階 は 、石 場 建 て とい わ れ る もの で 、 玉 石(自 然 石)の 上 にサ ス 尻 を載 せ る 方 法 で あ る 。 さ ら に次 の 第3段 階 と して は、 地 表 にヂ フ ク
(地覆)と い わ れ る土 台 を直 接 置 い て 、 そ こヘ サ ス尻 を載 せ る手 法 で あ る。 事 例 と した ネ ブ キ の 土 台 部 分 は 、さ ら にそ の 次 の 第4段 階 に相 当 す る玉 石 の上 に土 台 を渡 した 手 法 で あ る[図2‑25]。
以 上 の よ う に、 こ の事 例 の 土 台 部 分 は 第4段 階 に相 当 す る新 しい 手 法 で あ る が 、 よ り厳 密 にい え ば玉 石 を 一 定 間隔(1.0間 程 度)に 置 く手 法 と玉 石 を相 接 して 連 続 的 に 並 べ る手 法(布 基 礎 に 近 い 手 法)が あ る。 しか し、 い ず れ に して も土 台 は 玉 石 に よっ て 地 表 か ら離 れ 、 上 に持 ち 上 げ ら れ て い る 。 す な わ ち 、 あ ま り目立 た な い が 、 こ こ に は確 実 に タ チ アゲ の 手 法 が 適 用 され て い るの で あ る。 とい う こ とは 、 す で に完 了 した ヤ グ ラ上 の ネ ブ キ(ク ズ ヤ)の 手 法 が 、 ネ ブ キ とい う古 い 形 式 に逆 に 流 入 して い る の で あ る[写 真2‑10]。
[図2‑25]ネ ブキ にお ける サ ス 尻処 理法 の発 展 過 程
(2)石 場 建 て 式(3)ヂ フ ク ・土 台 式(4)玉 石 ・土 台 (1)掘 立 式
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[写 真2‑10]土 台 の 上 に立 つ ネ ブ キの 内 部 構 造
(註)[写 真2‑9]の 内 部 、 上;ガ ッ シ ョ ウ バ リ 、 下:土 台 とサ ス の 接 合 部 を示 す 。
この 逆 流 現 象 は、そ の 逆 流 の せ い で サ ス の タチ ア ゲ状 況 を明 らか に し て くれ る 。そ の た め に は 、 玉石 を柱 、 土 台 を桁 と読 み 替 えれ ば よい の で あ る。4周 に ま わ る土 台 は ヂ ゲ タ(地 桁)で あ り、
タテ(桁 行)方 向 の 土 台 は タテ 桁 、 ヨ コ(梁 行)方 向 の 土 台 は ヨ コ桁 で あ る。 した が っ て 、 こ の 種 の ネ ブ キ は軸 組 部 分 は な い も の の 、 タチ アゲ と同 じ な の で あ る。 そ れ ゆ え、 こ の種 の事 例 は ワ
ク ノ ウチ ヅ ク リの 桁 、梁 、 サ ス の 関係 をみ る の に好 都 合 な事 例 と もな り う るの で あ る。
間 口3.0間 、 奥 行3.0間 の 正 方 形 平 面 は 、 ネ ブ キ の 屋 根 の傾 斜 を考 え る と実 質 的(立 脚 可 動 な) 空 間 は2.0間 ×2.0間 程 度 に な り、 ワ ク ノ ウ チ ヅ ク リの ワ ク ノ ウチ(オ エ と呼 ば れ る ヒロ マ)部 分 の規 模 に相 当 す るが 、 い ま は構 法 上 の 問 題 に 限 っ て み る と、 タ テ方 向 の 土 台 と ヨ コ方 向 の土 台 の
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関係 は 、 桁 と梁 の 関係 に相 当 す る。 タ テ方 向 に桁 を渡 し、 そ の上 に 梁 を渡 した の と同 じで あ る。
こ の場 合 の 梁(妻 梁)は 、 ウス バ リ(薄 梁)、サ ス ブ ミ(扱 首 踏 み)、ゲ タ(桁 を 下 駄 に な ぞ ら え た も の)、オ オ ケ タ(大 桁)、ヨ コ ケ タ(横 桁)な ど と さ ま ざ ま に呼 ば れ て い るが 、 タテ 方 向 の桁(柱 の上 に渡 る)に 対 して梁 に こ の よ う に多 様 な 部材 呼 称 が 存 在 す る の は 、床 丸 太 以 来 の 経 緯 を示 し て い る とお も え る。 サ ス を如何 に受 け 、桁 を如何 に繋 ぎ止 め る か の 創 意 工 夫 の 跡 が う かが え る の で あ る 。
と くに 梁 と桁 の 両 呼 称 が 共 存 して い る の が 注 目 さ れ る 。建 物 が 小 規 模 で4周 に桁 を廻 わ す だ け の場 合 は ケ タ呼 称 で よい が 、 建 物 の規 模 が 大 き くな り、 ヨ コ(渠 行)方 向 に梁 を渡 す 必 要 が 生 じ る よ う に な る とバ リ呼 称 が 必 要 に な る。[図2‑24]の 妻 側 の土 台 は 、 呼 称 と して は オ オ ケ タ ま た は ヨコ ケ タ に相 当 す る が 、 タ テ方 向 の 土 台 の 上 に渡 っ て お り、 力 学 的 に は梁 で あ る。 した が っ て、 こ の 部 分 の サ ス はバ リ当 た り式 で 、他 はケ タ 当 た り式 と な る。 サ ス 尻 の処 理 法 もバ リ当 た り 式(古 式)と ケ タ当 た り式(新 式)の 両 様 が併 存 す る。 な お 、寸 法 関 係 と して サ ス が1,0間 間 隔 に組 ま れ て い るの も注 目 され る。
6.ウ ダ ツ 構 法 の 系 譜
6‑1セ ン ダチ の 架 構 方 式
前 節 で は ヤ グ ラ とサ ス の 複 合 形 態 に つ い て み た。 そ れ は 後 代 に は ワ ク ノ ウチ ヅ ク リ とい わ れ る 構 法 と して伝 承 され 、 加 賀 農 村 住 居 の 主 流 を 占 め る構 法 と な る の で あ る が 、 こ こ に い ま一 つ の構 法 、 す な わ ち ウ ダ ッ構 法 につ い て ふ れ て お か ね ば な らな い 。 そ の事 例 と して 、 まず セ ン ダチ(先 建 ち)と 呼 ば れ る構 法 をみ て お きた い が 、 この 構 法 に つ い て は 、本 論 第1巻 第3章3‑2「 柱 建 て の ネ ブ キ:セ ンダ チ」 の と こ ろ で 述 べ て い る の で 要 点 の み を記 す[図2‑26]。
セ ン ダ チ の 最 大 の 特 色 は、棟 持 柱 を もつ ウ ダ ツ構 法 で あ る こ とで あ る。建 築 工 程 か らい っ て も、
まず 最 初 に2本 の マ タバ シ ラ を建 て 、 そ の 上 に ム ナ ギ を渡 す 構 法 は、 日本 書 紀 にみ え た ワ カ ム ロ の 構 法 と同 じで あ る。 次 に コ マ タ(小 股)と 呼 ば れ る 短 柱 を掘 立 て と し、 そ の 上 に タテ ケ タ(縦 桁)を 渡 し、 タ テケ タの 上 に ヨ コケ タ(横 桁)を 渡 して タ テ ケ タ を繋 ぎ止 め る。 最 後 に ガ ッシ ョ
ウ(合 掌)と い わ れ る斜 材 を ヨ コケ タか ら ム ナ ギ に向 っ て掛 け る。 ガ ッ シ ョウ は、 実 質 的 に は タ ル キ で あ る 。
以 上 の よ うな 架 構 手 法 に よ っ て もわ か る よ うに 、 セ ンダ チ の 架 構 手 法 は ウ ダ ッ構 法(棟 持 柱 と ム ナ ギ)と ヤ グ ラ構 法(コ マ タ と タテ ケ タ 、 ヨ コケ タ)の 複 合 構 法 で あ る。 こ の場 合 、 屋 根 面 を 受 け る斜 材 は 、 上 記 の よ う に ガ ッシ ョウ(サ ス の 別 名)と い っ て い る が 、 上 端 は ム ナ ギ に掛 け て い るの で タ ル キ 掛 け で あ る。 下 端 は 地 上 に置 い て い る の で サ ス 尻 と変 らず 、 厳 密 に い え ば本 論 で い う タ ル キ ・サ ス で あ る 。
[図2‑26]棟 持 柱 を もつ セ ンダ チ 構法
屋 根 勾 配 を45°以 下 の 緩 勾 配 にす れ ば、 斜 材 は タ テ ケ タ に載 り完 全 な タ ル キ に な る 。 ウ ダ ッ構 法 が そ の 特 色 を発 揮 す る の は 、 こ の 段 階 の 構 法 で あ り、 そ の事 例 と して炭 焼 小 屋 を あ げ る[写 真
ウ ダツ構法 によ る炭 焼小屋
コ 贈
障
(註)檀 風 苑 内保 存 物件(金 沢 市 湯 湧 町)
2‑1ユ]。 この 炭 焼 小 屋 は 、棟 持 柱 に棟 木 を渡 し、 小 屋 側 面 に高 さ約1.5mの コマ タ を建 て桁 を渡 す 。棟 木 と桁 の 間 に タ ル キ を掛 け、 ヤ ナ カ を渡 して カ ヤ を葺 く。 この 場 合 の タル キ の勾 配(屋 根 の勾 配)は 約45°で矩 勾 配 で あ る 。
ネ ブ キ で は 、 タル キ 下 端 は地 表 に達 す る が 、 こ の 炭 焼 小 屋 の よ う に タ ル キ が桁 に載 る と真 正 の タル キ掛 け とな り、 後代 の ウ ダ ッ構 法 と同様 の 架 構 に な る。 こ の場 合 の タ ル キ 勾 配(屋 根 勾 配) は、 約45°(矩勾 配)で 、 タ ル キ と して は 急勾 配 で 桁 との 仕 口 もア イ カギ(相 欠 ぎ)と し、 急勾 配 な タ ル キ を桁 が 受 け て い る[図2‑27]。 タ ル キ か ら くる水 平 力 は ナバ イ が 受 け る[写 真2‑12]。
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[図2‑27]桁 と タル キ の 仕 口
6‑2ウ ダ ツ構 法 の 建 物 跡
鹿 島 町 徳 前C遺 跡(石 川 県 鹿 島 郡)で は奈 良 時 代 の建 物 跡 が 多 く検 出 され て お り([図2‑15]
参 照)、そ の 中 の7号 建 物 は整 然 と した 柱 配 置 が み とめ られ る ウ ダ ツ構 法 の適 例 で あ ろ う[図2‑
28]。 同遺 跡 調 査 報 告 書(石 川 県 教 育 委 員 会 、1978年 、20)に は 、 「建 物 の東 西 角 に幅30cm、 深 さ 10㎝ のL字 溝 が 一 部 検 出 され た 。付 属 す る 雨 落 ち溝 で あ ろ うか 。 柱 穴 は50〜70αnの 円形 で 、 深 さ は30cm前 後 を 測 る事 が 多 い 。2個 の 柱 根 が 残 っ て お り、 直 径 は22cmと19.5cmの 太 さ で あ った 。」と あ る。
間 口長 さ4.2m、 奥 行 き長 さ8.4mは 、前 項 の炭 焼 小 屋 とほ ぼ 同 規模 で あ り、 柱 配 置 の状 況 もほ ぼ 同様 で あ る 。 と くに 、 妻 側 中央 の棟 持柱 は両 者 に共 通 す る ウ ダ ツ構 法 の 特 色 で あ る。 そ の他 、 柱 間寸 法 、柱 サ イ ズ等 も よ く一 致 して お り、7号 建 物 は前 項 の 炭 焼 小 屋 を も っ て復 元 した と して もお か し くな い く らい で あ る。 す な わ ち、 奈 良 時代 の 加 賀 地 方(厳 密 にい え ば 口 能登 地 方 で あ る が)に 行 わ れ て い た ウ ダ ッ構 法 は 、後 代 加 賀 地 方 の 炭 焼 小 屋 の 構 法 に伝 承 さ れ て い る の で あ る 。 ま た、 この場 合 の柱 間 寸 法 は タ テ 、 ヨ コ方 向 と も2.1mで 、 後 代(中 世)の7.0尺 問 に相 当す る 事 実 も肝 要 で あ る。
か つ て伊 勢 神 宮 に み られ た立 派 な ウ ダ ツ構 法([図2‑7]参 照)も 、 い ま で は 山 間 の一 炭 焼 小 屋 の構 法 に な っ て い る 。 建 築 の 上 級 下 級 とい う観 点 か らす れ ば 、 か な りの下 降 現 象 で あ る(上 級 下 級 は生 活 上 の必 要 度 とは別 次 元 の 話 で あ る)。 こ の よ うな 下 降 現 象 の例 は 、 か つ て は れ っ き と
[写 真2‑12]コ マ タ を補 強 す る ナ バ イ
(註)[写 真2‑11]に 同 じ。
した住 居 で あ っ た放 射 状 サ ス 構 法 が 、 コ ク ソ ゴ ヤ や セ ッチ ン に な っ た りす る の と同様 で あ る 。 簡 単 にい え ば 、建 物 の構 法 と用 途(機 能)は 時 代 と と も に変 化 す る とい う こ とで あ る 。
そ の よ うな 下 降 現 象 の 最 大 の原 因 は、 そ の構 法 に よ る 空 間 的 制 約 で あ る。 ウ ダ ッ 構 法 に よ る空 間的 制 約 の最 た る もの は 、 棟 木 の 長 さ 制 約 で あ る 。7号 建 物 の場 合 は8.2mを1ス パ ン と して棟 木(日 本 書 紀 の ワ カ ム ロで は ム ネ ウ ツハ リ)が 渡 っ て お り、 お そ ら くこ れ は 最 大 ス パ ン で あ る。
棟 木 の 長 い 場合 に は何 本 か の柱 に よ っ て こ れ を 支 え ね ば な らず 、 内 部 空 間 中央 に柱 列 が 現 わ れ 、 空 間 の一 体 性 を 阻害 す る。 間 口長 さが7号 建 物 や 炭 焼 小 屋 程 度 の場 合 は と くに そ うで あ り、 そ の た め逆 に棟 木 を長 く して 中 央 に柱 列 が 出 な い よ う に して い る の で あ ろ う 。 そ の 意 味 で 、 この 場 合 の棟 木 の長 さ に は力 学 的 に か な りの 無 理 が あ る と い え る 。
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[図2‑28ユ 奈 良 時代 の ウダ ツ構 法建 物 跡
く註)鹿 塒 町 嬉 前c世 跡 融査 組"テq)く 石 川 鼎 粒 育 蛋 員 会.
19冊 年.19、 丁号瞳 肋)
しか し、 屋根 勾 配 が45'程 度 の サ ス と タル キ の境 界 勾 配 に な っ て く る と、 一 見 ウ ダ ッ構 法 に み え て も,タ ル キ が サ ス と して働 く場 合 が あ る"つ ま り,実 質 曲 に はサ ス構 法 と い っ て よい 場 合 が あ る。 こ の場 合 の 楳 木 は 、 ク ル キ の蒋 重 を 支 え る の で は な く、 サ ス の ア タマ ギ と同 じ役 割(タ ル キや サ ス の 頂 部 を繋 ぎ 止め る役 割)を 果 して い る に す 謹 な い。 こ の よ うな場 合 の 棟 木 を ヂ ム ネ{地 棟)と い っ て い る。7号 建 物 の 呂,4mの 長 い棟 木 も、 お そ ら くは こ の ヂ ム ネ で あ ろ う とお も わ れ
る。
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6‑3ウ ダ ッ構 法 の地 方 伝播
ウ ダ ッ構 法 の 主 た る部 材 は 、棟 持 柱 、 ム ナ ギ 、 タル キで あ る(そ れ に 附 加 す る とす れ ば モ ヤ柱 と桁 で あ るが 、 ネ ブ キ の場 合 には そ れ らは な い)。発 生 史 的 に、 ウ ダ ツ構 法 の 特 色 は 棟 持 柱 に あ る が 、 『日本 方 言 大 辞 典 』(小学 館 、1989年)の ウ ダ ツ(視)の 項 を み る と、(1)梁(ム ネ ウ ッ ハ リ) を受 け て い る小 屋 の 柱(福 島)、(2)大黒 柱(山 梨)、(3)勝 手 の 間 と中 の 間 の仕 切 りの か もい の 中心 に あ る 束 柱(ツ カ バ シ ラ)(奈 良)、(4)掘 っ建 て小 屋(宮 城 、 群 馬 、 千 葉 、 静 岡 、 愛 知) 、ウ ダツヤ (群馬 、静 岡)、 ウ ダ ツ ゴヤ(群 馬)、(5)極 め て粗 末 な家 、小 さ な家(愛 知 、 三 重)と あ る。 ま た 、 ウ ダチ(卯 建)に つ い て は 、⑥ 切 り妻 屋 根 の 両 端 を兎(ウ サ ギ 〉 の 耳 の よ う に高 く塀 の よ う に作 る こ と。 ウ ダ チ造 り(福 井)と あ る 。
以 上 の よ う に 、 ウ ダ ツ(ウ ダ チ)は 地 域 的 にみ る と東 は 宮 城 県 に まで 及 ぶ各 地 域 に広 ま って い る が 、 内 容 的 に み る と、(1)は棟 持 柱 、(2)、(3)は内 部 の棟 通 りの 中心 と な る柱 、(4)、(5)は粗 末 な小 建 物 、(6)は妻 壁 を意 味 して い る。 こ れ らの 意 味 内 容 は 、 ウ ダ ツ構 法(妻 に棟 持 柱 を建 て棟 木 を支 え る)か ら派 生 して い る こ と は 明 らか で あ る。(1)、(2)、(3)は建 築 部 材 の 呼 称 と して 、(4)、(5)は棟 木 の ス パ ン制 約 か ら くる粗 末 で 小 さ い建 物 呼 称 と して 、(6)は棟 持 柱 が 妻 側 に位 置 す る こ とか ら、
そ れ を含 む妻 壁 全 体 の呼 称 と して伝 承 さ れ て い る ので あ る 。
『日本 民 家 語 彙 解 説 辞 典 』(日本 建 築 学 会 民 家 語 彙 集 録 部 会 編 纂 、 日外 ア ソ シ エ ー ツ 、1993年) に徴 して も、 同様 の 傾 向 を示 す 。 す な わ ち 、 ウ タチ は小 屋 束(沖 縄)、ウ ダ チ は 妻 壁(岐 阜)、棟 束
(高 知)、合 掌(山 口)(こ れ は か な り拡 大 され た 用 法)、ウダ ツは 妻 壁(京 都 、 各 地)、棟 束(福 井 、 京都 、 和 歌 山 、 岡 山 、 沖 縄)、 棟 の一 部 を 突 き上 げ た 煙 出 し用 の 小 屋 根(山 梨)、管 柱(ク ダバ シ ラ)(愛 媛)、合 掌 組 み(山 口)、土 間 と隣 接 の境 奥 の柱(山 梨)(大 黒 柱 の 呼 称 が な い)、掘 立 て小 屋(千 葉)、小 規 模 で 粗 末 な 家(愛 知)な どが そ れ で あ る 。
また 、 ウ ダ ツ を冠 した 語 に は 、 ウ ダ ッ ゴ ヤ(新 潟 、 宮 城 、愛 知 、 千 葉)、ウ ダ ツヂ フ ク(棟 束 を 受 け る水 平 材)(広 島)、ウ ダ ツ ヌ キ(棟 束 に タ テ 、 ヨ コ に通 す 貫)(広 島)、ウ ダ ツバ シ ラ(埼 玉 、 長 野 、 山梨 、 静 岡 、 広 島)(大 黒 柱 呼 称 も併 存)、ウ ダ ツバ ラ ア(棟 束)(沖 縄)、ウ ダ ツヤ(宮 城 、千 葉 、 静 岡 、 山 梨 、 長 野 、 京 都 、 大 阪 、和 歌 山)な どが あ る 。
ウ ダ ツ(ウ ダチ)は 、 時 間 的経 過 に よ っ て地 域 的 に も内 容 的 に も あ る程 度 の 広 が りを も っ て い るが 、 地 域 的 に は近 畿 地 方 、 と くに古 代 大 和 政 権 の 確 立 と関連 す る建 築 様 式 と して 奈 良 県 を起 点 と し、 全 国各 地 に伝 播 した とみ られ る([図2‑11]参 照)。 内容 的 に は 、 ウ ダ ツ構 法 を特 色 づ け る妻 の 棟 持 柱 が 起 点 とな って お り、 本 来 の 意 味 を もつ ウ ダ ツ柱 もあ るが 、 そ れ か ら派 生 した用 語 も多 い 。 そ の 第1は 、 ウ ダツ柱 が 内部 に 入 り、 棟 通 りに位 置 す る柱(大 黒 柱)と して使 用 され る 場 合 、 第2は 、梁 に載 っ た棟 束 と して使 用 され る場 合(棟 木 を受 け る とい う意 味 で は棟 持柱 と 同 じ)、 第3は 、本 来 の ウ ダ ツ柱 が 位 置 した妻 側 の 壁 体 な い しそ の 造 り に使 用 さ れ る 場 合 、第4は 、 粗 末 で小 規 模 な建 物 に使 用 され る場 合 で あ る。
以 上 を総 合 す る と、 当 初 の ウ ダ ッ(構 法)は 、後 代 に は(1)妻ウ ダ ツ柱 、(2)内 ウ ダ ツ柱 、(3)内 ウ ダ ツ管 柱(大 黒 柱)、(4)ウ ダ ツ束 、(5)ウ ダ ツ壁 、(6)ウ ダ ツ造 り、(7)ウ ダ ツ小 屋 な ど に分 化 して い る。 古 代 中央 政権 の所 在 地 ・大 和 か ら地 方 に伝 播 す る過 程 で 、 ウ ダ ツ構 法 は 内 容 的 に 分 化 ・変 容 した 。 そ の分 化 ・変 容 は全 国 的 な構 法 の 発 展 と軌 を 一 に して お り、 そ の 流 れ の 中 で の 地 域 化 と も い え る現 象 で あ る。 そ れ は結 局 サ ス構 法 や ヤ グ ラ構 法 との か らみ の 中 で 生 じて い る 現 象 で あ る 。
6‑4ウ ダ ツ構 法 の 継 承
ウ ダ ッ(ウ ダチ)の 伝 播 ・変 容 につ い て は 、概 略 以 上 の よ うで あ るが 、後 代 の 民 家 に伝 承 され た 例 を い ます こ し具体 的 に み る と、 た とえ ば 『職 人 が つ づ る職 人 誌 ・奥 信 濃 の民 家 と職 人』(飯山 市 土 建 産 業 組 合 、 銀 河 書 房 、1979年 、77)に は 、 「飯 山 地 方 の 民 家 の小 屋 組(構 造)を み る と、
大 別 して 二 つ の 特徴 に気 づ く。 ひ とつ は 「叉首 」 構怯 と呼 ば れ て い る 、 い わ ゆ る 合 掌 造 りの 方 式 で あ り、 ひ とつ は 「立 登 せ 」 とい わ れ る 、 中 心 柱 が 棟 を貫 い て い る 方 式 で あ る 。」 と あ る 。 サ ス 構 法 と タテ ノボ セ(立 登 せ)と い われ る ウ ダ ッ構 法 が 併 存 して い る の で あ る 。
つ づ い て 同 所(80)に は 、 「「立 登 せ 」 構 法 は 、 構 造 上 ど う して も建 築 面 積 が小 さ くな るた め 、 こ の方 式 に よ る住 宅 と して の 民 家 は少 な く、作 業 場 、物 置 き と して の 建 築 物 が 多 い 。 建 築 面 積 は 主 に二 間 ×三 間 く らい で 中 二 階 づ く りの小 民 家 とい え よ う。 飯 山地 方 で は 山 間 部 の積 雪 量 の 多 い 地 域 に た くさ ん見 られ る 方式 で あ る。」とあ る。 ウ ダ ツ 構 法 で は 、棟 木 の パ ン制 約 か ら建 物 は小 規 模 に な り、 と くに多 雪 地 域 で は な お さ らの こ とで あ る。 上 記 引 用 文 で は 、 棟 木 の ス パ ンは3.0間
(5〜6m)で あ る。
次 に 山梨 県 の 例 で あ る。 坂 本 高 雄 『山梨 の 民 家 』(自家 出版 、1975年 、11)に は 、 「山 梨 の 草 葺 屋 根 に は 「切 妻 」「寄 棟 」「入 母 屋 」の 三 つ の 基 本 型 と と も に 「突 き上 げ屋 根 」「甲屋 根 」「し も く屋 根 」 が あ り、 ま た こ れ らの屋 根 型 を組 み合 わせ た い くつ か の混 合 型 もあ っ て 屋根 の か た ちが とて も多 様 で あ る。」と あ る 。 これ らの 多 様 な屋 根 型 の うち 切 妻 に つ い て の 説 明(同 書 、21)の とこ ろ に 、
「地 上 か ら棟 ま で通 して 棟 の 荷 重 を受 け る継 ぎ 目の な い柱 の こ と を 「うだ つ 柱 」 と い う。 山 梨 の 切 妻 は この 棟 持 柱 が棟 の 両 端 な い しは 中 間 で にわ け(二 階 以 上 を い う)を 貫 い て 棟 に達 す る ウ ダ ツ構造 に な っ て い る。 ま た切 妻 の 妻 壁 に現 わ れ る側 面 の棟 持 柱 を特 に 「は っ ぽ う う だ つ」 と呼 ん で い る 。」 とあ る。
山 梨 県 下 で は 、 妻 側 の ウ ダ ツ柱 を と くに ハ ッポ ウ ウ ダ ツ(八 方 視)と い い 、 内 部 の ウ ダ ツ柱 と 区別 して い る 。棟 が 長 くな る と、 妻 側 両 端 だ け で な く内 部 で も棟 を受 け る 内 ウ ダ ッ柱 が 必 要 に な っ て くる。 しか し、 当 地 方 にお い て も ウ ダ ツ造 り にす る建 物 は 、 附 属 屋 か 小 規 模 な 下層 民 家 に み られ る構 法 で あ る とい う。ま た 、川 島 宙 次 『滅 び ゆ く民 家 』(間取 り ・構 造 ・内 部 、主 婦 と生 活 社 、 1973年 、102)に は 、 甲州 地 方 の 民 家 につ い て 「この 地 方 は屋 根 裏 が 二 〜三 層 に な っ た養 蚕 農 家 が 多 い が 、 こ の つ く りで は大 黒 柱 と四 つ 目 の座 敷 中央 に あ る 「都 柱 」 が 、 礎 石 か ら各 階 を つ らぬ