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ク教会が死者のために執行する数多 くの「ミサ」のひとつである。「ミ サ」はグレゴリオ聖歌の時代から教 会で行われてきた儀式だが、14 世 紀にギヨーム・ド・マショーが見事な ミサ曲《ノートルダム》を書いて以 来、「ミサ」で語られるラテン語の 通常文に音楽が付けられるようにな り、ルネサンスからバロック、そし て古典派の時代までに無数の「ミサ 曲」が書かれた。

 フランス革命を境に「ミサ曲」は 量産されなくなる。その背景には作 曲家たちの多くが教会オルガニスト や宮廷楽長という職業から解放され たことがある。ロマン主義時代の作 曲家たちは「日々の仕事」としてで はなく「自己の精神の発露」として 宗教音楽を書いた。したがってこの 分野で「レクイエム」に数々の名作 が生まれたのは偶然ではないだろう。

愛と死はロマン主義の芸術家たちの 大きな関心事であったからだ。

 オペラ作曲家ジュゼッペ・ヴェル ディが畑違いの宗教音楽を書いたの は、詩人アレッサンドロ・マンツォ ーニ(1785 ~ 1873)の死がきっか けだった。マンツォーニはイタリア 人の精神的支柱となる歴史小説『い いなずけ』を著した国民的作家・詩

Giuseppe Verdi

1813-1901

ヴェルディ

レクイエム

Pro gram B Pro gram C

作曲年代:1873 ~ 1874 年

初演:1874 年 5 月 22 日、ミラノ、サン・マル コ教会にて作曲者自身の指揮

楽器編成:フルート 3(ピッコロ 1)、オーボエ 2、

クラリネット 2、ファゴット 4、ホルン 4、ト

ランペット 4、トロンボーン 3、チンバッソ 1、

ティンパニ 1、大太鼓、弦楽、合唱、バンダ:

トランペット 4(指揮者の意向により倍管の 8 本で演奏)

たく影をひそめ、避けることのでき ない死への恐怖と祈りが真正面から 描かれている。若い頃から鍛えてき た対位法の技術とオペラで培つちかった劇 的な語法を駆使しながら、ヴェルデ ィは死を前にした人間の嘘偽りのな い感情を芸術作品へ昇華することに 成功したのである。

 初演は予定どおりマンツォーニ の一周忌(1874 年 5 月 22 日)にミ ラノのサン・マルコ教会で行われた。

ヴェルディ自らが指揮棒をもち、ミ ラノ・スカラ座を中核とする 100 名 のオーケストラと 120 名の合唱に、

当時の一級のヴェルディ歌手であっ たテレーザ・ストルツ(ソプラノ)、

マリア・ヴァルトマン(メゾ・ソプラ ノ)、ジュゼッペ・カッポーニ(テノ ール)、オルモンド・マイーニ(バ ス)がソロをつとめた。公演はスカ ラ座でも 3 回繰り返され、センセー ショナルな成功を収めた。翌年から は外国ツアーも行われ、各地で熱狂 的な反響を呼び起こした。ちなみに 1875 年ロンドンのアルバート・ホー ルで行われた公演では第 2 曲〈怒り の日〉の「書きしるされた書物は」

が合唱から現在のメゾ・ソプラノ独 唱に書き変えられ、最終的なかたち が次のように確定した。なお以下の

分類はシカゴ大学による批判校訂版

(全集版)による。

第 1 曲〈永遠の安息を与えたまえ〉

と〈主よ、あわれみたまえ〉(四 重唱と合唱)

第 2 曲〈怒りの日〉(四重唱と合唱)

 怒りの日(合唱)

 不思議なラッパの音(合唱)

 死は驚く(バス)

  書きしるされた書物は(メゾ・ソ プラノ)

  哀れな私(三重唱:ソプラノ、メ ゾ・ソプラノ、テノール)

 みいつの大王(四重唱と合唱)

  思い出させたまえ(二重唱:ソプ ラノ、メゾ・ソプラノ)

 私は嘆く(テノール)

  判決を受けた、のろわれた者は

(バス)

 涙の日よ(四重唱と合唱)

第 3 曲〈主イエスよ〉(四重唱)

第 4 曲〈聖なるかな〉(二重合唱に よるフーガ)

第 5 曲〈神の小羊〉(二重唱[ソプ ラノ、メゾ・ソプラノ]と合唱)

第 6 曲〈永遠の光を〉(三重唱:メ ゾ・ソプラノ、テノール、バス)

第 7 曲〈われを許したまえ〉(ソプ ラノと合唱)、フーガ・フィナーレ

(小畑恒夫)

Philharmony April 2013

ヴェルディ

Verdi

レクイエム 歌詞対訳

Messa da requiem

Translation: Kazunori Imatani対訳:今谷和徳

I. REQUIEM E KYRIE

Requiem æternam dona eis, Domine:

et lux perpetua luceat eis.

Te decet hymnus, Deus, in Sion, et tibi reddetur votum in Jerusalem:

exaudi orationem meam, ad te omnis caro veniet.

Requiem æternam dona eis, Domine:

et lux perpetua luceat eis.

Kyrie eleison, Christe eleison, Kyrie eleison, Christe eleison, Kyrie eleison.

II. DIES IRAE DIES IRAE Dies iræ, dies illa solvet sæclum in favilla, teste David cum Sibylla.

Quantus tremor est futurus, quando judex est venturus, cuncta stricte discussurus!

TUBA MIRUM

Tuba mirum spargens sonum per sepulchra regionum, coget omnes ante thronum.

MORS STUPEBIT Mors stupebit et natura cum resurget creatura, judicanti responsura.

I. レクイエムとキリエ

主よ、永遠の安息を彼らに与え、

たえざる光を彼らの上に照らしたまえ。

神よ、御身に賛歌をささぐるはシオンがふさわし、

エルサレムにて、

御身に誓いは果たさる。

わが祈りききたまえ、

すべての肉体は御身に来らん。

主よ、永遠の安息を彼らに与え、

たえざる光を彼らの上に照らしたまえ。

主よ、あわれみたまえ。

キリストよ、あわれみたまえ。

主よ、あわれみたまえ。

キリストよ、あわれみたまえ。

主よ、あわれみたまえ。

II. ディエス・イレ ディエス・イレ 怒りの日、その日こそ

ダヴィドとシビラの予言のごとく この世は灰に帰さん。

すべてを厳しくたださんと 審判者が来たもう時、

いかに恐ろしきものならん。

トゥーバ・ミルム 全土の墓に

不思議なる響きを振りまくラッパが すべての者を玉座の前に集めん。

モルス・ストゥペビト 審判者に答えんと

造られしものがよみがえる時、

死と自然とは驚かん。

Pro gram B

LIBER SCRIPTUS Liber scriptus proferetur, in quo totum continetur, unde mundus judicetur.

Judex ergo cum sedebit, quidquid latet apparebit, nil inultum remanebit.

Dies iræ, dies illa solvet sæclum in favilla, teste David cum Sibylla.

QUID SUM MISER Quid sum miser tunc dicturus, Quem patronum rogaturus, Cum vix justus sit securus?

REX TREMENDAE Rex tremendæ majestatis, qui salvandos salvas gratis, salva me, fons pietatis.

RECORDARE Recordare Jesu pie, quod sum causa tuæ viæ ne me perdas illa die.

Quærens me, sedisti lassus, redemisti crucem passus:

tantus labor non sit cassus.

Juste judex ultionis, donum fac remissionis ante diem rationis.

INGEMISCO

Ingemisco tamquam reus:

culpa rubet vultus meus:

supplicanti parce Deus.

リベル・スクリプトゥス すべてを書き記したる書物が この世を裁かんとて 差し出されん。

かくて審判者が坐したもう時 隠れたるものはすべてあらわれ、

裁かざるものなからん。

怒りの日、その日こそ

ダヴィドとシビラの予言のごとく この世は灰に帰さん。

クイド・スム・ミゼル

その時、哀れなるわれは何を言わん。

正しき者さえ安らかならざるに いかなる保護者をたのまん。

レクス・トレメンデ

御恵みもて救わるるべきものを救いたもう おそるべき力もてる王よ、

仁慈の泉よ、われを救いたまえ。

レコルダーレ

慈悲深きイエスよ、心にとめたまえ、

御身わがために来たまえることを。

その日、われを滅ぼしたもうことなかれ。

御身われを求めて疲れて坐し、

十字架を受けてあがないたまいぬ。

かかる辛苦を無にしたもうことなかれ。

正しく罰したもう審判者よ、

評価を下す日の前に 赦しの御恵みを与えたまえ。

インジェミスコ われ罪人として嘆き、

わが顔罪によりて赤らむ。

神よ、嘆願し奉るわれを惜しみたまえ。

Philharmony April 2013 Qui Mariam absolvisti,

et latronem exaudisti, mihi quoque spem dedisti.

Preces meæ non sunt dignæ, sed tu bonus fac benigne, ne perenni cremer igne.

Inter oves locum præsta, et ab hædis me sequestra, statuens in parte dextra.

CONFUTATIS Confutatis maledictis.

flammis acribus addictis, voca me cum benedictis.

Oro supplex et acclinis, cor contritum quasi cinis, gere curam mei finis.

Dies iræ, dies illa solvet sæclum in favilla, teste David cum Sibylla.

LACRYMOSA Lacrymosa dies illa, qua resurget ex favilla, judicandus homo reus.

huic ergo parce Deus:

Pie Jesu, Domine, dona eis requiem.

Amen.

III. OFFERTORIO

Domine Jesu Christe, Rex gloriæ, libera animas omnium fidelium defunctorum de pœnis inferni, et de profundo lacu:

libera eas de ore leonis,

マグダラのマリアを解き放ち、

盗賊の願いを聞きいれたまいし御身は われにも希望を与えたまいぬ。

わが懇願は価値なきものなれど、

慈悲深き御身、御恵みもて

われらが永遠なる火にて、焼かるることなき ようなしたまえ。

羊の群れにわれを置き、

牡山羊より引き離し、

御身が右に置きたまえ。

コンフターティス 呪われしもの罰せられ 烈しき火の中におとさるる時、

祝福されしものとともにわれを呼びたまえ。

われ、灰のごとく砕かれし心にて ひざまずき、伏して懇願し奉る、

わが終わりの時に心を配りたまえ。

怒りの日、その日こそ

ダヴィドとシビラの予言のごとく この世は灰に帰さん。

ラクリモーザ

罪ある人が裁かるるため 灰よりよみがえるその日こそ 涙の日なり。

されば神よ、彼を惜しみたまえ。

主よ、慈悲深きイエスよ、

永遠の安息を彼らに与えたまえ。

アーメン。

III. オフェルトリオ

主イエス・キリスト、栄光の王よ、

すべての死せる信者の霊魂を、

よみの刑罰、

深き淵より救いたまえ。

獅子の口よリ彼らを救い

Pro gram B

ne absorbeat eas tartarus, ne cadant in obscurum:

sed signifer sanctus Michael repræsentet eas in lucem sanctam.

Quam olim Abrahæ promisisti, et semini ejus.

Hostias et preces tibi, Domine, laudis offerimus:

tu suscipe pro animabus illis, quarum hodie memoriam facimus:

fac eas, Domine, de morte transire ad vitam.

Quam olim Abrahæ promisisti et semini ejus.

Libera animas omnium fidelium defunctorum de pœnis inferni.

fac eas de morte transire ad vitam.

IV. SANCTUS

Sanctus, Sanctus, Sanctus, Dominus Deus Sabaoth!

Pleni sunt cœli et terra gloria tua,

Hosanna in excelsis.

Benedictus qui venit in nomine Domini, Hosanna in excelsis.

V. AGNUS DEI Agnus Dei,

qui tollis peccata mundi, dona eis requiem;

Agnus Dei,

qui tollis peccata mundi, dona eis requiem;

Agnus Dei,

qui tollis peccata mundi, dona eis requiem sempiternam.

彼らが地獄にのみこまれず、

暗黒に落ちこまぬよう、

旗手聖ミカエルが彼らを 清き光明に導かれんことを、

かつて御身がアブラハムと その子孫に約したまいし生命に。

主よ、われらいけにえと賛美の祈りとを 御身にささぐ。

今日われらの記念する霊魂のために それを受けいれたまえ。

主よ、彼らを死より生へと移したまえ。

かつて御身がアブラハムとその子孫に 約したまいし生命に。

すべての死せる信者の霊魂を よみの刑罰より救いたまえ。

彼らを死より生へと移したまえ。

IV. サンクトゥス

聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな 万軍の神なる主よ。

主の栄光は 天地にみつ。

天のいと高きところにホザンナ。

ほむべきかな、

主のみ名によりて来る者。

天のいと高きところにホザンナ。

V. アニュス・デイ 神の小羊、

世の罪を除きたもう主よ、

彼らに安息を与えたまえ。

神の小羊、

世の罪を除きたもう主よ、

彼らに安息を与えたまえ。

神の小羊、

世の罪を除きたもう主よ、

永遠の安息を与えたまえ。

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