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3-1 妥当性

本プロジェクトは、ASEAN関連機関、各国政府、メンバー大学の方針やニーズと整合性を有して いるため、妥当性は高いと判断できる。

3-1-1 フェーズ4実施の妥当性

フェーズ3ではそれまでの「人材育成体制の確立」から「高度な研究教育体制の確立」を事業目 的に据えた。フェーズ4も同様に高度な研究教育体制の確立をめざすが、更に「産学連携」と「事 業の持続性」に力点を置くことでネットワークの維持・拡大をめざす。具体的には、大学院プログ ラムではより博士課程の充実と博士号学位取得者の活用、また出口戦略として、これまで事務局を 中心に進めてきた活動の一部を、メンバー大学、同窓会、あるいは学術ネットワークに移行させて いくことを想定している。AUN/SEED-Netはフェーズ4となり、組織的な自律性を高める時期にあ ることから、そうした主旨に添ったプロジェクト目標は極めて妥当である。

3-1-2 政策面での妥当性

国際的な援助動向、ASEAN地域の方針、メンバー国の方針においても本プロジェクトの高等教 育・研究能力強化という方向性は政策的な整合性が高い。

(1)共通課題

2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030までのアジェンダ」の 17の目標と169の目標項目のうち、本プロジェクトは、4つ目の目標である「質の高い教育の 実現」の中の高等教育の質の向上に資するものである。また、間接的には9つ目の目標である

「技術革新と産業基盤づくり」の中のイノベーションの推進を促すものである。

(2)ASEANの政策

ASEANの高等教育では一貫して AUNを通した協力が重視されている。 ASEAN+311により

「協力ワークプラン」(2007~2017年)が採択され、このなかで「AUNを通した大学間のつな がり強化、ASEAN+3 の大学間の単位互換の奨励」「ASEAN+3 の研究者間の交流と研究活動支 援」など本事業のねらいである域内ネットワークを活かした高等教育の能力強化が打ち出され た。また、「ASEAN+3教育行動計画(2010~2016年)」で、「教育機関や教育省との協力、ネッ トワークづくり、調査研究を進める」「AUN を通じて、大学間の連携を強化し、更にASEAN+3 諸国の大学間の単位互換を進め、高等教育を進める」など、AUNを通じた具体的な支援内容が 示されている。また、2016年6月にASEAN+3で承認された 「教育ワークプラン2016~2020」

においては、高等教育機関と産業界とのパートナーシップによる社会経済開発の促進、高等教 育の質の保証システムの推進、教員の能力強化などが優先課題として提示されている。AUNを とおしたメンバー国の高等教育分野の教育・研究能力の強化という本プロジェクトの方向性は

ASEANの方針と一致している。

11 地域交流の緊密なASEANと日本・中国・韓国で協力していく枠組み。

(3)メンバー国の政策 1)先発ASEAN

先発ASEAN諸国の大学は国際的な競争力の向上を重視しており、本事業による大学の国際

化・高度化推進はこのニーズに応えている。具体的には、フィリピンは大学間連携や産官学連 携促進による教育と研究の質の向上と国際的競争力の向上を重視している。タイは大学の国際 的な競争力の向上に加え、産業人材育成をめざしている。マレーシアは大学の国際化を掲げ、

留学生の受入促進と少なくとも2大学の国際ランキング100位内を目標に掲げている。インド ネシアは科学技術・工学系大学の能力向上による国内大学の国際レベルへの引き上げと産業生 産性の向上が重要課題となっている。

2)後発ASEAN

一方、後発 ASEAN 諸国は、まずは大学教育の質の向上をめざしている。カンボジアでは

ASEANの基準に沿った科学技術・工学プログラムの強化と産業のニーズに沿った人材開発を

目的とし、ラオスではASEANやその他の国との国際共同研究の増加、労働市場の要求に応え る高等教育の発展をめざしている。ミャンマーでも国際基準を満たす教育環境の整備と大学教 育の質の向上を目標に掲げている。ベトナムも同様に、大学教育の質の向上を重視している。

したがって、大学の教育の質向上をめざす本事業は後発ASEANのメンバー大学のニーズとも 一致している。

(4)メンバー大学のニーズ 1)先発ASEAN

先発ASEANのメンバー大学のニーズは国ごとに多少の焦点の違いはあるものの、主に国際

化と産学連携の促進を重要課題としており、本事業との整合性は高い。マレーシアは留学生の 増加による国際化と、産学連携の促進による研究費の確保が大きなニーズとなっている。タイ は留学生や国際プログラムの増加による国際化と産学連携による産業人材育成をめざしてい る。フィリピン・インドネシアは国際(共同)プログラムの推進による国際化と産学連携促進 を目標に掲げている。またほとんどのメンバー大学は国際的な大学ランキングの向上をめざし ている。

2)後発ASEAN

ミャンマー・ラオス・カンボジアでは高位学位を取得している教員の割合は高まっているが、

分野によっては依然教員の高位学位取得に関するニーズが大きく、教育能力の向上が最優先課 題となっている。一方、ベトナムでは博士号を取得した教員が増加してきていることから、産 学連携の促進や研究能力の向上、国際的な研究社会への参加をニーズとして挙げている。した がって、本事業は後発ASEAN諸国におけるメンバー大学のニーズとの整合性も高い。

(5)日本の援助方針との整合性

日本政府の平成29年度の3つの開発協力重点方針の一つである「途上国とともに質の高い成 長をめざす経済外交・地方創生への貢献」という重点方針の中で「日本型工学教育をはじめと する日本の強みを発展途上国に普及させるとともに、これを活かしながら発展途上国の人材育 成に重層的に貢献する」ことを掲げている。特に、アジアにおいては産業人材育成イニシアテ ィブ(留学等を通して4万人の産業人材育成を行う)に沿った協力の促進を求めている。産業

人材を供給する ASEAN の大学の能力強化と産学連携をとおした産業人材育成という点から、

本プロジェクトは直近の日本政府の方針に合致したものといえる。

(6)ターゲットグループの妥当性

フェーズ3のメンバー大学26校、日本の支援大学14校から、フェーズ4の参加大学に変更 はない予定である。フェーズ4に関してメンバー大学に対する要望調査を実施したなかで、全 メンバー大学が、強い参加継続意思を示すとともに、留学費用などのプログラムについては、

授業料免除、留学費用の一部負担などのコストシェアリングにも同意している。こうした点か ら、26校を対象とすることは妥当である。

(7)アプローチの妥当性

学術ネットワークの強化を通してメンバー大学の教育・研究能力の向上を図るという

AUN/SEED-Net の基本方針は、メンバー国・大学から高く評価されている。また、既に 1,400

名を超えるASEANの留学生がAUN/SEED-Netの同窓生となり、留学等を通して醸成された師 弟関係や地域会議等を通して形成された研究者間のネットワークも強化・拡大している。フェ ーズ4においては、そうして形成されたネットワークをより持続的な形で維持できるようにす ることをめざしており、その方向性も妥当といえる。

3-2 有効性

本プロジェクトが支援する多様なネットワークが維持拡大できる可能性は高く、メンバー大学によ る関与度も高まることが見込まれるため、「AUN/SEED-Netのメンバー大学間のネットワークの持続 的な維持・拡大」という目標は達成できる可能性が高く、有効性は高い。

本プロジェクトの目標は AUN/SEED-Net のメンバー大学間のネットワークが持続的に維持・拡大 されることであり、AUN/SEED-Netを通して形成された組織的・人的なネットワークの規模がネット ワークの到達度を測る指標、メンバー大学によるコスト負担の増加が持続性を測る指標となっている。

具体的には、大学院プログラムではより博士課程の充実と博士号学位取得者の活用、また出口戦略と して、これまで事務局主導で進めてきた活動の一部を、メンバー大学、同窓会あるいは学術ネットワ ークに移行させていくことを想定している。

基本計画でも述べたとおり、ネットワークの規模拡大については、フェーズ4で導入される「国際 共同教育プログラム」では、メンバー以外のASEAN・日本の大学のネットワークへの参加が期待さ れること、分野別の地域会議への新たな参加者の増加、同窓会組織を通した AUN/SEED-Net 同窓生 の参加促進などにより、ネットワークに参加する大学・教員の参加の増加が見込まれる。また、「国 際共同教育プログラム」へは企業による協力(企業技術者や学生への奨学金給付、講師派遣、資機材 の提供など)を見込むこと、コストシェアリングについても、奨学生受入のホスト大学によるコミッ トメント(修士・博士課程の学費免除、修学期間延長者の学費免除、事務費用のホスト大学負担引き 受けなど)や送り出し大学による航空賃やビザ取得費用の負担などについて前向きな意見を得ている ことから、フェーズ3以上にメンバー大学のコスト引き受け率が高まる予定である。以上の点から、

プロジェクト目標の達成は十分に可能である。

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