図2-8 リアクトル電流が流れる回路
図2-9 電圧波形とリアクトル電流の関係図
・リアクトル電流の式
図2-8の①から⑤の番号は、図2-9に示す電圧波形1パルス中にリアクトル電流が流れる回路に ついて示したものである。この①から⑤を流れるリアクトル電流の方程式を以下に示す。またこの 方程式にはコンデンサとダイオードの抵抗は全体の印加電圧から考えればたいした値にはならな いので考えないものとした。
①を流れる電流 (休止時間中のリアクトル電流の立ち上がり)
∫
=
=
=
L dt i V
L V dt
di dt V L di
C L t
V +
= ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
②を流れる電流 (休止時間中のリアクトル電流の立ち下がり)
∫
−
=
−
=
−
=
L dt i
L dt
di dt L di
1 1
1
C L t +
−
= 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
③を流れる電流 (Td(放電遅れ時間)中のリアクトル電流の立ち下がり)
∫
−
=
−
=
−
=
L dt i
L dt
di dt L di
1 1
1
C
L Td +
−
= 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
④を流れる電流 (放電中のリアクトル電流の立ち上がり)
L dt eg i V
L eg V
dt di
eg dt V
L di
∫
−=
= −
−
=
) (
) (
) (
C L t
eg
V − +
=
( )
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4)⑤を流れる電流 (放電中のリアクトル電流の立ち下がり)
∫
−
=
=
−
=
L dt i eg
dt eg
L di 0
C L t eg +
−
=
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (5)
本研究では、印加電圧を50、60、70、80Vと変化させ電流値は35A、パルス幅 8(μsec)、休止 時間32(μsec)の条件で加工を行った。そこで、リアクトル電流の解析にも電圧を50、60、70、80V の4つの条件に変化させ、Td(放電遅れ時間)は2000、1000、20、0μsecとTdが長い時、短い時、
ゼロの時と4 つ変化させ解析を行っていく。図2-8に示したリアクトル電流の電流値は 35Aで、
リアクトル電流は上限と下限があるため、上限を36.75(A)、下限を33.25(A)と上限、下限を電流値 の±5%とした。リアクトル電流は休止時間中をスタートし、初期値は下限値 33.25(A)とした。計 算は付録に載せる。
計算結果を示したグラフを次に載せる。
・リアクトル計算結果グラフ Td (放電遅れ時間)= 2000 μ sec
放電時の立ち上がり拡大図(Td=2000μsec)
15 20 25 30 35 40
2032 2033 2034 2035 2036 2037 2038 2039 2040 時間[μsec]
リ ア ク ト ル 電 流
[ A
]
印加電圧80V 印加電圧70V 印加電圧60V 印加電圧50V
図2-10 Td=2000μsecのときのリアクトル電流波形(放電時の立ち上がり)
Td=1000μsec
放電時の立ち上がり拡大図(Td=1000μsec)
15 20 25 30 35 40
1032 1033 1034 1035 1036 1037 1038 1039 1040 時間[μsec]
リ ア ク ト ル 電 流
[ A
]
印加電圧80V 印加電圧70V 印加電圧60V 印加電圧50V
図2-11 Td=1000μsecのときのリアクトル電流波形(放電時の立ち上がり)
Td=20μsec
放電時の立ち上がり拡大図(Td=20μsec)
15 20 25 30 35 40
52 53 54 55 56 57 58 59 60
時間[μsec]
リ ア ク ト ル 電 流
[ A
]
印加電圧80V 印加電圧70V 印加電圧60V 印加電圧50V
図2-12 Td=20μsecのときのリアクトル電流波形(放電時の立ち上がり)
Td = 0 μ sec
放電時の立ち上がり拡大図(Td=0μsec)
15 20 25 30 35 40
32 33 34 35 36 37 38 39 40
時間[μsec]
リ ア ク ト ル 電 流
[ A
]
印加電圧80V 印加電圧70V 印加電圧60V 印加電圧50V
図2-13 Td=0μsecのときのリアクトル電流波形(放電時の立ち上がり)
・リアクトル電流と Td(放電遅れ時間)の関係
リアクトル電流とTd(放電遅れ時間)の関係グラフ
15 20 25 30 35
0 500 1000 1500 2000 2500
Td[μsec]
リ ア ク ト ル 電 流
[ A
]
印加電圧80V 印加電圧70V 印加電圧60V 印加電圧50V
図2-14 リアクトル電流とTd(放電遅れ時間)の関係グラフ
・リアクトル電流計算結果およびグラフから考察
図2-10から図2-13のグラフは、計算結果をもとにTdを2000、1000、20、0μsecそれぞれの 場合の放電時のリアクトル電流立ち上がり拡大図を示したものである。特に加工に関係する放電中 のリアクトル電流の立ち上がりに注目すると、印加電圧80Vのとき立ち上がりの傾きは(
80−20)
/ 100 =
0.6なのに対し、印加電圧 50Vでは(50−20)/100=0.3と半分になることがわかる。単発放電では大きな差はないとしても、数万回放電が起きるとすれば、この放電中の立ち上がりの 差が加工速度に大きく影響すると考えられる。またTd が長くなると放電開始時のリアクトル電流 が低くなりすぎ、放電中にリアクトル電流がピークまで達しない上に、放電までの余分な時間が長 くなるため加工速度が遅くなると考えられる。
図 2-14 は縦軸にリアクトル電流[A]、横軸に Td(放電遅れ時間)[μsec]とし、リアクトル電流 と Td の関係を示したグラフである。−Td/100+Cという式からもわかるように Td の値が大き くなるにつれてリアクトル電流の値は小さくなるということがわかる。またTdの値が同じであれ ば、印加電圧が変化してもリアクトル電流の値はほとんど変化がない。しかし印加電圧が低くなる ことでTd が長くなるのではないかと考えられる。従って次にTd の平均の値をだして考察してい く。
・印加電圧と Td の関係
表2-1 計算条件On(パルス幅) 8(μsec) Off(休止時間) 32(μsec) Eg(アーク電圧) 20(V) V0(SV0 設定の電圧) 43.5(V)
GAP(印加電圧) 50,60,70,80(V)
0
* ) (
0
V GAP
eg On Off On Td V
−
−
= + ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(34)
0 50 100 150 200 250 300
40 50 60 70 80 90
印加電圧[V]
T d
[ μ
s e c ]
表2-2 印加電圧に対するTdの値 Td(μsec) 印加電圧 80V 43.29 印加電圧 70V 59.62 印加電圧 60V 95.76 印加電圧 50V 243.10
図2-15 印加電圧とTdの関係を示したグラフ
図2-15は縦軸にTd[μsec]、横軸に印加電圧[V]をとり、Tdと印加電圧の関係を示したグラフで ある。この図より On、Off、Eg、V0 を一定の条件で、印加電圧を 80〜50V まで下げるにつれて Td(放電遅れ時間)の値が指数関数的に大きくなっていることが見て取れる。また表2-2に示すそれ ぞれの電圧に対するTdの値を見ると、印加電圧80Vと 70Vでは約 16μsecしか違わないのに対 し、印加電圧80Vと50Vを見比べると約200μsecも長くなっていることがわかる。Tdが200μ sec違うと、図2-14のグラフよりリアクトル電流は2Aも低くなることになる。そこからさらに印 加電圧50Vのリアクトル電流の立ち上がりは80Vのそれの 1/2 であるため、この条件では50V は80Vに比べかなり加工速度が遅れるということにも納得がいく。
そこで次に Td が長くなったとしてもリアクトル電流が下がらないようにできないか回路を変え て考える。