SAGARPA (Federal)
5. プロジェクトの概要案
5−1 協力の方向性
長年のメキシコ農村の停滞、コーヒー価格の下落などのマクロ経済の悪化により、ソコヌスコ 地域の農村の社会・経済の状態は悪化している。特にチアパス州をはじめとする南部諸州は、マー ジナリティの度合いの高い地域であり、JICA のメキシコ国別事業実施計画の重点分野である「地 域・貧富の格差の是正」の重点対象地域である。
また、メキシコの多くの地方コミュニティの抱える共通の課題として、米国・北部国境地帯へ の男性労働者の移民流出がある。ソコヌスコ地域においても、この移民流出が深刻であり、農村 住民の所得向上・生活の安定のために、農村女性層の担う役割はますます重要な物となっている。
また、広く農村生活の改善のためには、農業技術一般のみならず、保健衛生・栄養・教育などの 他分野の改善・向上が必須であり、その実現にあたり女性が重要な役割をもつことはいうまでも ない。C/P 機関である SAGARPA が推進する「農村開発プログラム 2002」においても、農村女性組 織強化を支援するプログラムが 3 本柱の 1 つとなっている。
農村開発を総合的に考えた場合、第一次生産活動のみに焦点をあてるのではなく、第一次生産 者を生産連鎖の過程に参画させ、付加価値創出による所得機会の拡大を進めることが有効である。
家庭零細企業規模の農村住民の組織化を行ったうえで、小規模のグループの資本化を促進し、新 たな付加価値創出のための事業を起業することが、所得向上の有効な手法となる。SAGARPA の農 村開発プログラムの方針を受け、チアパス州では「農村女性プログラム」を実施中であり、組織化 された女性グループの行う零細規模の経済活動に対し、少額融資の支援を行っている。現行のこ れらの女性グループの活動は、必ずしも生産的ではなく、活動を継続させ、農村社会の所得向上 に深化・浸透させていくには、組織強化、活動内容の精査、少額融資マネージメント能力の向上 が重要であり、プロジェクトによる支援が有効となる。
プロジェクト実施地域であるソコヌスコという限定された地域内においても、コミュニティご とに広さ、人口、土地所有形態、生産作物、経済活動、外部からのアクセス、女性組織化の度合 い等々が異なる。プロジェクトの実施にあたっては、コミュニティの多様性に配慮しながら、コ ミュニティごとの農村女性のタイポロジーの違いに配慮しつつ、農村女性組織強化にも焦点をあ てたプロジェクトを計画・立案・運営・評価することが重要となる。
5−2 プロジェクト・デザイン・マトリックス
上述の協力の方向性を受け、プロジェクト対象候補の 5 コミュニティにおいて、「農牧業農村開 発」短期専門家が、さらに詳細な農村社会調査、PCM ワークショップによる問題分析を行い、PDM
- 83 -案の作成を行う予定である(2002 年 8 月)。そのため、本調査終了時点においては、PDM 案の作成 は行わなかった。
5−3 日本側投入計画
プロジェクト・デザイン・マトリックスは、本調査団終了後に「農牧業農村開発」短期専門家に よって実施される PCM ワークショップ等によって、第一次案が作成される見込みである。本調査 団においては、協力の方向性を受け、取りあえず日本側投入のうち、専門家派遣について検討を 行った。
長期専門家については、「組織運営」及び「小農複合化支援」専門家の 2 名体制が必要となろう。
これはコミュニティごとの農業経営形態・農村女性のタイポロジーに応じたパイロットプロジェ クトを実施するためである。下図のタイプ I のコミュニティにおいては、農業生産そのものの活動 を見直し、活性化することが優先されるべきであり、熱帯地域の農業技術の専門性を有する「小農 複合化支援」日本人専門家による技術指導が有効である。技術指導の中味によっては、組織化され た女性グループへの技術移転が望ましい場合も想定され、その際には、「組織運営」専門家がサ ポートすることができよう。これに対し、タイプ III のコミュニティにおいては、農業生産活動そ のものが停滞しており、容易な活性化の見込みがないか、又は比較的市街地に近く、農村住民が 農地からの収入よりも市街地での雇用等から収入を多く得ている場合などが考えられる。この場 合、農業外収入獲得のために、女性組織化による零細企業が有効であり、「組織運営」専門家の活 動が優先される。
タイプ I
(農業専業)
タイプ II
(農業兼業)
タイプ III
(農業休止)
多 い
普 通
少ない
少ない?
普 通
多 い
多 い
普 通
少ない
→移民 多い?
高 い
普 通
低 い
高 い
普 通
低 い
低い?
普 通
高 い
自作農地での生 産性・収益向上 のための組織化
既存マイクロク レジットの積極 活用
「小 農 複合 化 支援 」 専 門 家 に よ る 適 地 農 法 、 適 作 物 の 決 定、導入から。
「組織運営」専門家 に よ る 女 性 組 織 運 営 指 導 、 女 性 零 細 企業家育成。
表 5 − 1 農村女性のタイポロジー
自作農地 家計への 生産年齢 貧困度合 女性の家 女性組織 女性組織強化の 長期専門家の役割 収入 女性労働 の男性 い 事労働負 化の度合 ための協力の方 分担
力の貢献 荷 い 向性
- 84 -今回の調査においては、5 コミュニティをプロジェクト実施対象候補としているが、コミュニ ティごとの農村女性タイポロジー分類は概略下記のとおり。
図 5 − 1 プロジェクト対象候補コミュニティごとの農村女性タイポロジー分類
また本プロジェクトは、農村住民の生活改善・所得向上を目標とすることを検討しているが、実 際の農村会計は収入源別に、下図のとおり、自作農地収入、移民した家族構成員からの仕送り収 入、季節労働収入及び女性による非農業活動による収入によって構成されているものと思われる。
タイプⅠ タイプⅡ タイプⅢ
PAVENCUL
RUBEN JARAMILLO
LOS CACAOS
SAN RAFAEL
TUZANTAN
「小農複合化支援」 「組織運営」
長期専門家 長期専門家
Mig.(仕送)
Sub.(自作農地収入) Jor.(季節労働) Sev.(女性非農業活動)
家計=
図 5 − 2 農村住民の家計構成要素とプロジェクト投入
したがってプロジェクトによって所得向上を図る場合、このような家計の構成要素に応じた複 合的なアプローチをとる必要がある。投入予定の 2 人の長期専門家の活動範囲についても、この アプローチによってある程度区分けされよう(付属資料 5 − 4 参照)。
- 85 -(1)長期専門家
① 組織運営
② 小農複合化支援
指導科目名 小農複合化支援
派遣期間 派遣目的
期待される成果 活動内容
24 か月
ソコヌスコ地域の対象となるコミュニティにおいて、組織化を行い、農業技術の向上、増 産等を通じて現金収入の向上を図る。また、農村女性を中心に組織化を進め、それぞれの 地域に適した自家消費用農産物生産(野菜、小家畜等)や小規模事業を実施することで、女 性のエンパワーメントを創出し、農村の総合的な生活の向上をめざす。
対象となる村で住民が組織化され、それぞれの地域に適した小規模事業が実施される。
プロジェクト対象コミュニティにおいて
1 対象となる地域、コミュニティ、グループの状況を住民とともに調査・分析する。
2 組織化のためのワークショップを実施する。
3 農業生産物の増加に必要な技術指導を受けるためのグループを形成する。
4 協力機関等が農業生産にかかる技術指導を実施する体制づくりのために助言・指導をす る。
5 女性を中心とした組織による収入向上・支出削減のためのミニプロジェクト(小規模事 業、自家消費用農産物の生産等)を住民とともに検討する。
6 それぞれのミニプロジェクトの実施のためのグループを形成する。
7 小規模事業の企画・運営・管理に必要な技術・知識を指導する。
指導科目名 組織運営
派遣期間 派遣目的
期待される成果
活動内容
24 か月
技術協力プロジェクト「小規模生産者支援計画」の活動の一環として、農業収入の増加や、
女性組織グループ中心による各コミュニティでのプロジェクト実施のために、コミュニ ティ内の営農形態を分析のうえ、営農技術的な支援を行う。最終的にはプロジェクトの実 施により、農家経営の複合化が図られ、農家家計が安定することを目的とする。
農業生産の増加、農家経営の複合化による収入向上、及び女性グループによるプロジェク トの実施による支出削減が実現する。
プロジェクト対象コミュニティにおいて
1 地域農業状況を調査・分析し、営農手法、農産物加工、流通体制、栽培農作物等に関し て、改善策を検討する。
2 対象コミュニティの自然・社会環境に適した農作物、農業技術指導をする。
3 女性グループにより実施可能な農業プロジェクトを検討する。
4 女性グループによるミニプロジェクトの実施計画案の策定をサポートする。
5 上記ミニプロジェクトの実施のための、技術指導をする。