4.1 はじめに
プレキャストコンクリートは、一般的に図 4.1.1に示される工程により製造さ れる。つまり、工場ラインと呼ばれる「型枠設置→鉄筋配筋→コンクリート打 設→蒸気養生→脱型→型枠設置」をベルトコンベア的に移動しながら製造され る。まさしく自動車の組立工場と同じマニファクチャーシステムである。自動 車の組立ラインの場合は部品を組立てるだけでコンベアの最後には製品(自動 車)が完成するが、プレキャストコンクリートの場合は生ものであるまだ固ま らないコンクリートを硬化させながら製品化を行うものであり、特に「蒸気養 生」という強制的に硬化させる工程を踏まなければならないことが特徴である。
この「蒸気養生」を経ずに自然環境下で「自然養生」により硬化させることは 可能であるが、この場合現場打ちコンクリート同様に硬化に 28日程度の時間を 要するため、プレキャストコンクリートは強制的に蒸気養生を施すことで硬化 時間を約14日(又は 7日)の半分に短縮させ、いわゆる、製造工程の短縮化を 蒸気養生を行うことで実現しているのである。この硬化時間の短縮こそがプレ キャストコンクリートの最大の利点特徴である。
本章では、プレキャストコンクリートの製造に関する特徴を記すとともに、
製造過程における課題について抽出する。なお、ここでは、土木分野の工場製 造のコンクリート製品を中心に述べるが、建築やサイト製造等についても適用 可能であることから、一般名称のプレキャストコンクリートと呼ぶことにする。
材料入荷
図4.1.1 一般的なプレキャストコンクリート工場の工程
生コンプラント
型枠設置 配筋 生コン打設 蒸気養生
脱型
材料ストックヤード
製品ストックヤード 出荷
工場ライン
72 4.2プレキャストコンクリートの分類
プレキャストコンクリートは、平成 16(2004)年以前は製品種類毎に JIS規格 が制定されていたが、平成 16(2004)年の JIS 体系化の変更により構造形態ごと の分類[4.1,4.2,4.3]にまとめられた。表 4.2.1 にプレキャストコンクリートの分 類とJIS規格の分類変更を示す。
JIS規格の分類変更の目的は、従前の分類は使用する目的に応じて、必要な形 状・寸法の製品に対して規格化したもので、いわゆる、個別の製品毎に仕様規 定を示したものであった。一方、JIS改正後の考え方は、性能規定化することで、
製品の多様性への対応と利用者の要求する形状・寸法への拡大をし易くしたも のである。仕様規定では、すでに性能が満足し個々に性能を照査する必要がな いことから、プレキャストコンクリート製造会社の負担が少なく製造すること が可能なことから技術力等の必要性がない。しかし、性能規定化は、利用者の 要求による形状・寸法に加えて性能も個別に設計又は照査することになり技術 力が必要となり、旧態依然の技術力を軽視した企業はその対応が困難となり淘 汰が進んでいくものと考えられる。こうした JIS 改正は、社会成熟した今日に おける多様性の要求や高度成長時代と異なり発注数も少ないことからある意味 時代にマッチした考えともいえる。
一般に国等が発注する施設等における技術の性能規定化では、機能や性能を 上位基準により提示され、そしてその性能を照査する技術基準を下位に整備す る必要があるが、今回の JIS製品改正では、この技術基準が制定されていない。
こうした技術基準を制定しない完全性能規定化の手法も世界的には存在するが、
国内ではこの形態は採っていなく必ず技術基準が制定されている。したがって、
設計者やプレキャストコンクリートメーカは、製品の性能が設計基準を満足し ているかどうかを科学的技術的に示して、その妥当性を評価する必要があり、
現実的に不可能な要求を行っていることから、早急に再度改正するか、又は技 術基準を整備することが求められる。
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表4.2.1平成 16年に行われたプレキャストコンクリートの分類変更[4.1,4.2,4.3]
土木コンクリート製品の種類
主な用途 大分類 小分類(旧 JIS) 新JIS分類1
暗きょ類
・無筋コンクリート管(A5330→A5302) A5371
道路などの下に設置される下水道、用排水路、通 路(歩行者、自転車などの車両)などの構成部材。
農業用水、工業用水、上水など圧力管路の構成部 材。地下鉄道、地下道路、地下河川、共同溝、上 下水道などシールド工事における覆工部材。
・鉄筋コンクリート管(A5302)
・遠心力鉄筋コンクリート管(A5304)
・組合せ暗きょブロック(A5328)
・鉄筋コンクリートボックスカルバート
・アーチカルバート、組立式アーチカルバート
・推進管、シールド用セグメント
A5372
・プレストレストコンクリートボックスカルバート
・プレストレストコンクリート管 A5373
舗装・境界ブロック
・平板(A5304)
・境界ブロック(A5307)
・インターロッキングブロック
A5371 道路の舗装、境界などの構成部材。
路面排水溝類
・L形側溝(A5306)
・U形側溝(A5305)
・上ぶた式U形側溝(A5334)
・落ちふた式U形側溝
・皿形側溝
・排水性舗装用側溝縦断管
・浸透透水性側溝
A5372 道路の側面に設置される路面排水路の構成部材。
擁 壁 類
ブロック式(分割式)
・積みブロック(A5323)
・大型積みブロック
・組立土留め、井げた組擁壁、補強土壁
A5371 用排水路・河川・港湾などの護岸、道路、宅地造
成などの土留め壁の構成部材。
壁体式(一体式) ・鉄筋コンクリート矢板
・L形擁壁(A5338)、逆T 形擁壁、控え壁式擁壁 A5372
1 JIS A5371-2016プレキャスト無筋コンクリート製品(平成16年改定時は、無筋コンクリート製品)
JIS A5372-2016プレキャスト鉄筋コンクリート製品(同上 鉄筋コンクリート製品)
JIS A5373-2016 プレキャストプレストレスコンクリート製品(同上 プレストレストコンクリート製品)
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・プレストレストコンクリート矢板
・PC壁体 A5373
くい類
・鉄筋コンクリートくい
・節くい
・鋼管複合くい
A5372
各種構造物の基礎くいの構成部材。
・プレストレストコンクリートくい
・プレストレスト鉄筋コンクリートくい A5373
マンホール類
・マンホール側塊
・組立マンホール
・電気通信用マンホール
・地下埋設物用マンホール
下水道、電気通信などのマンホールの構成部材。
用排水路類
・矢板(A5325)
・フリューム(A5318)
・組立土留め
・L型水路
・組立さく(柵)きょ
ほ(圃)場整備、野地造成における用排水路の構 成部材。
共同溝類
・ケーブルトラフ 地中、地表などに敷設する各種ケーブルを保護す
るための溝形の構成部材。
・共同溝、電線共同溝、洞道 防 護 管 き ょ ( 電 気 、 ガ ス 、 水 道 )、 配 管 、 配 線 な どの構成部材
ポール類 ・プレストレストコンクリートポール
送電、通信などの各種電線露用ポール。
・照明用化粧ポール
橋りょう類
橋げた
・道路橋用橋げた
・道路橋橋げた用セグメント
・軽荷重スラブ用橋げた A5373 道路橋の橋げたなど、橋りょうの構成部材。
床板 ・道路橋用プレキャスト床版
・剛性床板プレキャスト板
貯水施設類
・雨水貯留施設
・農業用貯水槽
・防火水槽
・耐震性貯水槽
防火用水、飲料水など各種用水を貯蔵・貯留する ための施設の構成部材。
防災施設類 ・ロックシェッド 落石、雪崩などから道路などを保護するための防
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・スノーシェッド
・スノーシェルター
災施設の構成部材。
のり(法)面被覆ブロック類
・張りブロック A5371
河川堤防ののり面、切土・盛土ののり面の被覆の 構成部材。
・のり枠ブロック
・連節ブロック
緑化ブロック類 ・植栽コンクリート
・ブロックマット
河川堤防ののり面、切土・盛土ののり面の緑化(植 栽)のためのブロックなど
鉄道施設類 ・まくらぎ(E1201,E1202)
・プラットフォーム用製品、壁高欄 鉄道(軌道、駅舎など)を構成する部材
その他 小分類に記載されていない製品
注)旧JISとは、2004年 改訂以前の規格を言う
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4.3 プレキャストコンクリートに用いられる材料と配合計画
プレキャストコンクリートに用いられる材料は、基本的にレディーミックス トコンクリート(以下「生コン」という。)で用いられる材料と同じであるが、
施工過程での養生温度が生コンは一般環境雰囲気下(=外気温)での養生を行 うことに対してプレキャストコンクリートは最高温度65℃を含む蒸気養生履 歴[4.4]を負荷させるため、従来から化学混和剤の組成が異なっていた。また、
高温度依存性が高いフライアッシュも採用の可能性は高い。しかし昨今の高流 動化コンクリートの採用が増えるにしたがって、化学混和剤の組成も同じもの に変わってきている傾向にある。
プレキャストコンクリートに使用する材料で特に注意すべき点は、高温蒸気 養生環境の違いによる材料の収縮膨張特性や鉄筋・型枠等による拘束ひび割れ の発生に注意を払う必要がある。以下にプレキャストコンクリートの特徴や現 場打ちコンクリートとの違いについてまとめた。
4.3.1使用材料
(a)セメント及び混和材料
プレキャストコンクリートに用いられるセメントは、現場打設コンクリート と同じ普通ポルトランドセメントが用いられる。それは、プレキャストコンク リート会社に中小零細企業が多いことからセメントメーカー等の支援を受けた りして安価な材料を選択し製品製造コストを削減しなければならない背景があ り、当然設備やセメントサイロの数が少ないこと、さらに用途や製品によりセ メント材料を分けるなどの手段はほとんど取られていない。
また、高炉セメント微粉末やフライアッシュ等の混和材料は一般には使用さ れていないが、周辺環境への振動騒音への配慮や施工性を考慮した高流動コン クリート化による石灰石微粉末使用が一部で用いられている。なお、北陸三県 など一部の地域では、発注者、電力メーカーとコンクリート製品メーカーの3 者が連携してフライアッシュの使用に努めている。フライアッシュは収縮特性 に優れているが、若材齢時強度発現に乏しいため、配合上、セメント代替品の 内割置換ではなく外割置換となりコスト縮減のメリットが期待できないことか らリサイクル認定やグリーン調達などの環境対策としての取り扱いに限られて いる。
(b)天然骨材及びリサイクル骨材
プレキャストコンクリートに用いられる骨材は、原則天然骨材に限られてい る。その理由は蒸気養生履歴を負荷させるため、リサイクル骨材(高炉スラグ 骨材、一般溶融スラグ骨材、再生骨材など)の使用による性能変化について未 だ知見が得られていないためである。天然骨材において注意すべき点は吸水率