第7章 マスタープラン策定
前章までに述べたインドネシア国内の地熱開発有望地域に関する地熱資源、電力セクター、自 然・社会環境についての調査結果に基づき、
1)
地熱開発データベース、2)
地熱地域ごとの開発優 先順位づけ、3) 実行計画から構成される地熱開発マスタープランを策定した。7.1 地熱開発マスタープラン
本節では、各種の調査により集積されたデータに基づき策定した地熱開発マスタープランにつ いて記述する。地熱開発マスタープランは主に地熱地域ごとの開発優先順位づけとその開発実行 計画から構成される。各種データの集積により構築した地熱開発データベースに関しては、将来 の公開方法や運用管理の方法とともに次節に述べる。
7.1.1 マスタープラン策定のプロセス
地熱開発マスタープラン策定のプロセスを示すフローチャートを
Fig. 7.1.1-1
に示す。各有望地 域において想定される地熱発電開発事業に関しては、主に第4~6
章に述べた地熱資源、自然・社 会環境、電力需給・送電についての調査・検討結果に加え、後述する想定される地熱開発事業の 経済性に基づき評価した。マスタープラン策定の各プロセスについて概要を以下に述べる。詳細 な評価の方法と結果は次節以下に述べる。(1) 既に開発計画が存在するか既開発で増設の計画が想定される地域
現時点で既に地熱発電開発もしくは増設の計画が存在する地域に関しては、その計画を有す る開発者(主に
PERTAMINA)からの聴取により確認し、その開発計画を最優先とすることと
した。また、現時点では明確な計画は無くとも、既開発地点での増設計画は、新期地点での開 発よりもリスクが少なく経済的な開発ができる可能性が高いことから、既開発地点で将来想定 される計画も優先することとした。(2) 地熱資源評価
インドネシア国内の各地熱開発有望地域について、各種の資源調査・検討結果に基づき、開 発可能な地熱貯留層の存在確度をランク分けし、そのランクを開発優先順位に対応させた。ま た、本調査およびインドネシア側による資源量試算の結果から、開発可能と考えられる資源量 の推定を行った。
(3) 自然・社会環境評価(国立公園による制約)
現在、インドネシアでは国立公園として指定されている地域での地熱発電開発は許可されて いない(ただし、公園外から公園内への傾斜井掘削は可能である)。したがって、国立公園の設 定がある有望地域では、存在する資源量をすべて開発できるわけではない。そのような地域に 関しては、推定される地熱貯留層範囲における国立公園範囲の占める割合に基づいて開発可能 な資源量を減じた。
(4) 電力セクター評価(電力需要による制約)
地熱発電による発生電力は原則的に(ピーク対応ではなく)ベースロードとして使用される ため、ある地域で開発されるべき地熱発電の設備容量はその地域が属する電力系統の最低負荷
により制限される。本評価では、将来の電力需要の増大を考慮して、2025年時点の系統ごとの 最低負荷に基づいて各地域での地熱発電開発規模の上限を想定した。
(5) 地熱発電開発の経済性評価
地熱資源評価の結果に基づく資源量の開発について、想定される開発事業の経済性を評価し た。経済性の指標としては財務的内部収益率(FIRR:Financial Internal Rate of Return)を適用し た。発電開発の優先順位付けは、地熱貯留層の存在確度のランクを優先し、同ランクが同じ地 域について経済性に基づく優先順位を決定した。
(6) 必要な送電線距離
発電所建設に係る送電線の建設は原則として
PLN
の所掌範囲であるため、発電所建設事業に おいて送電線の建設費用は直接的には事業の経済性に影響しないが、全体としてみれば必要と される送電線の敷設が長距離になれば事業実施の障害となりえる。したがって、経済性評価の 補足として、(送電線建設を除く)発電事業の収益性がほぼ同等と評価される地域については、建設が必要と想定される送電線の距離が長い地域の開発優先順位を低くすることとした。
(7) 開発優先順位と開発規模の決定
以上(1)~(6)の諸条件に基づき、各有望地域の開発優先順位と開発規模が決定された。
(8) 各地域での地熱開発計画
決定された開発規模に基づき、各地域の地熱開発計画を策定した。資源特性や電力需要に応 じた発電方式や発電ユニット数を計画した。また、開発内容に応じた開発スケジュールを策定 し、推定される開発コストも示した。
(9) 地熱開発マスタープラン(地熱開発シナリオ)
各地域の地熱開発計画をとりまとめ、2025年で総計
9,500MW
の開発を目標としたインドネ シア全体での地熱開発マスタープラン(開発シナリオ)を策定した。開発のタイミングについ ては、資源的有望性や発電事業の経済性に加え、その地域が属する電力系統での想定需要も考 慮して想定した。なお、マスタープラン達成のために必要な政策・活動等については第8
章お よび第9
章に述べた。(10) 地熱開発マスタープランに適合した電源開発計画
策定されたマスタープランに基づき、インドネシアにおける他の電源も含めた開発の計画に ついて考察・検討した。その検討では、エネルギーミックスや他電源との特性の違いに基づく 役割などについて考察した。
7.1.2 既に開発計画が存在するか既開発で増設の計画が想定される地域
現地調査において
PERTAMINA
やPLN
からの聴取に基づき確認した、2007年6
月現在の実質 的な開発・増設の計画をTable 7.1.2-1
に示す。現有する開発・増設の計画のほとんどは、既存のWorking Area
においてPERTAMINA
もしくは他の民間企業により計画されているものである。そ の他の2
地域(UlumbuおよびMataloko)での開発は、離島地域での小規模開発として PLN
によ り計画されているものである。これら現有計画での開発・増設の合計設備容量は1,847MW
に達す る。以上の現有する開発・増設計画は、既開発もしくは資源調査が進んでいる地域でのものであり、
資源的リスクが少なく、且つ経済性が比較的高いと期待されるものである。したがって、開発計 画としては、他の地域での計画よりも優先して実行されるべきものとみなされる。
また、現時点では明確な計画は無くとも、既開発地点での増設計画は、新期地点での開発より もリスクが少なく経済的な開発ができる可能性が高いことから、既開発地点で将来想定される計 画も優先することとした。このような地域としては
Salak
地点が挙げられる。7.1.3 地熱資源評価
(1) 地熱資源の有望性に基づく開発優先順位
開発有望地域
73
地域(インドネシア側からの提案により当初計画の70
地点に3
地点を追加)を対象に、各地域の地熱資源について評価した。ただし、その
73
地域のうち、50 地域につい てのみ十分な資源調査データが得られ、その資源特性・資源量について評価できた(50地域の うち1
地域は概略の資源量が評価できたのみ;第4
章参照)。開発の優先順位付けに係わる地熱資源評価では、特に高温地熱貯留層の存在する確度により 評価した。その確度については以下の
4
種に区分した。1
:坑井の掘削により地熱貯留層が確認されている(既開発地域を含む)2
:主に適正な温泉水または噴気ガスの化学データに基づく地化学温度により地熱貯 留層の存在確度が高いと判断される地域3
:各種の地球科学的調査の結果や活発な地表地熱徴候の存在から地熱貯留層の存在 が推定される地域Low
:地熱貯留層の存在確度が低いか、存在するとしても比較的低温の貯留層しか存在 しないと考えられる地域(ただし、低エンタルピー流体の利用による地熱発電開 発の可能性はある)また、評価に必要な資源調査データが十分に存在しない地域については、上記の
4
分類が不 可能な地域(NE)として分類した。各地域に関する分類の結果を、後述する資源量の推定結果とともに
Table 7.1.3-1
に示す。ま た、地方ごとでの各区分の地域数は以下のようになった。地熱貯留層存在確度の分類
地方
1 2 3 Low NE
スマトラ
5 8 6 1 12
ジャワ-バリ 9 3 2 2 6 ヌサ・テンガラ 2 1 4 0 1
スラウェシ
1 2 2 0 3
マルク