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プレキャストコンクリートに関する現状及び既往の研究 14~43 頁

ドキュメント内 入江 正明 (ページ 35-65)

2.1 はじめに

プレキャストコンクリートとは、一般に工場生産ラインにおいて製造される コンクリートを呼ぶ総称であり、コンクリート構造物の建設において、現場打 設のレディーミックストコンクリート(以下「現場打ちコンクリート」という。)

と双璧をなすものである。また、プレキャストコンクリート構造物は土木及び 建築分野の両方の分野で使用されるが、主に土木分野に使用されるものはプレ キャストコンクリート製品と呼ばれている。このことから JIS プレキャストコ ンクリート製品規格ではプレキャストコンクリート製品は土木分野で使用する ものに限っていると明示している。なお、本論文では、主に土木分野のプレキ ャストコンクリート製品を対象とするが、建築分野へも適用可能な技術である ことから、プレキャストコンクリートと呼ぶことにする。

プレキャストコンクリートの特徴は、剛性と寸法精度が高い鋼製型枠を使用 し、適切な蒸気養生履歴を負荷させ管理された室内工場で製造されるのが一般 的である。したがって、コンクリートの寸法やかぶりなどの精度・品質が高く、

さらに現場打ちコンクリートに比べ短期間に大量生産できるために廉価に製造 できるメリットがある。特に、現場打ちコンクリートと違いプラントから現場 への運搬過程や打設後の自然の外気温などの環境雰囲気に影響を受けずに人工 的に管理された環境雰囲気により製作することができる、いわば「製造管理型 製品」と考えることができる。このことは昨今の団塊世代の熟練技術者の大量 退職や若年層のコンクリート現場離れなどによる高度技術者の不足による現場 打ちコンクリートの品質低下問題に対して、プレキャストコンクリートは工場 で管理された環境下でマニュアルに従ってマニファクチャー的に行うことが出 来るため、短期間での人材教育により高品質のコンクリートの製造が可能であ るなど今日の成熟した社会でのコンクリート界にとっての救世師になり得ると 考えられる。

一方、世界的環境問題として CO2排出削減が叫ばれている今日、コンクリー ト界でも当然、環境問題に対して背を向けることはできない。特にセメント業 界ではセメント原材料へ産業副産物の使用が推進されており今日では1トンの セメント製造当たり 400kg を超える原材料及び燃焼材料が用いられている。ま た、グリーン調達としてリサイクル材の高炉スラグ微粉末やフライアッシュな どの混和材料の多量添加も求められており、従来のバージン材料による高品質 材料使用コンクリートからリサイクル材料使用コンクリートへの転換がコンク

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リート界でも求められている。しかし、これらの添加物の多量混和は長期耐久 性能の観点で品質低下問題[2.1]が危惧されており、特に、自然環境雰囲気下で の現場打ちコンクリートでは複合的な劣化要因が存在することから厳しい状況 に曝されている。一方、プレキャストコンクリートは、工場内で外気温、水温 さらに蒸気養生履歴などすべての項目で人工的に管理して製造できる「製造管 理型製品」であるため、これらさまざまな混和材料を添加してもその特徴を加 味することが比較的容易にできると考えられており、今後はこのような成熟社 会での救世主になりうるコンクリートになっていくものと期待される。なお、

政府が平成 21年国会に提出を予定していた地球温暖化対策基本法案(仮称)で は、セメント業界全体で環境税負担が年間300億円程度(販売額の約6%に相当) と見込まれ、プレキャストコンクリート業界でも年間 40億円程度となり、ます ます市場環境の悪化が見込まれ、プレキャストコンクリートのコスト縮減など の合理化が必要となってくると思われる。

2.2プレキャストコンクリートの歴史変遷 (a)プレキャストコンクリートの歴史変遷

プレキャストコンクリートは、主に社会基盤施設の構築時に用いられ道路や 橋梁さらに港湾河川などの土木分野と建物構造フレームや外壁、外構などの建 築分野で使用されている。表2.2.1は、土木及び建築分野で使用されるプレキャ ストコンクリートの規格・基準を示したものである。この表にあるようにプレ キャストコンクリートは、土木分野と建築分野ではその規格が異なっている。

これは、土木系プレキャストコンクリートは、公共工事が基本であるため、全 国に数多く設置するため製品に対して一律または標準化が求められてきた。ま た中小の製造会社が中心であるため、品質管理の観点から JIS 規格化へと発展 してきた経緯がある。一方、建築分野では、民間を中心に個別案件による単一 製品が基本であることから、構法などの一般評定や建築物の個別評定などの取 得による建築確認が原則となり、コンクリートを得意とするゼネコンや専門コ ンクリートメーカーを中心として発展してきたと考えられる。このように土木 と建築では、発展の過程が大きく異なるため、建築分野では JIS 製品はほとん ど存在していない。本研究では、土木分野で使用される、いわゆる多量生産に よるプレキャストコンクリートの製造方法の効率化を目的としているので、土 木分野で使用されるプレキャストコンクリートを対象とする(図1.2.3参照)が、

建築構造部材での工場製品等にも十分に応用できるものである。

コンクリートは、現場で打設する現場打ちコンクリートと工場で製作するプ レキャストコンクリートに分類されている。これらの違いを項目ごとに表2.2.2 に示す。この表から現場打ちコンクリートとプレキャストコンクリートは、完 成時(系)の構造性能を同じとするならば、使用材料、配合、打設・締固め方

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法は同じであるが、設計手法、施工方法または製造方法が異なりさらにフレッ シュコンクリートの硬化過程も異なっていることがわかる。また、積算体系で は、現場打ちコンクリートは、直接工事費と直接工事費に対する間接経費の和 で全体工事費が算出されるが、プレキャストコンクリートは、製品価格とその 据付費を直接工事費とし、間接経費は直接工事費に対する比率で算出されるが、

間接経費の比率は、現場打ちコンクリートであってもプレキャストコンクリー トであっても同じ経費率が用いられているため、プレキャストコンクリートの 工期が相対的に短いにも関わらず割高の設定となっている。さらに、プレキャ ストコンクリートでは、工場製造過程での管理費と間接経費での管理費の2重 計上が行われており、現行の積算体系は、プレキャストコンクリートの特徴や 実勢が反映されておらず、その結果現場打コンクリートが相対的に安くなり、

プレキャストコンクリートの採用が敬遠される原因ともなっている。図2.2.1は、

プレキャストコンクリートと現場打ちコンクリートの違いによる工事工程の差 を示した図である。プレキャストコンクリートは、予め工場で製造するため、

現場では組立のみになるが、現場打ちコンクリートは、型枠設置、鉄筋配筋を した上でコンクリートの打設となり、さらに脱型や長期間の養生を行う必要が あり、単純な工期の差だけでも一カ月以上の差があることが分かる。

表2.2.1 土木・建築分野でのプレキャストコンクリートの規格・基準

分野 基準化の経緯 主な対象部材 規格・基準類

土 木 案 件 は 公 共 性 が 高いため、当初目的毎 に製品が存在し、寸法 等 が 各 団 体 ご と に 規 格化され、1950 年の 法 改 訂 に よ り JIS 格が制定された。その 後、構造形態毎のJIS に体系変更された。

平 板 、 境 界 ブ ロ ッ ク、積みブロック

JISA5371-2016 プ レ キ ャ ス ト 無 筋 コ ン クリート製品

鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 管、側溝、鉄筋コン クリートくい

JISA5372-2016 プ レ キ ャ ス ト 鉄 筋 コ ン クリート製品

プ レ ス ト レ ス ト コ ン ク リ ー ト ボ ッ ク スカルバート、くい

JISA5373-2016 プ レ キ ャ ス ト プ レ ス ト レストコンクリート製品

建 築 案 件 は 個 人 が 基 本であるため、個々に 寸 法 等 が 異 な り 規 格 化 さ れ ず に 大 臣 認 定 に よ り 確 認 申 請 を 行 ってきた。一定の範囲 を 定 め て 構 法 等 を 対 象とする一般評定。

柱、梁、外壁カーテ ンオールなど

・JASS10 プレキャスト鉄筋コンクリー ト工事 2003 2 月発行(日本建築学 会)

・現場 打ち 同等 型プレ キャ スト鉄 筋コン ク リ ー ト 構 造 設 計 指 針 ( 案 )・ 同 解 説 (2002) 2002 10月発行 (日本建築 学会)

・プレ キャ スト 鉄筋コ ンク リート 連層耐 震 壁 の 水 平 せ ん 断 耐 力 の 評 価 法 と 設 計 200210月発行(日 本建築学会)

・プレ キャ スト 複合コ ンク リート 施工指 針(案)・同解説 20044月発行(日 本建築学会)

ドキュメント内 入江 正明 (ページ 35-65)

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