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他のリーグの状況

第2章 プロサッカークラブのガバナンス

第3節 他のリーグの状況

ンの経営参加を図る仕組みである。サポータートラスト内部での意思決定は、一人1票の 民主的方法がとられている。サポータートラストは、サポーターがクラブの顧客(消費者)

であり、投資家(株式及び資金貸出)であり、経営者(経営参画)にもなるスキームであ る。

利点として①ファンの経営参加が可能となり、零細個人株主でも経営意思決定に関与で きる。②クラブはファン、地域からの資金面、営業面で支援を受けることができる。

欠点としては、①資金力が小さいため、大手のクラブの経営再建に活用できるか不明で ある。②財政面、トラスト設立・運営において、独立アドバイス機関であるサポーター・

ディレクト経由で政府が支援しているため、将来的に自立して運営できるかどうか不明で ある。③クラブの実力にあったクラブ経営(選手補強においても保守的な財務運営)を行 うため、それがクラブの成績に結びつくか実証されていない。サポータートラストについ ては、第4章で詳しく述べることとする。

れている。すなわち、ドイツではクラブがリーグの運営の責任を負っている。1部・2部 の業務運営のために、ドイツリーグ連盟は別途ドイツサッカーリーグ会社(DFL)という私 的会社を創設している。この DFL が実際のリーグ運営の実務を行っている34

ドイツでは、伝統的にクラブは非営利会員組織である。そのため、財務情報の公開は制限 されていた。しかし、1998 年以来、会員組織の子会社有限会社として組織変更が可能とな り、リーグ 36 クラブ中、17 クラブが組織変更し、上場クラブも出現した。ドイツのクラ ブはたとえ上場しても、非営利の会員制組織がクラブを所有し及び経営意思決定を行う。

そのための仕組みとして、サッカー協会(DFB)規則で会員制組織が 50%+1 票を保持するこ とによって、個人に過半数の株式を持たせない。これによって外国人所有を制限している。

こうした仕組みによって、ドイツリーグでは、売上高人件費率は 39%と大変低いこともあ り、全クラブが黒字であり、健全経営を維持できている。この基調は 1963 年ブンデスリー ガ設立以来続いており、倒産したクラブは未だない。課題は、(各国でプレーするドイツ人 選手を集める)国の代表チームは強いが、ドイツリーグの個別クラブは財政面から有力選 手を獲得でする競争力はなく、クラブレベルは強豪とはいえないことである35

ドイツ・ブンデスリーガで注目されるのは、選手の賃金決定方式である。通常事前に決ま る(ex ante)基本給与とチームの成績にリンクする変動給与部分(選手年間給与の5~30%)

で構成されており、実証研究によれば、財政状態の悪いクラブでは変動部分が大きく、豊 かなクラブでは小さくなっている。一般的には、変動給与の割合が大きいほど、チームの 成績に良い影響を与える。勿論、ヨーロッパサッカーの財政危機は、ブンデスリーガにも 影響を及ぼしており、財政状態が厳しいクラブが一部にはあるが、最終的には倒産の懸念 はない。一つには、クラブの監督が賃金抑制に成功しているからである。もう一つは政治 のエリートのうち篤志家会員が銀行に公的保証とコベナンツ(財務制限条項他)を提供し、

そしてクラブのスタジアム建設に補助金を拠出したりすることで、クラブを救済するから である36

2)フランス

フランスは、プロスポーツの管理でユニークな方法を採用している。目的は、シーズン

34 Woratschek et al(2007)p.163-185

35 Hamil et al(2010):p.30

36 Frik(2006) pp.492,495

途中でのクラブ倒産を回避することである。このために、フランスサッカー連合の内部委 員会である国立管理局(DNCG)が「フランスサッカーの警察官」の役割を担って、国の監 査役としてクラブの会計をチェックする。もし違反が発見された場合には、罰金、選手の 新規獲得禁止、降格などの制裁を加える37

クラブは、1901 年法(freedom of association law)に縛られ、伝統的にクラブは非営 利組織とされてきた。しかし、1999 年法改正により、クラブはプロスポーツのための公開 会社(Societe anonyme sportive professionalle)になることが許可された。その結果、

有限会社となり、収益を挙げて取締役へ報酬支払いが可能となった。公開会社になったに もかかわらす、当初には政府はクラブの上場を許可しなかった。しかし、その政府の対応 は自由な資本移動を認める EC 条約違反とされ、2006 年にようやくクラブの上場が認めら れたが、現状2つのクラブしか上場していない。依然としてクラブは一人の個人株主が所 有する形態が中心となっている。

フランスもドイツと同様に、政府の介入もあり全クラブが黒字を維持できている。個別 クラブレベルでは、専用サッカー場ではなく公営スタジアムを使用しているため、競争力 が低い38

3)イタリア

イタリア産業全般と同様、クラブは富裕な個人、ファミリー、企業の傘下にある。私的 会社が多い。しかし、リーグの中には Juventus,Lazio,Roma と3クラブが上場を果たして いる。問題は上場株式の浮動株数が少ないために、一般投資家が購入できないことがある。

どこのクラブも赤字経営で、クラブ所有が勲章(Trophy asset)との位置づけとなってい る39

サッカービジネスで考えると正当化できない投資も、政治的に、商業的に、または産業 として広い視野から見れば理解できる。これら富裕なビッグクラブは今後も引き続き財務 資源を投資することが可能であるが、それはオーナーのイメージ、消費者とのコミュニケ ーション、そして PR の分野での「外部経済」を勘案しなければならない。このようなクラ ブ経営を行っているため、公営スタジアムでプレーしていることもあり、英国リーグと比

37 Desbordes(2007)pp.85-107

38 Hamil et al(2010) pp.30-31

39 前掲書 pp.30-31

較するとイタリアリーグは遅れている。特にスタジアム・マネジメントとクラブのブラン ド・マネジメントが問題である40

4)スペイン

スペインのクラブは会員制組織を基本としていたが、リーグのリーダーシップの欠如、

商業化の圧力、コスト高騰等によって、クラブが財政危機に瀕したことを契機に、1990 年 に政府は SAD(a joint-stock sporting company:有限責任の合同株式スポーツ会社)制度 を導入した。その際、スペイン政府はスポーツ法 10/1990 を制定し、赤字クラブに資金援 助し赤字を解消した。その結果、42クラブの大多数が、財政難を理由に会員制組織から SAD に転換した。会員制クラブとして残ったのは算定期間に黒字を維持したクラブだけで、

FC Barcelona 等4クラブだけが、一人 1 票の民主的ルールに基本をおく会員制組織として 継続を許された。英国で始まったサポータートラストは、FC Barcelona 等の会員制組織を 目標にした動きである41