第四章 SWNTs 生成プロセスにおける AFM ・ラマン観察
4.3 結果と考察
4.3.1 AFM サンプルステージ上での SWNTs 合成
4.3.1.3 レーザー加熱による CVD 合成
定を行った.中心部及び端部において,SWNTs が生成されていることがG-band及びRBMピー クの存在より分かる.スペクトル(a)と(b)を比 較すると,(a)の方が G/D 比が高く,欠陥が少
ないSWNTsが生成され,更に RBMピークで
は(b)の方が細いSWNTsが多く生成されている.
ゼオライトに担持された Fe/Co 触媒において,
CVD温度が低い場合に直径が細いSWNTsが生 成されることから[12],レーザースポットの中 心部の方がより温度が高かったことがこれら より確かめられる.RBM ピーク分布より中心 部及び端部での CVD 温度はおよそ 800 及び 600 ℃と見積もることができ,このCVD温度 の違いは中心部で高いG/D比のSWNTsが生成 されていることとも一致する.
以上のように,室温に保たれたシリコン上に 分散されたゼオライト(Fe/Co触媒)を用いて
レーザー加熱法によってSWNTsを合成することに成功した.レーザースポット内に生じた温度分 布により生成される(G/D比により表される)SWNTsの質や直径分布が異なってしまうが,局所 的な加熱であるため全く周辺のAFM測定系に影響を与えることなく CVDを行うことができる.
また,レーザー加熱は数秒で目的温度まで加熱可能であることも特徴である.
シリコン基板に直接担持した Co/Mo 金属触媒による生成
シリコンは高い熱伝導率(室温にて約120 W/m K)を持つため,数10 mWの出力のレーザーに よりレーザースポット内だけをCVD温度(800 ℃前後)まで加熱することは難しい.ここでは,
シリコンを長さ数100 µm程度のサイズにカットすることで,このシリコン全体を加熱することを 試みた.予めCo/Mo金属を担持した酸化膜付シリコンを一辺が数100 µm程度になるようにカッ トし,AFMサンプル台上にセットした.サンプルのCCD像をFig. 4.8(A) に示す.加熱用のレー ザーのスポットが数100 µmであり,レーザースポットとシリコンサンプルの大きさは同程度とな る.AFMチャンバーを真空排気した後,レーザー(30 mW)を照射しエタノールガス(0.1 Torr)
を導入した.エタノールガスを 5分間流し,エタノールガスを止め完全にエタノールガスが排気 された後レーザー照射を停止した.レーザー照射時のサンプル温度はその時のシリコンのラマン シ
フトより約830 ℃であった.その後,測定したラマンスペクトルをFig. 4.8(B)に示す.CVD後サ ンプル表面上で10数箇所ラマンスペクトル測定を行ったが,スペクトルはG-band強度,G/D比 及び RBM ピーク分布などについて測定箇所に寄らずほぼ同じものが得られ,その一つが Fig.
4.8(B)である.SWNTsに特有のG-band及びRBMピークが観測されており,D-bandも比較的小さ
500 1000 1500
200 300
Raman Shift (cm–1)
Intensity (arb. units)
(a) center
(b) edge (a)
(b)
Raman Shift (cm–1)
Fig. 4.7. Raman scattering from SWNTs generated by laser heating technique, from Fe/Co supported by zeolite particles. Spectra (a) and (b) were measured at
the center of the heating laser spot and at its edge, respectively.
く,また基板となっているしシリコンからのピークと比較して強いG-bandが測定されていること から,大量のSWNTsがシリコン表面全体に合成されていることが分かる.更にサンプルをAFM 及びSEMによって観察した.Fig. 4.9に(A)AFM像及び(B)SEM像を示す.このAFM像はCVD終 了後サンプルを取り出すことなく,AFMチャンバを真空に保ったまま測定したものであり,AFM 像ではシリコン表面上にSWNTsが一面に覆うように生成されている様子が観察された.これは,
シリコンのラマンピークより強いG-band が観測されたラマン測定の結果とも一致する.AFM観 察ではその測定に時間がかかる(1 画像で数分)上,観察範囲の移動が遅くまた低倍率によるサ
50 µm
(A) (B)
500 1000 1500
200 300 400
Raman Shift (cm–1)
Intensity (arb. units)
Raman Shift (cm–1)
50 µm
(A) (B)
50 µm 50 µm 50 µm
(A) (B)
500 1000 1500
200 300 400
Raman Shift (cm–1)
Intensity (arb. units)
Raman Shift (cm–1)
Fig. 4.8. (A) CCD monitor image of the piece of the silicon. (B) Raman scattering from SWNTs generated from Co/Mo catalyst directly loaded on the silicon substrate by using laser heating technique.
500 nm
(A) (B)
300 nm 500 nm
500 nm 500 nm
(A) (B)
300 nm 300 nm
Fig. 4.9. (A) AFM image and (B) SEM image of SWNTs from Co/Mo metal particles directly loaded on the silicon substrate by using laser heating technique.
ンプル全体の観察が難しい.しかし,SEM観察では観察範囲の速い移動や低倍率での観察が可能 であり,サンプル表面いずれの場所でもFig. 4.9(B)にあるようにSWNTsが生成されていることが 確認できた.このことからも熱伝導率の高いシリコンサンプルはレーザー加熱によって一様に加 熱されていることが確かめられる.
シリコンは熱伝導率が高いため局所的なレーザー加熱は難しいが,そのサイズを小さくするこ
とで50 mW程度の出力のレーザー照射によりCVD温度までの加熱に成功し,SWNTsのCVD合
成することができた.この生成方法を用いれば,レーザーを照射したシリコンサンプルのみが加 熱され,周辺のAFM測定系には全く熱的問題はない.レーザー加熱によるSWNTsのCVD合成 法は,目的の温度への到達時間が短く(数秒),超高真空のような環境下でも問題なく加熱するこ とができ,環境制御型のTEMやSEMと言った分析・観察装置内への応用も可能だと考える.