温度が∼108Kになると3個のへりうむ原子核(α粒子)が融合して炭素原子核になる反応、トリブル・
アルファ反応が起こる。これは二段階の反応
4He + 4He 8Be, 8Be + 4He→ 12C +γ
で起こる。8Beは非常に不安定な原子核で、∼ 10−16秒の寿命でもとの二つの He原子核に崩壊する。
そのため、4He と 8Be との間の反応は平衡状態になり、T = 108K, ρ = 105g cm−3 では数の比 が8Be/4He ∼ 10−9になっている。このわずかな量の 8Be にさらに 4He が融合して12Cが生 成される。トリプル・アルファ反応で1グラムのヘリウムが炭素に変わる際に発生するエネルギーは約 6×1017erg で水素燃焼の場合の約1/10である。
トリブル・アルファ反応で生成された炭素の一部はさらにヘリ ウムと反応して
12C + 4He→ 16O +γ
酸素が生成される。したがって、ヘリウム燃焼による生成元素 は主に、炭素と酸素である。12C(α, γ)16O反応は温度が高いほ どtriple-α反応より速く起こるので、酸素はHe-burningの後 期で急激に増える。(右図参照)
ヘリウム燃焼後温度が6〜7億度になると炭素燃焼が起こり,炭素原子核は主に,酸素、ネオンマ グネシウムと少量のシリコンに変えられる。したがって,中心部でのヘリウム燃焼によって生成された 炭素・酸素中心核は炭素燃焼によって酸素・ネオン・マグネシウム中心核となる。 1グラムの炭素が 炭素燃焼によって放出するエネルギーは約4×1017ergである。
温度が15億度以上になると、エネルギーの高い光子がネオン原子核を壊して酸素原子核とα粒子 に分解し、生成されたα粒子がネオン原子核に捕獲されてマグネシウムができる
20Ne +γ → 16O +α; 20Ne +α→ 24Mg +γ
というネオン燃焼が起こる。1グラムのネオンから1.1×1017ergのエネルギーが発生する。
温度が約20億度になると酸素燃焼が起こる、高温なので種々の核反応が起こり,最終的には多量の シリコンと、S, Ca などが残る。1グラムの酸素から放出されるエネルギーは約5×1017erg である。
温度が30億度以上になると、エネルギーの高い光子がシリコン原子核を壊すことをきっかけてして 種々の反応が起こり、もっともエネルギーの低い鉄の原子核が生成されるシリコン燃焼が起こる。1グ ラムのシリコンから放出されるエネルギーは約2×1017 ergである。
炭素燃焼以後の核燃焼では,温度が非常に高いので,ニュートリノが数多く発生する。ニュートリノ は周りの物質とほとんど相互作用をしないで星の外に出てしまうので,核燃焼で生成されたエネルギー の大きな割合がニュートリノによって失われてしまう。
ニュートリノ放射
ニュートリノの散乱断面積σνはおよそ10−44cm2 (電子の散乱断面積はおよそ7×10−25cm2)と小さ いので、その平均自由行程は非常に長い。平均自由行程は、粒子密度をnと書くと、
`ν = 1
(nσν) ∼ 1
(6×1023σν)ρ ∼2×1020cm/ρ(cgs)
と表され、密度ρに太陽の中心付近の値∼102gram/cm3を入れても平均自由行程は太陽の半径の数千万 倍にもなる。従って、ニュートリノは発生すると周りの物質とまったく相互作用することなく光の速度 に近いスピードで星の外に出て行く。そのため、ニュートリノの発生は恒星の物質にとってエネルギー 損失となる。(超新星爆発時の状態は例外で、この際ρ∼1014g/cm3 にもなるので、`ν ∼20kmとなり、
ニュートリノtransfer の正確な取扱が必要である。) ニュートリノは水素からヘリウムが出来る核融合 反応などの中で起こるベータ崩壊の際にも放出されるが、その効果は通常n の中に入れられる。
ν の中には核融合反応に付随しないニュートリノの発生が考慮される。それらには対消滅ニュート リノ、光ニュートリノ、制動放射ニュートリノ、プラズマニュートリノなどの過程がある。
対消滅(pair annihilation)ニュートリノ:高温T >109Kの状態では光子同士の衝突による電子・陽 電子対の生成とその逆反応が起こるが、後者の反応の起こる代わりに僅かの(1 : 10−19)確率でニュート リノ・反ニュートリノ対が生成される反応が起きる。
γ+γ ←→e−+ e+−→νe+νe
光(photo)ニュートリノ:光子が電子に衝突して散乱される過程(Compton scattering)で、光が散乱 される代わりにニュートリノ・反ニュートリノ対が生成される。
e−+γ −→e−+νe+νe
制動放射(bremsstrahlung)ニュートリノ:電子がイオンのつくる電場中で加速度運動をして出す制動
放射(free-free emission)で光子の代わりにニュートリノ・反ニュートリノ対が生成されることが可能で
ある。
プラズマ・ニュートリノ:プラズマ中を伝播する光(角振動数ω、波数k)に対する分散関係式は、
ω2 =k2c2+ω2p
と表される(ωp=プラズマ振動数(ωp2 = 4πe2Ne/me);ω > ωpのとき光は伝播する)。この式と、相対 論的エネルギー関係式、E2 =p2c2+m2c4を比較するとそのような光は~ωp/c2を静止質量とする粒子、
プラズモンとみなすことができる。このプラズモンが崩壊してニュートリノ・反ニュートリノ対が生成 される。
これらの過程が温度と密度のどの領域で重要となるかが下図に表されている。ここで、µeは電子の 平均分子量(mean molecular weight)で、1 gram中の電子の数は(アボガドロ数)/µeで与えられる。(水 素より思い原子核から成る完全電離気体では、µe'2である;1/µe= 0.5∗(1 +X))いずれの過程も、
主系列星の中の状態よりもはるかに高温高密度状態でのみ星の構造に影響を及ぼす。
対消滅ニュートリノは非常に高温の状態で重要となり、プラズマニュートリノと制動放射ニュートリ ノとは、高密度で重要である。白色矮星内部では、多くの場合、T ∼108−107K、ρ∼106−105g/cm3 なので、プラズマニュートリノによる冷却効果が重要となっている。
ウルカ過程: このほかに、進化の進んだ段階で、ウルカ過程によるニュートリノ放出が重要となる場合 がある。これは、原子核の電子捕獲に続いてβ崩壊をしてもとの原子核に戻るサイクル過程で、電子捕 獲の際に電子ニュートリノが放出され、β崩壊の際に反電子ニュートリノと電子とが放出される。
e−+ (Z, A)→(Z−1, A) +ν; (Z−1, A)→(Z, A) +e−+ ¯ν
この過程で原子核に変化はないが、ニュートリノと反ニュートリノが放出され、物質はエネルギーを損 失する。