FT3/FT4 比
抗甲状腺薬治療開始後 6 ヶ月の TRAb 値 による予後の推測
M. Schott Horm Metab Res 2004
結論
治療開始後半年でTRAb が高値(TRAb人>10)のも
のは、抗甲状腺薬治療で 寛解する可能性は低い。
寛解
再発
このようにTRAb測定は、
予後を推測する上で有用である。
しかし、この場合は、必ずしも
診療前にTRAbが分かる必要はない。
治療開始
6ヵ 月 後 の
TRAb 値
2年間の抗甲状腺薬治療後の成績
抗甲状腺薬治療中で
診療前で TRAb の値を知りたいのは どのようなときか
現在治療中の患者さんの診察中に 明日からお薬を中止していいかどうか
を判断するときです
薬を中止するかどうかを考えている状況
薬を中止して良いかどうか考えている患者は、
• 薬の量が一日1錠以下で、診察間隔も3-4ヶ月に一度に なっている。
薬を中止して良いかどうかですが、
• この状態の患者さんでバセドウ病の活動性を正確に判 断する絶対的なものがない。
• そんな中で、日本甲状腺学会からバセドウ病薬物治療ガ イドラインの「中止の目安」がだされました
バセドウ病薬物治療中止の目安
ステーメント
1. バセドウ病が寛解しているかどうかを正確に判断する方 法はまだ見つかっていない。現時点で実際的な方法は、
最少量の抗甲状腺薬で一定期間、甲状腺機能が正常で あることを確かめた後に、投薬中止を検討することである。
2. 薬物治療中止の目安としては、これまでTRHテスト、T3 抑制試験、血清Tg値、血清T3/T4比、TSH受容体抗体な どが用いられているが、いずれも絶対的なものでない。
現在は簡便さと有用性で、TSH受容体抗体が参考にされ ている。
TRAbはどの程度有用なのか
バセドウ病薬物治療「ガイドライン」
中止の目安の条件で 薬を中止したときの
治療成績
ガイドラインの条件で薬を中止したときの
治療成績
対象
• ガイドラインに順じ、抗甲状腺薬を中止したバセドウ 病患者 114 名
( 2002 年 2 月から 2007 年 9 月に中止)
方法
抗甲状腺薬中止後
• バセドウ病を再発したものを再発例とし
• 甲状腺機能正常を維持しているもの,および甲状腺
中毒症を呈しても一過性のものは寛解例とした
再発か、一過性甲状腺中毒症かの判断
バセドウ病再発
• FT4上昇およびTSH低値が3ヶ月以上続いたもの 一過性甲状腺中毒症
• FT4上昇が3ヶ月未満のものをとした
無痛性甲状腺炎も、バセドウ病の一時的な増悪もある
• 甲状腺中毒症状が強いものは,3ヶ月を待たずに抗甲状腺 薬を再開したが,その後の経過で再発か一過性かの判断を 行った.
ガイドラインの条件で薬を中止したときの
治療成績
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 0.5 1 2 3 3
寛解 維持率 (%)
(年)
寛解維持率 (%) 87.7 75.5 69.2 56.1
観察された症例数 114 110 104 84 一年後に
25%
再発
半年後に
13%
再発
この条件でも再発する人は、どんな特徴を持っているのか?
中止後の期間 0 0.5 1
ガイドラインの条件 で中止すると
2年経っても 7割の人は、
寛解している
寛解を維持している患者と再発した患者の比較
(6ヶ月後の成績で n=114)
寛解 n=100 再発 n=14 p
性(M:F) 10:90 7:7 <0.01
年齢 37.4±11.0 40.4±15.8 NS
甲状腺腫(七条分類) 1.859±0.726 1.786±0.893 NS
中止時FT3 2.71±0.39 2.65±0.49 NS
中止時FT4 1.27±0.23 1.34±0.16 NS
中止時TSH 1.63±1.01 1.0613±0.65 0.075 中止時TRAbヒト 0 (0-4.8) 1.55 (0-3.8) 0.0162
中止時TRAbヒト:中央値(範囲), Mann-Whitney検定、その他:平均±標準偏差
明らかにTRAb値に差がある
投薬中止時の TRAb 値が
陽性の者は再発しやすいのか
TRAb陽性例と陰性例の 寛解維持率をみると
もう少し詳しく見てみましょう
治療中止時の TRAb 値と治療成績
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 0.5 1 2 3
寛解維持率(%)
(年)
TRAb陰性 TRAb陽性
中止後の期間
治療中止時の TRAb 値と治療成績
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 0.5 1 2 3
寛解維持率(%)
(年)
92 % 75 %
P<0.05
TRAb陰性 TRAb陽性
中止後の期間
陽性のものでは有意に再発率が高い
それでは、それでは、TRAbTRAb値の高さで分けてみるとどうなのか
治療中止時の TRAb 値と治療成績
TRAb 陰性、弱陽性 (<2.0) ,陽性(≧ 2.0 )別
0 0.5 1 2 3
寛解維持率(%)
(年)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
TRAb弱陽性 TRAb陰性
TRAb陽性
(≧2.0)
中止後の期間
91.8%
76.2%
73.3%
TRAb弱陽性でも中止後半年で再発しやすい
診療前にTRAb値が分かることの有用性-2
バセドウ病を抗甲状腺薬で治療中、
薬を中止して良いかどうかの判断ができる
• ガイドライン通り、最少量の抗甲状腺薬で一定期間、甲状腺機能 が正常であることを確かめた後に、投薬を中止しても、再発するも のがいる。
• そのとき、TRAbが陽性のものは、再発する可能性が高い。
• 診察時に、TRAb値が分かっていれば、中止すべきかどうかの判 断ができる。
そのとき患者さん、こう言っています。TRAbが
• 陰性なら、 半年後90%、 2年後75%は治っています
• 陽性の場合は、半年後75%、 2年後約5割です どうしましょう?
抗甲状腺薬中止後の経過観察中 甲状腺ホルモンが上昇したとき
再発かどうかの判断ができる
診療前にTRAb値が分かることの有用性 3a
抗甲状腺薬中止後の経過観察中
再発かどうかの判断をせまられる状況とは
投薬中止後、経過観察中にFT3, FT4値の上昇を見たとき、
• バセドウ病の再発と考えて、抗甲状腺薬が再開されること が多かったが、投薬をしなくても自然に正常に戻る例があ ることが分かってきた。
• 正常に戻る例に、抗甲状腺薬を投与することは、機能が 低下する可能性もあるし、副作用の危険もある。
• 再発なのか、一過性のホルモン上昇なのかの鑑別は、治 療の再開を考える上で極めて重要である
• TRAbでこの鑑別ができるか?
まず投薬中止後の経過観察中に FT3, FT4 値の上昇をみた症例の
TRAb の変動を紹介します
0 1 2 3
TRAbh(IU/mL)TSH(μIU/mL)FT4(Ng/dL)
バセドウ病、再発 A.A.
0 2 4 6
0 1 2 3
中止時 3ヵ月後 6ヵ月後 9ヵ月後
再発時に TRAbが 上昇している
バセドウ病、一過性増悪 O.M.
0 1 2 3
中止時 3ヵ月後 6ヵ月後 7ヵ月後 12ヵ月後 15ヵ月後 18ヵ月後 24ヵ月後
TRAbh(IU/mL)TSH(μIU/mL)FT4(Ng/dL)
0 1 2 3 0 1 2
3 FT4は高く、TSHは感度以下になっている。
経過中にTSHの上昇は見られない。
TRAbの上昇なし
0 1 2 3
0 10 20 30 40
中止時 3ヵ月後 6ヵ月後 9ヵ月後 12ヵ月後
0 1 2 3
無痛性甲状腺炎 K.K.
TRAbh(IU/mL)TSH(μIU/mL)FT4(Ng/dL)
FT4は高くなったあと、自然に低下している、
それに伴いTSHも低値になったあと高値になっている 典型的な無痛性甲状腺炎である
TRAbの上昇はない
無痛性甲状腺炎 Y.M.
無痛性甲状腺炎では、発症後 遅れてTRAbが一過性に上昇 することがある
0 1 2 3 4 5
H18.9 H19.2 H19.5 H19.7 H19.8 H19.9 H19.11 H20.2 H20.5
TRAbh(IU/mL)TSH(μIU/mL)FT4(Ng/dL)
0 2 4 6 8 10
0 1 2 3
ATD中止
多数例で検討してみました
抗甲状腺薬中止後、
再発した例 と 一過性甲状腺中毒症例 の TRAb 値の比較
対象
• ガイドラインに準じ治療後,ATDを中止したバセドウ病患者 142名(男性20名:女性122名、 2002年2月から2007年6月に中止).
方法
ATD中止後,3ヶ月ごとに経過観察し,
• 再発した39名(男性5:女性34)
• 一過性甲状腺中毒症の27名(男性2:女性25)
について、TRAb値で両者を鑑別できるかを検討した
ATD中止時の状態は、TRAbを 含めて両者に差はありません
バセドウ病再発例と
一過性甲状腺中毒症例の 中毒症発症時の TRAb 値を
抗甲状腺薬中止時
• TRAb 陰性のものと
• TRAb 陽性のもの
にわけて示します
中毒症発症時の TRAb 値
ATD中止時TRAb陰性群
再発例 一過性甲状腺中毒症例
一過性中毒症例 再発例
中央値
TRAb-Dyno(U/L)
Mann-WhitneyのU検定
0 1 2 3 4 5
P < 0.0001
>5
中毒症発症時の TRAb 値
ATD中止時 TRAb陽性群
TRAb-Dyno(U/L) 中央値
Mann-WhitneyのU検定
一過性中毒症例 再発例
0 1 2 3 4 5 6
P < 0.0001
>6
再発例 一過性甲状腺中毒症例
ATD中止時のTRAb値は 一過性群 2.1(1-4.8)
再発群 1.8(1-3.8) で差がない
TRAb の増加率
ATD中止時 TRAb陽性群
TRAbの比(中毒症発症時/中止時)
0 1 2 3
1.45
一過性中毒症例 再発例
>3
再発例 一過性甲状腺中毒症例
中毒症発症時のTRAb値 ATD中止時のTRAb値
=
ATD中止後甲状腺中毒症が発症したとき、TRAb測定による
再発か一過性甲状腺中毒症かの鑑別の仕方
ATD中止時TRAb陰性のものでは,
• TRAbhが陽転すれば (特に2.0U/L以上) 再発の可能性が高い.
ATD中止時TRAb陽性のものでは,
• TRAbhが3.0U/L以上になるか,
• ATD中止時TRAbh値に比較して中毒症発症時TRAbh 値が1.45倍以上になれば
再発の可能性が高い.
診療前にTRAb値が分かることの有用性-3a
抗甲状腺薬中止後の経過観察中 再発かどうかの判断ができる
• 治療中止後の経過観察中に甲状腺ホルモンの上昇を見た とき、バセドウ病の再発か一過性の甲状腺ホルモンの上昇 かの鑑別が重要になる。
• 前者であれば、抗甲状腺薬を再開しなければいけないが、
後者であれば経過観察で良い。
• 両者の鑑別は、TRAb値によって可能なことが多いので、
診療時にTRAb値が分かることは、患者を診療する上で有 用性が高い。
抗甲状腺薬中止後の経過観察中
再発を予測できる
診療前にTRAb値が分かることの有用性 3b
抗甲状腺薬中止後の経過観察中
バセドウ病の再発予測ができるというのは、
どんなメリットがあるの?
投薬中止後の経過観察は、
• 中止1-2ヵ月後に一度見る、機能正常であれば、その後は 3ヶ月に一度経過観察している
• 甲状腺機能検査がTSHも含めて正常であれば、次回は3ヵ 月以上先と言うことになる
• しかし、その間に再発してくるものがある
• 次回までに再発の可能性が予測できれば、患者に指導が 出来る(早期の受診、ストレス回避など)
• この再発が、TRAbで予測出来るか?