第 3 章 河川港湾関係 ( 河岸 ) について
3.3 港湾事業者の状況
貨物の輸出入が行われる港に大きく依存している港湾オペレーターや関連事業者た ちは、今後、連邦政府が、どのように港湾の近代化を計るための新しいルール作りを 進めるのかについて深い関心を持っている。
前節のところで触れたように、政府は様々な制度の充実を図っては来たところでは あるが、現在のところ、新港の建設や既存施設の拡張に向けた投資が、州政府の行政 手続きの遅れなどで立ち往生している。連邦政府は、国内外の投資家に、ブラジルの 港 湾事 業 が 法 的 に も安全と安心 し て貰うた め に 、 上記の M P 新法 を 発令し 、港湾事 業への内外からの投資を促したところである。
しかしながら、既に確定している数か所の特定港の必要な入札において、不正・不 信用行為が行われたとされたため、それを理由に裁判所の決定によって、港湾整備事 業は実施されていない。
物流インフラの投資プログラムに織り込まれ、他の港湾のモデルケースとして計画 されたサントスとパラ州における入札も、これらの不正行為による入札中止の影響を 受けている。サントスとパラの計画の遅延状況は 2 0 1 2 年 1 0 月から続いているとこ ろである。
現在、全国では、約 4 0 0 の港湾案件が机上の計画段階にあり、D i l m a R o u s e f f 大 統領は、 ブラジル の 4 0 0 社 の企業に も恩恵を もたらす との説明は行って いるもの の、
自国の計画ではないキューバの M a r i e l 港湾拡張計画に対するブラジルの支援計画に 関心が集まっている。ブラジル政府は、キューバの計画に B N D E S 銀行を通じ 6 8 2 百万米ドル相当の融資を行うとしているため、ブラジルの港湾事業者は、政府の自国 港湾分野に対する軽視・怠 慢である と批判し ている。更に、追 加 2 9 0 百万米ドル に ついても、M a r i e l 経済圏の発展ためにブラジルの銀行から貸し付けが行われる予定 で、自国の港湾への投資が進んでいない状況である。
また、リオ・グランデ・スルにおいては、ブラジル政府がウルグアイ側に建設され る港湾に対し金融支援を行う事を検討しているとの情報もあり、港湾事業者は不満を 募らせている。もしそのようなことになれば、メルコスル共同体の原則に抵触するよ うな形で、ウルグアイ側の港湾がリオグランデ州の港湾と競合することも考えられる としている。2 0 1 3 年、リオグランデ港は好業績を上げたが、依然、水路、陸側、パ ッチオ、倉庫などの施設への相互アクセス改善の投資を必要としている。
このように、実際のところは、ブラジル政府の港湾投資には見通しが立たないとこ ろである。
水位変更に対応する河川港
季節変動の影響を受ける河川港岸壁
浮き桟橋の活用
油圧駆動によるランプ
コンボイ上のトレーラー
第4章 河川舟運促進政策の状況
河川舟運を拡張ししていくに当たり、その障害要因を取り除くために様々の公共・ 民営のプロジェクトがいくつか存在する。
連邦政府が進めて きた経済成長加速化プログ ラム(P A C 1 / 2)が その一例で、河 川 イ ン フ ラセ ク ター に 対 す る投資を 増加さ せ る 目 的 で始め ら れ た 。P A C 1 の 中 で 規定 されている施設の一つは、トカンチンス川の T u c u l u i に関を設ける計画で、この工 事には既に 8 1 5 百万レアルが支払われており、2か所の水門が 2 0 1 0 年 1 1 月に竣工
し、2 0 1 2 年 7 月に稼働を開始したところである。
次の P A C 2 プログラムでは、2 0 1 4 年までに 2 5 億 7 , 5 0 0 万レアル、それ以降、
1 5 1 百万レ ア ル 、総 額 2 7 億 2 , 6 0 0 万レ ア ル の投資の予 測の下計 画 さ れ て お り 、 M a d e i r a 川 水 路 、T a p a j o s 川 水 路 、 サ ン フ ラ ン シ スコ川 地 域 の T o c a n t i n s -A r a g u a i a 水 路 、 パ ラ グ ア イ 川 地 域 とメルコス ル (S u l 地 域 の 水 路)地 域 を 流 れ る P a r a n a – T i e t e 水路が予算対象となっている。
その中には、浚渫用投資、信号機の設置、港湾の改善のための経費、内陸ターミナ ルの適正化、拡張、新規開設等の投資も含まれている。
P A C 2 プログラムは、2 0 1 4 年で終了し、次の P A C 3 に引き継がれることとなる。
P A C 2 で の プ ロ グ ラムが す べ て順調 に 進 ん だ わ け で は な い が 、 ブ ラ ジ ル は 、 こ れ ら の河川舟運の強化も含めたインフラ整備が重要な政策であるため、今後も引き継図き 力を入れて実施されるものと思われる。なお、P A C 3 の内容の発表は 2 0 1 5 年秋とさ れている。
また、農業分野も、このこれらの河川舟運に関する計画のメリット享受への“相乗 り”型で加えられている。これは、地域のサトウキビ産業の発展が背景にある。今日、
河川舟運によって輸送されているサトウキビとその副産物の物流は、州間航路や国際 航路を所轄する機関である国家水運管理局(A N T A Q)の監督下にある。
こ の サ ト ウキ ビの 輸 送 は 、次の 4 地区の 水 運 輸 送 地 域 が 対 象 で あ る:ア マ ゾ ン 水 系地区、パラグアイ水系地区、パラナ水系地区とトカンチンスーアラグアイア水系地 区で あ る 。際 立っ て い る の は 、 パ ラナ水 系 地 域 で 、全 体の 4 4 %が こ の T i e t ê
-P a r a n á ルートで輸送されているところである。そのルートでは、例えば、トランス
ペトロ社が、P r o m e f 計画に沿い、A r a ç a t u b a ( S P )の新規開設造船所での船舶建造 投資を決定もしている。この P A C プログラムと連動したこの河川舟運プロジェクト は、トランスペトロ社が、2 0 1 3 年から 2 0 隻のプッシャータグと 8 0 隻のバージを 使い、エタノールの河川輸送を行う事を前提としたものである。それぞれのコンボイ は、4 連のバージと 1 隻のプッシャー・タグで編成され、7 6 0 万リットルの積載能力 があり、年間輸送量は 4 0 億リットルを想定して計画された。
ま た 国 家 水 運庁(A n t a q)は 、 サ ンタ・カ タ リーナ大学と共同 で 、 国 家 水 運 統 合
計画(P N I H)を策 定した。それは、国内の主要河川航路における貨物の流れの予測
や 2 0 1 5 年、2 0 2 0 年、2 0 2 5 年、2 0 3 0 年時点のアクションプランやそれに伴う投資 を促すための分析調査である。
一般にブラジルにおける物流は、陸上輸送が主流である。ブラジル植物油産業機構
(A b i o v e)の資料によると、国内で輸送された貨物量の 6 0%を陸上輸送で賄ってお
り 、 そ れ は 鉄 道 輸 送 (3 3 %)水 運 輸 送 (7 %)の略 倍と な っ て い る 。 し か し な が ら 、 農業作物や鉱物、燃料などの大量貨物や重量貨物の輸送においては陸上輸送より河川 輸送による輸送が有利であることは、よく認識されているところである。
水運(河川舟運も含む)は、水路を利用したオペレーションと言う事で、前節でも 述べたように環境面での負荷が少なく、燃料消費量を減らし、大気中への汚染物質の 放出も減少、輸送コストを押さえ、その結果ブラジルの生産品の競争力も増大し、輸 送インフラの設置や維持にも少ない投資で済むなどのメリットがあるものである。
しかしながら、投資の観点あるいは水運利用のメリットをしても、農業や鉱業分野 と同じように、サトウキビやその2次製品の輸送においても、他の手段と同様、その 輸送需要の増加を妨げるような障害を防ぐことは、現時点ではなかなか難しい。
河川舟運に関しては、航行を可能にする構造、すなわち浚渫、貨物の積み替えや所 蔵ステーションのような航行を可能にするインフラが整っていない事などが大きな課 題である。言い換えると、河川輸送が、ブラジルにおける貨物輸送分野で大きな役割 を担うまでには、課題が多くあり、まだ相当時間が掛かると思われる。
第5章 まとめ
昨年度に実施した「ブラジル及び近隣諸国の河川における海運及び造船業に関する 現状調査」は、南米地域の河川舟運全般の概況について述べたものであったが、今回 の調査は、南米で最も大きい河川であり、マナウス等北部での拠点都市も存在するこ とから、現在、河川舟運が最も積極的に利用されているアマゾン川水系を中心に、当 該河川舟運の状況、及び当地に関連する造船業関係の状況について調査を行った。
ブラジルは、鉱物資源や食糧資源を豊富に抱える国であり、全般的に、その生産に 見合うインフラが十分に整備されていない状況である。このため、内陸交通のインフ ラ整備については、道路、鉄道に力点が置かれ急速に進めるべく取り組まれていると ころではあるが、河川舟運についても、このアマゾン地区においては、有力な輸送モ ードとして十分な可能性があるものと思料する。筆者としてこの調査結果を通じて、
特に申し上げたいことを下記に記す。
① 河川舟運は、北部・北西部においては特に発展性の余地あり
ブラジルは全般にインフラ整備が不十分で、その整備が全土的に喫緊の課題である が、特に北部・北西部については、インフラが欠如している地域は著しい。一方、北 部北西部には、新たに整備しなくても済むとともに、自然条件を活用した交通機関で ある河川舟運が現在一定の機能を果たしている。また、河川舟運は、人々の生活の中 にも溶け込んでいる面も有する。また、アマゾン水系は、水量が豊富で、河川舟運に 必要な一定の水深を乾季においても概ね確保できるものであり、交通インフラとして の継続性・定時性確保にも条件的には当てはまる可能性がある。北部・北西部は、マ ナウスを中心とした経済圏とともに、農産物等も今後さらに増えることが予想される。